Unique Tale Online ~竜人少女(?)の珍道中~   作:姫河ハヅキ

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第五十二話 邪神討伐編②

「ううぇ······気持ち悪ぅ·········」

 

「気持ちは十分に分かるが、我慢してくれよ。嬢ちゃん」

 

「うん······」

 

 勢い良く飛び出したのはいいものの、モンスターのあまりの多さと気持ち悪さに、つい勢いが衰えてしまう。

 この光景、微妙にSAN値減るんだけど·········。

 

「とりあえず、ボク達が通れるくらいには殲滅しないとね」

 

 ボクは、そう言いながら両手でそれぞれ手首の辺りをタップして、とあるアイテムを取り出す。

 名前は【属性炸裂瓶】で、【付与】と【調合】スキルで製作した攻撃用アイテムだ。使用方法は至って簡単、投げるだけ。瓶が割れると同時に、付与された属性が炸裂しダメージを与えるものである。

 魔石に〈属性付与〉を施して〈魔力付与〉済みの水と混ぜ合わせるだけの、製作方法も簡単なアイテムなのだが、品質がINTとDEXの両方に依存するので、不人気アイテムなのだと攻略サイトに書いてあった。【付与】の時にINT、魔石を水と混ぜ合わせる時にDEX判定がされるので、魔法職が【付与】を担当して【調合】持ちの生産職が混ぜ合わせると高品質の物が完成するのだが、この手法では手間がかかる。そのうえ、望みの属性の【属性炸裂瓶】を作ろうとすると、その属性魔法と【付与】持ちの魔法職を探さないといけないので、それがこのアイテムの不人気さに拍車をかけている。

 まぁ、それなりに高いINTと1000超えのDEX、【付与】も各種属性魔法も揃っているボクからしたら、それらのマイナス要素はマイナスにならないのだが。

 あと、今【属性炸裂瓶】を取り出したのは、ボクが着ているメイド服の【メイド式暗器術】だ。説明文はあんなに巫山戯ていたが、それに反してかなり有用なスキルだった。

 簡単にまとめると、ストレージからアイテムを取り出す時のショートカット。予め決めておいた身体の一部をタップすると、設定しておいたアイテムが瞬時に手中に現れるというスキル。ボクの場合は、両手首で【属性炸裂瓶】、両太ももで【封術石】、腰で各種回復ポーションを設定してある。

 ちなみに【封術石】というのは、言葉通りの、魔術が封じられているアイテム。【付与】のアーツである〈術式付与〉を施した、いざという時に速攻で魔法を使うための魔法職の虎の子らしい。そう攻略サイトには書いてあったが、どうやら精霊術も付与が可能っぽい。ダメ元でやってみたらできました。

 ボクの場合は、『魔砲』と『精霊砲』以外はすぐに発動できるので、この二種類以外は【封術石】には仕込んでいない。

 【封術石】はあまり在庫がないので、この掃討戦で主に使うのは、量を作ってある【属性炸裂瓶】だ。

 

「そぉいっ!」

 

 モンスターから黒いモヤモヤが出てるので、効きそうな聖属性と光属性の【属性炸裂瓶】をぶん投げる。炸裂を受けたモンスター達は、汚い断末魔をあげながらドロドロと消えていく。

 

GISYAAAAA

 

GYAAAAAA

 

 見た目も気持ち悪ければ、断末魔も消え方もキモいよこいつら! 

 欲しくないのに【深きモノの鱗】とか【深きモノの甲殻】とか気味の悪い素材もドロップしてるんだけど!

 モンスターのドロップオプション弄って、自動解体からマニュアル解体にしとけばよかった·········。そうすれば、モンスター達の素材を手に入れずに放置できたのに·········。

 

「うわっ、こいつらキモっ!しかも素材がドロップしてやがる!」

 

 Gを平気で潰す父さんも、さすがにこいつらはダメだったか······。

 

「なぁスノウ、この素材いる?」

 

「いるわけないでしょ!?」

 

 取り出しながら聞かないで!?

 

「俺もいらないし······オラァッ!」

 

 投げたぁ!?

 父さんが気合い一杯に投げた【深きモノの甲殻】は激しく回転しながら飛翔し、複数のモンスターを蹴散らして肉片へと変える。

 

「モンスターの討伐と素材の消費、両方を兼ねる最適な手段だな」

 

「オプション変えないと、素材はどんどん入ってくるけどね」

 

 既に結構な数のモンスターを倒しているので、それに応じた量の素材がボク達のストレージには入っているだろう。もうマニュアル解体に変えても、当分弾は保つんじゃないかな?

 

「あ」

 

「私の分はアイリスちゃんに送っておくわね」

 

「じゃあボクの分も」

 

「やめてくれない!?」

 

「······嬢ちゃん達、実は余裕あるな?」

 

「「うんにゃ」」

 

「いえ、これ割と空元気に近いので」

 

「アタシ達も、こいつら相手にするのは結構キツいんだよねー」

 

「気持ち悪いものは気持ち悪いからのう」

 

「キモい」

 

 倒しても倒してもウジャウジャ湧いてくるからねぇ·········うん、出し惜しみは無しでいこう。邪神まで温存しとこうと思っていたんだけどね。

 

「汚物は消毒だよー!」

 

 先程の【属性炸裂瓶】であのキモいモンスターの弱点は聖属性だと分かっているので、使うのは聖属性の『魔槍』だ。

 いつの間にか発動していた〈淫靡なる触手〉で吸収したエメロアのMP、ここで使い切るつもりでいく!気持ち悪いから!

 

「おぉー。壮観だな」

 

「無詠唱でこの発動数、エメロアより上なんじゃないかしら〜?」

 

「ワシの魔力を供給して、雑魚共はスノウに任せるのもアリじゃな?」

 

 ボクの頭上に次々と現れる、光り輝く聖属性の『魔槍』。聖槍の群れはどんどんと数を増し、あっという間に五十を超え、百、二百、三百と数え切れない程にまで膨れ上がる。ちなみにイメージは某JKセイバーさんの宝具。

 

「降り注ぐよっ!」

 

 ボクが手を振り下ろすと同時に聖槍の群れも降り注ぐ。それらはどれも外すことなくモンスターを貫き、瞬く間にモンスターの数を減らしていく。

 槍の雨が止む頃には、ボク達を中心とした半径100mくらいの範囲にいたモンスターは、軒並み姿を消していた。

 

「恐ろしい殲滅力だなぁ。スノウにはキル数勝負は挑まん」

 

 いや、これエメロアのMPを吸い取ったからできる所業なんで。ボクだけのMPだと精々五、六百が限界·········五、六百あれば弾幕は作れちゃうね。父さんなら平然としのぎそうな気がするけど。

 

「俺達は広範囲技を持ってる奴なんていねぇし、エメロアに広範囲爆撃をやらせたら地形が変わるし、嬢ちゃんぐらいが丁度いいな。これで殲滅も楽になりそうだ」

 

 え、まさかここからの殲滅はボクにやらせる気?今の一回で数千のMPが吹っ飛んでるから、あと······数十回はいける。

 なにせ、エメロアから十万は吸い取ってるからね。あのセクハラ幼女はそれだけ吸われてもピンピンしてるのが不思議なくらいだよ。

 

「そういうわけでスノウちゃん、後は頼むわね〜」

 

「マジでやらせる気なの!?」

 

「ワシの魔力を譲渡してやるから、頑張ってくれ。正直、めんどくさいからのう」

 

 ぶっちゃけやがったこのセクハラ幼女。

 

「嬢ちゃん、頼んだ」

 

「一匹一匹殴るのめんどいからよろしくー」

 

「がんば」

 

 ボクとしてもめんどくさいんだけどね!?

 

「スノウちゃん、お願いするね」

 

 リュミナに至っては聖属性のエキスパートでしょうが!?こういう時はリュミナの出番だよね!?

 

「······この類の禍々しいモンスターの相手はリュミナがやるべきじゃないの?」

 

「僕もある程度の範囲攻撃は持ってるけど、スノウちゃんには遠く及ばないから。適材適所だ」

 

「本音は?」

 

『めんどくさい』※全員

 

 うん、知ってた。最初からぶっちゃけてる人もいたし。

 

「嬢ちゃんが撃ち漏らした奴らぐらいは俺らが相手するから、すまんが頼む」

 

 まぁ、おじさん達からは魔導書や技能書、強い装備とか色々貰ってるからねぇ。こういう時くらいじゃないと恩を返せそうにないから、やるけどさ。

 ボクに対して頭を下げようとしていたおじさんを止める。

 

「普段はボクがお世話になってるから、おじさんが頭を下げて頼む必要はないよ。ボクはこういう時くらいしか恩を返せないんだから、任せてよ」

 

 そうおじさんに伝えて、一歩前に出る。

 

「エメロア、魔力供給お願いね」

 

「承った」

 

「父さん、魔法に集中したいからボクを運んで」

 

「俺は撃ち漏らしの処理に回るから他の奴に頼んでくれ。あと、俺の体格だと今のお前を運ぶのは辛い」 

 

 父さんのSTRは1500オーバーなんだからボクを運ぶくらい余裕だよね?······って、体格?どゆこと?

 

「ゲーム内のボクって、現実でのボクより太ってたっけ?」

 

「胸が太ってる」

 

「あ、なるほど」

 

 父さんの身長でボクをおんぶすると·········胸が頭に乗るか顔を挟むかのどっちかが起こりそうだね。

 

「誰に運んでもらおうか?」

 

 母さんは透けてるから無理そうだし、エメロアはボクと同じくらい小さい。で、リオンはボクより少し大きいくらいだから厳しいと。······アルマさんとリュミナ(変態二人)はスルーで。

 そうなると、カンナさんかおじさんしかいないな。

 今朝、おじさんにお姫さま抱っこされたからまだ気恥ずかしいし·········。

 

「カンナさん、ボクを運んでくれませんか?」

 

「ん」

 

 頷いてるし、OKってことだよね?

 

「ありがとうございます」

 

 ボクはそう言って頭を下げたが、何故かカンナさんは不機嫌そう。

 

「敬語」

 

 えーっと·········?

 

「敬語じゃなくてもいいってことですか?」

 

「やめて」

 

 あ、敬語はやめろと。

 

「じゃあ······カンナ、お願い」

 

「ん」 

 

 心なしか嬉しそう?雫乃より表情の変化が少ないから分かりにくいな。

 カンナさんがボクに背を向けてしゃがむ。

 

「乗って」

 

「それではお言葉に甘えて、と」

 

 着物のせいで分かり辛かったが、カンナさんは予想以上にスリムだった。ボクを背負っても大丈夫なのか、と心配してしまう程に腕や腰は細く、とても戦闘力が高いとは思えない。十二英傑だけど。

 

「行く」

 

「え、皆まだ準備してないけどぉぉぉぉおおおおおおおおおおおお!?」

 

 ちょ、速い!速すぎるって!!!

 

「カンナの奴、嬉しそうだな。あちこち旅してて、俺ら以外に知り合いがろくにいねぇからか?」

 

「そうじゃろうな。あやつは昔からワシらとしか暮らしておらんかったからのう」

 

「知り合いが増えてよかったわね〜」

 

 もう100m以上離れてるから何言ってるか分かんないけどさっさと追いかけてきて!?このままだと二人で邪神に挑む羽目になるんだけど!?

 それからおじさん達が無事に追い付いて、エメロアから魔力供給を受けながらモンスターを殲滅することしばらく。

 たった二人で邪神討伐などという無茶な事態に陥ることはなく、全員で全力殲滅を行い無理矢理に作った安全地帯でエメロアが結界を張り、おじさんがどこからともなくログハウスを取り出して長い休憩を取り、海底とは思えぬ一夜を過ごすボク達であった。

 なお、休憩を取り始めて少ししてからボク達はログアウト。夕食やお風呂などの雑事を済ませてから就寝。

 おやすみなさ〜い。

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