機動戦士ガンダム ブライト・ノア「このおにぎりを作ったのは誰だあっ!」 美味しんぼ 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
U.C.0092年9月。ロンデニオン港、屋台通り。
「究極のラーメンと至高のラーメン、制限時間内に3杯を完成させ、速度・満足度・再現性の総合点で競う勝負です」
そう言い出したのはエル・ビアンノだった。相手はブライト・ノアと、港湾食堂の老コック、通称「親父さん」。誰が名付けたわけでもないのに、支局内ではいつの間にか彼女たち3人を「ロンデニオン、ラーメン三銃士」と呼ぶようになっていた。
「くだらん勝負をするな。だが乗った」
ブライトが即座に鍋の前に陣取る。美食倶楽部の主宰が、屋台のラーメン勝負に本気を出す姿を、支局付きのカメラマンが夢中で撮影していた。その一枚が後日、東西グラフ本社の目に留まり、「世界味めぐり」取材班がロンデニオンへ派遣されるきっかけになる。
麺は港湾工場の余剰小麦粉を、水分量と塩水濃度を変えて3種類打ち分けた。太さの違う麺が、それぞれ違う速さで茹で上がっていく。
「究極は、細麺でスープを一気に纏わせる速攻型です!! 私は速度点で稼ぎます!!」
エルの宣言に、リィナ・アーシタが冷静に補足を入れる。
「エルの言う『究極』は、速度点を最優先する戦略です。対して至高側は、太麺で満足度点を最大化し、多少の速度差を巻き返す狙いのようです」
「その通りだ。至高とは、量ではない。1杯で人を黙らせる完成度のことだ」
ブライトが太麺を湯に投じる。彼の手つきは、補給統制官というより、もはや職人のそれだった。
親父さんは終始無言で、古くからの秘伝であろう煮干しだしを丁寧に取り続けている。3人が3人とも、自分の流儀を1歩も譲らない。
結果は――速度点はエル、満足度点はブライト、再現性の点で親父さんが僅差でそれぞれ首位に立ち、総合点は3人ともほぼ同点。判定は「引き分け」でお茶を濁すことになった。
「至高が引き分けなど、屈辱以外の何物でもない」
「究極も同じく屈辱です。でも美味しかったので良しとします」
エルの締めくくりに、親父さんが初めて、ふっと笑った。
見物に集まった配給待ちの人々にも、余ったラーメンが振る舞われた。名前のない子供も、その列の端に並んでいた。私は少年が丼を両手で抱え、麺を1本ずつ確かめるように食べる様子を、手帳に書き留めた。
この日を境に、屋台通りには毎週「ラーメン三銃士」の対決を見に、人が集まるようになった。至高でも究極でもなく、ただ、うまいものを求めて人が集まる場所。それが、この殺伐とした港に生まれた、小さな祭りだった。
夜、私は東西グラフの担当記者に、こんな1文を書き送った。
「世界味めぐり、サイド1港湾編。最新報告。ここには、至高も究極もまだ決着していない、うまいものへの飽くなき情熱だけがある」
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