Unique Tale Online ~竜人少女(?)の珍道中~   作:姫河ハヅキ

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第四十一話 王都での学院生活①

「ふぅ。この学院ってここまで広かったんだね·········」

 

「······そうね。昨日案内された私ですら迷いかけたわ·········」

 

 アナスタシアちゃん誘拐事件の翌日。ボクとロネは、学院の教室にある机で二人揃って突っ伏していた。

 その理由は、この学院の広さにある。元から通っているヘリオス達は慣れているが、初めて通うボクとロネは、この学院の広さには慣れていなかった。昨日の入学式の後に校舎一通り案内されたロネでさえ迷いかけたのだ。校舎の中に初めて入るボクは·········お察しの通り、迷った。

 校舎内に地図はあったけど、現実のそれと違って現在地が表記されてなかったので、どうにか【竜眼】でヘリオスやロネの魔力を探して、教室にたどり着くという手段を取らざるをえなかった。モン○ンみたいに、視界に地図が出てきてほしいんだけどなぁ。

 ちなみにヘリオスとロネの魔力を探した理由としては、光と聖の魔力しか無いヘリオスと、周りの人より圧倒的に多い影と闇の魔力を持つロネが分かりやすかったからである。

 なんというか······ボールプールの中で、周りのボールより何回りか大きいボールを探すより、色が違うボールを探す方が簡単って感じかな?どぅーゆーあんだすたん?

 

「僕達からしたら、そうでもないんだけどね。家よりは少し大きい、くらいだろうか」

 

「そうじゃな。妾の住んでいる城はここより広いからのう」

 

「それは君達が偉いからで·········え?」

 

 今、つい先日に誘拐された某オッドアイロリの声がしたような······。

 半ば確信しながら声のした方を向くと、予想通りのオッドアイロリ、もといアナスタシアちゃんがなぜかいた。

 

「なんでここにアナスタシアちゃんが!?」

 

「実は、昨日ここに来る予定だったのじゃ。途中で誘拐されてしまったのじゃが」

 

「へぇ、そうだったんだ。······ん?でも、試験ではアナスタシアちゃんを見た記憶が無いんだけど?」

 

「妾は試験を受けてはおらんからのう。じゃが安心せい。アーサーには、学院に通える程度の腕前はあるとお墨付きを貰っておるのじゃ」

 

 うん、アーサーさんが認めたのなら、アナスタシアちゃんの実力は十分にあるってことだね。この見た目でそれだけの戦闘力ってすごいなぁ。まぁ、お城に常駐している騎士よりは弱いから誘拐されかけたんだけどね。

 

「平凡な僕と違って、アナは魔術と格闘術の両方に才能があるからね。魔術ありでもなしでも僕じゃ勝てなくて、兄としては妹が強くなってくれて嬉しい気持ちと、妹に負ける自分が情けない気持ちがあって複雑だよ」

 

 あぁ、それは確かに複雑だね·········。

 

「そう卑下するほど兄上が弱いわけでは無いのじゃがのう。兄上が平凡ならば、あのクズゲスは無能ではないか?」

 

 え!?まさか、ヘリオス達の邪魔をしてきたっていう茶髪のこと·········?確か名前はクゲズスじゃなかったっけ?

 

「アナ。クズゲ······じゃなかった、クゲズスも一応ではあるがお前の兄だ。たとえそれが本当だとしても、人目のある場所でそんなことは言わない方がいい」

 

 うーん······ヘリオスも、アナスタシアちゃんを窘めるようでクズゲスを罵倒してるなぁ。よっぽど性格が悪い人なんだろうね。試験でもヘリオス達を妨害したらしいし、ボクをあんなに睨んでたもんなぁ。良い人なわけがないよね。

 

「うぬぅ······。あやつはクズなうえにゲスじゃが、兄上がそう言うのなら今はここまでにしておこう」

 

 と、話が一段落した所で何かのチャイムが鳴る。これ何のチャイム?

 

「そろそろ授業が始まる合図。これは五分前」

 

 そうミオナが教えてくれる。ボクは入学式やら校舎案内やら諸々は聞いてないから助かる。

 で、一時間目は何の授業だっけ?

 

「時間割ってどんな感じ?」

 

「午前が近接戦闘、午後が生産もしくは魔術。細かい内容は教師が決める」

 

 ·········意外と大ざっぱなんだねぇ。いや、リアルでの日本みたいに分刻みでする方が珍しいのかな?外国の学校の時間割とか見たことないから断言はできないけど。

 そんな風に色々と学院についてミオナに質問をしていると、ガラガラと教室のドアが開いた音が聞こえる。さて、先生は誰かな〜·········って、おじさんとリオンじゃん。

 ボクは毎日会っているから何とも思わないが、ヘリオス達、つまりボク以外の全員は十二英傑には滅多に会うことがないようで、揃って直立不動でガチガチである。

 

「パンツァー様、リオン様。私は、ヘリオス·セイリアと申します」

 

 どうにか噛まずに自己紹介をしたが、声は震えているヘリオス。

 

「わ、わわ妾はアアアアナナナスタシシシシシアじゃ」

 

 アナスタシアちゃんバイブしてるけど大丈夫!?

 

「ふ、フレイ·スルトって言います!」

 

 緊張に耐えられなかったようで、少し噛んでしまうフレイ。

 

「······ミオナ·ルサールカ、言います」

 

 あまりに震えて言葉足らずになっているミオナ。

 

「フィロ·ゼピュロスって名前ですよろしくお願いします!」

 

 いつもの元気な様子とは全く違い、緊張で早口になってしまっているフィロ。

 

「くぁwせdrftgyふじこlp@zßxdcfv=b/#」

 

 あの有名なネットスラング!?メルはどうやって発音してんのそれ!?「@」とか「ß」とか「/」さぁ!?

 

「··················(ショックで声すら出ない)」

 

 ロネ!?ロネー!?

 ボク以外の全員が錯乱するという、おじさんとリオンが姿を見せただけで大惨事である。阿鼻叫喚とも言うかもしれない。

 

「おう、知ってると思うがパンツァー·アレスだ」

 

「リオン·アルテミスだよー」 

 

「「「「「「「はいっ!よろしくお願いします」」」」」」」

 

 七人とも緊張しすぎじゃないかなぁ?おじさんとリオンが若干引いてるのは気のせいじゃないよね·········。

 

「······そんなに緊張しなくていいんだぞ?」

 

「そこまで緊張されると、アタシ達もやりにくいんだけどねー」

 

「お言葉ですが、貴方達を相手に緊張するなと言うのは少し無茶が過ぎるかと······」

 

「嬢ちゃんくらいの態度でいいんだがな······」

 

 ロネ達七人が一斉にこちらを向く。

 

「そういえば、なんでアンタ平然としてるのよ!?十二英傑よ!?」

 

 あー、うん。ロネ達にはボクがおじさんの家に居候してることは言ってないからなぁ·········。

 

「正直に言うとね、ボクはおじさん達に毎日会ってるんだよ。というか、ボクはおじさんの家の居候なんだよね」

 

「「はぁ!?」」

 

「「「「「えっ!?」」」」」

 

 やっぱり驚くかぁ············。七人とも驚いているが、その中でロネが何かを思い出した様子。

 

「······あぁ。あの時の大丈夫って、そういう意味だったのね」

 

 うん、そういうこと。(第三十五話参照)

 

「で、授業は始めなくていいのか?」

 

 そのおじさんの一言で、既に授業が始まっていることに気付く。七人が緊張してアタフタしている間に、五分以上経っていたみたいだ。

 

「ビシバシ行くからねー」

 

 お手柔らかにお願いします·········。

 

〜午前の授業:近接戦闘〜

 

「ふぅっ···!」

 

「筋は良いが、まだまだだな」

 

「貴方からしたら、誰でもまだまだでしょうよっ!」

 

「『水槍乱舞(ウォータージャベリン)』!」

 

「これだけの数を発動させといて味方に当てねぇのは感心するが、ちと軽いな。これなら、デカいのを一発ブチ込む方が効果的だぞ」

 

「はいっ······!」

 

「〈烈風掌〉!」

 

「これも軽い。えっと······フィロの嬢ちゃんは体重が軽いから、もっと一撃を重くしねぇとな」

 

 現在は、ヘリオス率いる高天原がおじさんを相手に組手を行っている。5対1ではあるが、当然のごとくおじさんが優勢である。それどころか、おじさんはかなり余裕がありそう。ボク、おじさんにはいつまで経っても勝てる気がしないよ。

 ヘリオス達も頑張ってはいるけれど、おじさんは喋りながら相手をできる程の力量の差がある。勝てないのは当然として、まともに一撃当てるのすら難しいと思われる。

 

「そこじゃっ!」

 

「うん、そこらの低ランク冒険者には負けなさそうだけど、ベテランとか王城の騎士相手は厳しいねー。王族なんだから、もっと強くならないと」

 

「うぬぅ、妾が未熟なのは分かっておったが、騎士に勝てぬのは悔しいのう。昨日みたいに、裏切った騎士相手に攫われるのはもう懲り懲りなのじゃー!」

 

「そうそうその意気ー。強くなるためには、才能とやる気が必要だから、その気持ちは忘れないようにねー」

 

「承知なのじゃ!」

 

 リオンは、アナスタシアちゃんとタイマンで戦闘訓練を行っている。アナスタシアちゃんにはパーティーを組んだ経験が無いので、他人との連携ができない。それに加え、王族であるアナスタシアちゃんの場合は、護身術の訓練も兼ねているので、一人の方が都合がいい。アナスタシアちゃんも格闘術を使うので、リオンが相手だと動きを多少盗めるから更に好都合なのだ。

 ボクとロネは組手の順番待ちである。ジュース片手に観客気分。

 

「皆頑張ってるねぇ。攻撃はいとも簡単に捌かれてるけど」

 

「そりゃそうよ。相手が十二英傑なんだから」

 

「だよねぇ」

 

「どいつも筋はよいが、いかんせん経験が足りぬのう。数十年は研鑽を積ませるべきじゃな」

 

「エメロアと違ってヘリオス達はただの人間なんだから、戦闘ができるのは精々四十くらいまで······って、エメロアいつからここに!?」

 

「エメロア様!?」

 

「ふむ、スノウでもこの方法は気付かんのか」

 

 いつの間にか、エメロアが盃片手にボクの隣に座っていた。何らかの魔法を使っていたのならボクの【竜眼】で気付くはずなのに········でも、前にエメロアは斥候系のスキルは持ってないって言ってたから魔法を使ってるんだろうけど············【竜眼】に頼り過ぎるのはよくなさそうだね。

 予想ではあるけれど、認識阻害·撹乱とか思考誘導の類かな?ボクのMNDは低いから、その手の魔法はレジストできないし。

 

「そうじゃ、あの三人娘を出せい。あやつらの訓練にちょうど良さそうなのがあるからの」

 

「ちょうど良さそうなのって?」

 

「属性すら持っておらぬただの竜じゃ。それぐらいなら問題無かろう?」

 

「まぁね」

 

 リル達はステータスは高いけれども経験はあんまり無いし、竜はちょうど良さそうな相手だね。もし無理そうなら、ボクが介入すればいいからね。

 まずは三人娘が起きてないと話にならないので、いつも通りの〈念話〉で呼びかける。

 

『三人ともー、起きてるー?』

 

『起きてるの!』

 

『······お腹空いた』

 

『目はパッチリなのです!』

 

 うん、元気はありそうだね。·········空腹を訴えてる一人を除いて。

 

『今から三人には竜と戦ってもらおうと思ってるんだけど、どう?』

 

『頑張るのー!』

 

『······お腹空いた』

 

『望む所なのです!』

 

 ············リル、イナバとヴァルナのテンション差がすごいなぁ。ヴァルナはどれだけお腹が空いてるんだか。ヴァルナだけは朝ごはんを先に食べさせておこうかな?

 

『三人に競わせるのはどうかのう?誰が一番早く竜を十体狩れるか競争させて、早かった者が好きなだけ料理を食べられるとすれば、やる気が入るじゃろう?ワシの亜空間には竜がしこたま転がっておるから、三十体くらい放出しても、痛くも痒くもないわい』

 

 三十体放出しても痛くも痒くもないってどんだけ溜め込んでるの······?しかも、こうやって訓練に使えるってことは、その竜達は生きてるんだろうし、エメロアの亜空間はプレイヤーのストレージより高性能っぽいね。

 さて、ヴァルナの反応はどうかな?

 

『トカゲ、ぶっ殺す!』

 

 テンション上がりすぎじゃない!?食欲すごいね!?

 ·········というか、ボクの思考を勝手に読んで『念話』してくるのはユリアだけじゃなかったのか。自由だなぁ二人とも。 

 ヴァルナも参加を表明したので、早速三人を召喚する。

 三つの魔法陣が地面に出現し、そこに武装したリル達が現れる。

 

「三人とも、今の条件でいい?」

 

「オッケーなの!」

 

「ごはん······!」

 

「頑張るのです!」

 

「·········え?この子達があの狼と兎?」

 

「うん、そうだよ」

 

「何があったのよ!?」

 

「ある人に【人化】の技能書を貰ったから、三人に使っただけだよ?」

 

「だけって······アンタねぇ·········」

 

 ヘリオスのお父さんも「二十くらいはある」って言ってたし、そこまで貴重な物じゃないよね?そこまで呆れること無いと思うけどなぁ。

 

「それでは始めるぞ。用意·········始めっ!」

 

 エメロアの合図で、それぞれ竜に向かって行くリル達。ボクとロネはそのまま観戦を続けるのだった。

 ちなみに、勝者はヴァルナ。ヘリオス達によるとリルやイナバもかなり早い方らしいんだけど、元々高いVIT値+鎧+種族スキルの【鋼気功】の三つの合わせ技によって、竜の攻撃が直撃してもノーダメなヴァルナには勝てなかった。リルとイナバの場合は、攻撃を回避する必要があるので、そこが勝敗を分けた要因だろう。 

 そして景品の「料理を好きなだけ食べられる」に関しては、食材はエメロア持ち、調理設備は学院の食堂を借りてボクが料理する羽目になったのだった。ヴァルナ、普段は加減していたようで、今回は食べる量がやばかったよ·········。【料理】のスキルレベルは上がったけど、かなり疲れた············。

 

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