食物連鎖の頂点はいつの時代もヒトであった。
しかし、いつの頃からかヒトを食糧として狩る私達
人肉を食す私達はヒトにとっては天敵でしかない。
だからヒトも、私達を狩る喰種捜査官という天敵を作った。
……喰種とヒトが共存するなど、万に一つあることではないのだ。
殺して、殺されて……また殺して……殺される。
まるで、戦争だ。
終わりのない戦争……
私は……
『せんせー! 人形先生!』
「ッ!?」
後ろから聞こえてきた声で我に返った私は振り向く。
私の後ろには、太陽の光にも負けない笑顔で私を見つめている子供達がいた。
可愛い……頑張って保育士の免許を取った甲斐があった。
「人形せんせ、鬼ごっこしよ!」
「私は人形じゃない……雪先生って呼んでくれないと遊ばない」
子供達は私のことを人形先生と呼ぶ。
私がいつも無表情で無口という理由らしい……ちょっとショック。
私にもちゃんと喜怒哀楽はありますよ。
ただ、ポーカーフェイスって言うのでしょうか、感情が表に現れないのです。
無口なのは……元からです。気にしたら負けです。
「じゃあ、ゆきせんせー鬼ごっこ!」
「……うん」
じゃあって…酷い…
私が傷ついているのもお構いなしに嬉しそうに引っ張っていく子供達。
本当に、子供は可愛らしいですね。
だけど……この子達が大きくなって、私達喰種のことを知ったらどう思うのかな。
私がヒトを殺して、その肉を食べている化物だとしたらこの子達は……
「せんせい?」
子供達が心配そうに私を見ていた。
「……どうしたの?」
「ゆきせんせい、何だか悲しそうな顔してたから」
「……気のせい」
私は子供達の頭をわしゃわしゃと撫でた。
まったく、私が顔を崩すことはないのに……どうやって私が悲しそうな顔をしているって感じとったのでしょう。
もしかしたら、何も知らない子供だからこそ、少しの変化でも感じ取ってしまうのかもしれませんね。
「それより、私が……鬼ね。早く逃げないと捕まえちゃうよ」
『きゃぁあああああ!』
私がそう言うと子供達は蜘蛛の子を散らしたかの様に逃げていった。
☆ ☆ ☆
「ゆき先生のさっきの顔は何だったのかな」
僕は、さきちゃんを追いかけている雪先生の方を見る。
無表情でさきちゃんを追いかけている先生は何だかとっても怖いけど、僕達は先生がとっても優しい先生だって知っている。
雪先生がここに来たのは、桜っていう木が花を咲かせている時だった気がする。
新しい先生が来るって園長先生に聞いてたからとってもワクワクしてたけど、初めて雪先生を見たときは怖かった。
顔は僕のお母さんより百倍綺麗で何だかおとぎ話のお姫様みたいなんだけど無表情で、髪の毛は真っ白。
何にも言わないからお人形みたいだなーって思ったから、僕達は雪先生のことを人形先生って呼ぶことにした。
始めの頃はみんな怖がって雪先生に近寄らなかったけど、いつの間にか雪先生と遊ぶようになってた。
雪先生はいつも僕達と遊んでくれたり、絵本も読んでくれる。
保育園の誰かが誕生日だとプレゼントもくれる。
お泊りで遠足に行った時に寂しくて寝れない子には寝るまで傍にいてくれたり、子守唄を歌ってくれた。
……雪先生が歌う子守唄はとっても怖かったけどね。
でも、みんな雪先生のことが大好きだ。
お人形みたいに無表情で冷たい感じだけど、とっても優しくて温かい……そんな雪先生のことがみんな大好きだ。
だから、雪先生が悩んでいるなら少しでも力になりたいって思ってる。
「……りょう君捕まえた」
「!?」
いつの間にか僕の後ろにいた雪先生は僕を持ち上げた。
雪先生はとってもいい匂いがして、温かかった。
こんな日が毎日続くと思っていた。
あの日までは……
☆ ☆ ☆
私が一歩踏み出すとピシャリと水が跳ねた音がする。
私が走れば床に溜まっていた水が私の足を、腰まである髪を濡らす。
私は走るのをやめて床に転がっていた歪んだボールを持ち上げる。
私がボールを抱えて歩きだすと、他にもいろいろな物が落ちていることに気づく。
私は立ち止まり周りを見渡す。
……ドウシテ
十区○△保育園に喰種が侵入、児童及び職員全員が死亡。
現場に駆けつけた宇良准特等並びに喰種捜査官一五名、全員死亡。
この被害を受け、喰種対策局は対象をSS級駆逐対象【赤鬼】と認定した。
読んで下さった方ありがとうございます。
感想、ここは違うんじゃないのかな? ここは直した方がいい!と思った所があったら言って下さると助かります。
……書くのって難しいですね