逃走中@グランセル   作:紅波

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お待たせしました、section9の後半です!


section9-2

~南街区:残り時間25分

 

~side:Estelle and Joshua

 

 リシャールが確保された後、エステルを抱えたヨシュアは屋根の上を走っていた。

 

「よ、ヨシュア……。大丈夫?」

 

「大丈夫だよ。しっかり掴まっていないと落ちるよ、エステル。」

 

「うっ……。」

 

 高いわけではないが、エステルは屋根の下を見てヨシュアの言葉に従う。この高さでは、さすがに落ちたら無傷ではすまなそうだ。受身を取れるならともかく。

 再び大通りまで戻って来たところで、先ほども聞いた、よく知っている声を聞いた。

 

「……エステルさん、ヨシュアさん。そんなところにいたら危ないですよ?――こちらに降りて来てください。」

 

 丁寧な口調で、しかしはっきりとした意思を感じるその言葉は、ハンターの1人、クローゼが発したものだった。

 

「…………」

 

「……ヨシュア、どうするの?」

 

 ヨシュアはエステルを抱えたまま、無言で飛び降りた。飛び降りるとエステルを下ろす。

 

「へえ、脳天気オンナにしては利口じゃないか。ちゃんとヨシュアに従ってさ。」

 

 クローゼに対面する形で降りたヨシュアとエステルは、後ろを振り向いた。こちらは先ほども襲撃してきたハンター、ジョゼットだ。

 

「誰が脳天気ですって!?」

 

「そんなことはおいておいてさ……。」

 

「そんなことって何よ!?」

 

「「リア充爆発しろ!」」

 

「「理不尽だ!?」」

 

 クローゼとジョゼットから予想もしなかった一言を投げられ、エステルとヨシュアは思わずつっこむ。

 

「っていうか、この生意気ボクっ子はともかく、クローゼまでどうしたのよ!?」

 

「だからそんなことおいておいてさ、」

 

「そんなことって何よ!?」

 

 エステル、思わず同じツッコミを入れる。

 

「さっきギタギタにされた恨みも込めて……今度こそ確保してやる!」

 

「ええと……そういうことなので……。」

 

 クローゼは若干苦笑しながらも、エステル達に細剣(レイピア)を向ける。エステルはそんな2人を見て、

 

「いいわ、かかってきなさい!」

 

 と、彼女もまた棒術具(スタッフ)を構える。

 

「はあ、しょうがないな……。」

 

 ヨシュアも若干渋々ながら、参戦する。

 

「では、遠慮なく行きますね――ジーク、お願い!」

 

 クローゼの声のすぐ後、白ハヤブサのジークが上空からエステルとヨシュアに襲い掛かる。

 

「そこっ!いくよっ!どうだっ!」

 

 ジークの奇襲にエステルとヨシュアが怯んだ隙を狙い、ジョゼットが3発撃ち込む。 エステルとヨシュアは防御を強いられる。それを好機と見たのか、クローゼとジョゼットはさらに細剣(レイピア)と導力銃で攻め立てる。

 しかしヨシュアは防御を強いられながらも、アーツの駆動を試みる。

 

「そうはいきませんよ……えい!やあ!」

 

 クローゼは目にも見えない速さで連撃を繰り出す。アーツの駆動を解除する効果のあるシュトゥルムだ。しかしヨシュアはそれを避け、アーツを放った。

 

「アビスフォール!」

 

 地面に巨大な穴が現われ、そこから不気味な生物の姿が見え隠れする。その生物は高く飛び上がると、そのまま重力に従いクローゼとジョゼットのところに落ちてきた。

 アビスフォールには20%の確率で気絶する効果がある。クローゼは気絶予防のアクセサリーをつけていたが、つけていないジョゼットはその効果を思い知ることとなった。そうして、戦えるのはクローゼのみとなる。そこに、エステルの追い討ちがかかった。

 

「とっておきを見せてあげるっ!はっ!とりゃあぁぁぁぁ!せいっ!まだまだぁっ!はぁぁぁぁ!――絶招・太極輪!」

 

 エステルのSクラフトはクローゼを巻き込んだ。彼女が知っていたそれよりも、遥かにパワーアップしている。それだけではなく、

 

「もう、僕は逃げない……はぁぁぁぁ!せやっ!真・幻影奇襲(ファントムレイド)!」

 

 ヨシュアもまた、Sクラフトを放った。そして彼のSクラフトも強化されていた。連続でSクラフトを食らった2人のダメージでこれ以上戦えることもなく、2人は戦闘不能となった。

 クローゼもジョゼットもこれ以上戦えないことを確認すると、エステルとヨシュアはアガットとレーヴェと合流するために東街区へ向かった。

 

 

 

 

 

~東街区

 

 東街区では、アガットとレーヴェがモルガン将軍と戦っていた。1対2のはずなのに、アガットとレーヴェの方が数の上で有利なはずなのに、モルガンのあまりの強さに戦いは膠着、むしろ2人の方が押されていた。

 

「おい、このままだと……。」

 

「分かっている。……もう不思議玉がない……?あの箱に1つしか入っていなかったのか……。」

 

 レーヴェは先ほどのオーロラ不思議玉が最初で最後だったことを心から残念だと思っているようで、しょぼーんとしている。どうやらもう一度使ってみたかったようだ。

 

「お主ら……何をしている……」

 

 その様子を見ていたモルガンは地の底を這うような声を上げた。アガットはとばっちりを食らっている。

 

「俺は何もやっていないぞ!?」

 

 アガットは当然のことを言うが、どうやらモルガンは頭に血が上ってしまったようで、聞こえていないようだ。

 

「……おりゃああああああああ!」

 

「む!?」

 

 若干ふざけた会話が繰り広げられているところで、上空からその場の全員がよく馴染んだ声が聞こえた。上を向くと、棍を振りかぶった少女――エステルがモルガンめがけて飛び降りてきたところだった。

 

「っ!」

 

 モルガンは慌てて後ろに跳び退る。そのモルガンの数十センチほど上に、少々気味の悪い眼が現われた。電撃が走るような音がすると、モルガンの動きは一切封じられてしまった。

 

「ぐっ……!」

 

「エステル!」

 

「ヨシュア!」

 

「2人とも、ヨシュアの魔眼で動きが封じられている今がチャンスよ!」

 

 アガットとレーヴェは顔を合わせると、実は作り出してからそんなに経っていないコンビクラフトを使った。

 

「受けてみよ、剣帝の一撃……」

 

「これで決める!」

 

「「シルヴァリオンダイブ!」」

 

 レーヴェが斬るとモルガンが凍り漬けになる。そこに、高く飛び上がったアガットが重力に従い重剣を振りかざして飛び降りてきた。

 

「くっ……」

 

 モルガンも戦闘不能になった。

 

「エステル、それにヨシュア。クルツさんに追いかけられて無事だったのか……。」

 

 アガットは感心75%、呆れ25%といった調子で言った。

 

「モチのロンよ♪あっ、クローゼとジョゼット倒してきたわよ。」

 

 エステルとヨシュアはその後ビーコンでアガットとレーヴェが大変らしいことを確認して助けに来たらしい。

 

「「……お人好しだな。」」

 

 アガットとレーヴェは思わず同時に言った。

 

「うるさい!それより何でそんなに分かり合ってる様子なのよ。」

 

「「うるさい。」」

 

 エステルは再び同時ツッコミを受けた。

 ハンターがいる気配もないのでしばらく話していると、4人のビーコンがいっせいに鳴った。

 

《ちょっと君たち強すぎだからさあ、もうオーブメント以外は使用禁止ね!武器とか使っちゃダメだからね!私もう激おこなのだよ!その代わりにミッションもハンター増加もないからさー。》

 

「「「「…………」」」」

 

 語調がかなりおかしいが、ブルブランからのメッセージだった。アガットとレーヴェに手ひどくやられておかしくなったのだろうか。

 

「ってちょっと待て!武器使用禁止だと!?」

 

 4人の中で最もアーツが苦手でEPも低いアガットが叫ぶ。

 

「うーん、困ったわね……。」

 

 アガットよりはマシだが自身もアーツは得意ではないエステルがぼやく。

 

「みんなに提案があるんだけど、」

 

 ヨシュアが口を開いた。

 

「逃走者はもう僕たち4人だけみたいだし、4人でパーティーを組んで行動するのはどうかな?」

 

「「「…………」」」

 

 3人は考える。

 

「そうね~。じゃああたしは補助に回るね。」

 

「攻撃アーツは俺とヨシュア担当か。」

 

「……俺は?」

 

「「「拳で殴る!」」」

 

 アガットは絶句したが、ヨシュアの考えに賛成した。

 

 

 

 

 

――ブルブラン、クローディア・フォン・アウスレーゼ、ジョゼット・カプア、モルガン、戦闘不能――

 

――残り時間15分――




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