その周波数は「響き渡る」のか?   作:つヴぁるnet

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第2話

 

 

 

ピガガガガガ!!

チュドドドドド!!

 

 

 

と、画面の中で瞬き、そして…

 

 

 

ピキィーーーン!!!!

ドカーーン!! と劈く音と共に弾け飛んだ。

 

 

 

「ぎょええええええ!!!」

 

 

 

使っているのは適当な中古のモニターなので壊れる自体はそこまで気にしないが、目の前で爆発するのはやはり怖い。

 

 

「うわぁぁぁ…!まーたメットリオの素材探しに行かないとだめなのかよ!?3日前に100ほどたんもりと集めたんですけどぉ!?もうメットリオの素材が無いのか…」

 

 

文字通り発火剤となる『種』はなんとか完成しているんだけど、今制作中のズッシリとした反射球は全然うまくいかない。

 

メットリオじゃなくてなんか別のウィルスデータを使う必要があるのか?

 

いやでも『反射』と言えばメットールもといメットリオなんだよなぁ。

 

あれで電脳獣(ラスボス)をハメ殺せるくらいには高スペックだからメットリオの汎用性を当てにしているんだけど、それ以上に調整がうまくいかない。やはり完成先が合法ダークチップなだけあって難しいな。

 

 

「もしかして反射の受け付けフレームに制限考えた方が良いのか?いやでもそれなら別のバトルカードで良いよな」

 

 

ガシガシと頭をかきながら2日目にして早くもショートしてしまったモニターを取り外して部屋の隅に置く。

 

そして新しく仕入れた中古モニターを取り付けてデータを入れ直し、再びシミュレーターを起動して画面を覗く。

 

数字上は可能としているが、どうも実物化した場合、反射球(デコイ)が種の連続受け付けに耐えきれずにそのまま衝撃が電波空間から現実世界に弾き出されてモニターがチュドーン!とするらしい。

 

反射の受け付け時間を下げればデコイの負荷は下がるがそこら辺の調整がまた大変だし、下げたら下げたでそんな手間を作るなら別のバトルカードで良くなってしまうし、夢と現実性どちらを優先して掴み取るべきか悩ましい。

 

 

うーん……もうやめようかなコレ。

 

開発コストも結構わるいし。

 

その度にゴミ収集場まで向かってウィルス狩りするのもなんか虚無だ。

 

いや、ウィルス狩り自体は良いんだけど、せっかく集めたバトルカードが勿体無い。

 

 

「あと一回だ!あと一回だけ試して、それでダメだったらコイツは諦めよう」

 

 

諦めきれないけど、でも現実性(コスト)を考えて継続することは至難とし、ならば次の試みで最後にしようと明日の予定を立てる。

 

明日は特に予定は無い。

 

ただ三日後は少し遠くのリゾートホテルまで向かってウィルスバスティングシステムの調整に出向く必要がある。

 

あのリゾートホテル結構大きいから調整するの大変なんだよなぁ。

 

なので現地で泊まりになる。

 

ただホテル側は依頼を請け負ってくれる代わりに宿泊代を安くしてくれるので泊まり込みで仕事できるのは結構ありがたい。

 

 

 

「え?お兄ちゃんヤエバまで行くの!?」

 

「うおっ、ミソラいつのまに」

 

「何か壊れる音したから見にきたんだ。それでヤエバリゾートに行くの?」

 

「行くよ。仕事で」

 

「スキーしたい!」

 

「いまシーズンだっけ?…って、思ったけどそういやヤエバのスキー場ってリアルウェーブがメインだったな。年中雪だから出来るのか…」

 

「だよね!行きたい行きたい!」

 

「あー、はいはい。わかったよ。ただし」

 

「遠出して家にいない3日分の勉強は終わらせることだよね?」

 

「わかってるならよし」

 

 

それを聞いたミソラはるんるん気分で部屋に戻ると早速取り掛かることにしたらしい。通信制とはいえそこそこの勉強量だ。それでも三日後のスキーに備えるらしいく張り切っている。可愛いやつめ。

 

 

 

「とりあえず俺は明日のために持って行くバトルカードを揃えるか。あ、それなら実験として試作品のバトルカードも持って行くか」

 

 

トランサーに明日使用するデータを食わしながらバトルカード本体も持って行く。

 

トランサー本体の容量が足りていればカード本体は不要でトランサーにインプットしたデータだけでバトルカードは使用できるが、しかし容量が足りない時は実物で補う必要がある。

 

なのでジャラリと荷物が増える。

 

すぐに引き出せるよう腰に巻くんだけどね。

 

 

でもこんな重装備は生きてて稀だ。

 

本来は一般家庭に発生するメットリオのような雑魚敵なら市販でも購入できるキャノンとかソードをトランサーに登録すればワンボタンで子供でも撃退できるし、トランサー依存の一般家庭では対処出来ないようなウィルスが現れたら即座にサテラポリスが駆けつけて駆除してくれる流れなので、容量重ための備えをするような人間は実のところとても稀である。

 

てか、スロットインするほどのバトルカードって何かと高価なので、独身貴族レベルでリッチな人でもない限りはそう多く持ち歩かない。

 

やはり基本的に、トランサーに容量小さめのバトルカードをデータとしてインプットさせてワンボタン撃破になる。

 

 

でも俺は違う。

 

明日向かう場所は獰猛な狩場。

 

ゴミ収集場というサテラポリスすら足を運ぶことすら稀な無法地帯には強力なウィルスが蔓延っているし、ファイアウォール一つもない使われなくなった無防備なジャンク品にはここぞとばかりにウィルスが住処と集う。

 

しかも珍しいことに縄張り意識を持ったウィルス同士が争い、強いヤツだけが残るとかいう弱肉強食な世界でもある。ごく稀にEXクラスと名付けられたウィルスも現れる。

 

だからそれ相応のバトルカードが必要になる。

 

場合によってプログラムアドバンス(P.A)も躊躇わずに使う必要がある。

 

 

一応こっちは生身だ。

 

基本的には電波ウィルスは人間に干渉はしないが、たまに周波数を捻ってしまうほどのウィルスも現れて、ウィルスの攻撃が実体化して人間に危害を齎すことも有り得る。

 

 

 

……そう、有り得る。

 

 

 

 

「………親父…」

 

 

 

11年前を思い出す。

 

忘れるものか、何があったのか。

 

そして会社から何を告げられたのか。

 

 

ならば___俺がやっていることは危険だ。

 

それが記憶としてある。

 

 

ああ、そうさ。

 

本来ならもう少し慎重に、今よりももっと安全に趣味も仕事もこなすべきだろう。

 

 

けれど…

 

 

 

「金がいる。生きてく為の大きなお金が。せめてミソラが良い学校を選んでもすぐに入学できるように俺は備えたい」

 

 

 

コレまで請け負っているお得意様もあり、その信頼を確保し続けるためにも収入先は絶やさせない。だからクオリティと頑強性が大事。

 

それに、もっと良い家に住みたい。

 

ミソラはこの古びたアパートでも楽しいと言ってくれるけど、亡くなった親に妹の幸せと安全を願われているなら俺がするべきことは息苦しくない場所での生活だろう。

 

いまだって隣部屋でそれなりの音量でライブ配信出来ているが、それはお隣に人が住んでいないから許されている状況下。

 

まあそのお隣さんは()()()()()の住まいなので利用者は今後現れるかは不明だが、それでも自由に使える一軒家というのは憧れる。

 

もしくは比較的新しいマンションでも良い、

 

ともかく今の数段住み心地が良い住まいが欲しい。

 

そしたらミソラの配信場所としてもっとスタジオらしい部屋も用意できるし、俺もビジネスする側としては今よりも広くて整った部屋があるならありがたい。

 

 

 

だから、その為の金がいる。

 

 

まぁなに。父の仕事に比べたら俺のやっていることなんてのはちゃちいもんさ。

 

父の時に比べたらこんなの遊びだ。

 

 

 

「よし、これとコレで、準備オッケーだな」

 

 

 

明日は抜かりなし。

 

自室を出て、キッチンに向かう。

 

夜ご飯を用意することにした。

 

今日はお好み焼きでも作るか。

 

 

 

「お兄ちゃん、一次方程式教えて!」

 

「え?もうそんなところまで勉強してんの?」

 

「うん。なんか数学だけ進んじゃって!」

 

「この世界の子供って勉強早いよなぁ…」

 

 

 

前世よりも義務教育の速度が上回っている世界とはいえ、その勉強速度に応えれるほどには地頭の良い妹だ。日常的に抜けているところはあるが、まあそれは愛嬌としよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、昨晩の残りのお好み焼きを腹にぶち込んだことで腹持ちよく午前中からコダマタウンの一角にあるゴミ収集場までやって来た。

 

もちろん作業現場だけあって従業員はちゃんといるし、ゲームの勇者のようにそう簡単に管理地に出入りできる筈ないが、しかし俺はここの責任者にワイロ(ゼニー)を渡してるのでしばらくはフリーパスな状態で出入りしている。

 

まあ俺のようにウィルスデータを求めてこんな辺境まで出入りする奴らも存在するので、この世界でゴミ漁りはそれほど珍しくない。

 

極小数なのは確かだけど。

俺はそのうちの1人。

 

 

「周波数は……よしっ、今日も安定している」

 

 

独自の持つ周波数をこの場に合わせればウィルスも視えてくる。それにしても…

 

 

「今日も大量だな。すごいや、ココは」

 

 

ウィルスは一般市民の生活の敵だが、ウィルスの存在をビジネスにできる者からすれば宝の山にも見える。まあそれはその域に手を伸ばせる者のみの特権であるが。俺は出来る側。

 

 

さて物陰に隠れてトランサーを起動すると奥にいるウィルスをロックオンする。

 

そうして手前からサイレントキルしながら少しずつ奥を目指す。

 

これもいつも通りである。

 

 

 

「欲しいのはメットリオ系。ついでにマミーハンドも欲しいが、あまり無理はするなよ俺…」

 

 

心臓の鼓動が少しずつ早まるが、しかしこれは一種の興奮作用だ、これもいつも通り。

 

しかし冷静に。

 

基本的に奴らは人より強いウィルス。

 

でもアイツらは人間に攻撃はできない。

 

出来るとしたら周波数を合わせてきた場合のみ。

 

つまり彼方が周波数を合わせてくるまでしばらくの俺は無敵モードである。

 

敵の攻撃がすり抜ける。

 

ただ俺の場合は独自の周波数を持っているので体に異物を放り込まれたような感覚に襲われるからウィルスから極力攻撃を受けたくない。

 

 

「ま、やられる前にやれってね」

 

 

さぁ、メットリオが豊富なエリアだ!!

 

ガンガン稼ぐぞ!!

 

ミサイル!!ミサイル!!ミサイル!!

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、メットリオを中心としたウィルス狩りを完了させながら奥地に足を伸ばす。

 

このゴミ収集場はコダマタウンだけじゃなく他のタウンやエリアからも集まるためかなり大きな敷地である。

 

なにせネット環境どころか電波環境も整えに整えた発展の収まりが効かない時代なため、機械類の廃棄量も必然的に多くなってしまう。

 

あと現場作業のため作業用品の廃棄量も多い。

だからメットリオが多く集う。好むから。

 

なので俺にとっては都合良すぎる場所だ。

 

てかメットリオ系、カード開発に使いやすくて好きなんだよな。初歩的なバリアとか実はメットリオのデータから開発したらしい。

 

 

 

「それにしても、ここはやはり広いな…」

 

 

ゴミ集積所でウィルス狩りを始めて2年目、実はまだ行ったことない場所もある。

 

昔はウィルスバスティング用のバトルカードも弱かったため集積所の手前の方で徘徊しているウィルス、言わば縄張り争いから弾かれた弱いウィルスばかりを狙っていた。

 

しかし俺も昔に比べて強くなった。

 

試作品だったモノも実践的に使えるくらいには改良と完成を重ねて来た。

 

だからこの2年で奥まで踏み入れれるようになった。なので今日は行ったことのないエリアまで行ってみよう。集積所の従業員ですら把握できていない未知のエリアまで。

 

 

 

「バトルカードは沢山持ってきたんだ。今日はとことん狩るぞ」

 

 

心躍らせて更に奥へと進む。

 

進んで、進んで、途中デリートして、荷物袋から飲み物を取り出して、トランサーの充電量を確認しながらゴミの山から足を踏み外さないように気をつけながら、進んで、進んで…

 

 

そして、何か違和感を発見した。

 

 

 

「??…なんか、奥行きを感じるな」

 

 

視線の先にはゴミの山だが、しかし視る以外にも感じるモノがある。

 

もしかして()()か?

 

 

「いや、そんな感覚無いな。てかアレってもっと痺れるような感覚だし。あと息苦しいし…」

 

 

 

苦い思い出と共に、少し掘り進めてみると立て掛けられている大型の板を見つけた。

 

鉄板というべきか。

 

 

「表面は錆びているけど…にしてはなんだか新しめだよな?使用感も足りないし、まだ使えそうだし、ゴミとして出すには勿体なくないか?」

 

 

大型の鉄板を動かせるほど力があるわけじゃないので、鉄板を迂回するように横側を掘り進めることで違和感に近づく。そして…

 

 

 

「え、扉!?」

 

 

ゴミを掻き分けて10数分、人が通れるくらいの広さを開通して空間を見つけたのでライトを照らすとそこに扉を見つけた。

 

それもまだ新しめの扉だ。

 

放置されているくらいには古びているがめちゃくちゃ古い感じではない。

 

しかし開閉口に溜められた小型のジャンク用品を見る限りだと、長いことこの場所に誰も足を踏み入れてないことがよくわかる。

 

つまり年単位で人間が開け閉めしてない証拠にもなるだろう。

 

 

うーーん…………うん!ヨシ!!

中に入ってみるか!!(能天気)

 

 

 

そう考えて鍵も掛けられてない扉に手を触れて重たく開く。

 

すると…

 

 

 

 

「キュルル?」

 

 

 

目の前に小型のメットリオ。

 

え?? ウィルス??

 

 

 

「どひゃー!?(昭和)」

 

「キュン?」

「キュイ!」

 

「ちょ、更にメットリオが2匹ぃ!?」

 

 

失念していた。

 

確かに人は居ないだろうが、扉の奥にウィルスが潜んでいる可能性があることを。

 

そもそも物理的干渉が無いんだから扉の開け閉めされて形跡がなくともウィルスがすり抜けて奥にいるくらいあるだろう。

 

俺は驚きながらも鉄板とゴミ山の間をスルリと抜けるようにその場から一気に飛び引き、ウィルスデリートのためにトランサーを起動させる。

 

 

それと同時にメットリオ達もウィルスらしく鉄板をすり抜けて姿を晒す。

 

 

「っ!」

 

 

おおお、落ち着け!

たかがメットリオだ!

 

黄色と赤を除いて攻撃は遅い。

 

ただし青は攻撃が早くて要警戒だ。

 

しかしメットリオの性質上として列が並んだ場合は後方のメットリオがツルハシを振って攻撃をしてこない性質がある。

 

ここは狭い場所だ。

 

しかも運良く黄色のメットリオが前方にいて攻撃がとてもわかりやすい。

 

あと目の前のメットリオまだ完全にこちらと敵対状態になっていないので先制攻撃は保証されている。のんびりとしてられないが。

 

俺は先制攻撃のため俺は使うべきバトルカードを考えて手を伸ばすが…

 

 

「って、余ってるの試作品だけか!?ちっ、仕方ない!コイツで…!」

 

 

 

探索に少し調子に乗りすぎたのか有用なバトルカードが残り少ない。

 

もしバトルカードを再使用する場合は一度フォーマットしたり、もしくはトランサーを再起動したり、あとはクリーンアップさせたりと機能させなければならない。

 

しかしそんな時間があるはずもない。

 

だから仕方ない。

 

試作品のバトルカードをトランサーに読み込ませて使うしかない!!

 

 

「起動!!バリアブルソード!!」

 

 

トランサーにガコンと読み込ませた後、素早く数字を入力することで変数を弄り、ソードの属性を変化させる。メットリオ達は唐突なエンカウントに驚いてるのかまだ攻撃してこない。

 

その間に俺はカタカタと数字を入力して最後のボタンを押そうとした、その時だ。

 

 

 

ガラガラガラガラ!!

 

 

 

「!?」

 

 

 

突如、立っていた横のゴミ山からジャンク品が転げ落ちて来た。俺はそちらに意識しながら倒壊に巻き込まれないように回避する。

 

しかし__ポチッ、とボタン押してしまう。

 

 

 

「あ、やべっ」

 

 

最後のボタンを押し間違えてしまう。

 

想定外の入力にバリアソードは未知数の変化を行う。

 

そうしてトランサーから弾き出されたバリアソードの電脳波はソードの望んだ形をしておらず、ただの衝撃波に変貌していた。

 

それでもやや刺々しい衝撃波だが間違いなく失敗した証だろう。やらかした。

 

 

「キュイ!」

「ピィ!?」

「ピーィ!」

 

 

瓦礫の回避に気を取られて押し間違えたボタンに後悔しながらも、トランサーから放たれたバリアの衝撃波はメットリオのウィルスに影響を与えてくれたらしい。

 

 

ただデリートまで漕ぎ着ける事はなかった。

 

 

これは少しやばいな。

 

一撃で倒せず、しかも攻撃を加えたことで確実に敵対状態になってしまった。

 

 

これは撤退か…??

 

いまならメットリオも怯んでるし逃げ___

 

 

 

「ギィ!ギィ!!がァァァ!!」

 

 

 

「ふぁ!?」

 

「ピィィィ!?」

「キィィィ!?」

「キュュン!?」

 

 

ジャンクの山から全体を覗かせたのは巨大なエレミーラだ。

 

コイツもしかしてGタイプか!?

 

 

 

「メトー!」

「メッメ!」

「メトォ…」

 

 

唐突な巨大エレミーラとのエンカウントにメットリオ達は怯え始める。

 

もしかして、コイツから姿を隠すためにあの建物に隠れていたのだろうか?

 

だとしたら悪いことしてしまったか?

 

 

いや、それよりもエレミーラだ!

 

この感じ、この辺の縄張り争いを勝ち取ったウィルスって認識で良さそうだな。

 

未知のエリアに入るからにはそれなりの危険性は覚悟していたがこのレベルは想定外だな。

 

なかなか驚かしてくれる。

 

 

「とりあえず撤退だな!

バトルカード!フウジンラケッ___」

 

「メトメト!」

「メットォ!」

「メトート!」

 

「___は?」

 

 

一度奴の攻撃範囲から逃れようとバトルカードを使用した瞬間、怯えていたメットリオ達は俺の方に飛びついてきた。

 

ツルハシも使わずに体当たり!?

 

もしかしたら俺を拘束するつもりか!?

 

 

そう身構えたが……予想外の展開が起きた。

 

 

シュポン!!

シュポン!!

シュポン!!

 

ビビビッ、アクセス完了。

 

 

 

「へぁ!!?」

 

 

 

トランサーに潜り込みやがったぁ!?

 

えええ!!?

なんでぇぇ!!?

 

ウィルスの介入一つ許さないレベルのファイアウォールが搭載されたはずの端末だぞコレ!?

 

なんでメットリオ程度のウィルスがファイアウォール貫通してトランサーに入れんだよ!?

 

 

「「「メトォ…」」」

 

 

てか何くつろいでんだよお前ら!?

 

そんなに居心地良さそうに顔ふやけるか!?

 

オイオイオイ意味わからねぇよ!!

 

ッッ、ああ、もういい!!

 

後だ、あとだ!!

 

 

 

「フウジンラケットォォ!!」

 

 

 

試作品のバトルカードでエレミーラを奥に吹き飛ばすと俺はその隙に離脱する。

 

トランサーの中で一息つく3匹のメットリオを横目に少しため息つきながらゴミ集積所の安全地帯まで逃げ延びた。

 

マジで、なんだよこれ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「黄色はキョロキョロ落ち着きなく、赤色は元気にツルハシを素振りして、青色はぐっすりと寝てやがる。なんだコイツら…」

 

 

夕方前、とりあえず帰宅ナウ。

 

上着を脱いで椅子に腰掛け、トランサーの中身を再度確認し、それからモニターとトランサーの画面を連動して映す。

 

そこには個性豊かに過ごすメットリオ達。

 

EXクラスのエレミーラは想定外とはいえそれまでは収穫多めに目的を達成できたが、代わりに余計な収穫も込みである。

 

それがこの目の前にいるウィルスだ。

 

 

「メトォ〜?…メト!」

「メト!メト!メト!」

「メトォ……スヤァ…」

 

 

いや本当になんでトランサーの中でくつろいでやがるんだぁ?このウィルス達。

 

先ほども言ったけどトランサーって個人情報を守るため非常に強力なファイアウォールが搭載されていて、メットリオレベルのウィルスなら侵入とか許さないはずなのだが…??

 

 

「帰宅中もトランサーの中で大人しく無害に振る舞ってたが、いや本当になんだよコレ…」

 

 

あまりにもイレギュラー過ぎる体験。

 

ウィルスが全くウィルスしていない。

 

まあいい、大人しい内にこの違和感を調べるとしよう。

 

俺はパソコンを起動してくつろいでいるメットリオ達にフォーカスを当て、コイツらが本当にメットリオウィルスなのかを確認しようとしたが、しかし…

 

 

「は??『対象無し』ぃ??」

 

 

画面には「調べるべき対象がありません」と警告が出てメットリオを調べることができない。

 

いや、対象がいないってそれ…

 

 

 

「画面にウィルスが存在しない扱いじゃねぇか」

 

 

 

つまりこのメットリオをウィルスとして扱われてないってこと?

 

いや、いやいや、何かの間違いだろ。

 

思いっきりメットリオじゃねーか。

 

ウィルス代表として有名なウィルスやぞ。

 

 

「それともこれまで現れなかったウィルスとして方式が違うのか?いやでもデータ照合には普通にメットリオタイプって書いてるし、危険度も低いがちゃんと有りって叩き出されている。でもウィルスとして判断されないのは何故だ?」

 

 

もしかしてウィルス(邪魔者)としての活動プログラムが無いから【ウィルス】と判断されていないのか?

 

それならバスター対象として弾かれて『(破壊するべき)対象無し』って扱われてしまうかもしれないが、でもメットリオだよな?

 

赤色の奴なんて思いっきり素振りしてるぞ。

 

やろうと思えばやれるじゃん。

 

 

 

「………一応、隔離しておくか」

 

 

無慈悲にデリートしてしまえばこれ以上悩ませる必要もないが、しかしこのイレギュラーが気になった俺は好奇心を優先してしまう。

 

一応PC内部では、ウィルスとして本来あるべき活動プログラムが機能した場合は即座にデリートするようにウィルスバスティングを起動させ、監視対象として別の部屋に隔離した。

 

 

「しかし殺風景な空間だな…」

 

 

隔離するだけなら気にしないが、彩りないのは少し気になる。なので試しにクッションとか置いてみたら青色のメットリオが嬉しそうに飛びついてそこでくつろぎ始めた。

 

何コイツ可愛くね??いやかわよ。

 

 

すると赤色のメットリオが何か探している。

 

…もしかしてコイツも何か欲しいのか?

 

なので試しにダミーを置いたら、それに向かってツルハシで攻撃し始めた。

 

………いやマジか。普通に内部で攻撃してるのにウィルスバスティングシステムがメットリオに作動してない。つまり破壊活動として判定されてない扱いなのか?これではウィルスがウィルスしてない証拠じゃないか。

 

 

「メトォ!」

 

「え?お前も?」

 

 

黄色のメットリオとさりげなく出来てしまうコミニュケーションに困惑しつつも、俺はとりあえず何か与えれるものを探し出す。

 

他二体と比べて雰囲気的になんとなく幼なげなイメージを抱いたので、ならばとジャングルジムとか、シーソーとか、公園にある画像を引っ張りだし、3Dに変換させて隔離施設に召喚すると目をキラキラさせて嬉しそうに飛びついた。ひょえええ。かわよ。

 

 

「お兄ちゃん何やってるの?」

 

「うぉっ、ミソラか?急にどうした?」

 

「ううん、特にないよ。でもなんかいつもとテンションが違うから気になっちゃったな」

 

「よくわかったな。まぁいい…コレだよ」

 

 

教えるべきか少し迷ったが、ウィルスを家に招いてしまってることは共有するべきと考えて俺は手招いて、ミソラを呼ぶ。

 

 

「え?コレって…」

 

「ああ。メットリオだ。見たことあるだろ?」

 

「う、うん、ウィルスだよね?パソコンの中に放置して大丈夫……え?遊んでる?」

 

「そう。遊んでんだよ。寝てる奴もいるし、素振りしてる奴もいる。それもメットリオとかいう破壊活動に特化した純粋なウィルス代表のはずなのに、それ以外の事に着手し、なんなら欲求を満たそうと行動しているんだよ」

 

「…これ、本当にウィルスなの??」

 

「それな。俺も最初は疑ったんだけど、調べる毎に通常のウィルスとは違い、なんならウィルスバスティングシステムは攻撃性を感じなかった事で『害なし』の扱いなんだ。俺はそのメットリオ達をもう少し調べるために一度隔離施設に放り込んだけど、ちょっと生き物を飼ってる感覚になったもんだから気まぐれでクッションを放り込んだらあの青い奴がそこで寝て、それならと他の個性に合わせてグッズを置いたらご覧の通りなんだわ」

 

「へ、へぇー、こんなことあるんだ。ウィルスって迷惑しかかけないと思ってた…」

 

「それな」

 

「うん……んん?あれ?なんかこのメットリオって少しだけ違うね?」

 

「少しどころじゃないと思うけど」

 

「あ、いや、そうじゃなくて、ええとね…?」

 

「?」

 

「その、メットリオなのはわかるんだけどライブラリーで調べたのとなーんか微妙に違う?」

 

「え?どういうこと?」

 

 

俺は画面の中のメットリオを再度見る。

 

トレードマークのヘルメットにツルハシ。

 

それで黄色、赤色、青色と揃っている。

 

しかも全レベルのメットリオだ。

 

別のウィルスではない。

 

だがミソラは記憶と共に首を傾げて…

 

 

 

「メットリオってこんなに丸かったっけ?」

 

「丸いだろ?ヘルメットだぞ?」

 

「いや、確かにヘルメットなんだけど、そうじゃなくて、その…なんというか…一部が違う?」

 

「一部が違う…とは?」

 

 

ミソラはトランサーを開くとウィルスを調べれるライブラリを開き、パソコンの画面とトランサーの画面を交互に見比べ、そして何か納得したように頷いた。するとミソラは俺の腕をちょんちょんと叩いて話しかけてくる。

 

 

「やっぱそうだよ!これ少し違うよ!」

 

「?」

 

 

俺は少し分からないでいた。

 

どう見ても、見慣れたメットリオだ。

 

けれどミソラはライブラリと見比べて少し興奮したように指を差し、そして告げられた。

 

 

 

「このメットリオ達のヘルメット、とんがってないよ!」

 

「………ゑ??」

 

 

最初は意味がわからなかった。でも言葉は理解できたのでミソラの指摘した部分に注視し、次にミソラのトランサーを覗き込み、もう一度画面の中のメットリオを視認する。見るべきはヘルメットの部分。そして俺は気づいた。

 

 

「え、あ、え?…うわあ!本当だ…!?」

 

「でしょ!?なんか、違うよね!!」

 

 

よく見つけたなと感心するのと同時に、俺は知っているメットリオとは違うという部分に意識を寄せる、更にメットリオから違う部分を見つけてしまう。それは…

 

 

 

「コイツら、よく見たらヘルメットの目元に()()()()がついてるじゃないか!!」

 

「アンテナ…??あ、本当だ!」

 

 

ミソラもトランサーに表示されているライブラリのメットリオと見比べて、アンテナの有無を確認した。どうやら見間違いでもないらしい。

 

 

 

「このメットリオ、普通のメットリオとはなんか違うね。だからこのパソコンの中にあるウィルスバスティングシステムも反応しなかったのかな?」

 

「………ああ、そうだよ。そういうことだよ」

 

 

ミソラの言葉に俺は時間をかけて答える。

 

何せ俺は、一つ大きな事実に理解した。

 

俺はこのウィルスをメットリオと判断した。

 

別にそれで間違いではないし、ヘルメットを被ったままツルハシで破壊活動を行うメットリオ種で間違いではない。

 

 

しかし違和感は解かれた。

 

尖ってないヘルメットと、アンテナの有無。

 

 

それは、ある日までの記憶。

 

俺がこの世界に二度目として繰り返す__前の一度目の前世で見覚えた、とある記憶。

 

 

 

「コレはメットリオじゃない…」

 

「?」

 

 

 

 

 

 

 

 

これは____

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メットール、(EXE)だ ……!!

 

 

 

 

 

 

 

つづく






感想にもありましたが、主人公くぅんがEXE時代のカードが使えるのは開発または改造しているからですね。そのうち合法ダークチップも造るんじゃ。楽しみなんじゃ。



あと5年前に書いたこれも読んでくれ↓↓
https://syosetu.org/novel/288599/
こっちはEXEの方やで。
物憂げな"彼女"を軽率に救ってどうぞ。


じゃぁな!
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