機動戦士ガンダム ブライト・ノア「このおにぎりを作ったのは誰だあっ!」 美味しんぼ 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
U.C.0092年10月。ロンデニオン港、補給統制室。
美食倶楽部主宰にして、地球連邦軍大佐、ロンド・ベル司令兼ラー・カイラム艦長、ブライト・ノア。ロンデニオン寄港中の彼には、港湾補給部門との連絡調整という重い軍務がある。この日、その本業の方で、決定的な事故が起きた。
「補給艦の到着が、10日遅れる、だと?」
補給統制室に響いたブライトの声には、いつもの怒声とは違う、低く冷たい響きがあった。原因は単純明快、しかし致命的だった。輸送ルート上の中継ステーションで、機関系統のトラブルが発生し、代替ルートの確保に時間がかかっているという。
「配給の在庫は、あと何日持つ」
リィナ・アーシタが即座に計算し、答えた。
「現在の消費ペースを維持した場合、7日です。10日の遅延には、3日分足りません」
沈黙が落ちた。エル・ビアンノでさえ、この時ばかりは軽口を叩かなかった。
「――至高の補給線が、決壊するというわけか」
ブライトが自嘲気味に呟いた。美食倶楽部の名で「至高のメニュー」を掲げてきた彼にとって、補給そのものの破綻は、あまりにも皮肉な現実だった。
「ブライトさん、こういう時こそ、あなたの出番でしょう」
ファ・ユイリィが静かに割って入った。
「至高とは、潤沢な食材で最高の一皿を作ることだけじゃないはずよ。足りない中で、どう配分し、どう命を繋ぐか。それもまた、至高の仕事じゃないの?」
ブライトはしばらく黙り込んだ後、拳を握りしめて立ち上がった。
「――その通りだ。ファ、お前の言う通りだ。至高とは、豊かさの中の贅沢ではなく、乏しさの中の知恵だ!!」
そこから3日間、支局は総力戦になった。リィナが在庫を1グラム単位で再配分する計算式を組み、エルが各配給所を駆け回って実際の需要を聞き取り、ファが限られた食材で最大の栄養と満足感を両立するメニューを組み立てた。私はその全過程を記事にし、東西新聞の電子稿を通じて、コロニー中に事態を共有した。
驚いたことに、記事を見た民間の商店や個人が、次々と余剰の食材を配給所に持ち寄り始めた。パン屋の余った小麦粉、農家の規格外野菜、個人が備蓄していた乾物。1人1人の量はわずかでも、集まれば大きな力になった。
「これが――これが至高でも究極でもない、3つ目の答えか」
ブライトが呟いたその言葉を、私はそのまま記事の見出しにした。「至高でも究極でもない、コロニーの知恵」。
補給艦は、結局8日遅れで到着した。だが、その間、配給が完全に途絶えることは1度もなかった。名もなき子供も、その8日間、毎日欠かさず、何かしらの椀を手にしていた。
私は黒板にこう書き足した。至高と究極は、いつも遠くで戦っているように見えて、本当は、いつも同じ現場で、同じ答えを探している。
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