機動戦士ガンダム ブライト・ノア「このおにぎりを作ったのは誰だあっ!」 美味しんぼ   作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった

22 / 23
究極のメニュー、最終候補

U.C.0093年2月。ロンデニオン港、東西新聞支局。

 

創刊1000周年特別企画も、いよいよ最終回に向けた大詰めを迎えていた。「究極のメニュー、サイド1篇」の最終候補メニューを決める会議が、支局に招集された。

 

「これまでの取材で出会った、全てのレシピの中から、最終候補を絞り込みます」

 

リィナ・アーシタが、これまでの記事を1つ1つ並べ直しながら、候補を整理していく。塩むすび、配給塩事件の再発防止レシピ、停電の夜の究極のスープ、少年が初めて作ったトンカツ。どれも捨てがたい、この連載の軌跡そのものだった。

 

「私は、究極のスープを推します。あの夜、みんなで力を合わせて作ったあの味こそ、究極の本質だと思う」

 

エル・ビアンノの意見に、ファ・ユイリィが静かに頷いた。

 

「私も同感。あのスープには、この港のみんなの記憶が、1番濃く詰まっている」

 

だが、リィナは別の視点を示した。

 

「感情的には、私も究極のスープに賛成です。ですが、読者への再現性という観点では、もっとシンプルなレシピの方が、実用的です」

 

「私は、少年くんのトンカツも捨てがたいです。技術的には未熟ですが、あの一皿には、この連載の全てが詰まっている気がします」

 

私がそう付け加えると、エルも大きく頷いた。

 

「わかる!! あのトンカツ、味というより、物語で食べさせるタイプの一皿だよね」

 

「感情で評価軸をぶらさないでください。ですが、その視点自体は、否定しません」

 

リィナも、渋々ながら賛同を示した。議論は白熱した。私は、その全てを手帳に書き留めながら、ふと、ある考えに至った。

 

「――1つに絞る必要、ないんじゃないでしょうか」

 

「どういうこと?」

 

「究極のメニューは、一つの完成された料理じゃなくて、この港での取材そのものが、究極のメニューなんです。だから、最終回は、これまでの全てのレシピを、一つの物語として並べる形にしたい」

 

支局に、しばしの沈黙が流れた。やがてリィナが、静かに頷いた。

 

「合理的です。そして、何より、正直な結論だと思います」

 

エルも、ファも、異論はなかった。ブライト・ノアにも、この方針を報告すると、彼は珍しく、穏やかに笑った。

 

「至高も、実はそうだ。1皿に全てを込めることなど、本当はできない。それでも、追い続けることに、意味がある」

 

私はその言葉を、最終回の冒頭に、そのまま使わせてもらうことに決めた。

 

原稿の構成案が固まり、支局の空気が心地よい達成感と一抹の寂しさで包まれる。

 

だが、しんみりした空気は長続きしなかった。

 

「よし! 最終回の方針が決まったなら、今夜は前夜祭として全メニューの試作&実食会よ!」

 

エルが拳を突き上げると、リィナがすかさず「予算枠の超過については文化部長へ直談判してください」と伝票を突きつけ、ファが「もう、みんなで分担して作れば安く済むわよ」と笑いながら袖をまくる。

 

「至高の締めくくりに相応しい味わいになっているか、私も厳しく吟味させてもらうぞ」

 

腕を組むブライト艦長の眼光は鋭いが、その口元はどこか穏やかだった。

 

画面の向こうにいる読者へ届ける、たった一つの答え。

 

東西新聞創刊1000周年記念連載「究極のメニュー、サイド1篇」――その最後の一行を書き上げるための準備は、すべて整った。




お気に入り登録や評価で応援していただけると大変励みになります!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。