Unique Tale Online ~竜人少女(?)の珍道中~   作:姫河ハヅキ

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第二十二話 黒雪スタンピード

 勢いよく扉を開け放ち、家へと突入したボク達三人が見たのは―――

 

「もう逃がさんぞ?」

 

「ふふふ〜。逃げ場は無いわよ〜」

 

「·········(壁際に追い詰められ、泣きそうな顔で震えている)」

 

 アルフらしき金髪碧眼の女性が壁際へと追い詰められ、今にもエメロアとアルマさんの毒牙にかかる寸前だった。あっっっっぶな!ギリギリじゃん!

 

「アルフ、今助けるから!」

 

「お嬢様!?」

 

「邪魔はさせにゃいわよ〜」

 

「ちっ、やっぱり来るか。リオン、頼んだ!」

 

「あいよ!」

 

 打ち合わせの通りにおじさんがアルフの所に近付こうとした時、少し足取りがおぼつかないアルマさんが立ちはだかる。そのアルマさんの前にはリオンが立ちはだかり、リオンとアルマさんで取っ組み合いを始める。

 アルマさんの相手をリオンに任せて、おじさんがアルフの所に向かおうとしたのだが、

 

「うむぅ···もう来おったか。」

 

 酒瓶を持ったエメロアが魔法陣を空中に展開している······ってマジで!?屋内で魔法ぶっ放す気!?

 

「はぁ!?エメも酔ってんのか!?予定変更だ、エメは俺が相手する!嬢ちゃんはアルフの坊主を助けてやれ!」

 

「う、うん!」

 

『ユリア、精一杯の幻惑をお願い!』

 

『嘘でしょ!?あのロリの精神防御がどれだけ高いと思ってるのよ!』

 

 ロリは君もでしょうが。

 

『とりあえずやってはみるけど、期待はしないでよ!』

 

『それで十分』

 

 ユリアに指示を出し、ボクは走り出す。

 エメロアが幻惑系の魔法で困惑している隙に横をすり抜けるつもりだ。今のボクじゃ、エメロアには絶対勝てないだろうからね。

 

「一つくらいは効きなさいよ!『閃光(フラッシュ)』『蜃気楼(ミラージュ)』『虚像(ホロウ)』」

 

 ユリアが顕現し、魔法を行使する。光が眩しく輝き、それが治まると、ボクの姿が至る所に増えていた。この魔法はエメロア個人ではなく、この領域に発動しているので、エメロアの高い精神防御(MND)でもレジストはできない。

 あまり長くは稼げないとは思うが、アルフの所に行くくらいの隙はできるはずだ。偽物もエメロアの横や上を通り抜けようとしているから、一目ではどれが本物かはすぐにはわからないだろう。

 だけど、その考えは甘かった。

 

「ひみゃぁぁあ!?」

 

「スノウ!?」

 

「嬢ちゃん!?」

 

 突然床から生えてきた植物がボクの身体を縛り上げる。

 ちぃ、ま、なんでボクが本物ってバレたの!?見抜くの早すぎない!?

 エメロアの方を見ると、エメロアはものすごいドヤ顔でこう言った。

 

「スノウよ、その考えは悪くはないのじゃがのう······本物がわからなければ、全て捕まえればいいだけなのじゃ」

 

 なんという力技。ボク達の目論見が真っ向から潰されちゃったよ。

 というか、この植物の拘束固すぎない?全く動けないんだけど。しかも、どんどん締め付けが胸のあたりを強調する縛り方になってる気がする······。

 

「うむ、豊満な肢体が縛られている光景は酒の肴になるのう」

 

「酒の肴になるかどうかはともかく、絵になるのは同意するわ」

 

 ボクが縛られているのを見ながら酒を飲むエメロア。やってることが完全に変態なんだよねぇ。ぶっちゃけ、リュミナと大差ないと思う。

 そしてユリア、なんで君がそっちにいるの?いつの間に敵に回ったの······?このままだと、敵が二人に増えそうなので今の内に強制送還。

 

「エメ、嬢ちゃんを離せ!」

 

「嫌じゃ。何故このような面白そうな機会を逃さねばならぬ」

 

 そう言いながら、ボクを縛っている植物を操作するエメロア。拘束はさらにキツくなり、服を少しはだけさせる。下着も見えてしまっている。

 周りに知り合いしかいないとはいえ、こんな辱めを受けるだなんて·········。

 くぅっ、殺せ。

 

「······早く嬢ちゃんを離せ」

 

「うっわ、エロっ」

 

 おじさんは顔を赤くしながらも、顔を別の方へと向けるという紳士的行為。それに比べて、アルマさんを処理してこちらに合流したリオンはボクをまじまじと見てこの一言。·········ボクの味方はおじさんしかいないのかなぁ。

 

「パンツァー、おぬしはそんなことを言いながらも、アレを抑えるのに必死なのじゃろう?スノウも男なのじゃから、理解してくれるから安心せい」

 

 アレ、とは?エメロアは股間を指差してるけど······あ、男のアソコに関することなのね。詳細は分かんないけど、まあいいや。

 

「嬢ちゃんをそんな目で見れる訳がねぇだろうが!」

 

 そんな目······?なんだろね。男の股間を指差して、そんな目·········あ、えっちぃ目でってことかな?『下とか夜とか股間とかが絡んでたら大概えっちぃことやで?』って柊和姉も言ってたし。

 ······じゃあ、アレって何?男のアソコに関する事みたいだけど·········これ以上考えてもわかんないから放置で。

 

「パンツァー、おぬしも雄じゃ。この光景を見てしまえば、否応なく昂ぶってしまうじゃろう?」

 

「昂ぶってたまるかよ!」

 

「ふぅむ、強情じゃのう。ならば、おぬしではなくスノウに手を加えるべきじゃな」

 

「っ!エメ、嬢ちゃんに何するつもりだ!やらせね···ちっ、邪魔だあ!」

 

「ちょ、酒を飲ませるのはダメ···もうっ、邪魔だなぁ!」

 

 ポーチから謎の液体が入った瓶を取り出し、ボクに近付いてくるエメロアを止めようと、おじさんとリオンが走り出そうとするが、行く手を植物が阻む。

 ボクも出来る限りの抵抗をしようとしたのだが、植物による拘束は固く、全く動けない。

 やめ、やめてぇぇぇぇぇぇぇ!!!

 

ガポッ(エメロアがボクの口に瓶を突っ込む音)

 

「んぐ、んぐ·········」

 

 液体を喉へと流し込む度に、頭が蕩けていくのを感じる。その液体を飲み込む度に、意識が朦朧としていく。何も考えられない程身体の中が熱くなり、もう自分を保っていられなくなる。

 思考も別のナニカに埋め尽くされーーー

 

「『あはぁ♪』」

 

 自分の喉から自分のものではない声が出て、ボクは意識を失った。

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

「『あはぁ♪』」

 

 その声は、あまりに異質だった。

 スノウの明るく元気な声と、ナニカの甘く淫らな声が重なってスノウの口から発せられる。

 輝く白銀の髪や鱗、純白だった角は、全てを吸い込んでしまいそうな闇色へと染まり、紅玉のように透き通っていた瞳は、妖しく桃色に光っていて、白目の部分は黒くなってしまっている。彼女が着ていたバトルドレスは、禍々しいデザインの代物へと変わり、布面積が酷く小さくなっている。

 彼女の変貌にエメロアも、パンツァーも、リオンも呆然とし、動くことを忘れてしまっている。エメロアはあまりの驚きに酔いを覚めてしまっているようだ。

 

「どういうことだ······?エメ、嬢ちゃんに何を飲ませた!?」

 

「ワシは淫乱薬(サキュバス·ニア)を混ぜた酒を飲ませただけなのじゃが······」

 

「てめぇそんなもん飲ませたのか!それにしても、その魔法薬であんなことになるもんなのか?」

 

「少しだけエッチな気分になるだけじゃぞ?」

 

「それならなんで嬢ちゃんがあんなことになってんだ!?」

 

「ワシにもわからん!」

 

「二人共、喧嘩するよりスノウを大人しくさせた方がいいんじゃない?」

 

 エメロアとパンツァーはお互いに怒鳴り合っていたが、リオンに制止され、スノウの方へと向き直る。

 

「あのスノウをどうやったら沈静化させられるかのう?」

 

「それにしても、今の嬢ちゃんを嬢ちゃんとして呼ぶのはちと気に入らねぇな······」 

 

「じゃあ黒雪ちゃんで。とりあえずは、当て身か何かで意識を失わせてみる?起きたら元に戻ってるかもしれないし」

 

「そうすっか。エメに罰はまだ与えてねぇが、それはこの一件が終わってからだな」

 

「うむぅ、忘れておらなんだか」

 

「酒に酔ってとはいえ、こんな事態になってんだ。罰はしっかりとあるからな」

 

「それはこれが片付いてからねー。二人共、行くよ!」

 

「おう!」

 

「うむ!」

 

 微妙に話を脱線させながらも、スノウ改め黒雪への対応策を考える三人。とりあえず一旦気絶させる、という結論が出たようだ。

 しかし、今の黒雪の前で悠長に話す暇は無かったようだ。

 

「『あはははははっ♪』」

 

「うむん!?」

 

「うわひゃぁっ!?」

 

 突如として床から生えてきた半透明の触手がエメロアとリオンを捕らえる。ちなみに、パンツァーの周りには一切生えていない。体格が大きいからなのか、男だからなのかは定かではないが、パンツァーが触手に縛られても得する者はいないということは確かである。

 

「『さあ、ボクとイイコトしようよ♪』」

 

 いつの間にか植物の拘束を解いた黒雪が二人へと迫る。薄い本的な展開が始まりそうである。

 

「お前ら、さっさと振りほどけ!」

 

「ちょっと無理っぽいねー。魔力と霊力がエグい勢いで吸収されてるから」

 

「ワシの方も同様じゃ」

 

「くそっ、俺がやるしかねぇ·······今度は植物じゃなくて触手かよ!」

 

 パンツァーが捕らえられた二人の救出に向かおうとするが、エメロアとリオンから奪い取った魔力と霊力で作られた触手に妨害をされている。

 

「『ふふふっ、二人はどこが敏感なのかなぁ♪』」

 

 まず黒雪の魔の手が伸びたのはエメロア。エルフの特徴的な耳を触り始める。

 

「うみゅぅっ······ふわ、ひゃあん!な、なぜみぎゃぁっ、こんなにも気持ちいいのじゃあぁあん!」

 

「うーわー······」

 

 耳を愛撫されるだけで悶えに悶えるエメロアと、その光景を見て顔を赤く染めるリオン。エルフの耳は他種族より敏感ではあるが、普通はここまで悶える程の感度はない。

 

「『どう?気持ちいいでしょ?』」

 

 もちろん原因、もとい犯人は黒雪である。この姿の時のみ使用可能なスキルがあるようで、対象の感度を大幅に引き上げるなどという芸当が出来るようになっている。そして、エメロアを弄んでいる間にも、パンツァーへの妨害は忘れない。地味にハイスペックである。

 

「············(ビクンビクン)」

 

 黒雪がエメロアを弄び始めて数分後。痙攣した幼女の完成である。顔は完全に蕩けていて、女性がしていい顔ではない。エメロアはあまりの快感で失神しており、しばらくは使い物にならないと思われる。

 これでエメロアの処理は終わり、次はリオンの番である。

 

「いや、ちょ、こっち来ないでー!!!」

 

 そんな懇願が黒雪に届く訳がなく、モフモフ(意味深)の開始である。

 

「ふにゃぁ、ふみぃ、あにゃぁぁん!らめ、耳と尻尾は弱いのおぉぉぉん!」

 

 エメロアの時と同じように対象の感度を上げ、リオンの耳と尻尾を弄ぶ黒雪。

 余談ではあるが、他人の感覚に干渉する技能はかなり希少だったりする。そのうえ、扱いもとても難しく、この手の技能を使いこなせる人物は世界に数名しかいない。

 

「············(ビクンビクン)」

 

 さらに数分後。今度は痙攣する獣耳っ娘の完成である。こちらも顔は蕩けている。

 二人に『イイコト』をやり終え、最後はいよいよパンツァーを狙う。スノウは妨害用に発動していた触手を解除し、パンツァーへと歩み寄る。

 

「『今度はおじさんの番だよぉ♪』」

 

「嬢ちゃん、もうやめろ!」

 

「『なんでさ?エメロアとリオンは気持ちよくなったのに、ボクとおじさんはまだじゃん?ボクは男女の営みとやらのやり方は知らないから、おじさんの好きなようにやっちゃっていいんだよ?』」

 

「遠慮しておく。嬢ちゃんが正気に戻ったあと、泣くなんてことがあったら、俺は一生後悔する」

 

「『まるでボクが正気じゃないみたいな言い方だなぁ』」

 

「そう言ってるんだよ」

 

「『むぅ、強情だねぇ。それならこっちにも考えがあるよ♪』」

 

 その黒雪の言葉を聞き、パンツァーは身構えるが、黒雪は思いもよらない行動に出る。

 なぜか黒雪は何もせず、パンツァーの近くに歩いてきたのだ。

 予想外の行動に反応が遅れたパンツァーに、黒雪が甘い声音でそっと囁く。

 

「『おじさん、おいで』」

 

 何らかの技能も使用され、色気が何十倍にも増幅されたその声は、パンツァーの思考を瞬く間に蹂躙していく。

 目の前の少女を己が欲望のままに犯せと。目の前の少女を抱き、可憐な純潔を奪えと。

 パンツァーはそのまま我を失い、黒雪を押し倒すと思ったがーーー

 

「ぐっ、ふううぅー」

 

 パンツァーはなんと、ナイフを自分の太ももに刺し、耐えていた。我を失う寸前で己に痛みを与え、意識を持ち直した。

 そして一言呟いた。

 

「すまん」と。

 

 黒雪がその言葉を理解するより先に、黒雪の胸に激痛が走る。バキメシャァ、と肋骨が折れていく音が聞こえた。

 薄れゆく意識の中で黒雪が後ろを振り返ると、鞘に収めたままの剣を振り抜いた姿勢のパンツァーがいた。

 パンツァーは鞘に収めたままの剣で黒雪の胸を叩き、意識を断ったのだ。ただ、黒雪の誘惑を完全には抵抗することができなかったのだろう。我を失わないようにするので精一杯で、手加減をする余裕が無かった。 

 それゆえの「すまん」である。

 

「『おじさんには敵わないなぁ』」

 

 その言葉を最後に、黒雪の体は崩れ落ちる。髪や瞳、装備は元に戻り、見た目はいつものスノウである。

 パンツァーはそれを見て、一息つく。だが、先程鞘で痛打した胸の処置を終えていない。鞄から一本の魔法薬を取り出し、スノウに流し込む。

 そして、今の激戦で散らかったこの場所からスノウを遠ざけようと、スノウの身体を持ち上げ、今日の朝まで彼女が寝ていた部屋へと運ぶ。

 エメロア、リオン、アルマも各々の部屋へと運び、アルフレッドも適当な部屋に運び込む。

 これで役目を終えたと、パンツァーは自分の部屋に戻った後、太もものナイフを抜き、魔法薬を傷口へと振り掛ける。あっという間に傷は治る。我を保つという責任を果たしたナイフの血を拭き取り、鞄にしまう。

 最後に歯を食いしばり、己の頬を本気で殴り、自らの意識を断った。性欲に負けそうになり、スノウを襲いかけた自分が許せなかったのだ。

 その勇姿はまさに漢であった。

 

 こうして、黒雪暴走事件は幕を閉じた。一人の漢の奮戦で何事もなく、無事に収束した。

 ······漢の行為に水を差すようなのだが、一つ補足しておこう。このゲーム、ユニークテイル·オンラインでは、十八歳未満はゲームの一部に未成年用セーフティがかかる。例を挙げると、アンデッド系モンスターのリアルさや血飛沫などのスプラッタな表現、ディープキスや夜の営みなどの性的表現がセーフティ対象となっている。

 そして現在スノウ、もとい雪は十六歳。まだセーフティがかかる年齢だ。

 つまり。

 パンツァーが理性を失いスノウを襲ったとしても、犯すことはできないのである。

 

 

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