機動戦士ガンダム ブライト・ノア「このおにぎりを作ったのは誰だあっ!」 美味しんぼ 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
U.C.0092年12月。ロンデニオン港、特設会場。
ついに、その日が来た。至高のメニューと究極のメニュー、公開対決の当日。会場には、港湾中から集まった住民に加え、地球からの中継クルー、東西グラフのカメラマン、そして帝都新聞側の覆面評論家「舌聖」までもが姿を見せていた。
審査員席には、両紙の有識者と並んで、住民代表として、屋台通りの親父さんと、配給所に並ぶ主婦たちが座った。ブライト・ノアが提案した「食べる側の声を最終判断にする」という条件が、ここに実現していた。
「至高のメニュー、発表する」
ブライトが運んできたのは、限られた資材の中で作られた、質素だが完成度の極めて高い1皿だった。古米と麦を絶妙な配合で炊き上げ、配給塩と乾燥野菜だけで仕上げた雑炊。華美な装飾は一切ない。だが、湯気の立ち方1つにまで、計算し尽くされた気配があった。
「――これが至高だ。誰にでも再現できて、誰の腹をも満たす。贅沢な食材を使わずとも、至高は成立する」
対する東西新聞文化部が出した「究極のメニュー」は、エル、リィナ、ファ、そして私、キッカ・コバヤシの4人が、この港での取材を通じて集めた、住民たちのレシピを1つに融合させた合作だった。塩の横流し事件で救われた家族の味、停電の夜に生まれた究極のスープの技法、少年が初めて「うまい」と言ったトンカツの記憶。それら全てを重ねた、1杯のスープ料理。
「これが、究極です。私たち1人だけの舌ではなく、この港に生きる全員の記憶を重ねた1杯です」
審査員たちが、両方の皿を、静かに口に運んだ。会場が固唾を飲んで見守る。
覆面評論家「舌聖」が、最初に口を開いた。
「――甲乙つけがたい。これは、正直、審査泣かせやで」
住民代表の主婦の1人が、涙をこらえながら言った。
「究極のスープ、うちの子のレシピが入ってる。だから、私はこっちに票を入れさせてもらいます」
親父さんは、至高の雑炊を食べ終え、無言で頷いた。
「至高の雑炊、うまい。文句なしだ」
票は割れた。集計の結果、両者は同票となり、審査は「引き分け」に終わった。だがその瞬間、会場からは不満の声どころか、大きな拍手が沸き起こった。
ブライトが、審査結果を受けて、静かに私に歩み寄った。
「キッカ・コバヤシ。今日という日、私は初めて、至高と究極が、対立するものではないと気づいた」
私はその言葉を、震える手で手帳に書き留めた。至高vs究極、公開審査の結末は、勝敗ではなく、和解の始まりだった。
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