Unique Tale Online ~竜人少女(?)の珍道中~   作:姫河ハヅキ

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第五十四話 邪神討伐編④

『ユリア、そっちはどう?』

 

『全然余裕よ?私達が到着する前はかなり切羽詰まってたらしいけどね』

 

『そんなに余裕なの?こっちはすごく大変だったんだけど』

 

『モンスター共の出処がそっちにあるのが理由でしょうね。多分、スノウ達が数を削ったから私達の所まで来るモンスターが減ったんでしょ』

 

『あぁ、なるほど。······ボクも防衛してた方がよかったかな』

 

 希望してないのに、気付いたら使役主担当になってたんだよねぇ。解せぬ。

 

『おぬしがたとえ防衛希望だったとしても、結局は使役主担当にするつもりじゃったけどな』

 

『マジで!?』

 

 なんでよ!?

 

『おぬしは格が低いが、戦闘に関しては天賦の才があるようだからのう』

 

『その理由なら父さんの方が相応しいと思うんだけどなぁ』

 

 あの人、属性魔法でも速度がツートップの雷属性と光属性を発動を視認してから対処可能だよ?避けるなり弾くなり、色々するからね?

 マジでありえない反射速度なんだよ。

 

『スノウ、前にそれと同じようなことやってなかったっけ?』

 

 あー、あれは傍から見たら同じように見えても、やってることが全然別なんだよね。

 あと、今更だけど『念話』に乗せてない思考も当たり前かのように読み取るの控えてくれないかなぁ。ボクが「ユリアには聞こえないように」って意識しながらだと、その間の思考は読み取れないみたいだけど、四六時中それをできる程の集中力がボクにはないから、結局ほとんどだだ漏れなんだよねぇ。

 

『ボクは魔法が発生する予兆が目で分かるから反応できるだけ。反応速度は父さんより全然遅いよ』 

 

 自分は突進しながら、相手から突き出される槍を目視してからの反応で躱すあの人外とは一緒にしないでほしい。ボクは精々、立ち止まった状態で突き出される槍を躱すくらいだね。

 

『······私の目だと、属性までは読めても術の形式は分からないのよね』

 

『うむん。あやつは自分の目の特異性には気付いておらんからのう』

 

『え、今なんて?』

 

『『何もないのじゃ(わよ)』』

 

 『念話』で小声とかハモったりとか、二人共ムダに器用なことやってるなぁ。

 

『そうだ、リル達はどんな感じ?【召喚術】の〈念話〉だと出力が足りないっぽくて、通じないんだよね』

 

『そうなの?じゃあ、私が繋ぐわね』

 

 ユリアがそう言ってすぐ、【召喚術】でいつも繫がっている、覚えのある三つの魔力を感じた。これ、もう話せるのかな?

 

『リル、ヴァルナ、イナバ、元気?』

 

『元気なのー!』

 

『···むしろ暇』

 

『私達は元気なのですよ。おかーさんはどうなのです?』

 

 やっぱりそっちは楽かぁ。ヴァルナは暇だって言ってるし。

 

『こっちは······少し大変だけどなんとかやってるよ』

 

 本当は少し大変って言葉じゃ足りないけどね。リル達に心配をかけたくないし、モンスターが数百体も出現したことは内緒にしておこう。

 ······何が大変だったって聞かれたら、ボクを背負っていたカンナの移動速度が速過ぎて、何度も落ちそうになったことかなぁ。富○急ハイ○ンドのド○ンパより速い(※個人の感想です)のに、シートベルトが無いんだよ·········。生きた心地がしなかった············。

 

『そっちの方で槍の雨降ってたけど、大丈夫だったの?』

 

 あ、その光景はユリア達がいる所からでも見えたのね。誤魔化せる気がしないから、モンスターの数だけぼかしてユリア達に伝えておこう。

 

『モンスターが結構出てきて鬱陶しかったから、ボク達がやったんだよ』

 

『さすがおかーさんなの!』

 

『···すごい』

 

『おかーさんはさいきょーなのです!』

 

 いや、おじさん達の方が圧倒的に強いから。昨日の槍の雨だってエメロアの魔力供給を受けたからできたことだし、移動はカンナに任せていたし、ボク自身の力でやったことはほとんどない。褒められても、自分には不釣り合いだという気持ちが勝る。

 

『ボクは弱いよ。運良くエクストラスキルと称号を入手したから多少の戦闘力はあるけれど、色々と手を広げているから器用貧乏に過ぎない。ボクくらいの強さの人ならどこにでもいるよ』

 

『······無詠唱であの数の術式の同時展開と構築は、ワシでも厳しいのう。どこにでもいるとは、何の冗談じゃ?』

 

『私もあれに勝てる自信は全くないわね。遠目でも、数百はあったと思うのだけど?』

 

『終盤では千を超えてたのう···』

 

『魔力はあるからってそんな芸当ができる存在が、ポンポンいたらたまらないわよ』

 

 マジで『念話』でどうやってるの内緒話(それ)?どっちかボクに教えてくれない?

 

『おじさん達の方が強いのー?』

 

『···どのくらい?』

 

『······どれくらいだろう?』

 

 言われてみれば、おじさん達の本気を見たことがないな。本気を出したら、どれくらいなんだろうか。

 

『ドラゴンもわんぱんなのです?』

 

 そのくらいならできそうだね。

 

『で、エメロア。どれくらいなの?』

 

『どれくらいと言われても答えにくいのじゃが······。ワシらにも得意不得意があるからのう』

 

『そっか。そうだよね』

 

 イスファとミネルヴァは、生産が本業だから他の十二英傑よりは戦闘力が低いって言ってたっけ。それに、十二英傑には二人の他にも戦闘以外が本業の人がいるらしい。

 

『戦闘が得意な人ならどれくらい?』

 

『そうじゃな···ネムやパンツァーなら、山の一つや二つは破壊できるじゃろう』

 

『マジで!?』

 

 下級とはいえ邪神討伐を楽勝と言っていたくらいだから強いだろうとは思ってたけど、そこまでなの!?

 そしてネムさん。おじさんには「一日の八割くらいは寝てるだろう」と言われていた、寝るのがとても好きそうな人。のんびり屋さんだとは聞いていたんだけど、どんな人なんだろう?

 

『ネムさんってどんな人なの?』

 

『あやつは牛の獣人でな。牛獣人の例に漏れず普段は温厚でのんびりしておるが、キレると十二英傑の中で一番ヤバいのう。あやつ固有の属性魔法と大斧で暴れるから、単独でネムを止められるのはパンツァーくらいしかおらんわい』

 

『そんなに強いんだ。ちなみに、ネムさんはどんなことで怒るの?』

 

 ネムさんは一日のほとんどを自宅で寝て過ごしているらしいからボクが単独でネムさんに会うことはないだろうけど、念の為にネムさんが怒ることを記憶に留めておこう。

 山を破壊できるような人を怒らせたくない·········。余裕で死ねる。一瞬でひき肉になる予感しかしない。

 

『あやつは悪口でも嫌がらせでも、大抵のことでは怒らぬが···相手の勝手な都合で起こされた時はかなり機嫌が悪くなるな。』

 

『睡眠が第一って感じ?』

 

『そうじゃな。·········あやつ、【怠惰】の大罪スキルを持っておるしのう』

 

 大罪スキルっていうと······ラノベ御用達の七つの大罪がモチーフになっているスキルかな?その中で、ネムさんは【怠惰】を持ってると。

 そういえば、大罪スキルって作品によって扱いが全然違うよね。ただの強スキルとして扱ってる作品もあれば、所持していることがバレたら重罪人として指名手配されるくらいのヤバいスキルとして扱ってる作品もある。このゲームの場合は、前者寄りっぽい?

 前者ならボクも安心だ。杞憂かもしれないけど、【淫乱龍】がボクとしては怪しいと思っているんだよねぇ。説明文には「あるカーススキルを習得すれば、統合進化して〜」って書いてあったけど、「あるカーススキル」って【色欲】じゃないかな?大罪スキルってカーススキルと言われたりすることもあるみたいだし。

 まぁ、今のは全部憶測だし、エメロアもカーススキルとは言ってないしセーフーーー

 

『あやつの持つ【怠惰】はカーススキルの癖に、あやつの性格に影響が無いのは不思議なんじゃがな』

 

 アウトォォォォォオオオオオオオ!

 大罪スキル=カーススキルだったわ······。

 いや、カーススキル所持者が悪だとは決まってないから。持ってるだけで犯罪者扱いされるとは言ってないからまだ大丈夫。

 あと、ボクのはただのエクストラスキルだ。万が一、億が一【色欲】を手に入れない限りは問題ない。

 

『···大罪、かっこいい響き』

 

神聖国(レリジオン)神官(ハゲ共)に睨まれるからやめておけい』

 

『うん、国に睨まれるのはやめておこうか』

 

 エメロア達十二英傑ならともかく、ボク達には国を敵に回しても勝てる戦力なんてないのでやめてください。

 

『···わかった』

 

 ホッ。分かってくれたならよかった。

 

『···自力で高火力技を開発する。城塞を一撃で壊せるくらい』

 

 ねぇ戦う相手は誰を想定してるの?まさか神聖国を潰してから大罪スキル習得に走る気じゃないよね?性格に影響出るらしいからやめよ?

 

『リルもすっごい技作るのー!』

 

『私もなのです!』

 

 ヴァルナの熱気に当てられたのか、リルとイナバまで高火力技を編み出そうと張り切っている。······大斧とか大槌とかの重量武器ならともかく、片手剣や短剣、弓で高火力技はちょっち厳しいと思うなぁ。

 

『うーん。ボクも高火力技作っとかないと追い越されちゃうかな?』

 

 戦闘職になるつもりはないけど、負けるのはなんだか悔しいんだよねぇ。

 

『いやあんたはアレがあるでしょ』

 

『スノウはあれ以上の鬼札を開発するつもりかの?時間をかければええじゃろうに』

 

『アレを一発作るのに数時間かかるからねぇ。アレより火力を上げようとしたら、さらに時間がかかっちゃうんだよ』

 

 そんな風に、別行動していたユリア達やエメロアと話していると、不意にカンナがボクの腰辺りをトントン、と叩く。

 

「着いた」

 

「あ、そうなの?············うわぁ」

 

 カンナの背から降りて顔を上げたボクの視界に入ったのは、RPGでよく見る魔王城をより禍々しく、気持ち悪い外見にした名状しがたい神殿のような建築物だった。しかも建築物の内部から昨日殲滅しまくったモンスターが湧き続けており、それが眼前の光景の気持ち悪さを増している。

 

「昨日みた光景よりさらに気持ち悪いんだけど!」

 

「あのモンスター共を生み出してる元凶がいるんだし、仕方ないわな」

 

「SAN値直葬されそうよね」

 

「······なぁ、俺らは今からあの気持ち悪い建物の内部に入るからな?」

 

「「「うげろぉ」」」

 

 大量のモンスターと黒くてウニョウニョあいた建築物にSAN値が削られ、すっかり萎えてしまったボク達に、おじさんが諭すように残酷な事実を告げる。

 

「帰っていいかな?」

 

「「同じく」」

 

「諦めてくれ。使役型を含んだ邪神五体はさすがに手が足りねぇ」

 

「ほら、エメロアが掃除している内にさっさと突入するよー」

 

「うわっ」※父さん

 

「ひゃっ」※母さん

 

「きゃぁっ」※ボク

 

 おじさんが父さんを、リオンが母さんを、カンナがボクを抱えて一斉に黒神殿(仮)に走っていく。

 ボク達が三人揃って眼前の光景に悲鳴をあげる中、カンナが懐から何かを取り出す。

 

「ネプテューヌ」

 

「キモいキモいキモいいいいいいいい!········ん?何これ?」

 

「ネプテューヌ、お守り」

 

「ネプテューヌからボクにって?」

 

 カンナから渡されたのは、透き通った淡い水色の、雫形の宝石。ネプちゃんからボクへのお守りらしい。

 

「ん」

 

「ありがとう。······ってなんで今なの!?」

 

「忘れてた」

 

 さいですか。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 おじさん達はボク達を背負ったまま黒神殿の前にいたモンスターを蹴散らし、内部の迷宮は壁を破壊して一直線に進み、途中の罠は作動する前に破壊し、ようやく広場のような場所まで辿り着いた。

 

「ふう。ここまで来るのは案外簡単だったな」

 

「いや、手当たり次第に壊したからでしょ」

 

「······酷いダンジョン攻略を見た」

 

 さもここに来るまでに多くの苦難を乗り越えてきたかのようにやり切った表情を浮かべ、額の汗を拭っていたおじさんにボクと父さんでツッコミを入れる。

 

「アビーがいない時は、いつもこうなのよね〜」

 

「あやつかアリアくらいしか、斥候系の技能を習得しておらんからのう」

 

 あぁ、だからあんなに乱暴な攻略法だったのか。シーフがいない時は、漢探知か漢解除、もしくは強行突破しか手段が無いからねぇ。

 

「ま、下級とはいえ、のんびりやってられる事態でもないからねー·········っ!来るよ!」

 

 ボク達がカンナ達の背中から降ろしてもらいながらワイワイと喋っていると、リオンの忠告とほぼ同時に場の魔力が濁り始める。

 広場全体に漂っていた魔力が広場の中央辺りに段々集まってくる。

 邪神が出現するのだろうと全員が戦闘態勢を取って待ち構えていると、突如として取り巻きの邪神担当の四人の足元に黒い魔法陣が現れる。

 

「何っ!?下級の癖に空間操作の異能だと!?」

 

「うむん!?カンナ、此度はいつもと違うかもしれぬ。注意せよ!」

 

「分かった」

 

「今更飛びのいても···うん、ムダっぽいねー」

 

「リュミナ、スノウちゃん達を守るのよ!」

 

「言われずとも!」

 

 さすがに予想外の事態だったのか、おじさん達は空間操作の対処に間に合わず、次々とどこかに飛ばされてしまう。四人の姿が黒い魔法陣と共に消え、先程から広場の中央に集まっていた魔力がついに形を成す。

 それは、夜の空よりも何よりも黒い魔力を全身から溢れさせ、さらにはその魔力を自身に纏っており、数え切れない程の多くの触手を持ち、触手にはびっしりと至る所に吸盤が············これ、見た目は完全にタコじゃね?魔力の禍々しさをさて置けば、どこからどう見てもタコだ。 

 相手は邪神じゃないの?何なのこいつ?

 ボク達がいきなりのタコの出現に固まる中、その禍々しいタコが口を開く。

 

「我が名はニャルラトホテプ。千の化身を持つ、無貌の神である。小さき者共よ。この我の一部となれること、誇りに思うがいい」

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