「なぁワタルー、アレって何だ?」
「…んぁ?」
さて、1日目のオクダマスタジオの案件を終えた夜、明日の2日目に向けてウィルスバスティングシステムのデータを組むため机に向かっていると、赤いヘルメットを被ったシオンがベットに寝転がりなら壁に飾られているモノに指を刺す。
俺はその方向に目を向けるとそこには警棒のように長い仕事道具が飾られている。
しばらく考えて…
「アレはバスティングスティックだよ。ヤシブタウンまでクッションを買いに向かった時に見ただろ?ウィルスの対処にサテラポリスが使っていた兵器だよ」
「それは知ってるぜ。なんでこの部屋に飾っているんだ?アレってワタルのモノなのか?」
その言葉に俺は少し悩ませる。
それで少しだけ間を置いてから…
「父さんの形見かな」
と、答えることにした。
するとシオンはガバッと起きる。
「形見って、なんだ?」
「思い出のよすがを形にした物だ。まあ大体は死んだ人を忘れないようにするための証と言うべきかな。アレはつまりそういうことだ」
「それは『武器』でもそうなるのか?」
「ああ」
「……なんで、形見が武器なんだ?」
孤独を知ったメットールが人の形となり、人として人を知ろうとするようになったから、シオン含めた三人娘ットは誰かを知りたがる側面が生まれている。それは毎日眠たげに振る舞うリンネでさえ知識欲を持っているし、わんぱくなカノンだって同じ。色々と尋ねてくれる。
そんな彼女達を受け入れた俺はそこに応える義務と責任があるのだろう。
「俺の父は___対ウィルス戦闘に特化したサテラポリスの元特殊部隊だったんだよ。だからその警棒…いや、そのバスティングスティクは父が殉職するその日まで使われていた武器なんだ」
椅子から立ち上がり、壁に立てかけられていたバスティングスティクに手を伸ばして掴む。
ヤシブタウンでシドウが使っていたモノよりも重たく、また旧式な事が伺える。
こんなのでウィルス相手に振り回していたのかと時代の重さを疑う代物も、安全装置を外して起動ボタンを押せばバスティングスティクからブォォォーンと熱を放つ音を響かせて、数秒後にやっと出力が上がった。
人間が触れる分には効果はない。
しかしウィルスに突き立てれば傷害を与えてウィルスの機能を破壊する。
そして___これを生身でウィルスと対面する必要がある。もう一度言おう。人の身でだ。
「この世界は技術発展が凄まじい。ただし便利な分の代償がある。このバスティングスティクもその一つだ。父はこれを使わなければ便利の代償から人々を守れなかった」
「それは、その……ウィルス、から、か?」
「ああ。そうだ」
「そ、そうか………その…ワタル、わたしは…」
「ああ待て。待つんだ。シオンは関係ない。これは誰かがとか名指した問題じゃない。これはただ人間が作り上げた代償が、一つの環境として襲ってきてた。そう言う問題なんだ」
それでもシオンは己がウィルスだったことを思い出したのか、メットールの名残としてヘルメットの側面に取り付けられているアンテナの色が濁ったように濃くなる。
これは不安を覚えている色だ。
つまり負の感情。
俺はシオンの頭を撫でながら落ち着かせる。
「ワタル…?」
「人間は便利を求めるのと同時にその代償を得てきた。そうやって木々を薙ぎ倒せばいつしか土砂崩れは起きてしまうように、巻き込まれて死ぬのは人間なんだ。だからウィルスから齎された死だとしてもそれは人類が生み出した責任でしかないんだ。シオンは悪くないんだ」
「そう、なのか…?」
「ああ。てか俺もウィルスを利用して仕事にしている身だぞ?だから…まぁ、なんだ。電波社会の恩恵を頂くという贅沢の中でも、それ相応を隣り合わせに生きていくのは今の現代社会を産み出した人類の義務であり、同時に覚悟でしかない。だからコレはシオン以前の話。父は立派に勤めを果たしながら死んだ。無論、俺は死んでほしくなかったけど、でも誰かがやらなければならないことを父はしてくれた。だからこの形見は誇り。そして父との約束」
「約束…?」
「そうだ。いつも言ってた__もし父に何かあったら、その時はワタルに家族を頼む__そう言われたから俺は家族のために約束を果たしている。現在進行形でな」
「…」
バスティングスティクの電源を落として壁に飾り戻すと、仕事のために椅子に戻る。
シオンも無言のままベッドに転がる。
しばらくの静寂。
パソコンのタイピングだけが環境音。
「なぁ、ワタル」
「……なんだ?」
「その…アタシもさ、ミソラを守るよ。アタシはヘルメットのウィルスだったけど、でも大事なミソラを守って良いよな?」
「それは心強いな。兄として助かるよ。じゃあシオンにも頼んで良いかな?」
「お、おう!任せろ…し!」
ちょっとぎこちなくも、ニヤッと勝気に笑ってみせるシオン。
そうしてアンテナの色が煌びやかに瞬く。
前向きな気持ちが表れている証拠だ。
…
…
…
「お前の苦労ずっと見ていたぞ。本当によく頑張ったな」
「うわでた」
もう経験しているから状況が分かる。
ここは夢の中の世界だ。
それで過去にペガサス・マジックが現れた。
そして今回、現れたのはライオン。
サテライトの管理者レオ・キングダムである。
「この展開、もしかして…」
「察しの通り、今回は我がギフトを施す番だ」
「ああ、なるほど。にしては随分と間が空いたな。あれから一ヶ月は経ってるぞ?」
「様子を見ていただけだ。場合によっては過剰な施しだったと取り上げる必要もあったが、しかしこの賜物を授与されるに相応しいと判断して我も動いた。備わりし
「副産物……
「そうだ。ワタル、電波変換は試したか?」
電波変換___それは文字通りに電波として変換される変身技術。
まるで戦隊モノのような力。
俺は___リンネと合体(意味深)できる!!
…
…
いや、嘘じゃないぞ??
マジでリンネと二人で合体してるし。
本当にすごいぞ、電波変換ってのは。
「電波変換は何度か試したよ。副産物って扱いで良いのか判断に迷うがな」
「元より我らAM星人の賢者によって根本から書き換えられたメットール達だ。ならばAM星人としての力も備わっておかしくはない」
「理解はするが、あの変身技術を彼女達からも可能としてしまうと本命と履き違えそうだ。電波変換は本当にすごいからな」
「だから様子を見る必要があった。響ワタルは正しく目的と選択を違えぬ青年であるかを」
秋原町に引っ越す一ヶ月前、ヒトの形を更に安定させる目的も兼ねてペガサス・マジックはリンネに『ギフト』という形で力を与えた。
だがその時に、ウィルスから電波体に書き換えられたことで比較的AM星人の性質に近くなっていたリンネは更にギフトが加わったことでAM星人特有の電波変換技術を獲得した。
これによって俺は三人娘ットのリンネと電波変換を行い、変身できるようになる。
電波変換は___改めて、とてもすごい。
存在が電波になるから物理法則に縛られることはなくなったので、世界よりも速く動けてしまうし、電波世界でウィルスに阻害されないために常人よりも優れた戦闘能力を手に入れたりと超人的になれる。
そうした強みを懐かしみながら、何度か専門家の間合いでウィルスをバスティングしたり、ウェーブロードで遠くまで移動してみたりと電波変換の凄みと強み、そして取り扱いの危険性を再確認した。こいつは強力すぎる。
「正しく扱えているようだな。安心した」
「なんだ?信用なかったのかい?」
「あったさ。しかし力を授けるからにはその者にその相応しさがあるかどうかを確かめるのは三賢者として重要な役割だ。故に我は響ワタルのことを調べさせてもらった」
「?」
俺のことを調べた??
……まさか、俺が過去やっていたこともか?
「我は気になったのだ。宇宙ステーション『キズナ』の断片が保管されているあのような場所まで漕ぎ着ける貴殿は只者ではないと考えた。同時に運命力に怯えないその胆力と、そして大事な者を護らんとする覚悟。それから個人が持ち合わせる異質な周波数。だから響ワタルとは何者かを調べた。そして知った。まさか…」
__サテラポリスに所属していたとはな。
サテライトの管理者だけあって個人情報を引っ張ってくることができるようだ。
そして俺の情報を知ったのだろう。
いまから一年前に、俺がサテラポリスに所属していたことも。それでいて…
「電波変換に理解もあった。だからなるほどと納得もした。しかしアシッドエース計画か…」
「うわっ、何さらりと最重要機密情報も漁っちゃってんのコイツ?」
「我は元よりNAXAによって管理者という役柄を与えられた存在。ならばNAXAなら情報を掘り起こすくらいはどうでことない」
「職権濫用すぎんか?」
前から思ってたけどAM星人って結構勝手な奴らだよな?悪い意味でアグレッシブというか。
「何を言うか。そもそもアシッドエース計画は星河ダイゴがAM星人の我らと接触したことで電波変換の仕組み知り、編み出された計画だ。アシッドエース計画は元から知っている。しかしそこに響ワタルが組み込まれていることは調べるまで知らなかった」
「そりゃあ機密情報だもん。言う訳ないじゃん」
「だろうな。しかしNAXAは優秀だな。我らとの接触したその数ヶ月でアシッドエースを計画し、人工的にも電波変換ができるよう技術開発をした。そのための育成も早期に着手し、優秀な兵士を揃えた。そして響ワタルもその一人なのだろう」
「計画の大元がそう言ってくれるなら、その通りなんだろう。まぁ今の俺は退いた身だけど…」
「しかし貴殿はその中で選ばれた兵士だ。それでいてサテラポリスを退いても尚、ウィルスに対する理解があり、そのための知識と力、手段がある。だから納得するに早く、託すに相応しい」
するとレオ・キングダムの目が光る。
これは何かを呼び寄せる感覚だ。
つまり…
「ん……んん?…あ、あれ?マスター?」
シオンだ。
いきなり召喚されてキョロキョロとする。
普段は勝気な彼女も突如知らないところに招かれたことで不安を隠せていない。
「こんばんは。突然悪いな、シオン」
俺はゆっくりと近づいて頭を撫でる。
触れているのはヘルメットだけど、シオンからしたら頭を撫でられているのと同じだから急なナデナデに驚いた。
「なっ、なっ、なんだよ…」
「頭撫でてるだけだ。不安そうだったし」
「っ!だ、誰が不安だ!べ、別に、ちょっとだけ驚いただけだ、し!」
「そうだな。急に招かれて驚いただけ。でも今日は約束を果たせるようだから、少しだけ付き合え」
「やく、そく?」
俺はシオンの後ろを見上げる。
シオンも釣られて後ろを見るとレオ・キングダムの度アップの顔面に一瞬固まり、そしてフシャー!と威嚇しながら俺の背中に隠れた。
しかし元がメットール2だけあって防御体制に入れる辺り、そういうところは名残として動けるようだ。ただ盾にしてるの俺なんだけど。
「シオンの電波化はレオが施したんだったな。だとしたら紐付けでこうなるのは当然か」
「適性もある。特にヒトらしくなってからの変化は我の属性に合っているようだ」
「みたいだな。カラーリングもそうだがこの勝気娘を属性に例えると炎でピッタリだな」
「な、何の話だよ!?か、勝手に進めんなしー!!」
レオ・キングダムの眼が光る。
するとシオンの体も同時に赤く光る。
それに驚くシオンだが、頭を撫でてやれば基本的に落ち着くのでシオンをナデナデする。
お陰で驚きと恥ずかしさの二つの感情を混ざらせて大変な事になっているが、その間にレオのギフトとやらはシオンに施されたようだ。
赤い光が落ち着いて、シオンのヘルメットに刻まれているレオのマークが鮮やかになる。
「これでアップデートは完了だ。それぞれの想いを果たす手助けにもなるだろう」
「ア、アタシ、何をされたんだ?」
「簡単に言えば便利になった。あとは本格的にAM星人と同じことができるようになったんじゃないのか?」
「AM星人と…同じ?」
「電波変換だよ」
「ッ、リンネのヤツか!!」
シオンも電波変換のことは知っている。
何度かリンネと電波変換した俺を見てその強さを羨ましがっていたし、なんなら一度試しにリンネと電波変換した俺と、ツルハシを持ったシオンでバトルをしてみた。
ただしシオンの攻撃はコチラに掠りもせず、それでいてコチラは電波の速さでシオンの背後を取って羽交い締めにし、無防備な頭を撫で回したりと柔らかくノックアウトさせた。
こうした事もあり、互いに電波変換の反則的強さを把握している。
ちなみに見学していたカノンは「わかんないけどなんかすごい!」的な認識で止まっている。
うん、かわいい。
「これでアタシも電波変換できるのか?」
「みたいだぞ、良かったな」
「んなっ!だからもう!頭撫でんなし…!」
「はいはい」
シオンから手を離してレオに向き合う。
すると空間が少しずつ薄れる。
別れるタイミングだろう。
「これで完了だ。我は管理に戻る。
これからもお前の苦労ずっと見ているぞ」
「お前そのネタ引きずるなら流れでミソラの配信にいいねボタン押しとけよ」
「既に押してある」
「うわコイツ、既にリスナーだったか」
「な、何の話してんだ?この二人は…」
ミソラの存在は電波世界を通してサテライトの管理者すらも推しにさせてしまう。
結構なことじゃないか(兄バカ)
…
…
…
さて、前日は夢の中も含めてなかなか色濃く過ごすことになったが、本日も前日と変わらない濃さが求められるようだ。
「電波変換!響ワタル、オン・エア!」
「よっしゃぁ!やってやるし!」
オクダマスタジオの人目のつかない場所で例の掛け声をしながら、トランサーに入り込んでいるシオンに意識を合わせると身体にピリッとした感覚が包み込む。そして…
「よし、朝の試運転と変わらず問題ないな」
「っし!これでアタシもリンネと同じだ!」
シオンと電波変換が完了した。
「っとと…腰のツルハシなかなか重量あるな」
「アタシの自慢だし。だから早く慣れろよな!」
「わかってるよ。ただシオンの性格がよく出た格好だからな。慣れるまで大変そうだ」
「は、はぁっ!?も、文句あるんかし!?てか格好自体はリンネとそう変わんねぇだろ!?」
「そうかな?シオンのハネっ気がある感じがまた滲み出ているぞ。なんというか外装の色合いがアストレイっぽい。ええやん」
「ア、アストレイ?」
「『囚われない』って意味だ。つまりシオンは我が道を征く、とても勇ましい子ってこと」
「お、おう?そうか?えへへ…」
さて、シオンをチョロインさせながら真上のウェーブロードに移動し、オクダマスタジオ館内を見下ろす。
オクダマスタジオで働くスタッフ達は俺が電波化してスタジオの上にいることは分からないだろうし、そもそも電波なので見える事もない。
そうした特別感を久方ぶりに味わっているとメットのアンテナからシオンの声が届く。
「見ろよワタル、控室にミソラがいるぜ」
「ああ、見えてるよ。スズカちゃんと互いにファンサし合ってるな。早速仲良しで助かるよ」
「それでね!それでね!わたしね!ミソラちゃんの配信を見つけてね!元気を与えられたの!」
「うんうん!分かるよ!私もね!同い年のスズカちゃんが大変な業界で頑張っているのを知って嬉しかったの!だから私もスズカちゃんにありがとうって言いたいの!」
「ミソラちゃん!」
「スズカちゃん!」
「あぁ^〜、てぇてぇ、なんじゃぁ^〜」
ミソラにもリア友が出来た。
なにせ学習教育の関係上としてミソラは月に1回行く程度の通信校通いなので、これまでリアルの友達とかそういう話はまったくなかった。
しかし、こうして歳の近い似た者同士が出会いあって親しくなり合う。
これが、今現代で重要視されてる
「さて、二人の仲睦まじいところも眺めれたので俺たちはとっとと仕事終わらせるぞ」
「何をするんだ?」
「オクダマスタジオに一部乱れたウェーブロードがある。それを直接修正する」
「だから電波変換なんだな?」
「そうだ。これは電波変換の手段持つ俺たちならではの特権だ。代わりに危険が伴う」
「…と、言うと?」
「ウィルスが現れる可能性がある」
「はん!上等だし!現れたらぶっ倒してやる!」
「戦うのは俺だけどな」
それからスズカちゃんの控室を後にし、俺は外に出ると、昨日確認した不安定に細まったウェーブロードがそのまま。
今のところウィルスは現れてないが、これが原因でせっかく搭載したウィルスバスティングシステムがこの場所まで届かず、ウィルスの侵入を許す可能性がある。
なのでこの細まったウェーブロードを操作して正常に戻し、バスティングシステムの通りを良くする。そうなれば電波変換の仕事も完了だ。
「さて、この辺に電波を流すとして…」
頭の中でウェーブロードの形を想像し、そこに電波を送ってウェーブロードを書き換えてしまう。すると一度ウェーブロードが消えるが、新たに生成したウェーブロードが即座に召喚されて綺麗な形になる。やはり便利だな電波化は。
「こんなもんか」
「結構簡単な作業だったな」
「ただの書き換えだからな。カタカタとキーボードで操作して、修正後に再更新で変換させるだけ。これはその程度の手作業だよ」
「よくわからないが、とりあえず完了だよな?」
「そう言うことに……待て、仕上げが必要になる」
「?」
俺は気配のする方向に顔を向ける。
すると脇下からヒョコっとペラペラな魂をしたシオンが顔を出す。まるでぷよぷよフィーバーに出てくるシグの魂みたいだ。そんな魂化したシオンは気配の正体を視認すると目を見開いて即座にギラついた好戦的な表情になる。
「ウィルスだ!ワタル!」
「だな」
興奮するシオンに同調しながら、俺はバトルカードのバリアをメットの側面に取り付けられたアンテナに翳すことで読み込ませ、腰のツルハシを握りしめながら低姿勢で一気に突貫する。
「ロックオン___からの、デリート!」
「へ?」
…
…
「全然戦った気がしないし…」
「一撃で粉砕される雑魚ウィルスだぞ?二手、三手と時間が掛かる方がおかしいな」
不完全燃焼故にトランサーからブー垂れる声を漏らすシオンをさておき、ウェーブアウト後に俺は繋いだままのノートパソコンのキーボードをカタカタと入力し、修正を完了させたウェーブロードの部分にもデータを浸透させる。
すると画面には『保護率100%』と頼もしい数値が叩き出され、ウィルスバスティングシステムの搭載が完了したことを知らせてくれる。
「よし、これでオクダマスタジオは大丈夫だ。バスティングシステムも奥まで届くし、問題ない」
「…まぁ別にいいし。今日は電波変換がちゃんと出来たことを確認できたからな!」
「そうだよ。今回はあくまでテストプレイ。そうしてウィルスとウェーブバトルも出来ることが知れたのは大きな収穫だ。これからは躊躇いなく振えると言うことで今日は満足してくれ」
「わかったよ。ワタルが言うなら満足するし」
ノートパソコンをパタンと閉じ、裏方マモロウさんに仕事が完了させたことを知らせる。
それから裏方さんのトランサーに今回のシステムデータを送信し、数分ほど状況説明をすると裏方さんも問題ないと納得してくれたので、今回は依頼完了となった。
「後で振り込んでおく。ありがとうな」
「いえいえ、こちらもお仕事頂き感謝です」
「ああ。それと…スズカのことは頼んだぞ?」
「!」
「聞いたぜ。何やらスズカはアンタにお熱のようだ。今日は打ち合わせ後に出掛けると言うことでずっとワクワクしている。一応聞くが…二人はどういう関係なんだ?」
「それは僕が聞きたいですね。ただ彼女とは過去に出会ったことがあるらしいのですが、如何せん思い出せなくて。幼少期とか引き合いに出されたら本格的に思い出せないかも…」
「そうかい。まぁスズカのことは頼むわ」
「わかりました」
そうして裏方さんと別れ、ミソラが待っているスズカちゃんの控室に向かうと、何やら一人の大人がやや興奮気味に話しかけていた。
「き、キミ!アイドルシンガーとしてデビューしてみないか!?可愛いからすぐ有名になるぞ!」
「え、ええと…」
何やら勧誘のようだ。
まぁ理解はする。
ミソラはすごく可愛いもんな(兄バカ)
ま、それはそれとして…
「俺はお兄ちゃんだぞ!」
「どわひゃぁ!?なっ、なんなんだ!?」
「どうも保護者です」
「あ!お兄ちゃん!おかえりなさい!」
「お、お兄さん、だと??」
スカウトマンとミソラの間に割り込むようにお兄様宣言をしながら強制的にスカウティングを止めてやり、そのままミソラの肩に手を置いてグッと引き寄せながらスカウトマンを視線で牽制する。__簡単に渡すとでも??
「俺の妹に何か用かな?」
「あ、えと…そ、そうだ!スカウトだ!この娘さんこの業界に於いて逸材だ!だから是非我が社のアイドルシンガーとしてスカウトしたい!」
「断る」
「がぁーん!?な、なぜだぁ!?」
「ミソラは配信者だからな。あと俺の仕事の補佐を(今日だけ)頼んでいるのでアイドルシンガーにはならないよ。そういうのはまだ先だから諦めろ」
「そ、そんな…」
「えへへ〜、ごめんね。私まだ配信重視で活動したいからアイドルは考えてないんだ」
と、兄妹揃って断るとスカウトマンは肩を落として去っていく。するとスズカちゃんがヒョコッと顔を出して話しかけてきた。
「あ、お兄さん。お仕事終わりですか?」
「ああ。予定よりも早く工事完了だ。そっちも打ち合わせ終わったのかな?」
「はい!早めに終わりました!今日はもう大丈夫です!」
「そうか」
一応、スズカちゃんも今度また新しく放映されるCMの打ち合わせのために午前中からオクダマスタジオまで来ていた。
なので互いのスケジュール上としてオクダマスタジオで集合するのが都合よかった状態。
「あとミソラもお手伝いありがとう。助かった」
「ノートパソコンのボタンを二つ押しただけだけどね」
「遠隔で設定して操作するの面倒だったから助かったよ。そんじゃ、二人とも出掛けるぞ!」
「「うん!!」」
なんだか妹が一人増えた気分だな。
もちろんミソラが末っ子ね。
「えええー!!」
不満な声を無視してバス停まで向かった。
…
…
「ココも久しぶりだな」
「お兄ちゃん来たことあるの?」
「過去の所属柄、何年か前に一度だけな…」
「!!……あっ、やっぱりそうなんだ、そうなんだね…」
さて、ここはロッポンドーヒルズ。
一言で表すなら大都会である。
特に有名なのが大型のショッピングプラザ。
耐震性能が心配になる程高いビル包まれたこのプラザには、映画館やカフェ、プールやスポーツジム、遊具やアスレチック、展示施設に美術館など、いろんなコンテンツが出揃っている。
そしてロッポンドーヒルズの中央には敢然と伸びる『TKタワー』と名称された建物。
「ニホンを支える電波ターミナル。言わばこの国の心臓だな」
「そうなの?」
「コレがあるから俺達は電波を使ってデータの送信や更新を可能としている。あと電波社会の発展地の一つとしてロッポンドーが挙げられるかな。人が往来しまくっている巨大プラザだが実はココってそれほどに重要なんだよ」
「へ、へぇー」
田舎町に慣れてるミソラにとっては目新しいのと同時に、目まぐるし光景だろう。
それに対してスズカちゃんはテレビ業界の芸能人だけあって色んなところに行くのか、大都会でも落ち着いている。
「どうする?先にお昼頃にする?それとも何処かウインドショッピングでもするかい?」
「お腹空いた!ね、スズカちゃん!」
「うん、そうだね。先にご飯にしましょう」
「わかった。じゃあ二人で相談して好きなお店を選んでくれ。年相応の香ばしい店なら奢ろう」
「やったー!」
「あ、ありがとうございます!」
さて、女の子二人のエスコート。
重役だな。
困ったらシオンに相談するか。
『出来るわけ無いだろ!ワタルがやれし!』
…との、ことらしい。
ま、長男として出来るだけ頑張るかな。
つづく
やっぱ電波変換ってチートだよね。
コロコロ系の中でも能力として上澄みすぎる。
あとシオンの口調がちょっと安定しない…
生意気娘って感じが、すこしムズカイね。
【ワタルの父】
今は亡き響家の大黒柱。過去何話か所属先を匂わせていたが、この9話にて等々明かされた元サテラポリス特殊部隊の兵士。十数年前に目まぐるしく発展する電波社会のため、文字通り命を尽くすことで市民の日々を守っていた英雄の一人。こういった英雄クラスが過去に何人かいたお陰で将来の夢としてサテラポリスに憧れて目指す人が増えている。実は今より若い頃の五陽田さんはワタルの父と共に最前線で身体を張ってはウィルスを相手に戦っていた経歴がある。名前はまだこの作品で決まってない。
【アストレイ】
わかる人にはわかる、ガンダムSEED作品に登場するガンダムアストレイのこと。名前には『囚われない』という意味を持つ。シオンと電波変換するとEXEのシールドスタイルのような変身姿になる。また電波変換をした時に赤と白の配色がガンダムアストレイに似ていたため総じてワタルがアストレイと仮名で呼んでいる。この名前が定着するかは作者の気分と趣味次第。
じゃぁな!