東京喰種【赤鬼】   作:マツユキソウ

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注意! 
あの人の性格が穏やかです。


尾行

コロス……」

 

私は赫子を出しながら小さく呟く。

自分の感情が高ぶり、感覚が研ぎ澄まされていく。

感覚が研ぎ澄まされたことにより瞬時に周囲の情報が私の脳内へと伝わる。

標的は……二つ。クインケは収納状態。

若い捜査官は周囲を警戒しているけど、この程度なら姿を見られずに一瞬で殺せる。

だけどもう一人の捜査官……こっちはちょっと殺すの大変。

一見、無警戒のように見えるけど隙がない。かなりの修羅場を潜ってきた捜査官ですね。

でも、クインケを地面に置いているから瞬時に展開することは不可能。

よってどちらも楽に殺すことは可能。

若い捜査官は後回しにして初めに少し老けた捜査官を殺しましょう。

 

「ふふ……」

 

久しぶりですねぇ。

私はマスクを被り彼等の方へと歩いて行く。

 

 

 

「あっ……」

 

私は重大なミスを犯したことに気づき立ち止まる。

この服……ビックガールの制服でした。

こ、困りました。こんな姿では殺せません……何か羽織れるものは……

私は辺りを見渡すが空き瓶や紙くずが落ちているだけだった。

うぐぐ……悔しいですが、今回は見逃してあげます。

捜査官達に気づかれないように来た道を戻る。

 

 

そういえば、私と捜査官二人の他にもう一人、喰種の気配がしましたが……まぁ気にする程のことでもないですね。

 

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

 

喰種捜査官が二十区に来て数日。

私は何度か彼等を尾行してわかったことがあります。

どうやら彼等は喰種を追ってこの二十区に来たようですね。

 

そして……

街灯の明かりが灯り始めた少し寂しげな住宅地。

私は物陰から顔を少し出して前にいる二人の局員捜査官を見る。

メガネをかけているのが草場というヒトで、無精ヒゲの短髪が中島。

彼等が喰種捜査官の手伝いをしているということは、ここ数日調べてわかっていました。

つまり、この二人の後を追えば調べている人物を特定できるということです。

 

「草場、いたぞ」

 

「はい」

 

どうやら見つけたようですね。

私は中島さん達が見ている人物を見る。

そこには、一人で住宅地を歩いている笛口さんがいた。

 

まさか笛口さんが捜査官達に追われているなんて……そんな人には見えませんが……

まぁ、追われている理由は何でもいいのです。

どうせ、何もしていなくても喰種だから私たちはずっと捜査官に追われる……

 

 

む……笛口さんの後ろから男の人が近づいて来ましたね。

私は耳を澄ませる。

 

「四方くん――」「送ります――」

 

ふむ、どうやらあの男性は四方という人のようですね。

少しだけ会話をすると、笛口さんは四方さんが乗ってきた車に乗り走り去る。

……助手席にカネキさんがいた様な気がしましたが気のせいですね。

 

「戻るか」

 

「はい」

 

笛口さんを尾行していた中島さん達も帰るようですね。

私も帰るとしましょう。

 

「おやおや、もうお帰りですかな?」

 

「ッ!?」

 

私は声が聞こえた方を見る。

そこには、白髪でやせ細った男が立っていた。

いつの間に……それよりも、こんなに接近されていたのに気づかなかったなんて……

 

「あぁ……名を名乗るのを忘れていたよ。私は真戸というんだ」

 

「……」

 

知っています。

真戸呉緒上等捜査官。上等捜査官ですがクインケの扱いや喰種の捜査は並みの捜査官よりも上だと聞きました。

そして、喰種に対してかなりの憎悪を持っていると……

 

「だんまりか……岸花雪、調べた通りの無口な少女のようだねぇ」

 

「……名前、何で知っている?」

 

「このところ誰かに見られているような気がしてね。それで探りを入れてみたら君が私達を嗅ぎまわっているじゃないか。君のように麗しい少女が尾行とは感心しないねぇ」

 

「……私の勝手」

 

「結構結構、だが何故私たちを尾行していたかは聞かせてもらうよ」

 

「……この後バイトがあるから帰る」

 

色々と不味いですね。

何とかこれで……

 

「心配しなくても時間はとらせない」

 

「でも……」

 

「五分でいい。五分あれば十分だ」

 

失敗した……

私はいつでも動けるように体に力を入れる。

どうしましょう、今の私の状況はかなり不味いです。

真戸さんは私のことを調べたと言いました。

つまり、私が赤鬼であることもわかった筈……いえ、それは大丈夫ですね。

その辺りの誤魔化しは月山さんに協力してもらって完璧な筈です。

現に今までバレずに生活できたのですから……

 

「岸花雪ではなく『赤鬼』と呼んだ方が良かったかな?」

 

「ッ……」

 

「あぁ、誤解しないでほしい。先程も言ったが、私は君と話がしたいだけだ」

 

バレてました。

どうやら、私は捜査官達を甘く見ていたようですね。

どうやって私の正体を知ったとか、何で攻撃しないで私に話しかけてきたのとか関係ない。

 

 

……真戸さんにはここで死んでもらいましょう。

 

 

私は真戸さんの首目掛けて赫子を振るう。

ゴォオオオという空気を切り裂く音。

あと数ミリで真戸さんの首が吹き飛ぶ……

 

「どうして避けない……ですか」

 

私は赫子を止める。

当たれば一瞬で首が切れる威力を持っている私の赫子を前にしても、真戸さんは避けるどころか微動だにしなかった。

 

「私は君と話がしたいだけだ……あぁ、すまない、答えになっていなかったねぇ。君は赫子を止めると思った。ただそれだけだ」

 

「そう……」

 

何だか……とても変わっている捜査官ですね。

それに、意外です。

まさか私の正体を知っていながら何もしないでただ私と話をしに来ただなんて……

 

「さて、単刀直入に聞こう。昨年起きた○△保育園の事件だが捜査官を殺したのは君か?」

 

「そう」

 

真戸さんは話が終わった後に殺すので、もう誤魔化す必要もないですね

話を聞いているのは何となくです。

 

「ふむ……では児童を殺したのも君か?」

 

「違うッ!!」

 

私はすぐに否定する。

捜査官を殺したのは私ですが、子供たちを殺したのは……殺したのはッ!!

 

「ふむ…時間だ、私は支部に帰るとするよ」

 

「え……」

 

「私が帰らないと亜門くんが心配するからねぇ……」

 

「あの……」

 

「あぁ、君の正体は誰にも言わんさ……」

 

私が呆然としていると、真戸さんは手を挙げて暗闇へと姿を消していった。

な、何がどうなっているのでしょう……

 

はぁ、帰りましょう。

何となく空を見上げると、満月が私を優しく照らしていた。

 

 

 

 




亜門くんの死亡フラグは回避されました。ヨカッタネ

それにしても、真戸さんを登場させたのはいいのですが……主人公を喰種とわかっていながら豹変しない真戸さんは真戸さんじゃないッ!!
まぁ、豹変しないのには理由があるのでご了承ください。

本当は主人公とバトルするはずだったんですよ……それで、主人公の赫子を見て
「素晴らしい……すごいいッ!!! 実にry」って言うはずだったんです。


あと、ちゃっかり名前だけ登場した月山さんの登場はいつになるやら……

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