Unique Tale Online ~竜人少女(?)の珍道中~   作:姫河ハヅキ

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第三十二話 二次試験(中編①)

「はぁ〜、この山は鉱石がたっぷりでいいねぇ♪」

 

「······アンタ、竜人じゃなくてドワーフじゃないの?」

 

『私もそう思う』

 

 鉱石を大量に手に入れてホクホク顔なボクに、二人が呆れているみたい。鉱石が好きだからって、ドワーフ呼ばわりは違うんじゃないかなぁ?ボクの個人的なイメージだけど、ドワーフは鍛冶一筋って感じだよね。ボクは生産しようとは思ってるけど、鍛冶以外にも色々する予定だし、ボクとドワーフを比べるなんて、ドワーフに失礼だよ。

 まぁ、採掘が好きなのは否定しないけど。めちゃくちゃ前に、柊和姉に誘われてマ○クラの生声実況に参加した時も、原木二スタックくらい採ったらすぐ地下で採掘三昧してたからねぇ。柊和姉の他には雫乃や、幼馴染の漣と桔梗と一緒に配信してたんだけど、皆が気付いた時にはボクがもう地下に行ってたから、皆驚いてたなぁ。あ、一応言っとくけど、漣と桔梗は男だよ。二人はボクと違って、女には間違えられることは無い容姿だから羨ましいんだよね。 

 さて、現実でのことを思い出すのはここまでにして、今は試験に集中しなきゃ。

 

「採掘の間、待ってくれたお礼に少しくらい鉱石を分けようかと思ったんだけどなぁ。そんなこと言うならいらないか」

 

「っ!?わ、私は鉱石が好きでも全然良いと思うわよ!趣味嗜好は個人の理由だものね!」 

 

 手のひらドリルかな?すぐさま態度が変わったよ?

 そんなに鉱石が欲しいのね。

 ちなみに、今までに採掘した鉱石の割合は、ミスリルとダマスカスが四割ずつ、アダマンタイトが一割五分、残りはオリハルコン。······普通の鉱石、どこ?鉄や銅、錫とかの普通の金属はどこに行ったの?

 もしかしてこの山、なんかすごい所だったりするのかなぁ。魔法金属しか採れないって、明らかに普通じゃないよね。

 まぁ、ボクの【鍛冶】は全く育ってなくてまだこのレベルの金属は扱えないから、しばらくはインベントリの奥に眠らせておこう。

 

「ああっ······」

 

 ボクがインベントリに今掘った鉱石を収納すると、ロネが悲痛な叫びをもらす。え?「インベントリを使ったらプレイヤーってバレるだろ」?あぁ、空間魔法が使えるって言ったら納得してくれたよ。なぜか得体の知れないモノを見る目で見られたけど。

 ロネは鉱石が貰えなくて落ち込んでるみたいだけど、ロネの槍はどこも大丈夫そうだし、鉱石を入手する必要は無いと思うんだけどなぁ。

 

「落ち込んでないで、この山登るよ〜」

 

「はあ、私のミスリル······」

 

 いや、ロネのじゃないからね?ボクが掘ったんだからね?

 

 

 そんなこんなで見敵必殺を繰り返しながら山を登り、やがて頂上に辿り着く。

 

「うわぁ······綺麗·········」

 

「こんな所があったのね······」

 

 一面に花畑が広がっていて、そこには様々な色の花が咲き乱れている。ところどころには桜のような樹もあり、中心らしき場所には、てっぺんが見えない程に高い大樹がそびえ立つ。

 二人揃って景色に気を取られていると、いきなりボクの視界が埋まり、顔を何かで塞がれる。

 

「むぐっ」

 

「あっ」

 

 おおう、いきなり顔の全体にモフモフが。癒やされる·········。でもちょっと息苦しい。

 

「むむむむむ······ぷはっ。······ウサギ?」

 

「こんな所に動物っているのね。それとも、こんな天敵がいない場所だからこそいるのかしら?」

 

 ボクの腕の中で、純白のウサギがジタバタ暴れている。まぁ、力があまりに弱くて、微笑ましいものにしかなっていない。あー、可愛い。

 

「キュー!キュキュキュ、キュキュー!」

 

 ·········ん?何か伝えたいのかな?

 

「なになに······?あっち、黒い、狼、危ない。かな?」

 

「キュー!」

 

 そう!とでも言うかのように、前足をボクに向けるウサギ。

 そんな感じで、ボクとウサギで意思疎通をしていると、ロネが横から割り込んでくる。

 

「アンタ、精霊の言ってることがわかるの!?」

 

「なんとなくね。······って、精霊?」

 

 このウサギって精霊なの?ただの動物じゃないんだ。

 

「そいつは精霊獣よ。なんでアンタも精霊の言ってることが分かるのよ?」

 

「アンタも?」

 

「いや、なんでもないわ。それより、なんでアンタが精霊と意思疎通できるのよ?」

 

「さあ?」

 

 そんなのボクには分からないよ。

 ていうか、ロネも精霊の言葉が分かるみたいだね。なぜかは知らないけど、ロネはそれを隠したいみたいだからそこまで深くは聞かないでおこう。

 

『いや、貴方は【精霊交信】持ってるじゃない?』

 

『そうだっけ?』

 

 言われてみれば、そんなスキルを持ってたような?あんまりスキルのことは気にしてなくて、覚えてないんだよね。

 

『······まさか、忘れてたの?』

 

『······ノーコメントで』

 

『スノウのことだし忘れてたんだろうけど、今は見逃してあげる。それより、ロネがさっきから貴方を呼んでるわよ。さっさと返事してあげたら?』

 

 あ、マジで?

 

「ーーーアンタって何者なの?ねえ、聞いてるの?」

 

 ホントだ。速く答えないと。

 

「何者かって言われてもなぁ······。ボクはボク。ちょっと特殊なスキルを持っている、普通の竜人だよ」

 

「それだけはないわね」

 

 酷くない!?

 

「キュー!キュー!キュキュー!」

 

 自分のことを忘れるな、と激しく自己主張するウサギ。

 

「ごめんごめん。それで、あっちの方に黒い狼が······あ、もう来てる」

 

「戦うしかないわね」

 

 ここで話し込んでたからだろう。黒い狼が四頭、こちらに近付いてきている。逃してはくれなさそう。まぁ、逃げる気はないけど。

 

「キュー!?キュキュー!」

 

 ウサギはさっきより激しく身体を動かしている。一刻も早くここから逃げ出そうとしてるのかな。

 この感情は······恐怖?あと焦り?【精霊交信】を初めて使ったからかな、まだ会話はできず、感情を読み取るのが精一杯だね。

 

「大丈夫。ボク達ならこいつらに勝てるよ」

 

 そう言いながらウサギを優しく撫でると、段々ウサギは大人しくなる。うん、【精霊交信】は精霊の気持ちや感情が分かるだけでなく、精霊に自分の気持ちを伝えることもできるね。 

 なお、ウサギに勝てると言ったのは、ちゃんと根拠がある。種族スキルの【竜眼】で黒い狼たちを見ると、あまり魔力が多くないのだ。ボク、ユリア、ロネの中で一番魔力が少ないのはユリアなのだが、どの狼もユリアの三分の一にすら届いていない。これじゃ、負ける方が難しいよ。

 狼の強さに関して問題なさそうだけど、一つ不穏な点がある。

 

「ねえ、やけにこいつら禍々しくない?」

 

「誰かが魔法、もしくは呪術で使役してるに間違いないわね」

 

「呪術って何?」

 

「闇属性魔法の中でも、禁呪としてほとんどの国が規制している魔法よ。使ってる奴は裏稼業の者と考えて差し支えないわね」

 

 道理であんなに禍々しいのか。

 

「あれ?ロネって闇属性と影属性が主体だよね」

 

「ええ、他の属性も使えないことはないにだけれど、威力は望めないわね。あと、聖と光は全く使えない」

 

「······相性悪くない?」

 

「最悪ね。ああいうのに闇魔法撃ち込んだら、ダメージが入らないどころか回復するわよ。そのうえ聖属性以外だと、私の魔法じゃ牽制にしかならないわね」

 

「じゃあ、聖属性を持ってるボクが相手するよ。ロネはこの子をお願い」

 

「お願いね」

 

 抱いていたウサギをロネに預け、狼たちの前に立ち塞がる。

 ······ごめん、ウサギちゃん。ロネに抱かれて暴れてるけど、少しの間だから我慢してね。

 聖属性の『魔弾』と『魔槍』と一体につき五発ずつぶち込むと、すぐさま消え去った。聖属性に弱すぎないかなこの狼。

 

「ほらほら〜。もう大丈夫だよ〜」

 

 ウサギを呼ぶと、ウサギは即座にロネの腕から脱出し、ボクの所に戻ってくる。

 

「······私、何もしてないのにここまで怖がられてるんだけど」

 

「それをボクに言わないで?」

 

 ボクではどうしようもないよ。······って、ん?

 

「どうしたの?」

 

 尻尾に違和感を感じたので見下ろしてみると、ウサギがボクの尻尾を引っ張っていた。 

 何この生き物。すごく可愛いんだけど。

 

「キュー!」

 

 ウサギはボクを大樹に連れていこうと引っ張ってるみたいだが、体格差がありすぎてボクの身体は全く動いていない。

 あの大樹に何かあるのかな?

 

「ボクたちをあそこの大樹に連れて行きたいの?」

 

「キュ!」

 

 そう問い掛けると、ウサギは真剣な様子で頷く。ウサギの表情は判別できないけど、【精霊交信】で真剣だというのは伝わってくる。

 

「ロネ、大樹の方に行ってきていい?ロネを待たせちゃうかもだけど」

 

「何言ってんのよ。私も行くわよ?」

 

 え!?

 

「さっきの狼とかウサギの様子から推測するに、十中八九トラブルか何かあるよ?」

 

「そんなこと分かってるわよ。でも、ほぼ確実に危険な所にアンタ一人で行かせるのは、後味が悪いのよ」

 

 ロネさんイッケメーン。

 

「本当にいいの?」

 

「しつこいわね。パーティーメンバーが危険な場所に行こうとしてるのに、一人で行かせるわけないじゃない」

 

「ありがと!」

 

「きゃっ!?い、いきなり何するのよ!?」

 

 え、一次試験では躊躇なくボクの胸を揉んできたのに、ボクの方から抱きつくと顔を赤くするのはなんで?

 

「ただ抱き着いただけだよ?」

 

 そこまで恥ずかしがることじゃないよね?ボクのアバターが男だったならともかく、女に抱き着かれてるだけだよ?

 あ、ボクの場合は小さい頃から柊和姉や雫乃とよくお風呂に入ってたから女体に抵抗はないよ。

 

「抱き着いただけって、アンタねえ······」

 

「そんなこと言ってる場合じゃないよ。今は大樹の方に向かおう。ほら、ウサギも待ってるよ?」

 

 来ないの?と、首を傾げるウサギに毒気を抜かれたようで、ロネはため息一つで済ませる。

 

「はあ、分かったわよ」

 

 ボクはウサギを抱きかかえながら、ロネと一緒に大樹へと向かった。

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