機動戦士ガンダム 美味しんぼ ロンド・ベルの究極、ネオ・ジオンの至高 逆襲のシャア前夜、ロンド・ベル寄港中の補給食堂 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
採光ミラーの日照制御が冬期設定へ切り替わり始めた頃、旧実習棟は初めて季節をまたいだ!
「もう1年近いんですね……」
リィナ・アーシタが記録帳をめくった!
「早かったような、長かったような……」
「両方でしょうね」
私は最初のページを開いた!
『登録照合不能。配給対象外。』
あの日から、確かに時間が流れていた! 部屋を訪れた子供の中には、別の保護先へ移った子もいる! 今も通う子もいる! 名前を明かした子も、明かさないまま至高の椀を選ぶ子もいた!
「誰が大きくなったか、表にする!?」
エル・ビアンノが叫ぶ!
「身長のデータ記録は存在しません!」
「雰囲気で!」
「雰囲気を数値欄へ叩き込まないでください!」
ファ・ユイリィは麦と根菜を2つの大鍋に分けていた!
片方は、すべて同じ大きさに愚直に刻んだ冬の粥! もう片方は、根菜を薄切り、角切り、すり下ろしの3種類に切り分けた至高の品!
同じ材料! 同じ重量! 同じ塩分!
前者は、最初から最後まで平板で同じ味がした! だが! 後者はすり下ろした根菜が汁へ至高の甘味ととろみを与え、薄切りは舌の上で官能的にほどけ、角切りは最後まで噛み締める旨味を残したのだーっ!?
「こっち、食べるたびに季節が変わるみたいだーっ!?」
エルの叫びに、ファが答える!
「大げさね! だが同じ食材を同じ形へ揃えることだけが平等ではないわ! 1つの根菜に3つの役割を持たせれば、少ない配給の椀にも豊穣な時間が生まれるのよ!」
「1年続いたから、特別に豪華にしたの!?」
「違うわ! 寒冷な時期は粥が冷めやすい! すり下ろしのとろみで熱を抱かせ、角切りは煮崩れない大きさへ構造化しただけよ!」
祝いという感情論ではなく、冬という現実への徹底的な調整!
それでも、いつもの粥より少しだけ豊かに感じた!
リィナは配膳表を作りかけ、ペンを止めた。
「今日は数えないの!?」
「配膳数と残量は記録します! ですが……1年で何人を助けたか、という身勝手な成果の表は作りません!」
「どうして!?」
「ここを通り過ぎていった人々を、私たちの誇らしい成果などに仕立て上げたくないからです!」
ファが力強く頷く!
「私たちが何かを成し遂げた、なんておこがましいことは言えないわ! ただ鍋の火を消さずに守り抜いただけよ!」
「それだけで十分じゃない?」
私が問うと、ファは粥を愛おしそうに混ぜた。
「十分かどうかは、食べた本人が決めることよ! でも……悪くない時間だったとは思うわ」
夜、皆で同じ鍋を囲んだ!
特別な高級食材などどこにもない! 麦、根菜、少量の塩!
けれど! ファは椀ごとに盛り付けの構造を変化させた!
熱々を求める人には、とろみの多い鍋底から! 噛むのが辛い人には薄切りを多く! 食感が欲しい人には角切りを残す!
「同じ鍋なのに、不公平じゃないの!?」
エルがわざと問う!
「同じ量を同じ形で機械的に配る方が遥かに簡単よ!」
ファの至高の論理が炸裂する!
「だが本物の料理とは、調理場の都合を食べ手へ押し付けないこと! 同じ1つの鍋から、食べる人間に合わせた違う至高の1杯を作り出すところまでが配膳なのよ!」
リィナは今日は表を見ず、1人ずつ丁寧に尋ねた!
「薄切りと角切り、どちらが楽ですか」
答えがなければ静かに待った! 両方なら両方を注ぎ入れた! 要らないと言われれば減らした!
エルが軽口を叩き、リィナに一刀両断に叱られる! 小さな温かい笑いが部屋を包んだ!
私は手帳を開き、ペンを走らせた!
採光の時間が変わった。最初の記録から、1年近くが過ぎ去った。同じ根菜を3つの形に刻んだ。配膳数は記録した。成果の人数などという悪魔の数字は数えなかった!
そして最後に刻み込んだ!
季節が変わっても、ただ同じ鍋を出し続けるのではない!
火を残し、目の前の人に合わせて、毎回魂を込めて作り直す!
変わらないのは、与えられた役割などではなかった!
変わり続けるために、今日もこの場所を開けておくことだったのだ!