機動戦士ガンダム 美味しんぼ ロンド・ベルの究極、ネオ・ジオンの至高 逆襲のシャア前夜、ロンド・ベル寄港中の補給食堂 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
リィナに個人通信が届いた!
送信者の名を見た瞬間、彼女の表情が氷のように固まった!
「……兄さんからです!」
木星圏へ向かう航路はあまりにも途方もなく長い! これはリアルタイムの返信ではなく、ジュドー・アーシタが出発前に托した遅延配送の記録だったのだ!
リィナは再生ボタンを押さず、端末を力強く伏せた!
「……怖いの!?」
エル・ビアンノが鋭く問う!
「怖くありません! いえ……怖いです!」
リィナは即座に言い直した!
「兄さんは、いつも私のことを過剰に心配します! 心配されればされるほど、自分がまだ守られるためだけの無力な子供だと思われている気がして……猛烈に腹が立つんです!」
「腹が立つのに、通信を消去しないんだ」
「腹が立つことと、それが自分にとって大切であることは……見事に両立します!」
その日、ファ・ユイリィは乾燥豆のスープを2種類生み出していた!
片方は豆を全て滑らかに潰し尽くしたもの! もう片方は、敢えて半分だけ粒の食感を残した至高の品!
「材料は同一ですか!?」
「ええ! 材料と仕込みのベースは完全に同一よ!」
2つのスープを飲み比べる!
すべて潰した方は驚くほど滑らかで、一切の抵抗なく喉奥へ飲み込めた! だが! 粒を残した方は舌触りが均一ではない! 噛み締めた瞬間に豆本来の芳醇な甘味が弾け飛び、自らの意志で料理を食べているという圧倒的実感が湧き上がるーっ!?
「滑らかに潰した方が、傷ついた人間には優しいんじゃないの!?」
エルの疑問に、ファの至高の喝が飛ぶ!
「単なる飲み込みやすさという機能面だけならそうね!」
ファは誇り高く言い放つ!
「ですが! 何もかも先回りして潰し尽くせば、食べる人間から『噛み締める』という尊い仕事まで奪い去ってしまう! 傷ついた人間を守ることと、何もさせずに無力化することは根本から違うのよ!」
リィナは伏せられた端末を愛おしそうに見つめた。
「兄さんも……そうだったのかもしれません」
「何が!?」
「私を弱い存在だと侮ったのではなく、自分自身でできることまで奪い去りたくなかったのだと……!」
夜、リィナは静かに通信を再生した!
ジュドーの声は、驚くほど短く武骨だった!
――体に気をつけろ。無理をするな。けれど、自分で決めたことなら最後までやれ。
ただ、それだけの言葉だった!
リィナは整然と数字の並ぶ食材管理表を見つめた。
「『体に気をつけろ』では主観的で状態が不明瞭です! 『無理をするな』にも客観的基準が存在しません!」
「兄さんへの採点、相変わらず超厳しいね……!」
「通信文として極めて不正確です!」
そう激しい口調で言いながらも、彼女は粒の残るスープを愛おしそうにもう一口含んだ。
「……ですが、伝えたい意味は完璧に分かります」
エルがポンと肩を叩いた!
「返事、送ればいいじゃん!」
「……何を書けばいいでしょうか」
「『元気だよ』で一発解決でしょ!」
「私が元気であることを証明する具体的数値が存在しません!」
「本人が元気だって主張するのが、何より一番の一次資料でしょ!」
リィナは固く沈黙した。
ファが、残った豆を密閉容器へ丁寧に移し替えた。
「返事を書き上げる前に、あなた自身の魂に問いかけなさい! 滑らかなスープと、粒の残るスープ……今日、あなた自身が本当に食べたいのはどちらなの!?」
リィナは2つの椀を厳格に見比べた!
「……粒のある方です!」
「理由は!?」
「自分で噛み締めた、本物の味がするからです!」
リィナは端末を開き、猛烈な勢いで文面を打ち込んだ!
何度も書いては消し、推敲を重ねた!
最初の文面には、配膳数、食材履歴、施設の稼働状況という精密なデータがズラリと並んでいた!
だが――彼女はその数値を全て消去した!
最後に残したのは、誇り高き短い言葉だった!
『元気です。自分で決めた仕事をしています。兄さんも、元気で。』
「数字が1つも入ってないじゃん!」
エルが横から覗き込む!
「見ないでくださいっ!」
「でもさ、これなら絶対にちゃんと伝わるよ!」
「送信先は兄さんです! エルさんの評価など一切求めていません!」
リィナは通信を送信待ちのキューへ入れた!
広大な宇宙世紀の闇の中、いつ届くかは分からない! 返信が来る保証すらどこにもない!
それでも……彼女は送信を取り消さなかった!
私は手帳を開き、ペンを走らせた。
リィナはこれまで、厳格な数字によって間違いを完璧に防いできた。
だが今日は、自分の意志で食べたい至高の椀を選び取ったのだ!
粒を残した豆! 自分で噛み締めた真実の味! 数字の存在しない熱い通信!
ファは、滑らかに潰したスープも決して捨てはしなかった!
喉の機能が低下し、飲み込む力が弱い人には、間違いなくそちらが絶対的に必要となるからだ!
どちらか一方だけを絶対的正義とするのではない!
守られることと、自らの意志で選ぶこと!
その両方を食卓という戦場に残すことこそが、今日の至高の料理だったのだ!