Unique Tale Online ~竜人少女(?)の珍道中~   作:姫河ハヅキ

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第二十話 ······アルフ、無事だといいなぁ

 アルフとの話が終わり、闘技場を出るとニヤニヤしながらエメロアが近付いてくる。······コイツ、聞いてたな?

 

「結果はどうだったのじゃー?」

 

「スノウ様は俺を快く迎え入れてくださり、重要な秘密まであかしていただきました」

 

 アルフがそう答えると、エメロアは驚いている様子。すぐにボクの近くに来て、耳元で囁く。

 

「(どこまで話したのじゃ?)」

 

 内容をアルフに聞かれるとマズいので、ボクも囁き返す。

 

「(異界人ってとこまで。さすがに性別はね······)」

 

「(まあ、妥当な判断じゃな。すぐに全てを明かすのは無理じゃろうしな)」

 

「(だよね〜)」

 

「えっと······私が何かしてしまったのでしょうか?」

 

 いきなり内緒話を始めたボクとエメロアに、アルフが戸惑っている。

 

「いや、おぬしがスノウに無理矢理迫ったかどうかを聞いておっただけじゃ」

 

「そんなことはしていません!」

 

 誤魔化すのにその言い訳はどうかと思う···。

 

「当たり前じゃろう。もし無理矢理迫っておったら、生きておることを後悔させようと思っていたからのう」

 

 怖っ!?エメロアの背後に悪魔が見えるよ!?

 

「そうね〜。とりあえずリュミナより酷いことをしていたわね〜。本当に迫ってないのよね〜?」

 

 今度は般若的なナニカを背負ったアルマさんが!?アルマさんも聞いてたのね!

 

「迫ってませんよ!」

 

 あ、アルフがエメロアとアルマさんに捕まってる。

 

「あれ、そういやリュミナは?」

 

「ああ、リュミナは部下に連れ戻されていったぞ」

 

 ······おじさんも来た。三人揃って聞いてたのか······。

 ボクが落胆したのがわかり易かったのか、おじさんがフォローしてくれる。

 

「安心しろ嬢ちゃん。俺は話の内容を聞いてねぇよ。エメとアルマは聞いてたけどな。あと、嬢ちゃんのランクを聞いてきたぞ。Cランクだってよ」

 

 ああ、おじさんは、三人の中で唯一の良識人だよ···。アルフと話してたボクの代わりにランクを聞いてきてくれるし、優しいね。

「登録も終わったし、帰るか」

 

「そうだね」

 

「お嬢様!?俺は放置ですか!?俺が迫ってないことを証言してください!そうしてくれないと、俺がこのお二方から解放してもらえません!」

 

 エメロアとアルマさんに囲まれているアルフの方を向き、サムズアップする。敬語は禁止と言ったのに、敬語を使ってるのでちょぉぉっとした罰ゲームです♪『お嬢様』呼びも恥ずかしいし。まあ、悪い様にはされないかな?

 

「頑張って!」

 

「お嬢様ぁぁぁぁぁあぁぁっぁ!?」

 

「そういえば、『ボクなんかでいいの?』って言ってたわね〜」

 

 ここでニトログリセリン級の火薬を投入するユリア。マジで余計なことしかしないなこの精霊。

 そして、ユリアの言葉を聞いて目を光らせるエメロアとアルマさん。

 

「ほほう?色々と聞かせてもらうぞ〜」

 

「は〜い、お話しましょうね〜」

 

 エメロアとアルマさんに捕まったまま、どこかに転移するアルフ。いや、エメロアに拉致されたと言った方が正しいね。幸運を祈る。

 

「嬢ちゃん、今のはあいつが可哀そうだぞ···。あとユリア、てめぇわざとだろ」

 

「何のことかしら?それにしても、思ったよりあの二人が食い付いたわね」

 

「うん、エメロアとアルマがあそこまでしつこく聞くとは思わなかったよ···」

 

「いや、多分あいつらはこの機にあいつで遊ぶぞ?『嬢ちゃんに無理矢理迫ってないか確認する』っていうちょうどいい大義名分があるから思う存分やりやがる気がすんだよなぁ」

 

「!?」

 

 アルフぅぅぅぅぅぅぅぅ!?お願いだから無事でいてぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!

 

「······嬢ちゃん、帰りに食材を買って、あいつに飯を作ってやれ」

 

「うん、そうするよ······」

 

 アルフ、マジでごめん······。今度ボクにできることならなんでもするから許して······。

 

「······さすがにやり過ぎたかしら」

 

 事態を悪化させた犯人が遅すぎる後悔をしている。

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 アルフにお詫びとしてご飯を作る為に、通りでおじさんと一緒に買い物中。ユリアは罰として、アルフの無事を確認するまで無視。話は変わるけども、おじさんは街の人気者なんだろうね。たくさんの人がおじさんに声をかけているもん。

 

「おお、パンツァーさんじゃねぇか。そこの嬢ちゃんは幼妻か?」

 

「はぅあ!?」

 

 それまさかボクのこと!?

 

「馬鹿なこと言うんじゃねぇ。そんなこと言うんだったら、お前んとこの商品をもう買わねぇぞ」

 

「冗談だって。怖いこと言うんじゃねぇよ」

 

 露店でちょび髭のおっちゃんと軽口を言い合うおじさん。露店を過ぎた所で申し訳なさそうにボクに言う。

 

「すまんな嬢ちゃん。さっきの奴に悪気は無ぇんだよ」

 

「大丈夫だよ。男女が一緒にいたらそういう邪推をされても仕方ないことだしね。異界でも、男友達と歩いているだけで、何度言われたことか······」

 

 違う高校の友達何人かと久しぶりに遊んだ時が特に酷かったなぁ······。数日後に友達の高校の女子に囲まれたからね。『何人も男を侍らせて、調子に乗らないで』って詰め寄られたんだよねぇ。『ボクは男だ』って言っても信じてもらえないし、やむを得ずその友達を呼んでやっと解決したよ······。

 

「嬢ちゃんも苦労してんだな」

 

 遠い目をしたボクを見て、おじさんは察してくれた。

 

「この女顔が恨めしいよ」

 

「そういや、異界でも嬢ちゃんの髪は長いんだったか?」

 

「まあ、長いね」

 

 男で肩を越えたら長いと思う。長いよね?

 

「髪を切れば多少はマシになるんじゃねぇのか?」

 

「ボクがそれを試さなかったと思う?」

 

 髪をベリーショートくらいまで切ってもらっても『ボーイッシュな女の子』と見られたからね······。それに、ボクには髪を斬りたくない理由がある。特に前髪。

 

「それでもダメだったんだな···」

 

「察してくれて助かるよ。気を取り直して買い物しようか」

 

「おう、俺のおすすめの店に嬢ちゃんを連れてってやるよ。······今更なんだが、『嬢ちゃん』呼びでいいのか?」

 

「確かに今更だね。ボクは構わないよ。そんなことより、速くおじさんのおすすめのお店に行こうよ」

 

「まあ嬢ちゃんがそれでいいなら何も言わねぇがな。そんじゃ、店はこっちだ」

 

「はーい」

 

 おじさんのおすすめってどんなお店だろうね?知り合いが営業してて、他より安く買えるとかかな?

 

       〜移動中〜

 

「あ、パンツァーに竜人ちゃんじゃん!いらっしゃーい!」

 

「お、メルミルじゃなくてリオンか」

 

「······リオンって格闘家じゃなかったっけ?あ、ボクはスノウでいいよ」

 

 なんでリオンが露店を開いてるんだろう······。しかも食材の露店を。野菜とか果物とか色々あるんだけど。

 

「俺も前から思ってる。なあリオン、お前も十二英傑(ゾディアック)の一人なんだから、依頼もこなしてくれねぇか?結構な頻度でギルドの奴らが俺ん家に来るからめんどくせぇんだよ」

 

「アタシはこの国に拠点無いから仕方ないじゃん」

 

「リオンも十二英傑(ゾディアック)の一人だったの?」

 

「ん、言ってなかったっけ?」

 

「初耳だよ。あと、十二英傑って何?」

 

「そっか、スノウは異界人だっけ。こっちに初めて来てから一週間も経ってないなら知らないよね。十二英傑(ゾディアック)っていうのはねー、別にクランでもなんでもないけど、ある集団を指す言葉なんだよ」

 

「ある集団って何?」

 

 ボクがそう聞くと、リオンとおじさんの二人共が気まずそうに顔を背ける。

 

「自分で言うのはちょっと恥ずかしいんだけどなー·········一応、この世界で最強の十二人、だよ」

 

「マジで!?」

 

 え、ボク、この世界で最強の十二人の内、四人ともう出会ってたの!?

 

「·········敬語とか使った方がいいのかな?」

 

 ギルドマスターがあそこまで緊張してた理由がようやくわかった。自分より圧倒的に強い人が目の前にいたら、ああなっても仕方ないか。

 

「今更他人行儀に振る舞われてもねー。アタシ達、強くはあっても偉くはないし」

 

「嬢ちゃんは今まで通りに俺らと接してくれ。十二英傑(ゾディアック)以外の知り合いのほとんどはへりくだってくるから鬱陶しいんだよ」

 

「そう?それなら今まで通りに喋るけど」

 

「ちなみに、十二英傑にはそれぞれ、個人の二つ名とは別に星座に則った称号も与えられてるんだよー」

 

 道理で十二英傑(ゾディアック)って名前なんだね。

 

「アタシが《獅子(レオ)》、パンツァーが《巨蟹(キャンサー)》、エメロアが《処女(バルゴ)》、アルマが《白羊(アリエス)》だよ」

 

「《白羊(アリエス)》?当てはまらなくない?」

 

 アルマさんの髪は金色だったよね。微妙に合わないような気がする。

 

「羊の獣人ではあるからいいんじゃない?」

 

 わぁ、すっごい適当。

 

「じゃあ、おじさんの《巨蟹(キャンサー)》は?おじさんは鬼人系の種族だと思ってたんだけど」

 

「······一応、大剣を鋏に、鎧を甲殻に喩えてるらしいよ?」

 

 わぁ、すっごいこじつけ。種族すら違う。個人で二つ名あったらもうそれでいいんじゃないかな?

 

「あ、俺の《巨蟹(キャンサー)》はそういう意味だったんだな」

 

「いやなんで本人が知らないのさ」

 

 なぜおじさんが知らないのにリオンが知ってるんだろう。

 

「あ、そうだ。普段は買い食いのくせにわざわざ食材を買いに来るのは珍しいじゃん。」

 

「今日嬢ちゃんの冒険者登録に行ってな、試験でBランクに勝ったからその祝いだ」

 

「えっ!スノウはBランクに勝ったの!?すごいじゃん!」

 

「そ、そう?」

 

 なんだか照れるね···。

 

「···ッ!(うわっ、スノウの笑顔、破壊力高すぎでしょ······。同性のアタシでもヤバい)」

 

 リオンがいきなり黙り込んだと思ったら顔を赤らめる。アルフもだったけど、どうしたんだろう?

 

「どうかした?」

 

 ボクが声をかけるとリオンはハッと我を取り戻す。

 

「いや、なんでもないよ。それで、どの食材が欲しいの?」

 

「嬢ちゃんはどれが欲しいんだ?」

 

「ボクが選んでいいの?」

 

「嬢ちゃんのCランク祝いだからな」

 

「じゃあね〜······」

 

 棚を見てみると、多種多様な食材があるので何を選ぼうか迷ってしまう。···待てよ?まず、何の料理を作るのか聞いてないや。

 

「そういえば、何の料理を作るの?」

 

「ん?庭先にバーベキューセット出して焼き肉でもしようかと思ってるから、種類は気にせず嬢ちゃんの好きな食いもんを選びな。肉は十分にあるからそれ以外を選んでくれ。あ、金は俺が払うから心配しなくていいぞ」

 

「···いいの?」

 

「構わねぇよ。金は使わねぇから余ってんだ」

 

「そうだよー。パンツァーは普段全然お金を使わないからじゃんじゃん使っちゃってー」

 

「は〜い」

 

 それじゃあ遠慮なく。何にしようかな······焼き肉と一緒に食べる野菜の定番として、玉ねぎとかキャベツ、にんじん、トウモロコシは外せないよね。それに、お肉や野菜以外に焼く食べ物といえば、鮭とか鯖も美味しいんだよね〜。あとは···焼きはしないけど、フルーツもいいな。あ、メロンあるじゃん!ボクの大好物!

 

「じゃあ、玉ねぎとキャベツ、にんじんにトウモロコシ、鮭と鯖、そしてメロン!」

 

「···?ああ、こっちと異界じゃ呼び方が違うのかな。オニョンにキャベチ、キャロツ、モロコシ、鮭に鯖、メロンだねー。」

 

 ボクが注文をすると、リオンはすぐに商品を袋につめてくれる。そっか〜、野菜の名前が違うのか···。こっちでの買い物には気をつけないとね。

 

「俺には酒だ。鬼殺しと竜殺しを頼む。あとエメロア用にブドウとアプルだ。」

 

「うわー···どんだけ強いの呑むつもりなの」

 

「いいじゃねぇか。こういう時でもねぇと呑まねぇんだしさ」

 

「パンツァーがそう決めてくれているだけありがたいよ。この二つはかなり貴重だからねー。はい」

 

「おうよ」

 

 おじさんもお酒を受け取り、これで買い物は終了。露店を出ようとすると、リオンが露店を片付け始める。片付けといっても、次々とポーチに放り込んでるだけだけど。あれ、明らかに鞄の口より大きい物も入るんだねぇ。どうやって取り出すんだろ?

 

「今日はもう閉店?」

 

「うん、アタシもパンツァーの家に行こうかと思ってね。もう客足はほぼ途絶えてたし、メルミルからも適当なタイミングで閉店していいって言われてたし」

 

「はあ!?聞いてねぇぞ!」

 

「言ってないからね。昨日まで宿に居たけど、やっぱりパンツァーの家の方が広いなって思って、泊まりに行こうとしてたんだー。拠点をパンツァーの家に移せば、アタシもちゃんとクエストこなせるから。いいでしょ?」

 

「はぁ···仕方ねぇな」

 

「やったー!じゃ、アタシもスノウのCランク祝いに参加するからねー」

 

「あ、うん」

 

 とりあえずそんな訳で、買い物を終え、人が一人増えた所で帰路に着くボクたち。

 ······アルフ、無事だといいなぁ。

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