Unique Tale Online ~竜人少女(?)の珍道中~   作:姫河ハヅキ

50 / 51
評価バーに色付いた!嬉しい!!
ありがとうございます!!!


第四十五話 釣りと宴と綱引きと

「んぐんぐ······ぷはぁっ!この酒はうまいな!」

 

「なんだアイリス。お前も呑めるじゃねぇか!俺の知り合いは酒呑まねぇ奴か、あんまり呑まねぇ奴ばっかだからこういう酒盛りは久しぶりだ!」

 

「そいつは光栄だ。酒の強さには自信があるから、結構長い間付き合えるぞ?」

 

「ありがてぇ。今まではイスファくらいしか呑みに付き合ってくれる奴がいなかったんだよ」

 

「十二英傑の中でも、オレとパンツァー以外は酒に弱いもんなぁ。アルマやエメロア、カンナぐらいは辛うじて呑めるが、すぐに酔い潰れちまうか、酔っ払って暴走するからな。アルマは女に服を着せようとするし、エメロアは悪戯用の魔法薬とか魔法を使うし、カンナは周りの物斬るんだよな·········」

 

 あれ?十二英傑って戦闘力だけじゃなくて、危険度も世界最強の集団だっけ?特にカンナさんって人がヤバそうだよ?

 それ、もう酔っ払いじゃない別の何かじゃないかな······。

 

「まぁ、俺の都合のつく日ならいつでも付き合うよ。俺も酒は好きだしな」

 

「そん時はよろしく頼む。あ、そうだ!俺の家の地下では、今熟成させてる竜血酒があるんだよ。今度来ねぇか?」

 

「ほぉ、竜血酒。何年くらいだ?」

 

「確か二百年は越してるな。」

 

「おぉ!それは楽しみだな!」

 

「その時はオレも呼べよ?二百年物の竜血酒とか滅多に呑めないからな!」

 

「いいぞ!酒ってのは一人で呑むもんじゃねぇからな!」

 

「話が分かるじゃないか!」

 

「「「はっはっは!」」」

 

 さっきの自己紹介の後、瞬く間に仲良くなったおじさんと父さんとイスファ。父さんの口からお酒の話題がポロッと出た瞬間に二人が即座に反応。流れるような動作で酒瓶を取り出し、あっという間に呑み会に移行した。

 うわぁ······三人とも、水みたいにガブガブ呑むなぁ·········。しかも、皆して顔色は全然変わってないし、呂律は回ってるし·········ウワバミかな?

 

「おかーさん!釣り竿がしなってるの!」

 

「ん?あ、ホントだ!」

 

 竿受けに置いてある釣り竿が結構しなってるし、これはかなり期待できるんじゃない? 

 って重っ!?竿受けはこんな重いのを支えてたの!?

 

「ふんにゅ······重い·········!」

 

 ボクのSTRは640、さらに装備の効果で800を超えて900に迫るはずなのに踏ん張れない······!なんて力の強さ·········!!

 

「おかーさん、手伝うの!」

 

「私も手伝うのです!」

 

「ダメ!リル達まで引きずりこまれちゃうから!」

 

 リルとイナバが来ようとしているのを急いで止める。ボクでさえ力負けするんだ。ボクよりSTRが低いリルやイナバが加わっても焼け石に水だよ。特にイナバなど、素のSTRは驚きの二桁なんだし。

 ヤバい、魚の力強すぎる。もう無理かもしんない。 

 そう諦めかけたボクの腰を誰かが掴む。ボクは一体誰だと振り返る。

 

「···ぬぬぬ······!」

 

「ヴァルナ!?」

 

「···私が手伝う。私の方がおかーさんより力がある」

 

「ありがと!正直キツかった!」

 

 ヴァルナの言う通り、ヴァルナの素のSTRはボクと同程度、そこに戦斧で+400。このゲームは武器を手に持ってなくてもステータスは加算されるステキ仕様なので、これで合計STRは約1900。これなら魚にも勝てるでしょ!

 

「ふんぬー·········!」

 

「ぬぬぬぬ·········!」

 

 ボクの予想とは裏腹に魚との綱(?)引きは終わらない。ボクが引きずり込まれるのが止まり、二人がかりでようやく拮抗している。

 ······魚だよね?STRが推定で2000程だけど魚だよね?この魚、助けを呼ばないと釣れないよね!?ユリア!ユリアー!

 

『何よ?こっちは船内で酒呑んでるんだけど?』

 

 ずるーい!こっちは必死に綱引きしてるってのに!

 

『魚の力が強すぎる!支援ぷりーず!あと誰か力強そうな人呼んできて!』

 

『ただの魚相手になんで手こずってるのよ?』

 

『ボクとヴァルナの二人が全力で引いてやっと拮抗するレベルの力だよ!?』

 

『それならそれで、周りの誰かを呼べばいいじゃない』

 

『今周りにいるのは呑兵衛三人だけなんだよ!?』

 

 三人はボク達の様子を見て「楽しそうだな」なんて言ってるからね!?助けは期待できないよ!

 

『はいはい。今からそっちにリオンを送るから待ってなさい』

 

『なるはやでお願いね!』

 

 今でこそ拮抗しているが、段々ボクとヴァルナのスタミナが減ってきている。いつこの均衡が崩れてもおかしくない。

 それから数分後、やっとリオン達女性陣がデッキへと戻ってくる。

 

「お待たせー」

 

「何してたの!?こっちはそろそろ限界なんだけど!」

 

「そう焦らないでも大丈夫だよー。アタシが来たからにはすぐ終わるからさ」

 

 ボクの抗議を軽く流したリオンは、ヴァルナの腰を掴んでボク達を強い力で引っ張る。

 

「いよいしょぉぉぉぉおおお!·········あっ」

 

「···ゃあぁぁ!」

 

「うひゃぁぁぁあああ!?」

 

 強い、本当に強い力でボク達を引っ張ったリオンと、魚の力の差がリオンの予想より大きかったのか、勢い余ってボクとヴァルナがリオンの腕からすっぽ抜ける。

 大丈夫じゃないじゃん!このままだと呑兵衛達が囲んでる酒瓶の辺りにちょうど落ちちゃうんですけど!? 

 酒瓶の所に落ちたら、瓶が割れて破片で怪我しちゃうかもしれないし、ヴァルナだけは助ける!

 

「リオン!ヴァルナをお願い!」

 

 こちらに駆け寄って来ていたリオンに向けてヴァルナを押し出す。

 

「おかーさん!」

 

「大丈夫!ボクは飛べるか······うわぁっ!?」

 

 自前の翼でホバリングしてサムズアップしようとしたボクだが、何かに引っ張られてグッと急降下してしまう。

 ······あ。釣り竿から手を離すの忘れてた。というか魚デカァッ!?見た目はマグロなのにめっちゃデカいよ!?ボクより大きいんだけど!?

 

「どいてどいてどいてぇぇぇぇぇぇえええええええええ!!!」

 

ガラガチャガシャン!

 

 結局空中に留まることはできず、不確定名:マグロ(極大)と共に呑兵衛三人衆の宴に乱入するボク。さっきまで散々笑っていた三人はボクの乱入で酔いが少し醒めたのか、急に真顔に戻っている。

 痛ったぁ······。酒瓶の破片は〈魔力物質化〉の鎧で防いだけど、落下による打ち身は避けられなかったなぁ。あと、周りが酒臭い·········。頭がクラクラするよ。

 あれれ?皆が二人か三人かに増えてる?何こりぇ?

 

「ありぇー?皆増えてりゅー?いちゅの間に魔法使ったのー?」

 

「······嬢ちゃん?」

 

「······未成年フィルター機能してなくね?」

 

「こういう事故だとうまく機能しないんじゃない?」

 

「後でGMに報告しとく?」

 

「そうしましょう」

 

「おじしゃんも増えてりゅー!おもしりょーい!」

 

 おじさんや父さん、母さんが何か言ってるけど気にしない!楽しい!とにかく楽しい!

 

「おい!嬢ちゃん酔ってんぞ!エメ、解毒かけろ!」

 

「うむん?スノウは酔っても悪影響は無さそうじゃし、放っておいてもよかろう」

 

「この野郎!あと嬢ちゃん酒弱すぎだろ!」

 

 んー?何言ってるかは分かんないけど、おじさんがエメロアに怒ってる感じー?

 

「えめりょあー!おじしゃんを困らせちゃダメらよー!」

 

 フーハッハッハ!ボクの触手攻撃を受けるがいい!

 

淫靡なる触手(てんたくりゅ)ー!」

 

「ぬぅ!?これは···!」

 

「言わんこっちゃねぇ!」

 

 これでエメロアは確保ー♪さーて、どうやってお仕置きしようかなー?

 

「ふっふっふー。お仕置きの時間だよー!」

 

「させないわよ!『解毒(リムーブ·ポイズン)』!」

 

 何かが聞こえたと思ったら、ボンヤリとしていたボクの意識が段々はっきりとしてくる。

 

「······エメロアは何してんの?」

 

「おぬしがそれを言うか······?」

 

 ボクは触手に絡まれたことは無いので。

 というか、ボク今ビショビショじゃん。水着だから濡れるのは平気だけど、酒臭いのはヤダなぁ。

 

「おじさん、この船にお風呂ってある?」

 

「確か······そこの扉に入ってすぐの階段で、二階降りれば浴場だったはずだ。遠隔操作でさっき沸かし始めたから、少し待てば入れるぞ」

 

「ありがとう。じゃあ、風呂場まで行って待っとくよ。リル達は釣りを楽しんでてね。釣れた魚はボクが料理するから〜」

 

「「「はーい!」」」

 

 うん、三人ともいい返事。

 と、お風呂場に向かおうとしたボクをアルマさんが引き止めた。

 

「スノウちゃ〜ん。ちょっといいかしら〜?」

 

「何?」

 

「お風呂上がりは何を着るつもりなの〜?」

 

「いつもの装備かな」

 

「この気温だと、暑くないかしら〜?」

 

 あぁ、確かに。水着でも日光がジリジリと当たって暑いからなぁ。でも、アルマさんの場合だと、今の言葉は心配からだけじゃない。ほぼ確実に何か目論見がある。

 

「結論は?」

 

「これに着替えてくれないかしら〜?」

 

 そう言ってアルマさんが取り出したのは············ビキニ型のメイド服?水着じゃないけど、布面積は水着とそう変わらない。

 

「······これを着ろと?」

 

「そうよ〜」

 

「もうこのビキニ着たんだからヤダよ」

 

「いいじゃない〜。これ着てくれるなら、今の水着の報酬と合わせて150万ゴルド出すわよ〜」

 

 報酬二倍!?どれだけその服をボクに着せたいの!?

 アルマさんの熱意はともかく、服を着るだけで150万は美味しい。受けるかどうか、少し悩んでしまう。

 そう悩んでいたボクを見たアルマさんは、ボクが報酬が安いと思って逡巡していると考えたのか、さらに報酬を上乗せしてきた。

 

「それなら〜、250万ゴルドならどう〜?」

 

「······その額に加えて、ボクが出す条件を達成してくれたらいいよ」

 

「条件って何かしら〜?」

 

「ボクを撮影した写真と、撮影に使った道具を渡してくれない?」

 

「それは無理ね〜」

 

 ちくせう。こういう手合は利益より自分の欲望を優先するから、今みたいな要求を呑ませるのは難しいんだよねぇ。

 こうなったら、自ら禁じていたあの手を使うしかないのか······!ボクのメンタルや男としての何かに甚大なダメージが入るあの手を·········!

 

「アルマさぁん·········ダメぇ?」

 

 食らえっ!ビキニ+服の裾を少し掴む+猫なで声+上目遣い+【淫乱竜】での全·力(フルスロットル·)·誘·惑(テンプテーション)

 

「もちろんいいわよ〜。······ハッ!」

 

 勝った。こっちも結構ダメージあるけど勝った。

 アルマさんが快く渡してくれたカメラ(っぽい魔道具)をストレージにしまい、ビキニ型メイド服を受け取ったボクは、その足で浴場へと向かうのだった。

 

◇◆◇◆◇◆

 

 スノウが浴場に向かった後、パンツァーがスノウの去った方向を見て一言。

 

「嬢ちゃん、酔っ払ってる時の記憶ってねぇんだな」

 

 パンツァーはそう言ってから、スノウの淫靡なる触手によって縛りあげられた、エメロアとスノウが釣った巨大魚に視線を向ける。 

 スノウが酔っ払った時に、騒ぎを治めるどころか、しれっとポーチから何かの魔法薬を取り出そうとしていたエメロアが縛りあげられているのは納得できるが······なぜ巨大魚まで触手に絡まれているのかは謎である。

 ちなみに、魚の名前は戦艦マグロ。成長すると戦艦くらいまで大きくなるのがその名の由来だが、美味しさでいうとこのくらいの大きさがベストだったりする。

 

「素なのかわざとなのかは分からないけど、思いっきりこの二つをスルーしたよねー」

 

 素である。

 

「降ろすのじゃー!」

 

 エメロアの抗議は無視して、イスファが触手をペチペチと叩いて何かを確認している。

 

「ほう······魔術や巫術、精霊術封じに加え、魔力·霊力吸収まで備わってるのか。道理でエメロアが自分で振り解けないわけだ」

 

「無視するでない!」

 

「スノウが帰ってきてから解除してもらえ。悪戯好きのお前にはいい薬だ」 

 

 イスファがエメロアに対して冷たく言い放った所で、話題は戦艦マグロの方へと移る。

 

「これ······どうしましょう?」

 

 そう言いながら戦艦マグロを見上げているのはミネルヴァ。密かに戦艦マグロが大好物なため、彼女の口からはよだれが垂れている。どうやら、一刻も早く食べたいようだ。

 

「どうするって言ってもなぁ。釣ったのは嬢ちゃんだから、嬢ちゃんが帰ってきてからじゃねぇとどうにも出来ねぇだろ」

 

 パンツァーの言葉を聞いたミネルヴァは、シュン、と落ち込む。

 

「そう、ですよねぇ」

 

 と、ここで口を挟んだのはリル達三人娘。

 

「おかーさんが戻ってきたら料理してくれるのー!私達はそれまでにいっぱいお魚釣っていーっぱい料理してもらうの!」

 

「···釣るべし。釣るべし」

 

「待った方が美味しく食べられるのです!」

 

 それもそうかと思い至った面々は、各々の釣り竿を鞄から取り出して、釣りに参加し始める。もちろんエメロアは放置である。

 

「あ、俺らも風呂借りていいか?さっきまで狩りしてたからちょっと汗かいてるんだ」

 

「私も借りていいですか?」

 

「全然構わねぇぞ。それで、着替えはあるのか?」

 

「ん?いつもの装備でいいかなって」

 

 ここはやはり親子。見た目や口調などは違えど、思考回路は結構似ていたりする。

 高レベルの美少女が二人もいて、あの変態が大人しくしている訳がなく、いつもの数倍の速さで行動したアルマが一瞬でアイリス達の前に現れる。

 

「良ければ〜、この服を着てくれないかしら〜?もちろんお金は払うわよ〜」

 

「「いくら(ですか)?」」

 

「スノウちゃんのご家族だし〜、サービスで一人あたり100万ゴルドよ〜。あと、その服も報酬よ〜」

 

「俺でよかったらいつでも呼んでくれ。あ、パンツァーと酒呑んでる時以外な」

 

 報酬額を提示された瞬間すぐさまアルマの手を握るアイリス。欲に忠実である。

 

「こちらからお願いします」

 

 セナも躊躇いなくアルマの手を握る。セナからすれば、ただ服を着るだけで100万ゴルド貰えるなど美味しすぎるクエストだが、リアルでは男のはずのアイリスが刹那も迷うことが無かったのは、アラフォーの男性としてどうかと思っていたりするのはセナの秘密である。

 アイリスとセナはアルマから服を受け取ったあと、浴場へと向かった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。