Unique Tale Online ~竜人少女(?)の珍道中~   作:姫河ハヅキ

10 / 56
第十話 「強くても使用方法がわかんなかったらただの不良在庫(ゴミ)だよ!?」

 現実のボクの部屋は電気を点けていないのでかなり暗かった。机の上の時計を見ると時刻は六時過ぎ。いつも夜ご飯を食べている時間まではあと一時間以上あるから献立を考える余裕があるね。実はまだ決めてないから早く決めないと。

 何にしよう。昨日は豚肉の生姜焼きだったから今日は魚料理かな。冷凍庫に入ってる鮭を塩で焼けばいっか。味噌汁は昨日のが残ってるし、サラダは野菜室にあるレタスを切るだけ。よし、さっさと作っておいて、二人が戻り次第夜ご飯にしよう。

 そう思いながら立ち上がると近くでログインした柊和姉の姿がないことに気付く。

 え、もうログアウトしてたの?まだ三十分はゲームしてると思ってた。雫乃はどうか知らないけど、柊和姉はリビングでテレビでも見てるのかな?

 階段を降りてリビングに入ると、柊和姉と雫乃の二人がバラエティ番組を見ていた。

 

「二人共思ったより早いんだね」

 

「キリが良かった所で終わらしてん。急いでやらなあかんようなクエストは無いしな」

 

「それより今度夜ご飯に遅れたらと思うと体が震える」

 

 うん、そこまで酷いことはしないから雫乃はそんなに怯えなくてもいいよ?······数日間ご飯を作ってあげないだけだから。

 

「雪のことだから私たちに課す罰は数日間のご飯抜き。生活力の無い私たちじゃ餓死する。絶対」

 

「そうやな。ウチらは家事からっきしやしな!」

 

 胸を張りながら熱弁する二人。

 なぜダメなことを威張って言うことができるのかボクには全くわからない。

 

「はいはい。夜ご飯はこれから作るから待っててね」

 

「「はーい」」

 

 そういえば、この二人も血の繋がりはないのに、よく息が合うよね。

 

◇◇◇

 

 調理を終え、現在食事中。

 

「そうだ。竜人のプレイヤーって多いんじゃないの?あっちの人は竜人は少ないって言ってたんだけど」

 

 雫乃から貰った情報とエメロアからの情報が食い違ってる。どっちが正しいのかな。

 

「······そんなこと言ってたっけ」

 

 雫乃はすっかり忘れている様子。キョトン、としている。

 

「言ってたよ。ボクのスキル構成について言及してた時に竜人がどうたらこうたらって」

 

「ん······あ。その話なんだけど、私の情報が間違っている」

 

「そうなの?」

 

「竜人が多かったのはベータテストの頃」

 

「もうちょい詳しくお願い」

 

 そこで話を終わろうとしないで。

 

「雪は知らないだろうけど、種族スキルには、ステータスへのプラス補正のあるものや、マイナス補正のあるものがある。それに、事前情報では竜人はSTRとINTどちらにもマイナス補正が無いうえ、魔法を自分に纏わすことが可能だから魔法戦士に向いているとあった。けど、実際プレイしてみると、遠距離はほぼ無理で、近距離でも武器に魔法を纏わすことは出来ず、拳や足にしかダメだった。さらに、燃費がとても悪かったから不人気種族になった。獣人の中にもSTRとINTのマイナス補正が無く、魔法を武器に纏わすことができる種族がいくつかあるからそれらの方が今は人気。というか、魔法戦士なら人族でもできる。竜人になるメリットは飛行ができるくらい」

 

 竜人は結構、いやすごく不遇種族のようだ。魔法戦士やるんだったら他の種族の方が適しているみたい。じゃあ、どういうことに向いているのかな?

 

「ごめん、あの時は動揺してて古い情報を伝えちゃった」

 

「別にいいよ」

 

 雫乃はとても申し訳なさそうな表情だがボクは全く気にしてない。それに、許す許さないどころかまず怒ってない。

 どういう状況であろうとも、ボクは自由にやるだけだし、竜人が人気かどうかは興味ないね。

 

「雪、代わりと言ってはなんだけど、他の種族の特徴は聞きたい?獣人は種類が多すぎて無理だけど」

 

「是非ともお願い」

 

 雫乃によると、

 

 

·人族:ステータスへのプラス補正、マイナス補正共になし。言ってしまえば器用貧乏。種族進化が基本的に発生しないが、その代わりにレベルやスキルレベルの上昇速度は他種族に比べて速い。

 

·エルフ:MND、MPにプラス補正(回復魔法、支援魔法の効果はMNDに依存)、INTにマイナス補正(攻撃魔法の威力低下)。魔法防御は高い完全サポート型の後衛。森の中で全ステータス微上昇。

 

·ダークエルフ:INT、MPにプラス補正、MNDにマイナス補正。エルフとは正反対で魔法防御が低い攻撃型の後衛。砂漠系のフィールドでステータス微上昇。

 

·ドワーフ:DEX、STRに大きなプラス補正、INTにマイナス補正。主に鍛冶、そして木工や裁縫など生産向き。ただし、魔法付与は不得手。鉱山、洞窟系のフィールドでステータス微上昇。水場、もしくは水中でステータス低下。

 

·魔人族:INT、MND、MPに大きめのプラス補正。STR、VIT、DEX、HPに大きなマイナス補正。魔法は得意。というかそれしかできない。魔法無効の敵が現れたら···諦めよう。

 

·獣人族:その種族の中でも種類は多岐に渡る。色々ありすぎて説明は無理。

 

·竜人族:ステータス補正以外の種族スキルが一番多い種族。【飛行】【竜眼】【威圧】【竜魔法】など多種多様。だが、ほぼ全てのプレイヤーが【飛行】以外を使いこなせていない。ただ燃費が悪く射程が短いだけで使用方法がわかる【竜魔法】はまだマシな方で、【竜眼】と【威圧】は使用方法が判明していない。いくつか成功例があるが、発動した時の場所や状況はバラバラで予想すらたてられていない。

 

·鬼人族:第一階位種族の時は、特徴なし。第二階位種族で『妖鬼』『闘鬼』の二つに派生し、そこから種族スキルが発現する。『妖鬼』の場合はINTとAGIにプラス補正、VITとMNDにマイナス補正。STRにマイナス補正がないのでこの種族でも魔法戦士は可能。『闘鬼』はVITとMNDにプラス補正、INTとAGIにマイナス補正。壁役にぴったり。重戦士もできる。

 

 とのこと。ちょっと悲しい事実もあったけど、めげずに行こう。

 ······無理だ。さすがに落ち込まずにはいられない惨状だよ············。

 

「種族スキルの使い方がわからないって何なの?」

 

「泣かないで、噂によると強いらしいから」

 

「強くても使用方法がわかんなかったらただの不良在庫(ゴミ)だよ!?」

 

 エメロアだったら知ってたりしないかなぁ······。

 

「それに加えて、ボクはMNDを上げる気は無いのに【回復魔法】の効果はMND依存だし、踏んだり蹴ったりだよ」

 

「雪はMNDを上げる気がないの?敵の魔法一発で死なないように少しは上げておくべき」

 

 ああ。雫乃はボクのスキルを知らないんだっけ。

 

「いや、魔法はINTで防げちゃうようになっちゃったからMNDは上げる必要ないんだよね」

 

「は?」

 

 雫乃が信じられないモノが目の前にあるかのような表情でボクを見てくる。え?そんなにおかしなこと言った?

 

「【真·竜魔法】っていうエクストラスキルをゲットしたの」

 

「「エクストラスキル!?」」

 

 ボクの言葉に二人は大きな声を出して驚く。耳が痛くなるからいきなり大声をだすのはやめてほしい。あと柊和姉、さっきまで黙々と夜ご飯食べてたのにいきなり会話に参加するのは何?

 ボクが【真·竜魔法】の効果を伝えると、二人で何かヒソヒソ話し始めた。

 

「(柊和姉、なんで雪はゲーム初日でエクストラスキルをゲットしてくるの?サービス開始の瞬間からプレイしてる廃人でもまだだと聞いている。それどころか手がかりすら見つかってないらしい。なのにニュービーが習得したとなったら大騒ぎになる。これは隠しておくべき)」

 

「(せやな。これが広まったらどこのクランも雪を自分のクランに引き入れようとしてくるやろうし、絶対に話したらあかん。雪はマイペースやからガチガチの攻略クランは向いてへん。なのに戦闘系エクストラスキルを習得してもうたから、周りは戦闘を要求しよるで。それが嫌になってこのゲームを引退することになったら取り返しがつかんことになる。そんなことだけは起こしたらあかん)」

 

「(了解)」

 

 二人共、何話してるの?悪口じゃないよね?

 

「話は変わるんだけどさ、柊和姉たちのパーティーメンバーにカナデって子いるじゃん」

 

「ウチらの可愛い担当のことやな」

 

「あの子は男だよね?」

 

「!? 雪、よう分かったな」

 

「普通に分かったけど?」

 

 だって服が男物だったんだもの。

 

「カナデは男物の服着てても女子に見られるからなぁ」

 

「そこで一つ質問があるんだけど」

 

「なんや?」

 

「カナデも性別誤認されてもおかしくない容姿をしているよね。なんでボクは誤認されてカナデは誤認されてないの?」

 

「それはな、ウチが布をアンタの股間に巻き付けて、膨らみを隠したんや。アンタのは小さいから楽やったで!」

 

 そう言いながらボクに向けてサムズアップをする柊和姉。

 ·········小さいとか言うな。身長や声よりは気にしてないけど、それでも少しは気にしてるんだから。あと、今すっごい柊和姉を殴りたい。何を怒りたいかって、普段は超がつく程面倒くさがりのくせに、こういう悪戯をする時に限って行動力を発揮する所だよ。これは制裁案件だね。

 

「······柊和姉。明日から一週間ご飯作ってあげない」

 

「嘘やろ!?」

 

 今は気にしてないとはいえ、人が過去に抱いていたコンプレックスを抉りに抉ってるので情状酌量の余地はなし。よって有罪。

 

「それやったら、雫乃も処分を受けるべきや!雫乃もアンタのアバター見て笑っとったし!」

 

「私は止めた。雪は怒らせるとコワイし、自分の女々しさを気にしてたからそのコンプレックスを突くのはさすがにダメだと思った。それに笑ってはない。雪が可愛いからニヤついてしまっただけ」

 

 雫乃は無罪でいっか。実行犯は柊和姉だけみたいだし。

 

「雫乃への罰はなし。柊和姉は一週間白ご飯orインスタントor冷凍食品で生き延びてね。でも······おつかいとかしてくれたらおかず一品くらいは作ってあげないこともないかな?」

 

「よっしゃウチに任しときぃ!何kmでも走ったるで!」

 

 チョロい。これで一週間は暑い中買い物に行くことがなくなった。いや、何か物で釣れば買い物は自分で行く必要はないかも?うん。暑いの嫌いだし、それでいこう。

 さて、もう夜ご飯も食べ終わったし、お風呂に入って寝ますかね。夜ご飯を作る前にお風呂は沸かしておいたからすぐ入れるね。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。