~北街区:残り時間85分
敗者復活戦を見事勝ち抜いたエステルは、城を出て北街区から南街区へと向かっていた。鼻歌を歌ってはいるが、ちゃんと周りの警戒は怠っていない。……いないはずだ。
南街区に入ろうとしたところで、見覚えのある少女と遭遇した。
「あれ、ノーテンキ女じゃん。復活戦はポーカーだって聞いたけど、勝ったんだ?」
「誰がノーテンキよ!っていうか、あたしが勝ち抜いたのが意外とでも!?」
「まあまあ、エステルさん――」
その時、エステルの後ろからも聞き覚えのある声が聞こえた。そこにいたのは、クローゼ。どうやら、ジョゼットと2人で挟み撃ちを仕掛けたようだ。
「ナイス、クローゼ!……さて、もっかい捕まえてやろうかな…♪」
「エステルさん、申し訳ありません。」
ジョゼットもクローゼも満面の笑みで告げた。
「ふ、2人とも怖いんですけど………。」
クローゼがゆっくりとオーブメントに手をかける。ジョゼットは導力銃をエステルに向ける。絶体絶命のピンチと思われたその時。
「エステル!避けて!」
「ヨシュア!?」
エステルが見たのは、ヨシュアとリシャールの姿だった。
「僕はもう逃げない……はあっ!秘技・
「散り行くは群雲、咲き乱れるは桜花。今宵、散華する武士がため、せめてもの手向けとさせてもらおう!はああっ!秘技・桜花残月!」
エステルが飛びのくと、そこに来たヨシュアとリシャールがそれぞれのSクラフトを使い、ジョゼットとクローゼを攻撃する。
「くっ……」
ジョゼットとクローゼは膝をついた。
「エステル!最初に捕まったって聞いたから心配してたんだ……(ジト目)」
「うっ……ごめんなさい、油断しました……。」
「……私のこと忘れてないか…?」
リシャールが呆れて言う。
「「も、もちろん忘れてません!」」
「ならいいが……殿下には悪いが、今のうちに退散させてもらおう。」
「そうは行きませんわ、閣下。」
そこに更に現われたのは――。
~東街区:残り時間70分
グラッツ捕獲……もとい確保後、ジン、キリカ、カルナの3人はエーデル百貨店に潜んでいた。途中でドルンやらブルブランやらと遭遇したが、なんとかやり過ごしている。
「しかし、ここも広い店だな。まさか4階まであるとは思わなかった。」
「そうね。だからこそこんな隠れ処があるのだけど。」
「しかし……わざわざこんなところに隠れる必要もないんじゃないのかい?」
「売り場だと、ハンターは確実に探すと思うぞ。」
そんな会話をしている彼らがいるのは、3階の紳士服売り場のストックルームだ。
「――誰か来たわ。」
ジンとカルナは黙って耳を澄ませた。かすかに売り場の方からカツンカツンと足音が聞こえる。
「……(音を立てないように散ろう)」
3人はそれぞれ動き出した。足音の主がいなくなってから4階のストックルームに集合すると決めて。
side:Zin
「やれやれ、なんてこった。」
ジンの数アージュ前には、リースの姿があった。幸い、リースはジンに気付いていないようではあるが、離れた方がいいのは自明の理。しかし、そこで音を立てれば見つかる。どうしたものかとジンが考えていると、リースが後ろを振り向いた。
「「…………あ。」」
見つめ合うこと数秒。先に動いたのはジンだった。
「――はあああっ!」
竜神功で身体能力を上げると、ジンはその場を走り去る。リースも
「よし、これならなんとか――」
「天の眷属たる女神のしもべよ……」
「ちょっと待てええ!店が壊れるぞ!」
リースはSクラフト・ヘヴンスフィアの詠唱を始めたのだ。
「昏き大地を清める光、今こそ来たれ……其は光にして意思、七耀の守護者なり。今こそ我らに力を――ヘヴンスフィア!シューーート!」
百貨店にいたジン、カルナ、キリカが確保され、店の修理代はケビンが出すことになったとかならなかったとか。アリシア女王が代わりに出したとか出さなかったとか。そこら辺は謎である。
――ジン・ヴァセック、キリカ・ロウラン、カルナ、アウト――
「あたしの苗字がないのはどういうことだい……?」
「大人の事情というヤツだろう。」
「お腹すいた……かな?」