Unique Tale Online ~竜人少女(?)の珍道中~   作:姫河ハヅキ

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第四十九話 VS水竜&海竜と船上での一幕

 ひぃふぅみぃよ······水竜が八匹、海竜が一匹か。

 

「父さん、どういう分担にする?」

 

「まずはそれぞれ水竜四匹ずつやって、先に終わった方が海竜に挑めばいいだろ」

 

「それでいこう」

 

 早々に作戦会議を終え、二人同時に船の側面を蹴り、近くの水竜へと襲いかかった。

 

◇◆◇アイリスside◇◆◇

 

 さて、雪と一緒にゲームをするのはいつぶりだったかな。

 晴夏が女優として名が売れてきて、俺達は雪達とは離れて暮らすことになった。

 朝早くに出て夜遅くに帰ってくることが多くなり、そのまま一緒に暮らしていると雪達の生活リズムが崩れてしまう、というのも理由の一つではあるが、俺達が離れて暮らすようになったのにはまだ理由がある。

 それは、俺と雪の見た目だ。晴夏や柊和、雫乃も美人で目立つのだが、俺と雪は別の意味で目立つ。俺は先天性色素欠乏症によって白髪赤目で、雪は俺程ではないが色素が薄くて栗色の髪に榛色の目。それに加えて、前髪で隠しているものの片目は紫色。髪や目の色を変えない限りは、俺達はどう足掻いても目立つ見た目なのだ。

 それが原因なのか、晴夏のマネージャー(文香と文乃)が家に来た時、全員スカウトされたんだよな······それも特に俺と雪が·········。

 雪がその道を望むなら応援するが、雪が素顔で人前に出るのが苦手なのは昔から知っている。そして、俺も目立つのは嫌いだ。

 結局、俺も雪も誘いを断って文乃は諦めてくれたのだが、雪に対して文香がかなりしつこかった。テレビ出演までは勧めなかったが、モデルとして起用したいみたいで「雪ちゃんみたいな可愛い子には可愛い服を着せたいっす!」とか抜かしたから本気で腹パンして黙らせたけどな。

 雪があの事件で受けた後遺症がまだ治ってない頃だったのに、なんで文香はあんなことが簡単に言えるかな······。まだ自分の女々しさを気にしてたし、人前に出るのは難しかった時期なのを文香は知っていたはずなんだが·········。

 っと、危なっ。さすがに戦闘中に考え事をするのはよろしくない。回避はできても、有効打を与えるのは難しいな。

 今まで丸腰で水竜を相手していたが、【瞬間装備】で現在愛用しているネタ武器を装備する。

 それは、斧の片刃と半分にした槌頭を長柄の棒にくっつけたような奇妙な武器。

 それは、これを作った鍛冶のトッププレイヤーにさえ「ラノベに憧れたプレイヤーから頼まれて色々な武器を作ってきたが、こんな変なのは見たことが無い」とまで言わせた程に歪な武器。

 斧と戦槌をそれぞれ作ればいいじゃないか、と言われるかもしれないが、生憎俺に分配された量じゃどっちも作るのはムリだったんだよ。で、苦肉の策として作ってもらったのがこの「仮称·二種混合武具」だ。見た目のイメージとしては、タクティカルハンマーの斧部分と槌部分をそのまま大きくしたような感じか?

 ·········この微妙に中二っぽくてダサいネーミングは俺じゃない。製作者のセンスだから、勘違いしないでくれ。

 ネーミングをさて置けば、この武器は斬撃と打撃、二種類の攻撃を繰り出すことができる割と優秀な武器だ。あと、使い勝手も結構いい。

 

「フッ···!」

 

 グシャッ

 

「GUOOOOOO!」

 

 首の半分くらいまで斧部分が食い込んだが、完全に切り落とす前に勢いが止まった。······成体とはいえ、水竜の割に硬くないか?

 まあ、以前に戦った飛竜よりはマシだ。短剣はともかく、斧や大剣でもロクに傷つかなかったからなぁ。それに、この武器ならここから首チョンパできる。

 

「よいしょっ······とぉ!」

 

 斧部分を水竜の首に食い込ませたまま身体をひねって、槌の部分を蹴りつける。蹴りの衝撃で再加速した斧部分は、今度こそ水竜の首を断ち切る。

 これで一体目······。この水竜達、イベント用に強化された特殊個体じゃないか?なんか不自然に強い気がするんだよな·········。

 

◇◆◇スノウside◇◆◇

 

「よいしょっ······とぉ!」

 

 ·········何だろうあの武器。色々なラノベやゲームに触れてるボクでも見たことがない。ボクが知らない作品にあった武器なのか、それとも父さん発案のオリジナルなのか······どっちかな?

 まぁいいや。後で聞けばいいし、今はボクの担当の水竜をやっつけちゃおう。

 足の裏から『魔砲』を発動し、急加速。その勢いで宙返りして、雷属性の『魔纏』で強化された、〈魔力物質化〉の刃でかかと落としを繰り出す。

 

「せぇぇい!」

 

バチバチッ、ガキィ

 

「GYAOOOOO!」

 

 あれ?水竜にしては硬すぎない?エメロアから聞いた話だと、地竜の幼体と水竜の成体の硬さに、そこまで大きい差はないらしいんだけど?

 うーん······水竜からちょっと漏れてる、黒いモヤモヤのせいっぽい?水竜でこの硬さってことは、海竜も普通の個体より硬そう。

 このメイド服の補正ありでこれだけの傷しか付かないとか面倒くさいなぁ。

 ちょっとやる気を無くしながらも、首が半ば千切れている水竜に向かって風属性の『魔槍』を数本放ち、とどめを刺す。

 やっと一体。あと三体と、水竜より硬いであろう海竜が相手かぁ·········。おじさん達が手伝ってくれないかな?

 

◇◆◇船上side◇◆◇

 

「案外、二人だけで大丈夫そうじゃのう」

 

「だな。後でネプに瘴気のことを聞くとして、今は嬢ちゃん達の戦いを見守っとくか」

 

 実を言うと二人にそこまで余裕は無いのだが、パンツァーとエメロアには二人を助ける気がないようだ。もっとも、余裕が無いというのは、ノーダメージで凌ぐのがキツいというだけで全然死にそうにはなかったりするのだが。

 

「気になることがあるんだけど〜」

 

 アルマが心底不思議そうに首を傾げている。どうにも納得できないことがあるらしい。

 

「どうしたのじゃ、アルマ?」

 

 そうエメロアに聞かれたアルマは、海上で戦闘中の二人を指差す。

 

「私の記憶が見立てが正しければ〜、二人共能力値が少なくとも二倍にはなってるはずなのに〜、どうして平然と戦ってるのかしら〜?」

 

 それを聞いて目を丸くして驚くパンツァー、エメロア、リオンの三人。彼らとは対照的に全く動じていないセナが印象深い。

 そして、三人娘は生後半月程のため、何がなんだかイマイチ分かっていない。三人共、まず能力値が何なのかを分かっていない。

 

「嬢ちゃんの動きがいつもよりいいなとは思っていたが、二倍以上になってたのか!?」

 

 大体ではあるが、スノウとアイリスのステータスの変化を説明しておこう。

 スノウの場合はSTRとAGIが4.5倍、INTが5倍、DEXが3倍、初期値から動いていないMNDは30倍以上、初期値以下のVITに至っては60倍以上になっている。

 アイリスの場合はSTR、AGI、VITが2.7倍程、初期値のDEXは30倍弱、初期値からの減少具合がスノウより酷いINTとMNDは100倍近い数値にまでなっている。

 ·········実はステータスが低下する称号はなかなかに珍しいのだが、二人揃って持っているあたりはさすが親子である。なお、アイリスやセナ並に特化したステータスのプレイヤーはほぼいない。二人の特化具合は運営すらろくに想定していなかったりする。

 

「え、二人はなんで普通に動いてるの?急に自分の能力値が変わったら、しばらくは戸惑うはずなんだけど」

 

「それが疑問なのよ〜。二人共、メイド服に着替えてからは戦闘してなかったのに〜」

 

 強いて言えば、料理くらいしかしていない。料理も多少は身体を動かすとはいえ、さすがにそれだけで数倍化した自身のステータスを完全に掌握するとは考え難い。

 十二英傑の面々が混乱した所で全く動じていなかったセナが答えを出す。

 

「二人揃って異常に器用なんですよね。スポーツ······こっちだと何て言うんでしょう?とりあえず、大抵のことはすぐに要領を得てあっという間に上達しちゃうんですよね」

 

 セナの言葉を聞いたパンツァーとリオン、ユリアが遠い目で空を見上げている。心当たりがあるらしい。

 

「格闘術と爪術の上達、えらく早かったのはそういうことか······」

 

「仙術もすぐだったよねー···」

 

「精霊術もよ······」

 

 こちらの世界の人間(獣人やエルフなども含む、人形範疇生物のことを呼称する)にとって、初めて魔力や霊力を感知するのに数分というのは有り得ない。本人の才能にもよるが、一週間でも早い方で、一ヶ月でもそう遅くはないのである。数日だと天才、教わったその日だと神童とまで言われる。その神童でも、数時間はかかる。

 しかも、この話は魔力と霊力のどちらかだけを感知するのにかかる期間であり、両方感知できるようになるのは、片方だけを感知できるようになるより遥かに長い。ほとんどの場合は、魔力が感知できる人物は霊力への感覚が鈍く、霊力が感知できる人物は魔力への感覚が鈍いというように、どちらかの力に関する感覚が鈍い。

 エメロアやカンナなどの例外はいるが、彼女達でもスノウよりは遅い。ラノベやアニメで想像力はたくましくなっているが、それでも早すぎる。

 そして、ここにいる面々は知らないが、魔力や霊力を感知できるプレイヤーはほとんど存在していない。感知することは不可能ではないが、この技術はプレイヤースキルに依存するため人を選ぶのだ。

 スノウなどの竜人が持つ【竜眼】は魔力を見ることができるのだが、このスキルを使うには魔力を目に集中させなければならない。それをスノウは無意識で行っているのだが······おそらく、エメロアが無理矢理スノウに魔導書と技能書を使わせた時に魔力を感知·操作できるようになったと思われる。霊力の把握も早かった理由は謎である。

 なお、竜人の種族スキルのほとんどは魔力の感知能力とそれを操作できるプレイヤースキルが無いと使用不可能だ。最初の関門が高い分使いこなせると強いのだが、プレイヤーはその事実を把握していないので、竜人は不遇種族とされている。

 

「スノウはこっちでも格闘術をやってたんですね」

 

「こっちでも、ってことは嬢ちゃんは向こうでも格闘術をやってたのか?」

 

「ええ、格闘術といっても護身用の技しか習っていませんが」

 

「······その割には攻撃もすぐに上手くなってんだよな」

 

「まあ······夫も、槍や盾、それにあの変な武器もすぐに使いこなせるようになってましたし」

 

 このように複数の技術をあっさりと習得しているスノウとアイリスだが、現実ではそうはいかない。

 習熟速度は変わらないのだが、二人揃ってスタミナが絶望的なまでにない。体質なのかスタミナが驚くほどに付きにくいので、長時間の運動どころか、短時間も厳しい。もちろん持久走の1500mは走り切る前に倒れる二人である。

 そしてこれまた体質なのか、脂肪がかなり付きにくいが筋肉も全然付かないため、筋力が必要な技術は習得できても使えない。今アイリスが水竜や海竜相手にブンブン振っている仮称·二種混合武具など、持ち上げることすらできない。

 そうやってセナと十二英傑が話している間に、戦闘が終わったスノウとアイリスが船上に戻ってくる。

 

「おかーさん、おじーちゃん、おかえりなの!」

 

「おかえりなさいなのです!」

 

「···水竜、食べたい。あ、おかえりなさい」

 

 おかえりを言うより先に食欲が表にでるケモミミロリ巨乳(スノウはロリ爆乳)。なんとも正直な狼である。

 

「はいはい、ただいま〜」

 

 少しニヤけながら、駆け寄ってくる三人を抱きしめるスノウ。表情を見た所、既に立派な親馬鹿だ。「うちの子はやっぱり可愛いなぁ」などと思っているのが丸わかりのニヤけっぷりである。

 アイリスもかなり緩んだ表情で、爺馬鹿といっても差し支えない。見た目は女ではあるが、一応爺馬鹿である。

 

「···おかーさん、水竜は食べれるよね?前みたいに魔法には使わないよね?」

 

「えっ···う、うん!今度何か料理を作ってあげるよ!」

 

「「「やったー!」」」

 

 少し前に手に入れた地竜数十体の素材。実は、あの量をスノウがたった一人で使い潰していたりする。【錬金術】と、エメロアの錬金室でアレコレした際にうっかり習得したあるスキルであの膨大な量を全て使い切ったのだ。その甲斐あって、攻撃用と防御用でそれぞれ切り札は製作できたが、鱗、甲殻、肉に至るまで使い切ったので、三人娘は竜肉料理にはありつけなかった。

 まあ、ヴァルナに言われなければ今回も使い潰しそうな様子だったが。

 と、ここで突然、先程海竜がぶつかった時より大きな揺れが船を襲う。

 

「何何!?」

 

「揺れてるのー!」

 

「こ、こけちゃいそうなのです!」

 

「···おかーさんにくっつけば大丈夫」

 

「あ、私もくっつくの!」

 

「私もなのです!」

 

「うわぁあ!ちょ、急にくっつかないでー!」

 

「レアモブか!」

 

「アイリスちゃん、今はそんな事態じゃなから!」

 

 まさに喧々諤々。前触れなく船を襲った揺れに慌てる星宮家をパンツァーが落ち着かせる。

 

「嬢ちゃん達は落ち着け!この揺れは知り合いだから!」

 

 パンツァーの言った通り、三十秒もしない内に段々と揺れが収まってくる。

 それと同時に何か巨大な気配が接近してきて、その気配の主が姿を現す。

 

「パンツァー、久しぶり······っていつの間にハーレム作ったの?」

 

「ハーレムじゃないんだが!?」

 

 何かを伝えに来たはずなのにまるで関係ない話にすぐさま移った、気配は巨大だが体躯は小さな女性。そんな彼女の暢気さとは裏腹に結構深刻な事態にこれから巻き込まれることになるスノウ達一行であった。

 

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