作者的には、ヘルメス学とか召喚術とか普通に戦闘向きだと思ってたので、感想にはちょっとびっくりしました。良く考えてみると、キルゲは鍛え方が治安維持方面で、ハルトマンは雑用やってるのがデカかったのかなと。逆に、ゴリーニは正面戦闘してるし、ウェイトは真っ当な後衛してるしで、系統的な適性と役割が違ったのが大きかったかな。
ちなみにですが、前衛がいるなら四人で一番強いのはエティエンヌ・ウェイト。
みなぎる力。溢れる全能感。世界が意のままになるという確信。
更なる上を知らなければ、世界の頂点に立ったと勘違いしてしまいそうだ。
だから使いたく無かった。
事情は知っている。
このような事態になったのは、自分たちが侮られているが故のこと。彼の足を引っ張ることなど、最もあってはならないことだというのに。
一方で、彼らの気持ちも理解出来る。
他ならぬ私が彼を引き込んだ。上位者に泣きつく必要性と切迫感。そして情けなさは誰よりも知っている。
だからここまで頼りきりになりたくなかった。
霊装は言わずもがな、振るう技術だって彼が書き上げた物。
それでも、これが自らの力だと示したかった。
自分の力で勝とうとしていた。いいや、そう言い訳出来る範囲で戦おうとしていた。それが詭弁だと分かっていながら。
けれど、それでは駄目だ。それは甘えそのものだ。世間知らずの小娘の思考だ。
「
この戦いは、私達の雪辱戦ではない。組織の今後を占う見せしめだ。辛勝では意味がない。
「
「これは……」
神の名の下、号令をかける。
周囲の霊力を支配下に置き、空に砲台として並べる。さっきまでの
「神よ、ご覧あれ
晴天大征」
十分に力は満ちた。
刀を眼前に構え、草薙剣の権能を引き出す。更なる環境の支配によって、天地が私に味方し霊力を注ぎ込む。
反発せず同居する二つの神威。
巻き上げ、振りまき、循環する。その全てを支配する。
「節操がないですねぇ」
「あなたもでしょう?」
「違いありません」
私はみっともない弱者だ。それは今でも変わらない。彼の足元にも及ばず、多大な寵愛を受けて、それでもなお恥を晒している。
だが今は関係がない。彼を侮る者を、足元にも及ばない私が叩きのめそう。たとえそれが、虎の威であろうとも。
弓は雲、矢は雨、私は風であり、羽ばたきは雷である。
我は天地の怒りの代弁者。即ち叢雲である。
「
たった四人を狙う数十の
殺傷性を持った豪雨の中を、羽ばたきと共に踏み込む。
「断風」
「間髪っ」
「断風」
「ありませんっ」
「断風」
「ねぇっ!」
意識せずとも、
一撃目で足を斬り、二撃目で腕を断ち、しかし三撃目で首を断つことは防がれた。これも私の技量不足か。
「グッ……!」
しかし、その間にも雷雨は降り注ぐ。
羽ばたきと共に撒き散らされた
「大時化」
左の肘から先を失い、足の傷で立つのがやっとの相手を投げ下ろす。だが、水に落ちるように影に沈んだ。
影が繋がる先は矢も雷も凌いでいるタロット使い。あいつが一番予想がつかない。面倒だ。
「BOLOGNA SMASH!!」
「断風」
先程と同じように隠密状態で突撃してきたマッチョの振り回す腕を断ち切る。目を見開く男の胸を矢が貫いた。
この周辺は私の支配下だ。それそのものが見えずとも、その他全てが見えているなら見えると同じ。生半可な隠密は意味が無い。
天候は廻るもの。恵みを与え、暴威を振るい、循環するもの。
この体が崩れ落ちるまで私は止まらない。
「趨勢は決まりました。降参する気は?」
けれども、この模擬戦には建前がある。
公然の見せしめでは無く、あくまで双方合意の試合であるというものだ。それがどれだけ薄っぺらい物でも、組織の人間として踏むべき手順はある。
「演目は最後まで踊るものです。夫人」
「後ろの彼は違う意見をお持ちのようですが」
「鈍感さも時には必要です」
刀を大上段に構える。
示威のため、最大の一撃を。
何より、ここまで舞った彼に敬意を持って。
「"今、流転を閉ざし手向けと成す"」
降り注ぐ雨を、轟く雷を、荒れ狂う風を、一振りの刃へ収束させる。
慌ててタロット使いがカードを掲げるが、もはや意味が無い。ここまで近づいてしまえば、霊力の支配は術式にさえ及ぶ。
「"超越の象徴とは晴天なれば"
"刃を持って終極を齎さん"」
界の支配者となる草薙剣の権能を最大まで引き出す。
「"晴天転じて我が窮極の一太刀"
──《天晴》!」
世界が割れ、光が差した。
◆◇◆
「そろそろ落ち着いた?」
︰やべー
︰あれで黒札じゃないん?
︰天使じゃんメシアンってこと?
「状況が動いてからはあっという間だったね。
ざっと解説お願い」
「あれはキミの担当が大きかったと思うけど、ボクが解説するのかい?」
「いや、私は詳しい理論とか知らないし」
︰それでいいのか天使
「いいんですー。専門的なとこは軽くでいいよ」
「ふむ。ざっと概要だけを言うなら、名前という形で神の権能の一側面を借り受けるといったところだね」
そこからエキドナが簡単に理屈を紐解いていく。神は全能であり、その使徒たる天使もまた一側面を担うもの。ならば天使という名を定義し、それを介して必要な権能だけを切り出すというのが完聖体だと。
メトラも時折横から口を挟み、認識の違いを訂正していく。
︰じゃあ光輪と羽は何なん?
︰漫画そのままだし
︰そもそもあんな名前の天使居なくね?
「借りているのが天使の名前だからだね。もっとも、名前自体は架空だよ。ドイツ語の単語の末尾にelをつけただけさ」
︰それでいいの?
「そこで私の出番。私の
︰そういえばメタトロンいたわ
︰最強の名前作ろうぜ
︰俺らも使えるの?
「適性に合わせたオーダーメイドだから誰でも、とはいかないね。それに七十二の枠も有限だ」
「一応レンタルも考えてるみたいだよ」
そう言って後ろを見るエキドナ。
︰たけーよ
︰これ一月?
一月
︰使わせる気ねーだろ
「枠が有限だから安売り出来ないってさ。増やしたかったらメタトロンを用意してね」
︰ム!リ!
︰大天使はやだなー
「それで話を戻すけど、琴刃は?」
「あれは文字通り『
メトラが映像を少し巻き戻す。
矢が降り注ぎ、羽ばたきと共に雷が走る。本人は居合を放つ。その全てが、一つのテーマの下にある。
元より晴天流は、複数の現象を天候に見立て、一つの神楽としてまとめ上げる技術だ。個々に新しい力を足すより、その全体を『嵐』として強化する方が都合がいい。
︰スケール違くない?
︰一人砲兵隊だったけど
︰砲弾の雨の中突っ込んでくる剣士とは
「ビームが通じないのが剣聖らしいからね。砲弾の雨は問題無いんじゃない?」
私は問題無い
︰でしょうね
︰あんたが無理ならほとんど無理だよ
「そろそろ良さそうだし、締めようか」
ドゥームがホワイトボードを置き、立ち上がった。
◆◇◆
────ドォン!!
余韻を打ち壊す轟音。
現れるのは暗緑色のローブに身を包んだ鉄仮面。
胸部貫通2、身体割断2、疲労困憊1。
周囲を見回し、左手を掲げる。
ガイア連合において、模擬戦で死亡者が出るのは──修羅勢にとって──珍しいことではない。対人、対魔問わず戦闘技術が殺傷を目的としたものである以上、それをぶつけ合う場面で死ぬのは当然とさえ考えている。
そこまで割り切れるのは、当然それを覆せるからだ。
現れた魔法陣を掴み、回す。
宿る輝きは緑と紫。概念の結晶が所有者の力を増幅する。
「サービスだ」
血痕は初めから無かったように消え、傷も服さえも思い出したかのように元の姿を取り戻す。
魔法スキルにおいて、結果が同じであれば過程は重要視されない。使われたのは【
奇跡の主は多くを語らず。
何事も無かったかのような闘技場だけが残った。
【Tips】神降ろし
神頼みの究極系。基本的にどうしようもないほど切迫した状況で用いられる最終手段。軽々しく扱うことなかれ、神にとって、面子は命よりも重い。
しかし、古の天才は戦を神に捧げる舞とした。そして剣たる神はそれに応えた。
【器剣叢雲】
(見た目 PSO2の神剣天叢雲)
そうあるのが正しいからそうなる。という因果で納刀補助と手元への転移、神降ろしの補助まで。そうでありながら、神の器としての空白も残している。
追加でペティナイフサイズまで縮める縮小能力。
晴天流
(元ネタ シャングリラ・フロンティア)
天候を模すように属性を用い、天災の神から生まれた草薙剣を神降ろしする武術。
元は宮津家の昔の天才が戦闘を神楽として神降ろしを行うという不敬を成立させたことから始まる。流石に適性者も少なく、秘伝のような扱いで継承されていたが、戦後の根切りの際に失伝。
最低限の構成要素を残した神楽を祭りの行事とし、メシア教の目から逃れるというこれまた天才の所業によってかろうじて完全な失伝は逃れた。本来なら、真に才ある者が舞えば僅かに神降ろしが出来、そこから復元してくれるだろうという思惑だったが、優羽に拾われた。
完全に魔改造されている。
滅却師完聖体
(元ネタ BREACH)
滅却師システムを通して、その管理者のメトラから天使の名前を借りる。原理的には、四文字の全能を名前という形で切り出し、メタトロンで正当性を与え、貸与している。
聖隷を使う天輪と権能を表す翼が現れる。天使の名前ということにしているので、それを象徴するこの二つは有る方がいい。