機動戦士ガンダム ブライト・ノア「このおにぎりを作ったのは誰だあっ!」 美味しんぼ 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
U.C.0093年1月。ロンデニオン港、美食倶楽部。
本社との一件から数日後、ブライト・ノアが珍しく、私を一人、美食倶楽部の奥の部屋に呼び出した。
「キッカ・コバヤシ。お前になら、話してもいいと思った」
彼が語り始めたのは、一年戦争当時、まだ19歳で艦の指揮を任されていた頃の記憶だった。
「あの頃、私は毎晩、乗員の食事の質を落とすかどうかの判断を迫られていた。燃料か、食料か、どちらを優先するかという、地獄のような選択だ」
「それで、どうしたんですか」
「もっと乗員の疲労や食事に気を配れたのではないか。あの時の判断は本当に最善だったのか。そう思わなかった日はない」
ブライトの声は、いつもの怒声とは違い、静かで、どこか震えていた。
「叱るたび、あの頃の自分を思い出す。判断を誤った自分自身を、叩きたいだけなのではないかと思うことさえある」
「戦後、私は誓った。二度と、飯を軽んじる指揮官にはならないと。至高という言葉は、その誓いそのものだ」
私はその告白を、記事にするつもりはなかった。ただ、目の前にいる男の、これまで誰にも見せなかった弱さを、静かに受け止めた。
「なぜ、私に話してくれたんですか」
「いや。お前の記事を読んでいて、思ったんだ。お前は、飯の向こうにある人の物語を、ちゃんと見ている記者だと。だから、話す気になった」
その言葉に、私は目頭が熱くなるのを感じた。
数日後、ブライトは美食倶楽部の全メンバーに向けて、自らこの過去を語った。誰も、彼を責めなかった。むしろ、多くの者が、自分自身の後悔と重ね合わせ、静かに涙を流した。
ファ・ユイリィが、その場でブライトにこう言った。
「あなたの至高は、償いから始まったのかもしれない。でも、今は違う。この港のみんなを、ちゃんと支えている、確かな至高よ」
ブライトは、初めて、心の底から安堵したような表情を見せた。
私はこの一件を記事にはしなかった。代わりに、その日の黒板に、小さくこう書いた。
「至高とは、過去への償いから始まり、未来への約束へと育つものである」
エル・ビアンノとリィナ・アーシタは、その一文を読んで、何も言わずに、ただ静かに頷いた。
ふと見やれば、エルが「次は究極のハンバーガーを取材しなきゃ!」と声を張り上げ、リィナが冷静に「予算オーバーです」と即答している。その横でブライト艦長が「いや、次はミンチから見直すべきだ」と腕を組み、ファが呆れたように小さく息を吐いていた。
賑やかな声を聞きながら、私は手帳の新しいページを開く。
題名を一字一字書き込み、私はそっと微笑んだ。この港の物語は、まだまだ終わらない。
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