Unique Tale Online ~竜人少女(?)の珍道中~   作:姫河ハヅキ

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第四十三話 夏だ!魚料理だ!······え!?水着!?

そんなこんなで二週間ほど。アナスタシアちゃん誘拐事件からは、ラノベ的なイベントに巻き込まれることなく平穏に授業を受けたり現実での仕事をこなしたりして、今日は学院も休みの日である(夏季短期講習は八月中旬に一度、三連休がある。休みの後は訓練が少し厳しくなるとのこと)。そんな日に、いきなりエメロアがあることを言い出した。

 

「港町、シーニアに行くぞ!」

 

「急にどうしたんだ、エメ?」

 

「久しぶりに魚や貝が食べたくなってきたからのう」

 

「······確かに、最近は食ってねぇな」

 

 そういえば······こっちでお魚を食べた記憶が無いね。市場でも全然売ってないし、ボクが作る機会も無かったんだよね。

 

「アタシは海鮮丼食べたいなー」

 

 こっちの世界にも海鮮丼はあるのか······。運営が持ち込んだのかな?

 ボクとしても、海に行くのは賛成かな。数日前から、シーニアで夏の特殊イベントが開催されてるってシステムメッセでお知らせ来てるし、気になるなぁ。

 

「オレも海鮮丼食いてぇな。オレらは種族的に海に行くことがねぇから、行くなら連れてってくれよ」

 

 部屋の扉を開け放ちながらそう言ったのはドワーフ系種族のイスファ。こんな口調ではあるが、見た目は褐色肌のボーイッシュな美少女である。あと、学院での【鍛冶】の授業の担任だ。

 

「ワ、ワタシも海に連れてってほしいです······」

 

 イスファとは正反対にオドオドとしているのはミネルヴァ。彼女も褐色の肌をしているが、ミネルヴァは内気そうな印象で、前髪で目が隠れている。俗に言う「メカクレ」というやつだろうか。あと、ミネルヴァは【錬金術】と【付与】の担任である。

 ちなみに、この二人も十二英傑のメンバーだ。二人合わせて《双児(ジェミニ)》で、イスファは《神匠(マスタースミス)》、ミネルヴァは《神智(アカシックレコード)》の二つ名を持っているらしい。

 おじさん達の二つ名を聞いてると、十二英傑は皆すごい二つ名を持ってるよね、と思う。おじさんの《斬天断地(バルムンク)》とか、リアルの神話に出てくる武器の一つにあるからねぇ。《魔帝(ヒュペリオン)》は神様の名前だし、《天穿(ルングニール)》は······グングニル、もしくはグングニールをもじったのかな?《煌牙(エリムサルエ)》は知らん。

 あ、一つ言っておくと、イスファ達にもボクの事情(ボクが異界人だとか、ボクの心の性別は男だとかね)は伝えてある。もちろんリオンにも彼女達もおじさんの家にしばらく居候するらしいので、ボクの精神が男ということを言っておかないと、色々なトラブルが起こりそうだからである。というか、既に一回、お互い裸の時にお風呂場で遭遇してしまった。

 その時にボクの事情は伝えたのだが、驚くことに二人とも全く動じなかった。喋り方的に豪快な性格をしていそうなイスファがさらりと流したのは予想通りだが、内気でオドオドしているミネルヴァすら動じなかったのは予想外だった。数百年生きていて、その手のトラブルに関しては動じなくなったそう。年齢が離れすぎてるせいで狼狽えることは無い、とのこと。

 なお、これでおじさん宅に来る十二英傑は全員ボクの事情を知ったことになる。

 

「アルマはどうするのじゃ?」

 

「そうね〜、私も行こうかしら〜。水着の女の子がたくさん見れそうだからね〜」

 

 やっぱりアルマさんはそういう行動理念か·········。あんまり見てると、「おまわりさん、こっちです!」みたいな事態になりそうなんだけど·········。

 

「嬢ちゃんはどうする?泳ぐのが苦手なら、無理しないでいいんだぞ?」

 

「ボクも行くよ。泳ぐのは結構好きだし、海の食材が欲しいからね。海鮮丼はもちろん、刺身やお寿司も作りたいな〜」

 

「······海鮮丼、刺身、お寿司?よく分からないけど、美味しそうな雰囲気」

 

 何のことかは分からなくても食べ物っぽさを感じてるのかな······?さすが食いしん坊。

 

「どれも海の食材を使った料理だよ」

 

「海、行く!」

 

 即答だった。むしろ食い気味。ヴァルナはいつか、食べ物に釣られて誘拐されるんじゃないかな?三人娘の中ではダントツで食欲に正直だから、知らない人について行かないか心配だよ。もちろん三人とも大切だけど、ヴァルナが一番注意力無さそうだからね·········。

 

「海?何か知らないけど、私も行くのー!」

 

「大っきい水たまりと聞いているのです。どんな物か気になるので行ってみたいのです」

 

 二人も乗り気な様子。三人が海を見てどういう反応をするかは分からないが、三人の水着を用意した方がいいかもしれない。

 

「水着って現地で売ってるかな?」

 

「あら〜?私が作るわよ〜?」 

 

 アルマさんはそう言うが、服などの衣料品に関しては、嫌な予感しかしないのでボクはアルマさんを頼りたくはない。お酒で酔った時にあんなことになってるしねぇ··········。しかも二回も。

 

「ねぇおじさん。港町で水着って売ってるかな?」

 

「どうだったか······。確かあったと思うんだがな」

 

「スノウちゃん〜。無言はともかく無反応はさすがに寂しいわよ〜」

 

 ダメだ。反応したらダメだ。一度でもアルマさんに反応を示したらそれが最後、とびっきり女の子っぽい水着を着せられちゃうんだろうなぁ。普通の女物の服なら(不本意ながら)着たことあるけど、あまりに布面積が小さい服を着た経験はない。小さい頃に柊和姉たちに着せられた服は多岐に渡り、スカートやワンピースといった一般的な物や、メイド服や花嫁衣裳に振り袖など派手なのもあった。が、どれも露出はさほど多くない。一番露出が多かったのはチャイナドレスだったかな?それも、ラノベに出てくるようなミニスカチャイナドレスじゃなくて、普通のチャイナドレスね。

 結論としては、水着は露出が多すぎるということだ。水着にも色々あるが、アルマさんがボクに着せようとしているのは十中八九ビキニタイプだろう。元から女だった人はあまり気にしないかもしれないが、心が男のボクからしたらたまったものではない。

 

「まぁ、別に泳ぐ必要は無いから。水着が売ってなかったら、釣りだけ楽しむかな」

 

「それはダメよ!スノウちゃんみたいな娘が水着を着ないなんて世界の損失よ!!」

 

 変な事を言ってる人は無視で。

 

「それで、どうやってシーニアに行くの?」

 

「うむん?そこのダイヤルを回せばすぐじゃぞ?」

 

 そういえばこの家は、特定の場所にならすぐに行くことができるアーティファクトだったね。シーニアにも行けたのか。

 

「スノウちゃ〜ん。魔導書のお礼の件なんだけど〜」

 

 うぐっ。魔導書を貰った時にアルマさんとはある約束をしているから、それには反応せざるをえない。

 

「·········何?」

 

「魔導書のお礼に、水着を着てくれないかしら〜?」

 

「一応聞いておくけど、どの種類の水着?」

 

「もちろんビキニタイプよ〜」

 

「露出が多いのはダメって言ったよね!?」

 

「え〜、でも〜」

 

「ダメなものはダメ!」

 

 アルマさんはもう五百歳以上いってるんだから、そんな子供みたいに駄々をこねないでよ!いい歳した大人がさぁ!!あと猫なで声を出すのもダメ!

 

「そこまで抵抗するなら、私にも考えがあるわよ〜」

 

「考え······?」

 

「スノウちゃんは、私とあの約束をした時に言った言葉を覚えてるかしら〜?」

 

「覚えてるよ。その時に露出が多いのはダメって言ったよね?」

 

「そこじゃないわよ〜。スノウちゃん、私が回数を指定していないことに気付いてないのね〜」

 

 ーーー「敬語は使わなくていいわよ〜。でも、スノウちゃんには今度可愛い服を着てもらいたいわね〜」ーーー

 

「············あっ」

 

 やらかしたぁぁあああああああああああああああああ!?何回アルマさんに着せ替え人形にされるか分かったもんじゃない!

 

「うふふふふふ〜」

 

 邪悪だよ!笑い方が邪悪だよこの人!

 

「週一で私の服を着るか、今回水着を着る代わりに、ファッションショーの回数を月一に減らすか、どっちがいいかしら〜?」

 

 おうふ。なんでかシステムメッセが来てるんだけど。

 

永続クエスト

依頼人:アルマ

内容:依頼人の希望する装備を着用すること。

報酬:一着につき50万ゴルド。着用した装備。

 

 報酬高っか!?そんなに払ってでもボクに服を着せたいの!?

 

「スノウはスタイルいいんだしさー、別に着てもいいんじゃない?」

 

「いいんじゃね?別に減るもんでもないんだし」

 

「ボクの羞恥心を計算に入れてほしいんだけど!?」

 

 他人事だからってこの二人は好き勝手に言い過ぎじゃない!?というかこのやり取りって何回かしてると思うんだけど!?

 

「なんでそんなに嫌なのよ?」

 

「リオンもイスファもユリアもボクの心の性別は知ってるよね!?」

 

「······無理しねぇでいいぞ、嬢ちゃん。約束したのは嬢ちゃんだからアルマとの約束を破れとは言えねぇが、嬢ちゃんが本気で嫌な服を着せようとしたら俺に言え。止めてやる」

 

 ヤダ·······おじさんイケメン過ぎ···········。惚れそう。

 

「い、嫌がってる人に無理矢理やらせるのはダメだと思います······」

 

 あぁ、常識人が増えてよかった······。ミネルヴァでやっと二人目だよ·········。

 

「大丈夫よ〜。船を出すんだから人目にはほとんど触れないわよ〜」

 

 ······船?

 

「あ、そういやそうだな」

 

「おじさん達、船を持ってるの?」

 

「おう、クラーケン食いてぇってなって作ったぞ」

 

「船体はオレとパンツァーとリオンとネムの四人で作ったんだ。まあ、リオンとネムは運搬とかの力仕事しかしてねぇがな」

 

 クラーケン食べたいからって船を自分達で作るのか······。行動力ありすぎでしょ。ってちょっと待って。

 

「たった四人で船を!?」

 

「そう難しいもんでもなかったぞ?」

 

 さすが十二英傑······。戦闘だけでなく、生産も規格外なのね。

 

「動力機関や各種設備はワシとミネルヴァ、あとパンツァーで作ったのう」

 

「あれ?おじさんは両方作ってるの?」

 

「おう。暇つぶしに色々触ってるから一流とまではいかねぇが、サポートくらいはできるんだよ」

 

「ワシらの手伝いをできる時点で、一流ではあると思うのじゃが?」

 

「そうですね。二流以下は、手伝いすらできないですよ?」

 

「そうだったのか?」

 

 ······もしかして。ボクが目指してる「戦う職人」というスキル構成、そのゴールっておじさんなのかな?

 

「おじさんって生産系の作業はどれができるの?」

 

「俺は十二英傑の中でも長生きしてる方だから、かなり暇だったんだよな······。鍛冶、木工、建築、造船、魔導工学あたりはやってるな」

 

「結構やってるんだねぇ」

 

「何せ、暇だったからな」

 

 暇だからってそんなに色々な生産スキル育てられるかなぁ·········?おじさんはどれだけ長く生きてるんだろうね?

 

「で、私達には船があるから人目にはあまり触れないけど〜。どうするのかしら〜?」

 

 むう·········。今回ビキニを着ればファッションショーを月一に減らしてくれると。断ったら、ファッションショーは週一かぁ。悩むなぁ。

 

「おかーさん、一人が嫌なら私も着るの!」

 

「······ビキニがどんな物か見せてもらった。おかーさんの次におっぱいが大きい私の方が適任。私が一緒に着る」

 

「水着も皆で着れば恥ずかしくない、なのです!」

 

「皆······」

 

 リル達は水着を着てもメリットなんて無いのに·········!なんていい娘たちっ!

 

「あ、リルちゃん達も参加してくれるなら半年に一回にしてもいいわよ〜」

 

 アルマさんがここで畳み掛けてきた。ぬぅ、ここまで譲歩してくれるのなら······。

 

「分かったよ。水着、着るよ」

 

「やったわ〜!」

 

「いいのか、嬢ちゃん?」

 

「あそこまで譲歩してくれたんだし。週一が半年に一回になっただけでもかなり有利だよ」

 

 ······なんかハメられた気もするけど。よくある交渉術だったりするよねぇ。最初に酷い条件を提示して、その後にマシな条件を提示するアレ。

 まぁ、古代魔法の魔導書は数千万ゴルドするってリュミナが言ってたからね·········。それを払わないでいいうえに、アルマさんが希望した服を着ると一着ごとに50万ゴルドとその服が貰えるっていうこれ以上無いかもしれない好条件。利益だけ考えると受けたのは間違いじゃないと思うけどなぁ。

 

「皆の分、もう作ってあるから早速着替えるわよ〜」

 

「嘘でしょ!?」

 

 こういう時だけ準備がよすぎじゃないかな!?

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「くぅっ、アルマさんの卑怯者ー!」

 

「何のことかしら〜?あ、写真は他人には死んでも渡さないから安心してね〜」

 

 現在地は港町シーニア、その砂浜。そこでアルマさんによる撮影会が行われている。·········撮影会が行われている。

 ボクは紫、ヴァルナは白のビキニで、リルはパレオが付いた少し大人っぽい水着。イナバは子供が着るようなワンピースタイプである。おまけに、ボクは何故か髪型もツインテールに変えられている。

 アルマさんは一度も「撮影会をしない」とは言ってないけどさぁ!?するとは思わないじゃん!というかこの世界にカメラがあるとは思わなかったし!!

 周りからの視線が恥ずかしい·········!しばらくポーズを変えながら撮影してるけど、もう限界······あうぅ·········。

 

「おいアルマ!嬢ちゃんが限界だ!いい加減にしろ!」

 

「えぇ〜。もっと撮りたいのに〜」

 

 あぁ······そうだ。見られるのが恥ずかしいなら、周りの人が居なくナレばいいジャン。ソウスレバ、恥ズカシクナイジャン。

 

「おい!?嬢ちゃんが黒化し始めてんぞ!?エメ!さっさと船を出せ!」

 

「分かっておるわ!」

 

「おかーさん、大丈夫?」

 

「······大丈夫じゃなさそう。すごい乱れた感情が伝わってくる」

 

「おいリル達!俺が嬢ちゃんを運ぶから、リル達は自分でこっち来てくれ!ユリ助はリル達の移動のサポートを頼む!」

 

「オッケー!あんまり人には見られたくないんだけど、さすがに緊急事態よね!」

 

 エメロアがポーチから巨大な船を出し、リオンやイスファ、ミネルヴァ達が飛び乗っていく。リル達ではまだジャンプ力が足らないので、ユリアの風魔法で援護してもらっている。

 

「お前ら!ちょっとそこどいてくれ!」

 

「フェッ!?」 

 

 パンツァーはスノウをお姫様抱っこし、スノウが顔を赤らめて動きを止めた所で人混みを飛び越え、慌ただしく船に乗り込んだのだった。

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