機動戦士ガンダム ブライト・ノア「このおにぎりを作ったのは誰だあっ!」 美味しんぼ 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
U.C.0092年11月。ロンデニオン港、全域停電。
その夜、ロンデニオン港は大規模な電力トラブルに見舞われた。配給所の調理設備も、保温設備も、ほぼ全て使用不能になった。
「こんな時こそ、究極の出番です!!」
エル・ビアンノが真っ先に動いた。彼女は港湾中の非常用ガスコンロをかき集め、リィナ・アーシタは在庫のある食材を瞬時にリスト化した。
「電力に頼らない加熱手段は、非常用コンロが12台。同時稼働できる鍋の数から逆算すると、1回で作れるスープは最大200人分です」
「200人分じゃ、今夜の待機列には全然足りません」
ファ・ユイリィが即座に判断を下した。
「なら、薄めのスープを大量に、複数回転で出しましょう。満腹より先に、まず温かいものをお腹に入れることが大事」
ブライト・ノアは、補給統制官としての顔で、住民への呼びかけを自ら買って出た。
「至高の優先順位は、今夜は完成度より速度だ。並んでくれ、順番に温かいものを配る!!」
厨房は瞬く間に、戦場のような活気に包まれた。エルが野菜を刻み、リィナが分量を管理し、ファが味の最終調整を行う。私は鍋の合間を縫って、この光景を手帳に書き留め続けた。
「究極のスープって言うくらいなら、味見は私の役目ですよね!?」
エルが鍋に顔を近づけるたび、リィナの声が飛んだ。
「味見は1回3秒まで。あなたが味見と称して食べた分だけ、誰かの椀が薄くなります」
「うっ……正確すぎて反論できない……」
エルはしぶしぶ引き下がりながらも、鍋の湯気だけで満足そうな顔をしていた。ブライトはそんな2人のやり取りを横目に、黙々と薪代わりの廃材を火にくべ続けていた。
「究極のメニュー、その本当の答えは、豪華さでも独創性でもなく、この状況でどれだけ多くの人に温かいものを届けられるか、なのかもしれない」
そう書いた矢先、名前を取り戻した少年が、自分から厨房の手伝いを申し出た。
「僕にも、何か手伝わせて」
「じゃあ、この椀を配ってきて。1人1杯、正確にね」
リィナが少年に椀を渡すと、少年は真剣な顔で列の先頭から配り始めた。私はその後ろ姿を見ながら、この子がこの港で初めて、誰かのために何かをする瞬間を目撃していることに気づいた。
夜が明ける頃、電力が復旧した。厨房の全員が、疲労と共に、静かな達成感に包まれていた。
「究極のスープ、完成」
エルがそう呟くと、ブライトが珍しく素直に頷いた。
「至高でも、悪くない出来だった。認めよう」
私はその日の記事の見出しに、こう書いた。「停電の夜、至高と究極が初めて同じ鍋を囲んだ夜」。
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