機動戦士ガンダム ブライト・ノア「このおにぎりを作ったのは誰だあっ!」 美味しんぼ 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
U.C.0093年2月。ロンデニオン港、東西新聞支局。
創刊1000周年特別企画も、いよいよ最終回に向けた大詰めを迎えていた。「究極のメニュー、サイド1篇」の最終候補メニューを決める会議が、支局に招集された。
「これまでの取材で出会った、全てのレシピの中から、最終候補を絞り込みます」
リィナ・アーシタが、これまでの記事を1つ1つ並べ直しながら、候補を整理していく。塩むすび、配給塩事件の再発防止レシピ、停電の夜の究極のスープ、少年が初めて作ったトンカツ。どれも捨てがたい、この連載の軌跡そのものだった。
「私は、究極のスープを推します。あの夜、みんなで力を合わせて作ったあの味こそ、究極の本質だと思う」
エル・ビアンノの意見に、ファ・ユイリィが静かに頷いた。
「私も同感。あのスープには、この港のみんなの記憶が、1番濃く詰まっている」
だが、リィナは別の視点を示した。
「感情的には、私も究極のスープに賛成です。ですが、読者への再現性という観点では、もっとシンプルなレシピの方が、実用的です」
「私は、少年くんのトンカツも捨てがたいです。技術的には未熟ですが、あの一皿には、この連載の全てが詰まっている気がします」
私がそう付け加えると、エルも大きく頷いた。
「わかる!! あのトンカツ、味というより、物語で食べさせるタイプの一皿だよね」
「感情で評価軸をぶらさないでください。ですが、その視点自体は、否定しません」
リィナも、渋々ながら賛同を示した。議論は白熱した。私は、その全てを手帳に書き留めながら、ふと、ある考えに至った。
「――1つに絞る必要、ないんじゃないでしょうか」
「どういうこと?」
「究極のメニューは、一つの完成された料理じゃなくて、この港での取材そのものが、究極のメニューなんです。だから、最終回は、これまでの全てのレシピを、一つの物語として並べる形にしたい」
支局に、しばしの沈黙が流れた。やがてリィナが、静かに頷いた。
「合理的です。そして、何より、正直な結論だと思います」
エルも、ファも、異論はなかった。ブライト・ノアにも、この方針を報告すると、彼は珍しく、穏やかに笑った。
「至高も、実はそうだ。1皿に全てを込めることなど、本当はできない。それでも、追い続けることに、意味がある」
私はその言葉を、最終回の冒頭に、そのまま使わせてもらうことに決めた。
原稿の構成案が固まり、支局の空気が心地よい達成感と一抹の寂しさで包まれる。
だが、しんみりした空気は長続きしなかった。
「よし! 最終回の方針が決まったなら、今夜は前夜祭として全メニューの試作&実食会よ!」
エルが拳を突き上げると、リィナがすかさず「予算枠の超過については文化部長へ直談判してください」と伝票を突きつけ、ファが「もう、みんなで分担して作れば安く済むわよ」と笑いながら袖をまくる。
「至高の締めくくりに相応しい味わいになっているか、私も厳しく吟味させてもらうぞ」
腕を組むブライト艦長の眼光は鋭いが、その口元はどこか穏やかだった。
画面の向こうにいる読者へ届ける、たった一つの答え。
東西新聞創刊1000周年記念連載「究極のメニュー、サイド1篇」――その最後の一行を書き上げるための準備は、すべて整った。
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