もし未来悟飯がシャーレの先生だったら 作:ひーくんmark2
言い訳にはなってしまいますが、ここの所リアルが本当に忙しくて…
気付くと、一カ月も空いてしまいました。
皆さんには心配をかけてしまって、申し訳ございません。これから先、このようなことが起こらぬよう、尽力いたします。
長々と話してしまいましたが、それでは、本編をどうぞ。
―――アビドス高校、廃校対策委員会、会議室にて。
セリカを救出し、カタカタヘルメット団を壊滅させた悟飯とアビドスの生徒たちは、何とか高校に戻ってきた。
ポワ…ン
シロコとノノミは、セリカに気を送って、体力を回復させていた。
シロコ「…ん。どう?セリカ。体力、戻った?」
セリカ「あ、ありがとう。先輩。何とか、体力だけなら…」
グラッ…
セリカの身体がぐらつき、倒れそうになったところを、アヤネが支える。
セリカ「あ、ありがとう、アヤネちゃん…。」
アヤネ「無理しないでよ、セリカちゃん。普通なら、気絶してもおかしくない怪我なんだから。」
ノノミ「ただ気を送るだけじゃ、怪我までは治せないですしね~。」
ホシノ「…まあでも、気を探る技術のお陰で、セリカちゃんの居場所を見つけられたのは、良かったよね。」
アヤネ「先生のお陰で、セリカちゃんを見逃さずに済みましたし、先生がいなかったら、どうなってたことか…。」
悟飯「俺は大したことはしてないさ。カタカタヘルメット団と闘ってくれたのも、俺じゃなくて、皆だったしね。」
ホシノ「…大したことしてない人は、トラックを片手で持ち上げて運んだり、気功波だけで戦車を破壊したりしないよ、先生。」
そうして、暫くは和気あいあいとした空気が流れる中、アヤネが、カタカタヘルメット団との戦闘で入手した情報をまとめた資料を出した。
アヤネ「…端的に言うなら、カタカタヘルメット団は、キヴォトスでは使用されている部品や製品…つまり、自分たちでは入手できない武器を保有していました。」
ノノミ「その流通ルートを調べれば、黒幕の正体に近づける、ということですね。それと、カタカタヘルメット団がアビドス高校を狙っていた理由も。」
ホシノ「それじゃ、その調査、いっちょやりますか~。」
悟飯「よし、頑張ろう!皆!」
アビドスの生徒一同「「「「おーー!!!」」」」
そうして、悟飯とアビドスの生徒たちによる調査が、始まるのだった。
―――キヴォトス某所、高層ビルの理事室にて。
???「…格下のチンピラ如きではあの程度が限界か。主力戦車まで貸し出したというのに…このザマとは…。」
その男は、体格の大きな、機械でできた義体の男だった。
???「…仕方がない。目には目を、生徒には生徒を…専門家に依頼するとしよう。」
…プルルルル…プルルルル…
ガチャッ
???「はい、どんなことでも解決します。便利屋68です」
???「依頼を頼みたい、便利屋。」
…その電話からは、どこか不穏な空気が感じられた。
―――アビドスの繁華街から、少し離れた、カタカタヘルメット団のアジトにて。
カタカタヘルメット団員L「…クソッ、クソッ!なんで…なんで…!」
悟飯とアビドスの生徒たちの手によって、ほぼ壊滅状態だったカタカタヘルメット団は、今再び、窮地に陥っていた。団員の後ろからは、冷たい足音が響く。
カタカタヘルメット団員L「…く…来るなああ!」
その団員は、どうにか銃を持ち直し、抵抗する。
ドカッ
しかし、抵抗虚しく、カタカタヘルメット団員Lは、攻撃を受けて倒される。
???≪あーあー。こっちは終わったよー。≫
通信をしているのは、小柄な少女。明らかに危険物が入っているバッグを抱えている。浅黄ムツキだ。
???≪こっちも制圧完了だ、ボス。≫
パーカーを着ていて、白と黒がハッキリと分かれた髪色をした少女。少しけだるげな雰囲気がある。鬼形カヨコだ。
カタカタヘルメット団員L「…お…お前たちは…何者…だ…。まさか…アビドスの…!」
すると、特徴的なコートを着た少女が、カタカタヘルメット団員Lに近づいていく。
??「…はあ。随分と冴えないのね、貴方たち。クビっていわれるのも、納得だわ。」
カタカタヘルメット団員L「…なっ…クビ…だと…!?」
??「そうよ。現時刻をもって、アビドスは、便利屋68が引き受けるわ。貴方たちはクビよ。もう、労働から解放されたのよ。」
カタカタヘルメット団員L「…ふ、ふざけん…
ドスッ
カタカタヘルメット団員Lは、何かを言おうとする前に、銃で殴られ、気絶させられた。
???「…黙ってください…。…アル様の、貴重な時間の、無駄です…。」
気絶させたのは、帽子を被った、紫髪の、小柄な少女。その眼には、コートを着た少女…アルに対する、確かな忠誠心があった。伊草ハルカだ。
アル「…私たちは、便利屋68。金さえもらえば、何でもする…。何でも屋よ。」
アル「…って、もう聞こえちゃいないかしら。」
四人の少女…便利屋68は、そのままそこを去っていった。辺りに広がっていたのは、ボロボロに打ち負かされ、気絶したカタカタヘルメット団の残党たちだった。
―――翌日、アビドス高校、対策委員会の教室にて。
アヤネ「…セリカちゃんも元気になったので、さっそく定例会議を進めていこうと思います!」
アヤネ「…本日は、先生もいるので、真面目に会議を進めていけると思うのですが…。」
ノノミ「はーい☆」
シロコ「もちろん。」
セリカ「何よ、いつもは不真面目みたいじゃない…。」
ホシノ「うへ、よろしくねー。先生。」
悟飯「ああ。よろしく頼むよ、皆。」
アヤネ「では…早速議題に入ります。本日は私たちにとって非常に重大な問題。『学校の負債をどう返済するか』について、具体的な方法を議論します。ご意見のある方は挙手をお願いします!」
セリカ「はい!はい!」
セリカが、元気に挙手をする。
アヤネ「はい、1年の黒見さん。お願いします」
セリカ「…あのさ、アヤネちゃん。まず名字呼ぶの、やめない?なんかぎこちないんだけど。」
アヤネ「セ、セリカちゃん…でも、折角の会議だし…。」
ホシノ「まあまあ、いいじゃーん。おカタ~イ感じで。今日は珍しく、先生もいるんだし。」
シロコ「珍しいというか、初めてだよね。」
ノノミ「でも確かに、名字呼びとかも、委員会っぽくて悪くないですね~☆」
セリカ「馴染むの早いわね先輩たち…。」
その後、セリカがわざとらしく咳払いをして、流れを変える。
セリカ「対策委員会の会計担当としては、現在の我が校の財政状況は破産寸前としか言えないわ!このままじゃ廃校は確定するのは、分かるわよね!」
ホシノ「うんうん、そりゃあもちろん。」
セリカ「毎月の返済額は利息だけで788万円!がんばって稼いでるけど、正直、この利息の返済すら間に合うか怪しいわ。
これまで通り、指名手配犯を捕まえたり、苦情を解決したり、ボランティアするだけじゃ限界があるわ。このままじゃ埒が明かない……何か、ドッカンと一発デカく稼がないと!」
アヤネ「何か、心当たりがあるのですか?」
セリカ「これよこれ!街で配ってたチラシ!」
セリカが大きく手を上げて、チラシを全員に見せる。そこには『ゲルマニウム麦飯石ブレスレットであなたも一攫千金!』と大きく書かれていた。
どう見ても詐欺だった。しかも悪質な。
悟飯「…セリカ。多分、詐欺じゃないかな、それ。」
セリカ「…え?」
そう。これはマルチ商法という、複数人を巻き込み、最終的に自分が大損するという、立派な詐欺である。セリカは、見事なまでに騙され、商品を買わされていたのだ。
セリカ「嘘…。これ詐欺なの…?」
悟飯「あはは…。まあ、そんな日もあるさ。次からは、もっとちゃんと確認しようね。」
シロコ「…ん。真面目そうに見えて、案外セリカはちょろい。」
セリカ「ちょっと!どういう意味よそれ!」
ノノミ「ふふ。騙されやすいセリカちゃんも、可愛いです~☆」
セリカ「あー!もう!バカにしないでよー!」
ホシノ「まったく、セリカちゃんは世間知らずだねー。気を付けないと、悪い大人に騙されて、人生取り返しのつかないことになっちゃうかもよー?」
セリカ「うぅ…。わざわざブレスレットを、お昼抜いてまで買ったのに…。」
ノノミ「気にしなくていいですよ、セリカちゃん。お昼なら、私が奢りますから。」
アヤネ「えっと…それでは黒見さんの意見はこの辺りで…。他にご意見のある方は?」
ホシノ「はい!はい!」
アヤネ「えっと、はい。3年の小鳥遊委員長。ちょっと嫌な予感がしますが」
ホシノ「うむうむ、えっへん!」
ホシノ「我が校の一番の問題は、全校生徒がここにいる5人だけってことなんだよ。生徒の数イコール学校の力。
トリニティやゲヘナみたいな超マンモス校ぐらい、桁違いな生徒数なら、毎月のお金だけでも結構な金額になるはずー。」
悟飯(トリニティ…確か、スズミやハスミがいる高校だったか。)
アヤネ「…え?そうなんですか?ホシノ先輩。」
ホシノ「そうなんだよー。だからまずは生徒数から増やさないとねー。まずはそこからかなー。そうすれば、連邦生徒会に議員を捻出する余裕も出来て、連邦生徒会での発言権も手に入るし。」
アヤネ「鋭いご指摘ですけど、具体的にどうやって…?」
ホシノ「簡単だよー、他校のスクールバスを拉致ればオッケー!」
アヤネ「は、はい!?」
ホシノ「登校中のスクールバスをジャックして、うちの学校への転入書類にハンコを押さないとバスから降りられないようにするのー。うへー、これで生徒数がグンと増えること間違いなーし!」
シロコ「ん。ありかも。今は、これがあるし。」
ポワン
シロコは、手のひらサイズの気弾を作り出した。
シロコ「気弾をぶつけるぞって脅せば、アビドスに転入してくれるかも。ゲヘナでもトリニティでも、気を操れるのは少数なはずだし。」
アヤネ「いや、ちょっと待ってください!そんな方法で転校とかありなんですか!?それに、他校の風紀委員が黙ってませんよ!?」
ホシノ「ま、だよねー。他校にも、気を使える生徒が紛れてるかもしれないし。」
シロコ「だったら、私にいい考えがある。」
アヤネ「…はい、2年の砂狼さん。」
シロコ「銀行を襲うの。」
アヤネ「はいっ!?」
シロコ「確実かつ簡単で短時間で行える。ターゲットは選定済み。市街地の第一中央銀行。金庫の位置、警備員の導線、現金輸送車の走行ルートは事前に把握済み」
シロコ「それに、先生から空の飛び方を教えてもらって、それを習得すれば、逃走用の車も必要なくなる。我ながら完璧な作戦。」
シロコは堂々と胸を張り、ドヤ顔をしている。
悟飯「…もしかして、割と前から準備してたのかい?」
シロコ「ん。もちろん。皆の分も合わせて、先生の分の覆面も三日前には完成させた。」
シロコは五人分の覆面を机に広げる。なんなら、自分は2と書かれた青の覆面を既に装着していた。獣耳を出す穴までちゃんと開けた専用装備だった。
ホシノ「これ、シロコちゃんの手作り?手間かかってるね~。」
シンプルにホシノは感心している。
ノノミ「お~。見てください!レスラーみたいです!」
既にノノミは覆面を被っている。
セリカ「…凄いわね。耳を出す穴は空いてないけど、私に合わせてサイズが調整されてるわ。」
セリカも、これが手作りであることに驚いている。
アヤネ「…シロコ先輩って、案外手先が器用ですよね…。」
アヤネも、純粋に感心している。動機を除けばだが。
悟飯「俺の覆面まで作ってるだなんて…なんか、色々と抜かりないね、シロコ。」
シロコは、腰に手を当て、ドヤ顔をしている。
セリカ「…って、関心してる場合じゃないわよ!銀行強盗なんて、却下よ却下!」
アヤネ「そ、そうです!犯罪はいけません!」
シロコ「……。」
自分の案が却下され、シロコはふくれっ面をしている。
アヤネ「そんな顔しても、ダメなものはダメです!」
提案こそ多く出ているが、まともな案が一つも出ていない。アヤネは、少しため息をついた。
ノノミ「はーい!次は私から!」
アヤネ「はい…2年の十六夜ノノミさん。犯罪と詐欺は抜きで、ご意見をお願いします…。」
ノノミ「今度の案はクリーンで確実ですよー!ずばり!アイドルです!スクールアイドル!」
アヤネ「ア、アイドル!?」
ノノミ「そうです!学校を復興させるには、アイドルとして私たちがデビューするんです!そうすれば、きっと…」
ホシノ「却下。」
食い気味にホシノが案を却下した。
ノノミ「あら~。食い気味で却下されちゃいました。」
セリカ「なんで?ホシノ先輩なら、特定のマニアに大受けしそうなのに。」
ホシノ「こんな貧相な体が好きとか言っちゃう輩なんて、人間としてダメっしょー。ないわー、ないない。」
ノノミ「せっかく決めポーズも考えてきたのに…。」
ジャーン!
ノノミ「水着少女団のクリスティーナで~す♧」
ノノミ、渾身のポーズとセリフ。恥ずかしさなど微塵もない。
セリカ「ダサい…。」
悟飯「…うんうん。結構いいポーズじゃないかな。」
セリカ「…え?先生、マジで言ってんの?」
ノノミ「お~。このポーズの良さ、先生は分かってくれますか。もしかして、先生もアイドル好きなんですか?」
悟飯「アイドルには、詳しくないけど…。ヒーローの決めポーズとかは、考えたことがあるんだ。」
ビシッ!
悟飯「正義の味方!グレートサイヤマン!」
ホシノ・シロコ・アヤネ・セリカ「「「「……………。」」」」
ダサい。言葉にはしないが、全員が思っていた。
ノノミ「お~!カッコいいポーズですね!先生!ヒーローって感じがします~!」
しかし、ノノミは悟飯のポーズを見て、パチパチと拍手をしている。
セリカ「…何というか、似た者同士よね、ノノミ先輩と先生って。」
ホシノ「ま、仲がいいのはいいことだよね。」
ノノミ「先生、後で一緒に、それぞれ五人ずつのポーズを考えませんか?絶対に良いのが出来ると思うんです。」
悟飯「いいよ。折角だし、一緒に考えようか。」
ノノミも悟飯も、楽しそうにポーズを考え始めた。
ホシノ「うへ~。先生もノノミちゃんもノリノリみたいだし、これはアイドルの案で確定かな~。」
シロコ「ん。なら、ライブ会場を探さなきゃ。後は、マイクとか音響機器の強だ…準備をしないと。」
セリカ「…えー。マジでやるの?」
アヤネが、プルプルと震えだした。アビドスの生徒たちは、「あっ」という雰囲気になって、何かを察した。
アヤネ「……い……。」
まだ気を上手く扱えないはずなのに、アヤネの気が膨れ上がったように見えた。
アヤネ「いいわけないじゃないですかぁ!!」
ガッシャーン!
驚くほどの、綺麗なちゃぶ台返し。
アヤネ「…銀行強盗やら!マルチ商法やら…!みんな、ふざけてばっかり!もう少し真面目にやってください!」
この後、めちゃくちゃ説教された。
―――数十分後、紫関ラーメン店にて。
ホシノ「いやー、悪かったってば。ラーメン奢ってあげるからさ、怒らないで、ねっ?」
アヤネ「怒ってません…。」
悟飯「俺も、決めポーズについて話せる人が少なかったから、つい盛り上がっちゃって…。」
ノノミ「お詫びに、後で、気の使い方、ちゃんと教えてあげますから。」
セリカ「…何でもいいんだけどさ。何でまた紫関に来たの。」
ホシノ「んー?まあ、何というか、安心するんだよねー。あと近いし。」
そんな風に、何気ない会話が続く中…
ガララッ
店の扉が開き、一人の少女が入ってきた。帽子を被り、紫髪のその少女は、自信なさげに辺りを見渡している。
ハルカ「あ、あのぅ…。」
セリカ「いらっしゃいませ!何名様ですか?」
ハルカ「…こ、ここで一番安いメニューっておいくらですか?」
セリカ「…一番安いのはー…。580円の柴関ラーメンですね!看板メニューなんで、美味しいですよ!」
ハルカ「…!あ、ありがとうございます!4名です!少し、お、お待ちを!」
ガララッ
暫くして、先程の少女に続き、他の三人が入ってきた。
ムツキ「えへへっ、やっと見つかったー!600円以下のメニュー!」
一人は、危険物が入って良そうなバッグを肩にかけている少女。
アル「ふふふ、ほら見なさい。何事にも解決策はあるのよ。全部想定内だわ。」
もう一人は、コートを羽織っている、深紅の髪の生徒。余裕そうな笑みを浮かべている。
ハルカ「そ、そうでしたか。流石社長…。なんでもご存知ですね…。」
先程の紫髪の少女は、アルに尊敬の目を向けている。
カヨコ「はぁ…。」
白と黒の、明暗分かれた髪をした少女は、少し呆れたようなため息をついた。
セリカ「4名様ですか?席にご案内しますね。」
ムツキ「んーん。どうせ1杯しか頼まないから大丈夫。」
セリカ「1杯だけ…?でも…どうせならごゆっくり、お席にどうぞ。今は暇な時間帯なので、空いている席も多いですし。」
ムツキ「おー、親切な店員さんだね!ありがと。それじゃ、お言葉に甘えて。…あ、ついでにもうひとつ。箸は4膳でよろしくねー。優しいバイトちゃん。」
セリカ「えっ?1杯なのに4膳?…まさか、1杯を4人で食べるつもり?」
すると、ハルカがいきなり震えながら、次々に言葉を発した。
ハルカ「ご、ごめんなさい!お金が無くてすいません!お金が無ければ生きる価値無し、虫けらと同じ…いや、虫けら未満の存在で…。」
カヨコ「ハルカ。ちょっと声大きいよ。他の人に迷惑だから。」
すると、セリカは、そっとハルカの手を取った。
セリカ「謝らなくてもいいわ!お金が無いのは、決して罪なんかじゃない!」
力強い声でそう言った。
ハルカ「えっ…!?その、はいっ…!?」
セリカ「お金は天下のまわりものってね。そもそもまだ学生なんだし!それでも小銭集めてこうして来てくれたんでしょ?そういうのが大事なんだよ!」
セリカは、手を離すと、さっと踵を返す。
セリカ「もう少し待っててね。すぐに持ってくるから。」
そう言うと、厨房に入っていった。
カヨコ「…何か、妙な勘違いをされてるみたいだけど?」
ムツキ「まあ、うちら普段から貧乏って訳じゃないんだけどねー。強いて言うなら、アルちゃんが金遣い荒いせいだし。」
アル「アルちゃんじゃなくて社長でしょう?ムツキ室長。肩書きはちゃんと付けてよ」
ムツキ「だってもう仕事終わりじゃん?ところでー、社長なのに社員にラーメンを1杯分しか奢れないのってどうなの?」
アル「………。」
図星を突かれたらしく、黙りこくってしまった。
カヨコ「今日の襲撃任務に投入する人員を雇うために、ほぼ全財産使っちゃったし…。」
アル「…さ、最近は『気』を使える奴らも大勢いるのよ。そういう奴らに対抗するために、数で攻めるのは有効じゃない。それに、今こうして実際にラーメンにはありつけているわけでしょ?それぐらいは、想定内よ。」
理論は通っているのだが、言っている本人が、少し肩を震わせているので、説得力が薄れていた。
カヨコ「…だとしても、四杯分のお金位は残せたんじゃない?」
更に図星を突かれて、またアルの言葉が止まった。
ムツキ「ま、どうせ考えてなかったんでしょ?今回、夕飯代が残ってたのも、偶々でしょ。」
アル「…フフフ。」
意味ありげに、アルは笑っている。強がりかもしれないが。
カヨコ「ま、気を扱える可能性を考慮するのは正解かもね。実際、こっち(ゲヘナ)の風紀委員会にも、気を扱えるようになった奴らがいるし。例によって、アビドスも使える可能性はあるかも。」
カヨコ「…だからと言って、警戒しすぎな気もするけど。」
ムツキ「多分アルちゃんもわかってないと思うよ?だからビビってたくさん雇ったんだろうし。」
アル「だ、誰がビビってるですって?全部私の想定内よ!それに、そういう時の為の奥の手があるんじゃないの!…失敗は許されない。あらゆるリソースを総動員して仕事に臨む。それが便利屋68のモットーよ!」
そんな風に、会話が進んでいって、暫くした頃。
セリカ「…はい!お待たせしました!お熱いのでお気をつけて!」
ダンッ!
四人のテーブルの上に置かれたのは、チャーシューや煮卵、メンマと言った具材がたーっぷりと乗っかり、もちろん、麺もこれでもかと盛られた、物凄い量のラーメンだった。
ムツキ「わあっ!?びっくりした!ラーメン超特盛じゃん!」
カヨコ「…ざっと見ても、10人前くらいはありそうだね…。」
ハルカ「ちゅ、注文、間違えましたかね?こんな量、食べられるだけのお金なんて…。」
セリカ「いえいえ。間違ってませんよ。580円の紫関ラーメンの並!ですよね、大将!」
柴大将「ああ。手元が狂って、ちょっと量が増えちまったんだ。気にしないでくれ。」
セリカ「…というわけで、ごゆっくりどうぞ!」
そう言って、二人とも店の奥の厨房に入っていった。
ゴクリ。ハルカとムツキとカヨコとアル、それぞれ四人の喉が鳴った。
ハルカ「…で、では…。」
ムツキ「いっただきまーす!」
アル「…ふふ。ご厚意は、素直に受け取らないと、よね。」
カヨコ「…そうだね。」
ズズーッ
四人は、一気に麵を啜る。
便利屋68一同「「「「!?」」」」
ハルカ「お、美味しい…!」
ムツキ「中々イケるじゃん?こんなお店があるなんて、知らなかったけど。」
ノノミ「そうでしょうそうでしょう?美味しいですよね。」
隣の席から、ノノミは四人に話しかけた。
ノノミ「ここのラーメンは、正に絶品で、遠くからわざわざこのラーメン目当てで来る人もいるくらいなんですよ。」
アル「十分に理解できるわ。色んな物を色んな場所で食べてきたつもりだったけど、このレベルのラーメンは中々お目にかかれないもの。」
アヤネ「私たち、ここの常連でして…他の学校の人にも、ここのラーメンを食べてもらえるなんて、なんだか嬉しいです…。えへへ。」
シロコ「…その制服、ゲヘナ?随分、遠くから来たんだね。」
ノノミ「私、こういう光景を見たことがあります。確か、えっと…一杯の…何でしたっけ?」
ホシノ「…一杯のかけ蕎麦、じゃなかったかな。」
そんな風に、ワイワイと盛り上がりだす中、カヨコは、アビドスの生徒たちの方を見ていた。
カヨコ(…連中の制服…。)
ムツキ(あれ、ホントだ。)
アル「うふふっ!これはいいわ!こんな所で、気の合う人に出会えるだなんて。こういう一期一会の出会いこそ、人生の醍醐味ってやつよね!」
しかし、アルだけは、気付いていないようだった。
ムツキ(…面白いし、暫くこのままで良いかな♪)
そうして、会話もそこそこに、麺が伸びる前に、便利屋68の四人と、アビドスの生徒たちと悟飯は、ラーメンを食べ終わり、店から出た。
セリカ「それじゃ、気を付けてね!」
ノノミ「お仕事が上手くいくよう、応援してますからね!」
アル「あははっ!了解!私も、貴方たちの学校の復興、応援してるわ!それじゃ、またどこかで!」
そう言って、良い笑顔をしながら、アル達は店を後にした。
悟飯「……。」
シロコ「…先生?どうかしたの?」
悟飯「さっきの子達…特に、あの赤っぽい髪色の子の気…妙な感じがする。」
シロコ「…どういうこと?」
悟飯「日常的に気を使い慣れているような、落ち着いた気だったんだ。…あの子達、只者じゃないのかもしれない。」
一方、店を後にした便利屋68のメンバー、特にアルは、上機嫌だった。
アル「ふう…いい人だったわね…それよりもさっきの子達、どこかで見たことがあるような気が…。」
カヨコ「………。」
ムツキ「アルちゃん。もしかして、気付いてない感じ?」
アル「え?何が?」
カヨコ「…あの子達の制服。見て分からなかった?」
ムツキ「アビドスだよ、あいつら。」
アル「………。」
一瞬フリーズした後、アルの表情が、すぐに崩れた。
アル「なななな、なっ、何ですってーーーーーー!!!???」
アルは、思わず驚愕の表情を浮かべる。
ムツキ「あっはは!その表情、ウケる―。」
カヨコ「…本当に気付いてなかったんだね、社長。」
ハルカ「…アビドス…ってことは、ターゲット…ってことですよね?だったら、すぐに戻って、アイツらを、汚い花火にして…。」
ムツキ「まあまあ、落ち着きなって、ハルカちゃん。どうせ襲撃するのは変わらないんだから、今言っても意味ないって。」
アル「…親切にしてもらったのに…これじゃ、恩を仇で返すみたいじゃない…。」
カヨコ「…もうバイトの子達も雇ってるんだし、取り消せないよ、社長。」
ムツキ「ま、『情け無用』『お金さえもらえればなんでもやります』がうちの、便利屋68の、アウトローのモットーでしょ?今更何を悩んでるの?」
アル「うぅぅ…。」
散々悩んだアルだったが、一度大きく息を吸って、決意に満ちた表情をする。
アル「…そうね。便利屋68の、社長としての名誉を…何より、便利屋68の名前を、汚すわけにはいかないわ!」
アル「行くわよ!傭兵バイトを集めて、いざ、アビドスへ!」
…アビドスに、大きな危機が迫りくる…かも、しれない。
気付いたらブルアカももう5.5周年…
時の流れの速さを感じますね、本当に。
…それはさておき、次回は遂に便利屋68との直接対決。
アビドスの生徒たちは、便利屋68を退けられるのか…?
そして、悟飯が感じた、アルの実力とは…?
次回をお楽しみに。