東京喰種【赤鬼】   作:マツユキソウ

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幹部

『アオギリの樹』

ヒトと喰種を力で支配しようぜ!ヒャッハー!な喰種組織。

ふざけてごめん。下っ端のオレ達にはあんまり詳しく話してくれないんだ。

でも、力で支配するっていう思想は正しいと思う。オレ達喰種が堂々と太陽の下を歩くには、偉い顔してるヒトをどうにかしねぇといけないと思ってるからなぁー。

 

「おい、知ってるか?」

 

「何がだよ」

 

いきなり声かけてくるからビックリしたじゃねーか。ってか主語が抜けてるぞ! それじゃあ何が聞きたいのかわかんねぇだろ。常識ねぇのかよ…。

 

「いや、俺とお前の仲だろ?わかってくれよ」

 

いやいや。どういうこと? 

俺はお前のなんだよ! やめろ!何だその「お前ならわかる!」って目は! わかんねぇよ。 

っていうかお前と知り合ってまだ一ケ月位だよ? お前の好きなタイプとか趣味とか何も知らないよ。俺。 

 

「ちなみに俺はお前の好きなタイプから身長体重。なんでも知ってるぞ」

 

「怖いです」

 

得意げな顔でピースするな。

お前怖いよ。どこで知った!っていうかどうやって調べた! 

 

「まぁいいや、最近幹部が増えたって話だよ」

 

「よくねぇけど、あぁー知ってるぞ。確か……赤鬼さんだっけか?」

 

「そうそう。まぁ、会ったことないけどな」

 

「なー」

 

赤鬼さんがアオギリの樹に入った日に、俺とコイツは喰種捜査官の偵察に行っていたからよく知らないが、アオギリの樹の幹部であり十三区のジェイソンと恐れられているヤモリさん曰く。「あの人こそ強者だ。勝手を振る舞える人だ」だそうだ…どういうこと!?

え…ヤモリさんに何があったの! いつものあの人は超が付くほどのドS&ワイルドな人なのに、あの時だけは何だか震えていたような気がした。

まぁ、あの後「ヤモリさん震えてるんすか」って言った馬鹿が趣味の部屋という名の拷問部屋に連れて行かれたけどな。あの時のヤモリさん、輝いてたなー。

 

少し話がそれたな。俺達は赤鬼さんを直接見たわけじゃないが、見た奴等の話によると。

曰く「喰種なのにクインケを使う。赫子?知らん」

曰く「ノロさんみたいに無口。あと、ノロさんやタタラさん、ヤモリさんの近くにいるから話しかけづらい! ちょっくら突撃してみるわ」

曰く「フードと仮面のせいで男なのか女なのかわからん」

曰く「最強」

 

うん……簡単にまとめると、よくわかってないって事だな。

一番下の奴なんか一言ってどういうことだよ。わかりやすい様でわかりにくいわ!

あと、二番目の奴。逝ってらっしゃい! 骨くらいは拾ってやるよ。

でも、ノロさんやタタラさん…つまり幹部の人達と一緒にいるっていうのは近づきにくいなぁ。

そして、一番重要な性別。ここがわかっていないのがイタイ。

なぜ重要か。十一区のアジトの女性不足が深刻なんです。 

いや…まぁーエトさんがいるよ。でも、あの人小さいし、包帯でぐるぐる巻きだから顔もわからない。オマケにタタラさんとよく一緒にいるから話しかけれない。

だからさ‥もし、赤鬼さんが女性なら…それはホント素晴らしいことなんだよな…

 

「おっおい…何泣いてんだよ」

 

「っ…すまねぇ。色々と悲しくて」

 

「そうか。俺の胸で泣くといい」

 

「断固拒否する」

 

コイツも趣味の部屋に連れて行った方がいいと思う。

ついでにヤモリさんの相方でありヤモリLOVEのオカマ喰種であるニコさんを紹介するぞ。

 

まぁ…赤鬼さんが女性なわけないな。そんな夢みたいな話があるわけがない。

 

「なぁ」

 

はぁ…どうして野郎しかいないんだろうな。これからは女性の喰種も積極的に勧誘するほうがいいと思うんだよ。

 

「おーい、聴いてる?」

 

よし。そうなれば幹部のアヤトさんにでも相談してみようかな。あの人ちょっと怖いけど根は優しい人だし…

 

「おい! 返事しろよ」

 

「なんだよ!人が折角、これからのアオギリについて考えて…た‥のに」

 

「……」

 

俺の目の前には、いつの間にか赤鬼さんがいた。

あれ……俺死んだ?

 

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

 

私が何となくアジトの中を散歩していると、二人の喰種が何やら話していたので近づいてみた。

一人は私に気づきお辞儀をしたが、もう一人の方は何やら考え事をしている様でウンウンと唸っていた。

凄い集中力ですね。…相方さんが声をかけていますが聞いていないみたいです。

 

「なんだよ! 人が折角、これからのアオギリについて話て…た‥のに」

 

……いきなり怒鳴ったのでビックリしました。

でも、私を見ると段々と声が小さくなって最後にはガタガタと震えています。

どうしたのでしょう? 

 

「赤鬼さんすみません! 今のは聞かなかったことにして下さい」

 

よくわかりませんが……わかりました。 聞かなかったことにします。

私がその場を去ると後ろから「マジ助かったよぉおおおお」 「よしよし。俺の胸の中で泣きなさい」って聞こえてきましたがそれも聞こえなかったことにします。

大きな組織なだけあって色々な人がいるんですね。

 

 

「おい」

 

数分ほど歩くと、後ろから声をかけられたので振り向く。

そこにはアオギリの樹の幹部であるアヤト君がポケットに手を突っ込みながら立っていた。

……ぱっと見。不良少年って感じですね。

でも、身長は私より少し高い位なので何だか可愛らしい少年です。

 

「アンタ、ヤモリを一発で倒したらしいな」

 

あー…あれは運が良かっただけですよ。たまたまあの人が隙を見せて、そこを狙ったら倒せた。それだけです。

 

「どうやってそこまで強くなったんだ?」

 

アヤト君が真剣な顔で訪ねてくる。

私からすれば、アヤト君は強いと思うのですが……事実アオギリの幹部ですし、まだ少年なのにそこまで強い人は見たことがありません。

焦らず、ゆっくり鍛えれば今よりもっと強くなれると思います。

 

「っち…だんまりか。ノロさんみたいな人だな」

 

アヤト君はそう言うと私の横を通り過ぎて何処かへ行ってしまった。

……声。出してなかった。

こっ今度聞かれたら、ちゃんと答えるようにしないと。 アヤト君にまで変な目で見られてしまいます。

アオギリの樹に入って一週間ほど経ちますが、幹部の方々くらいにしか声をかけてもらえないんですよね……

何だか周りからの視線も気になります。「新参のくせに幹部とか調子に乗るな」って思われているのでしょうか。でも、幹部って決めたのはタタラさんですし…

 

はぁ……そういえば。ヤモリさんは何処だろう?

私は耳を澄ませる。

私達喰種はヒトとは違い優れた五感を持っています。離れた場所にいるヒトや喰種の様子、人数、周囲の環境等を察知することができるのです。

 

ちょっと聞こえにくいけど、どうやらヤモリさんは離れのドームの様な場所にいますね。

ここからだと少し遠いですが行ってみましょう。

 

歩くこと数分。離れについた私は扉を開けて中をキョロキョロと覗く。

 

ヤモリさんは何処でしょう…

 

「ンッフ…っ‥ヤベエエエエエ。やべええええよぉ。ちょう。た~~~のしーーー!」

 

………私はそっと扉を閉める。

お取り込み中でした。何も見なかったことにします。

ヤモリさんはいい人ですがちょっと変わっている人で、拷問が大好きなのです。

まぁ、人の趣味をとやかく言う権利は私にはないので何も言いません。

 

うーん…ヤモリさんの拷問。まだ時間が掛かりそうですからノロさんの所に戻ろうかな。あの人何も喋らないけど、何だか居心地がいいんですよね。

 

 

「あ!兄ィ。赤鬼さんだよ」

 

「ホントだ。赤鬼さんこんにちは」

 

ノロさんの所に戻ろうと来た道を引き返していると、幹部の瓶兄弟に挨拶されました。

……何故でしょう。先程から幹部の方にしか合っていない気がします。

 

「赤鬼さんって、ヤモリを一発で倒したんですよね?」

 

……デジャヴです。

あと、どうしてヤモリさんは呼び捨てなのに私はさん付けなのでしょう。

まだ組織に馴染めてないからかな……それとも他に理由があるのでしょうか。

 

「おい、赤鬼さんが困ってるだろ」

 

「ごめん兄ィ」

 

「俺に謝るな。謝るなら赤鬼さんだろ」

 

「赤鬼さんごめんなさい」

 

弟さんはそう言うとペコリと頭を下げて「じゃあ、俺達は見回りに行くんで」と言って近くの階段を走って登っていった。

瓶さん達って子供みたいで……可愛いです。

 

「あ! 赤鬼さん! ここにいましたか」

 

はぁはぁと息を切らしながら一人の喰種が走ってきた。

どうしたのでしょう? 

 

「タタラさんから幹部の皆さんに伝言です。そろそろ捜査官狩りを行う。という事だそうです」

 

……そうですか。

遂に始まるんですね。 

 

私が窓の外を見ると、バケツをひっくり返したような雨が降っていた。

 

 

 

「あと…」

 

伝言を言いに来てくれた人が申し訳なさそうにしている。

まだ何かあるのでしょうか? 

 

「赤鬼は二十区に行って欲しい。とのことです」

 

……え

ドウシテ?

 

先程まで煩かった雨の音が、消えたような感覚だった。

 

 




ヤモリさんも好きですが、瓶兄弟も好きな作者です。

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