自衛官ニキのやらかしが発覚し、自衛隊との本格的な協力が始まったことで、ついに『デモニカスーツ』が正式採用され始めたのがつい先日。それまで注目されてこなかったのが不思議な程に、ガイア連合内で生産研究が進んでいる。
初戦は50キロ以上の重りを付けて悪魔と戦う羽目になるものの、才能に依存せず
しかし、その破格の性能に反して、仕組みは単純。
各種補助アプリを作動出来る各種機械装備に、中核となるデモニカコアを搭載して装備者と同調させるだけ。機械部分も良く出来てはいるものの、このコアがこの霊装をデモニカ足らしめている。
そして、コアとなる物は真3でお馴染みの『マガタマ』、の劣化模造品。つまりガイア連合産デモニカは人修羅レプリカと言える。さらに、このマガタマ擬きは式神コアのマイナーチェンジなので、式神コアの製造が出来る人間なら簡単に作れてしまう。
「手伝ってくれるよね?(圧)」
ショタおじからの無慈悲な宣告。この効果の発動に対して
何せ、黒札には1基無償供与が予定されているが故に、必要な量がとんでもない。一応世話になっている自覚がある上、分身式神で包囲された俺には選択肢など無かったのだ。
必要は発明の母というのは良く言ったもので、デスマーチ中に分身式神を習得した上、睡眠時間という過程を吹っ飛ばすことで、驚異の「0.1秒睡眠」という超ショートスリーパーを達成した。これによって1日に32時間分行動するという矛盾を成立させた訳だが、それとこれとは話が別だ。惰眠は貪るべきである。絶対に。
そんなデスマーチからようやく開放されたので、今は部屋でゴロゴロしながら『登仙術技書』*1を読んでいる。以前読んだ『神通力概論』*2の内容も含んだ、仙人ルートの成長フローについて書かれた霊能技術書だ。正直、仙人系のルートで成長している気がしないのでそのまま使えるかは微妙だが、汎用的に役に立つ技術や応用出来そうな技術も多く、読んで損にはならない。そもそも技術書を読むのが休息かと言われると微妙だが、こういうのは気分。
読み終わったら、基礎鍛錬用に琴刃にでも送りつけて習得させよう。この前みたいに圧縮訓練をしてもいい。最近の彼女は「尾張揺籃合戦場」と名付けた異界に、神剣護持会の若い衆と一緒に詰めっぱなしだからね。ローテーションしているとはいえ、座学の基礎鍛錬を出来る時間は無いだろうし。
何故か神剣とヤマタケから貰っていた加護のせいか、レベルが20を超えてなお上限に至っていないのだ。成長スピードは転生者と比べてしまうと遅々たるものだが、その他の若い衆は大半が一桁前半でレベル上限にぶち当たっていることを考えると、一族の中では奇跡的な才能ということになる。最近面白い発見もしたし、ちょっと楽しくなってきたので、この支部のフラグシップモデルとして魔改造していこうかな。
────ブォン
『やぁ、頼まれていたシステムインフラ構築は終わったよ。次はもう少し、私の脳を刺激する面白い仕事を任せてほしいね』
唐突に空間にノイズが走り、
現れたのは、半透明の車椅子の少女。側頭部に悪魔の角と機械のモニターをそれぞれ生やし、その瞳孔には0と1の2進数が浮かんでいる。
生前から「悪魔」とまで畏怖されたその知性と、現代の情報化社会を支えるコンピュータの生みの親であるという人類の信仰──。それらによって、近代生まれでありながら悪魔としての霊基を手に入れた規格外の傑物。ジョン・フォン・ノイマン。
その霊基から作り出した、名古屋支部が誇る電子空間の支配者の
プログラミングそのものは彼女の専門外なはずなのだが、流石の速さと言ったところ。
「ところで、ホログラムはどうやって?」
『ヘルタに協力してもらってね。今はこの家の中なら何処でも投影出来る』
「いつ聞いたっけ?」
『3秒程前に』
そう。今初めて言ったのね。
よく部屋を見回せば、カメラのようにも見える装置が各所に取り付けられている。ヘルタの趣味が多岐にわたるからか、仲良くやっているらしい。
過ぎたことはしょうがないので、ちょっと手伝ってもらおうか。
「ノイマン、リソースの『仮想化』はわかるよね?」
『もちろん。ハードウェアの物理的制限を無視して、論理的にリソースを割り振る技術だ』
「それを霊能に応用する理論も?」
『『霊王』のことだね? 1つの強力な霊基をシステムを介して多数に分散・接続するクラウド方式。マスターの設計思想、理解しているよ』
「じゃあ、悪魔の『霊基』については?」
『専門外だが……今資料をダウンロードした。問題無い』
打てば響くとはこのことか。正直彼女の能力を活かせるような作業ではないが、始めよう。
作るのは、かつて失敗して放置していた『ジョブシステム』の再設計だ。
前回は収益性と整備性を重視するあまり、非実体で魂に直接接続する装備として作成してしまった。結果、装備者の魂に対する霊的影響が大きすぎてミイラ製造機になりかけ、搭載可能な性能の制限も大きかった。
なので今回は、ジョブ独自のレベルアップ機能や、装備者の器からリソースを自動回収するような小賢しい収益性をすっぱり諦める。純粋に「スキルカードを一時的に人間に挿入出来る技術」として確立させる方針だ。
キーワードは、やはり『仮想化』。
前例である霊王と滅却師システムは「1体の悪魔を多数存在するように扱う」タイプだったが、今回はその真逆。
スキルカードというバラバラの概念リソースを束ねて、システム上で1つの「名もなき仮想の悪魔」を作り出す。スキルカードを使うのは、概念リソースの中では手軽に入手でき、扱い易いから。カード以外でも概念情報なら大抵リソースとして扱える。
とはいえ、今回用意したのは有り合わせの素材だ。一応『
「ノイマン、そこの水晶に仮想化術式を展開して」
『素人質問で申し訳無いが、どういう意図でこの方法を?術式そのもので論理コンピュータを組んでしまった方がいいのでは?』
「
急に凶器を持ち出すじゃん。何か言ってることもあれだし。
今回は試作なので、滅却師システムに利用している術式を多少弄ったものを、余っていた滅却師システム用の水晶型基盤に刻みつける。そこに4枚のスキルカードを挿入して、システムを起動する。
仄かに水晶に光が灯ったかな?
「これは……出来たっぽい?」
『一応霊基は構築されている。で、どう使う?』
UIもアナウンスも無いから分かりにくいが、一応思惑通りに進んでいるっぽい。それに、以前から構想はしていたので利用法も考えている。
ここ最近は霊能者の難民もかなり増え、その分海外の技術もガイア連合に入ってきている。その中の一つである、『
早速自分が変身する。
姿の変化は無し。これは俺が高レベルだからかもしれないが、仮想化悪魔に明確な姿を登録していないのも大きいか。現在のこれは、剣士という概念を悪魔という型に嵌めただけの存在だからだろう。
「あー、でもこれ、変身中は自分の元々のスキルはテーマに沿ったやつしか使えない制限がかかるね。無理矢理やると仮想霊基が崩れると思う」
『悪魔変身の再現らしく、その特性も引き継いでいるのか。無理にでも使えるのは概念強度が低いからか?降霊系にしたほうがいいのでは?』
「概念を悪魔に見立てただけだからね。それに、これはこれで良いかな。レベル固定っぽいし。レベルの算出はスキルカードの概念の重さといったところ?」
後で降霊系も試すが、これは思わぬ収穫。スキルカード分のコストはかかるが、低レベルで限界が来た現地民には使えるかな。早々にレベル限界に到達して他の仕事に回していた護持会組員とか。
悪魔変身と同じくHPやMP何かの消費するステータスは変身前から変わらず、元が低レベルだとスキルの使える回数は少ない。しかし、スキル無しならそのレベルのその戦闘スタイルに適したステータスで戦えるのは大きい。
問題は、これをセットアップするのにスキルカード挿入という結構な高位技術が必要なことかな。ハードディスクくらいの気軽さで入れ替えられるのが今後の目標。
そういう意味で、コンピュータと同じことをオカルト単品で出来そうなノイマンの提案に期待。
ひとまずこれで、ジョブシステム改め『ジョブデバイス』試作が完成。デモニカとスキルカード需要が被るのがあれだが、組み込む概念次第では結構使えると思われる。
正式版に向けて、装備として携帯できるようにするのと、ある程度のテンプレバリエーションを用意しとこうか。そのためにも、さっき言っていた純オカルト製コンピュータの研究と今後は報連相をしっかりするようにノイマンに言いつけておく。仲良くしてるならヘルタにも頼んでおこうか。
つい動いてしまったが、他人にも出来る仕事は積極的に人に振っていこう。その間に自分にしか出来ないことをやるのだ。エキドナが俺のために淹れた紅茶を飲むとか。
ノイマン
バ美肉生活満喫中。スティーブンとことごとくキャラ被りしている。
魔界では力の源である電脳が無いので雑魚。電霊としては強い。
提案は術式だけでノイマン式コンピュータ作ろうぜってこと。
ジョブデバイス
簡単にいうと外付けハードディスク。本来人間では読み込めないデータを読み込める形式に変換する。
この時期のこういう霊装につきものの「デモニカで良くね?」はバリエーションで勝負。基礎的なものから、オリジナルスキルを組み込んだものまで理論上の幅は広い。