機動戦士ガンダム ブライト・ノア「このおにぎりを作ったのは誰だあっ!」 美味しんぼ 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
U.C.0092年12月。ロンデニオン港、屋台通り特設会場。
「食いしん坊選手権、宇宙編、開催します!!」
エル・ビアンノが高らかに宣言したその企画は、当初、東西新聞文化部内でも「悪ふざけが過ぎる」と反対の声が多かった。配給難民が多いこの港で、大食い大会を開くなど不謹慎だ、というのがリィナ・アーシタの当初の見解だった。
「エル、これは看過できません。食料が足りない土地で、大食いを娯楽にするなど、あまりに配慮を欠いています」
「違うの、リィナちゃん。これは大食い大会じゃなくて、余剰食材の消費イベント。賞味期限が近い配給物資を、楽しく、無駄なく食べきるための企画なの」
リィナは伝票を確認し、実際に廃棄予定だった規格外野菜や、賞味期限間近の乾燥食品の量を見て、渋々ながら納得した。
「――なるほど。廃棄コストの削減という意味では、合理的です。ただし、参加者の健康管理は徹底してください」
ブライト・ノアとファ・ユイリィも審査員として招かれ、企画は思わぬ盛り上がりを見せた。参加者は住民から募られ、名前を取り戻した少年も、体調の許す範囲でひと皿だけ参加した。
審査基準は、エルが独自に考案した「幸福度採点方式」だった。量ではなく、食べた後の表情の変化を、ファとブライトが10点満点で採点する。
「この人、3口目で急に肩の力が抜けました。9点」
「あちらの参加者、完食した瞬間に涙ぐんでいます。10点、満点です」
ブライトの真剣な採点ぶりに、会場から笑いと拍手が起こった。至高の鬼が、住民の「幸福度」を真剣に採点して汗をかいている姿は、誰の目にも新鮮に映った。
大会が進む中、私はある光景に目を留めた。参加者の1人が、普段は誰にも見せない笑顔で、久しぶりに満腹になるまで食べる姿だった。その様子を見ていたエルが、ぽつりと呟いた。
「みんな、ただ、お腹いっぱい食べて笑いたかっただけなんだよね」
その言葉に、リィナも小さく頷いた。
「合理性だけでは、測れないものがあると、認めます」
大会の終わりに、ブライトが優勝者へ、力強くこう告げた。
「至高とは、豪華な一皿だけを指す言葉ではない。今日、この場所で、誰かが心から満たされた、その事実こそが、至高だ」
私はこの日の記事に、こう書いた。「食いしん坊選手権、宇宙編。廃棄予定だった食材が、誰かの久しぶりの満腹に変わった日」。
反響は大きく、次回の開催を求める声が、コロニー中から寄せられた。エルは満足げに、こう締めくくった。
「食文化研究、じゃなくて食文化部の仕事は、結局、みんなの笑顔を集めることなんだと思う」
その言葉に、私たちは誰も、異論を挟まなかった。
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