【カオ転三次】怠惰を求めて   作:茅薙

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【幾百の魔術】
エキドナのメインスキルその二
思い付く限りの魔法系スキルを圧縮して詰め込んだスキル。
【一心同体】によって想定以上に容量が埋まってしまったがためにショタおじに泣きついた苦肉の策。
このせいで個々の魔法が概念的に軽い。最近は権能や概念攻撃が飛び交う戦場ばかりなのでこの欠点が目立ち始めている。


現在書け次第投稿しているので、ミス等あったらお知らせください。
感想読むの楽しみにさせてもらってます。


神器

 ひつまぶし、味噌カツ、海老天、手羽先、名古屋コーチン*1の唐揚げや照り焼きなどの名古屋名物。

 ステーキ、寿司、ローストビーフ、その他肉料理や魚料理、ブランド物の野菜や果物。

 

 どこの高級ビュッフェかってくらいに並んだ料理。

 これら全てが大体4人の腹に収まるって言うんだから不思議に感じる。半分は俺が食べるんだけど。

 

「ありがとうございます。こんなにも用意してもらって」

 

 礼を告げた先には宮津家当主の兼定さんと、その奥さんの遥さん。霊能者としての実力は今の俺からすると大したこと無いが、人間としては出来た人達である。

 

「いつも世話になっているからね。このくらいはさせてもらわないと」

 

「家は広さだけはあるから、多少は騒いでも問題はないわ。ゆっくりしていってね」

 

 遥さんがちょっとお節介な感じがするけど、基本いい人達なのだ。

 実際この家は大豪邸だ。やたら贅沢な空間の使い方の上、武門でやって来ただけあって、鍛錬場や体を癒すスパなんかも完備されている。今日はその全てを使い放題らしいので、まさにいたれりつくせりだ。

 

 

 日本各地の霊能組織がダメダメな中で、神剣護持会がある程度まともな体制を保てているのは、やはり天叢雲剣の存在が大きい。

「尊厳が無くとも飯が食えれば人は生きられる。

 飯が無くとも尊厳があれば人は耐えられる。

 だが両方無くなるともはやどうでもよくなる」

 漫画での信長の言葉だが、二次大戦敗戦後に徹底的に弾圧された霊能組織は、強さという飯の種も、祀るべき神という尊厳も奪われたが故に、この言葉通りに堕ちていった。

 しかし、神剣護持会には祀るべき神器があった。流石のメシア教も、当時はまだ政治を自由に出来るほどの力は無く、皇室を存続させる方針に従って3種の神器に手出しはできなかった。

 例え神が封印されようとも、来たるべき時まで果たさなければならない使命があった。故に耐えてこられた。

 

 ということらしい。漫画のセリフは俺がそういえばそんなセリフがあったなって思っただけだけど、結構嵌ってるんじゃないだろうか。

 

 精神面はそれでいいとして、現実としてもやはり神剣のおかげといったところ。

 神剣の放つ神気と言うべき気配は霊的な防衛本能を刺激し、効率的に覚醒へと至らせる。最初はきっかけにしかならない程度のものだったが、長年一族でその儀式を続けるうちに、神剣の気配だけで覚醒に到れるような素質に染まっていったのだ。簡単に言うと品種改良されていった。そのおかげで最低限戦える力を持ち続けられ、戦後の冷遇の時代も飯の種を持ち続けることが出来た。引き換えに霊質は極端に偏っていったのだが。

 

 取り留めのないことを考えていれば眠気が来るかと思ったが、ちょっと気配が鬱陶しい。

 

「部屋の前で彷徨くのは辞めてくれると嬉しいな」

 

 扉を開けて笑顔で話しかけると、ビクッ!と硬直してギギギと擬音のつきそうな動きでこちらを見る琴刃さん。ちょっと面白い。

 足音はしなかったが、しっかり気配が感じ取れる上に近くでチョロチョロされると普通に気になる。

 

「あの…その…」

 

 目が泳ぎ、冷や汗もかいている。大分精神的に参ってる感じが見て取れる。何かを言おうとしてモジモジしていたが、急に意識を失って倒れる、のをキャッチ。

 

「問答無用かよ」

 

(態々待つほどの用事があるとは思えないね)

 

 しょうがないのでエキドナによる転移で前来たときより女子っぽさが増していた部屋に送り届け、戻ってそのまま寝ることにした。なんかもう普通に可哀想になってはくるが、責任を取るとかは面倒なのでなるべくスルーしたい所存。

 でも流石にあのままだともう直ぐ破裂しそうなんだよな。ご両親にはメンタルケアを頑張って欲しいところ。

 

 

 

 ◇

 

 

 

「なので、これについては無期限延期という形になりますね」

 

「そうか。残念ではあるが、連絡感謝する」

 

「次に、そちらの巫女候補の状態についてなのですが………」

 

 一夜明け、兼定さんとの会議。

 こういうのはキチッと終わらせた方が後に響かなくていい。タスクが残ってるとのんびりしてても頭の片隅で主張し続けるからね。

 

「ということなので、暫くは療養していただくのが一番良いかと」

 

「助かるよ。私達はそういうのはからっきしだからね」

 

「ですので、補填と言っては何ですが………」

 

 こういう時は星十字騎士団制服風の霊装に感謝してる。

 フォーマルの場に着てても問題はないし、戦闘用だけあって動きやすく、霊装としての機能で快適が保たれる。まさに万能。安くしてくれてありがとう製造班。原作再現の芝居させたのは許さないぞ製造班。

 

 今日の本題は巫女候補の件での詫びなのだが、こちらが普段供与している利益が大きすぎて、補填に何か出すのが難しかったりする。普通に考えれば貸しとの相殺といったところなのだが、貴重な魔法寄りの適性者ということでしっかり補填しないと遺恨が残る。

 その塩梅が面倒くさい。

 

「そんなには受け取れない。ただでさえ普段から貴重な霊装を頂いているのに、更にこんなにも頂くのは私達の沽券に関わる」

 

「ですが、今回の件はこちらの見落としが原因なので………」

 

 あちらとこちらで物の価値が違うのも面倒。

 こちらにとっては多少の金で手に入る物が、あちらにとっては家宝レベルだったりするほどの価値観の差がある。かといってこちらの流通価格を知られた時のことを考えるとそこまで安いものは出せないし。

 

 うーーーん。

 

「正直、この程度はそこまで手間のかかるものではないので、受け取って貰いたいです。今後もお付き合いするなら遺恨は残さない方がいいでしょう」

 

 面倒くさい。

 確かに色々あるのは分かるが、ここまで固辞されるとは思っていなかった。別にこの程度半日もあればペイできるのに、受け取って貰うのに半日もかけてちゃたまらない。

 

「うん。潮時かな。申し訳無い。

 ありがたく頂かせてもらう。

 だが、言っていることは本当だ。余り深く関係を結びたくないのなら、無償の善意はよろしくない。

 現に、うちの中にも増長する者が出始めている。今は水面下に収まっているが、今後はどうか分からない。私が手を尽くしても完全に防げるような物ではないからね」

 

 名古屋に来ても、宮津さん家に来るばかりで組織の施設には行っていなかったが、そんなことになっていたのか。確かにそれならしょうがないのか。どれもこれも面倒だな。

 

 よし、いいこと思いついた。

 

「では、神剣を手に取る許可を。

 それで今までの霊装供与と等価にしましょう」

 

「そうきますか。確かにそれならこちらにとっては等価でしょうな」

 

 多分、武器としての性能だけならショタおじどころか今の製造班がガチで作った物と同等かそれ以下だろうが、神剣というのはそれが持つ概念や神秘にこそ価値がある。その設計図とでも言うものを記録して製造班に持っていけばさぞいい霊装を作ってくれるだろう。

 しかし、こんなことが言えるのはガイア連合だけなので、神剣に相まみえる栄誉を求めて霊装を献上していたことにする。構成員の増長はどうにもならないだろうが、妙な勘ぐりはこれでなくなるはず。

 兼定さんはそういう思惑なのも分かった様子だが。

 

「では午後にでも」

 

 は?

 

 

 

 ◇

 

 

 

 えー、どうしてこうなったんでしょう。

 現在、熱田神宮の最奥にいます。他家から嫁いで来たため、この家では珍しい魔法師タイプの遥さんが、神剣を守る結界の中に入るための儀式をしております。

 この場に居るのは宮津家の3人と俺。和風の正装の中に一人だけ半分コスプレの洋装がいるのが場違い感が凄い。

 

「巫女衣装なんですね」とか、「何で琴刃さんまでいるんですか」とか、気になることは多々ありますが、結構ワクワクしている自分もいます。

 

「終わりました。どうぞお入りください」

 

 促され、結界の敷居を跨ぐ。

 隠蔽されていた神器の気配が途端に襲いかかって…は来たが、そよ風。

 いやまぁ普段戦っているような悪魔の殺気からすればって感じだから、一緒に入ってきた琴刃さんはちょっと息苦しそう。例に漏れず彼女も覚醒にこの気配を使っているので、慣れているからこそLv5でも息苦しさだけで済んでいるのだろうが。

 

 神剣の見た目は、博物館にでも飾ってある様な古く年季を感じさせる物。物理的な武器としては落第も良いところだが、溢れる神気が本領はそこでは無いと告げている。

 

「エキドナ、お願い」

 

「他ならぬ君の頼みだ。全霊を持ってあたろう」

 

 腰元のホルダーに収まっていた福音書が、隣に立つ人型となる。解析をするなら直接接触したほうがいいので、人化してもらってことにあたる。こういうことまで出来るようにしたから器用貧乏なのだが。

 

 エキドナに解析した情報を複製してもらい、それを受け取ってフォルマ化することで保存していく。【魔晶変化】を習得しておいて良かった。

 

 夢中になっていて気づいていなかった。琴刃さんが何かに導かれるようにフラフラとこちらに近寄っているのを。

 

 天叢雲剣が突然発光し、今までも感じていた神気が一気に強まる。霊的干渉を察知。

 

「ストップ」

 

 咄嗟に最大出力の認識時間操作。そう長くは保たないが、緊急回避にはとても有効。すぐに剣からこちらへ来ていた霊的干渉を拒絶する。もう少しレベルが低ければ危なかった。

 

 受けた攻撃はラベリング。こちらにヤマトタケルのラベルを貼ろうとしてきやがった。ついでに琴刃さんへと向かっていたものもキャンセル。こちらはミヤズヒメ。

 …誰?

 

「ミヤズヒメはヤマトタケルの嫁であり、おそらく熱田神宮の初代巫女だよ。

 1説では、ヤマトタケルが彼女を娶って宿泊した時に、神々しく光り輝いたそうだ。ちょうどこんなふうに」

 

 エキドナがサラッと答えてくれる。流石知識の女神。知識の出処は何処か分からない。wikiの内容全部把握してそう。

 

 

 嫁?

 

 

「カプ厨かよ!」

*1
地鶏




史実においてはミヤズヒメに子孫はいなかったそうですが、今作では宮津家が子孫と言うことに。つまり天皇とは遠縁ではあるものの血縁関係。

思ったより長くなりそうなので、多分もう一話熱田編が続きます。
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