『少女に臓器提供の意思はあったんですか!?』
『遺族への確認はありましたか!?』
『彼女は見殺しですか!? 医師として死力を……』
私はテレビから視線を逸らし店内の掃除をする。
最近、このニュースばかりですね。何回も同じニュースを流されても飽きるだけです。
どうせ流すならもっと為になるニュースを流して欲しいです。
……それにしても、臓器移植の事件の発端は二十区の鉄骨落下事件だと聞きました。
なんでも、二人の大学生が犠牲になったらしく、女子学生の方は即死。男子学生も瀕死の重体で直ぐにでも臓器を移植しないと助からない状態だったそうです。
そこで、今ニュースで出ている
うーん……私が医者ならこの嘉納というヒトと同じことをしたと思います。
助けられるなら助ける。あ、勿論喰種捜査官なら殺します。
私は逆に嘉納教授を責めているヒトに聞きたい。『お前達は、目の前で死にかけているヒトを見殺しにする勇気があるの? 決断できるの?』と……
まぁ、このヒト達では無理ですね。
仮にどちらの学生も死んでしまったらこのヒト達は『助けられる命だったはずでは!? 見殺しですか!?』等と言うはずです。
くだらない。
……そして、この汚れが落ちないです!
何これ、喰種の力を持ってしても落ないなんて、予想外です。
「岸花ちゃーん、大丈夫?」
私がテーブルに付いた黒いシミを落とすのに苦戦していると、カウンターの掃除が終わった大橋さんが手伝いに来てくれました。
助かりました。本当にこの子は優しいですね。
「……岸花ちゃん。フキン、濡れてないよ」
「……」
「も~、岸花ちゃんはおっちょこちょいだな~」
「……ごめん」
恥ずかしいです。穴があったら入りたい。
うむむ、考えることに夢中になって周りが見えなくなっているとは……これではどこかの誰かさんのことも悪く言えませんね。反省です。
「岸花ちゃんってさ、嬉しい時とか悲しい時、どんな顔するの?」
「……?」
「あ、悪口じゃないよ。ただ、何時も同じ表情だからどうなのかなーって」
「……わからない」
「わからない?」
私にも喜怒哀楽はあります。
でも、顔に出ないんです。
いえ、出し方がわからないと言った方がいいのかもしれません。
あ、でも気分が高揚するときは笑えていると思います……多分ですけど
プニ
「ッ!?」
「うん、岸花ちゃんは笑うと可愛いよ! ほらニコー!」
そう言って大橋さんは私の頬っぺたをプニプニする。
……や、やめて欲しいです。恥ずかしいです。
「やめて…」
「ありゃ? 怒っちゃった? ごめんね~」
大橋さんはそう言ってどこかに行ってしまった。
営業時間になり続々と店内にヒトが入ってきます。
今日も一日頑張りましょう……色々と……
私は自分に向けられる視線を無視して一つの席に向かう。
「注文…」
「あ、岸花ちゃんじゃーん! ほらカネキ! 一番人気の岸花ちゃんが注文を聞きに来てくれたぞ!」
「どうも」
「カネキ! 退院早々運いいな~岸花ちゃんに会えるなんて」
「はいはい、岸花さんごめんね」
「……」
私が向かった席にはカネキさんとヒデさんがいた。
カネキさんが生きている。
どうして? あの日彼女に喰われなかった? それとも、何か別の理由が……
そういえば、ヒデさんは退院早々と言いました。という事はカネキさんは入院していた……『二十区の鉄骨落下事故』『学生二人が犠牲』『男子学生は助かった』そしてカネキさん達とあった日に事件が起きた。
もしかして、鉄骨落下事故の被害者はカネキさん? そして鉄骨の下敷きになり即死したという女子学生はリゼさん。
……つまり喰種である彼女の臓器をヒトであるカネキさんに移植した。
もしそれが本当ならカネキさんは……どちら側なのでしょう。
「岸花ちゃん?」
「……何?」
「いや、ボーッとしてたからさ。注文いい?」
「どうぞ」
「じゃ、ビッグハンバーグふたつ! あ、やっぱり俺は目玉焼きの方で」
「わかった」
――――十分後。
……やっぱりこの匂いは嫌いです。
私は、カネキさん達が注文したビッグハンバーグと目玉焼きハンバーグを持っていく。
「お、カネキ来たぜ!」
「……貴方達の為に運んだわけじゃないから」
「ひゅぅうううううううう! 可愛い」
「ひ、ヒデ! 静かにしろ」
全くです。
他のお客さんもいるのでもう少し静かにしてもらいたいです。
「じゃんじゃん食おうぜ!」
ヒデさんはそう言ってバクバクと食べ始める。
美味しそうに食べていますが、見てる私は吐きそうになります。
直ぐにでも違うお客さんのところに行きたいのですが、カネキさんが喰種かヒトか確かめる必要があるので我慢します。
「…? 食わねーの?」
「お…おう…」
ヒデさんに言われてカネキさんも食べ始めましたが……全く箸が進んでいませんね。
もしかして……本当にカネキさんは喰種になったのでしょうか?
いえ、決め付けるのはまだ早いですね。
退院したばかりで食欲がないのかもしれません。
私も食欲がないとき……
「ぅおえええええええええッッ!」
ビシャァ。
「…………」
私のスカートに何か吐瀉物の様な……いえ、吐瀉物ですが……
吐瀉物が私のスカートにかかって……吐瀉物が……
「お客様大丈夫ですか!?」
大橋さんが駆けつけてくれました。
「岸花ちゃんも早く着替え……岸花ちゃん!?」
「ふ…ぐすっ……」
吐瀉物をスカートにかけられて……かけられて……
匂いのせいで気持ち悪いし、湿ってるし……
自然と涙が出てしまった私は悪くない。
その後、呆然としてしまった私は悪くない。
うぅ……悲劇です。
お気に入り登録数が400件を超えている…だと…
何と言いますか……本当にありがとうございます。
まさかこんなに沢山の方が読んでくださるとは思っていませんでした。
小説、などと呼べるものかわかりませんが「東京喰種赤鬼」をこれからもよろしくお願いします。