東京喰種【赤鬼】   作:マツユキソウ

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真戸さん視点を三人称みたいな何かで書いてみましたが何が何だかわけわかめ……読みづらかったらごめんなさい。



それぞれの想い

「岸花雪……か」

 

とある喰種を追って二十区へとやってきた真戸呉夫上等捜査官は、先程出会った白髪の少女の事について考えていた。

 

汚れを知らぬ純白の肌に腰まで届く長髪。顔立ちは整っており、彼女が笑えば男女問わず虜にしまうであろう。

しかし彼女の顔は氷の様に固まり、面の様に表情を変えることはなかった。

そして、彼女の瞳は血の様に真っ赤に染まっていた。

知っている者が見ればひと目でわかる彼女の瞳は『赫眼』。人の血肉を喰らう化物である喰種特有のものであった。

 

そして、とある喰種によって妻を殺された真戸は『喰種』という単語を聞いただけで虫唾が走り、『喰種』が私達人間の様に生活しているだけで今すぐにでも殺してやりたいという強い衝動にかられた。

真戸の心は喰種に対する憎悪で満たされていたのだ。

 

しかし、彼は岸花雪を見逃した。

普通の彼であれば喰種を見逃すなどありえないのだが、どうしても確かめたいことがあったのだ。

 

昨年の十二月に起きた○△保育園襲撃事件。

一人の喰種が○△保育園に侵入、児童及び職員全員が殺された。

現場に駆けつけた宇良准特等捜査官以下十五名の捜査官も全員死亡。

宇良准特等捜査官が最後の無線で『赤い……鬼だ……』という発言により、対象を【赤鬼】と呼ぶことにした。

そして、児童並びに職員を殺したその残虐性と一度に喰種捜査官を十六名殺したその驚異性により【赤鬼】をレートSSに認定した。

 

これが○△保育園襲撃事件と赤鬼の記録である。

別にどこもおかしくはない、むしろ簡潔にまとめてあり赤鬼がどれだけ残虐で危険な存在なのかとてもわかりやすく書かれていた。

何人もの喰種捜査官が赤鬼の捜査をさせてくれと本部に頼み込んだが、既に捜査担当が決まっていたらしく断られてしまった。

その内の一人であった真戸はどうしても諦められず、独自に赤鬼について調べていた。

しかし、真戸が幾ら調査しても赤鬼についてわかることは般若の面を被っている事だけだった。

赤鬼についての情報が少な過ぎたのだ。

いくら長年培ってきた捜査官の経験も、般若の仮面一つでは無理があった。

 

それではと、真戸は見方を変えて赤鬼と交戦した捜査官たちや犠牲になった園児たちについて調べることにした。

 

 

 

そして真戸は一人の少女にたどり着いた。

少女の名前は岸花雪。年齢は二十二歳。保育士の免許を持っており…………なんと事件があった○△保育園に勤めていた。

 

この事を知った真戸は一つの矛盾に気づく。

報告書には『園児及び職員は全員死亡』と書かれていた。しかし、犠牲になった職員の中に岸花雪という名前はない。

それどころか……岸花雪という名前の保育士などいないことになっていたのだ。

存在を消された少女『岸花雪』、彼女が事件の鍵を握っていると考えた真戸は誰にも打ち明けることなく一人で捜査を開始した。

 

そして今日、真戸は岸花雪と出会い、話を聞き確信する。

 

岸花雪、彼女が【赤鬼】であり…………そして園児たちを殺したのがCCGであると。

 

喰種である彼女の言葉を信じ、人の味方であるCCGを信用しないなど喰種捜査官として、人として失格なのだろうがそれでも真戸は彼女を信じることにした。

岸花雪の言葉には信用に値するだけの想いが伝わった。それだけで真戸には充分であった。

 

喰種捜査官でありながら人を守らず、逆に殺すとは……喰種よりもクズな奴等だ。

 

しかし、真実を知ったからといって真戸には何もできない。

園児たちを殺した罪を償わせようにも、当時の捜査官たちは全て赤鬼によって殺されているのだ。

 

「殺して殺されて……次に出会った時、君は赤鬼かそれとも岸花雪なのか……」

 

歪んでしまった歯車は元には戻らない、真戸にはわかる。

自分もそうなのだから……

真戸が夜空を見上げると、月の光が彼を優しく照らした。

 

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

 

「店長、お疲れ様です」

 

「お疲れカネキくん、」

 

喫茶店あんていくでの仕事を終えた僕は、この店の店長である芳村に挨拶をする。

明日から、試験勉強で忙しかったトーカちゃんが戻ってくると言うことを聞いた僕は、また怒鳴られる日々が戻ってくるのかと少しゲンナリしていつもの帰り道を歩く。

 

少し前から雨が降り始めていたので持ってきた傘をさしてしばらく歩いていると、前から二人の男が歩いてきた。

男たちは何やら興奮しているようで雨の音に負けない程の大きな声で話をしていた。

 

「凄かったよなぁ」

「まさか、喰種をこの目で見れるなんて」

 

『喰種』その言葉に反応した僕は疑問に思う。

どうして喰種を見て無事でいられるのだろう。それにこんな時間帯に喰種を目撃するなん

て……

『またね。お兄ちゃん!』

僕は、先程まであんていくに来ていたヒナミちゃんとリョーコさんのことを思い出す。

 

まさか……ね。そんなことないさ……

 

そして何歩か歩くと、一冊の見覚えのあるノートが落ちていることに気づいた。

そのノートを拾い上げ、名前を見てみると『ヒナミ』と書かれていた。

 

「ヒナミちゃん……」

 

いてもたってもいられずに走り出す。

もしかしたら、ヒナミちゃんとリョーコさんが喰種捜査官に……

店長にこのことを知らせようと電話をするが繋がらない。

僕の想像通りの事が起こっているなら、ヒナミちゃんリョーコさんッ!!

喰種であるリョーコさんとヒナミちゃんが喰種捜査官に見つかればどうなるかなど安易に想像できた。

ヒナミちゃん達が殺されてしまう……喰種は人間よりも高い身体能力と赫子という殺傷能力のある特殊な器官を持っているが、リョーコさんは人を殺せる様な人じゃないし……ましてやヒナミちゃんはまだ子供だ。

僕が、僕が行かないとッ!!

 

僕は全速力で駆け出す。どこにいるのかわからない。でも、行かなくちゃ……

 

 

 

でも……僕が行ったところで……何ができるんだ?

 

そんな事を思ってしまい、立ち止まる。

こんな僕に何ができるんだろう。半端もんの僕に……

 

「でもッ!」

 

たとえ力不足でも、何もせずにはいられないんだ。

そう思った瞬間。

 

「カネキさんッ」

 

後ろから女の子の涙声が聞こえた。振り返るとそこには、ずぶ濡れになりながら走ってきたヒナミちゃんの姿があった。

 

「ヒナミちゃん! よっ良かった……」

 

震えるヒナミちゃんを抱きしめた僕は、ヒナミちゃんが無事だったことに安堵する。

しかし。

 

「おか…お母さんが……一人で……うぅ…あぁっ」

 

ヒナミちゃんは泣きじゃくっていた。

リョーコさん、まさか……

 

「行こう……」

 

僕は勇気を出してそう言った。

 

ヒナミちゃんに道案内をしてもらい、あと少しでリョーコさんと別れた場所に到着するというところで、前方に人影を見つけた僕は咄嗟に隠れるように指示を出す。

シャッターが閉まった店の陰に隠れ、僕とヒナミちゃんは恐る恐る前方の様子を見る。

 

「――まったく愚かだな……大人しく付いてくればこんな道の真ん中で死ぬことはなかった……せめてもの情けだ。辞世の句でも聞いてやろうか?」

 

「……」

 

そこには、白いコートを着た白髪でやせ細った男と……血だらけになったリョーコさんがいた。

白髪の男は右手に何やら得体の知れない武器を持ち、今にもリョーコさんに止めを刺そうとしていた。

 

「お母さッ!!」

 

「だッ駄目だ……ヒナミちゃんッ!!」

 

リョーコさんの所に行こうとするヒナミちゃんを抑えながら僕は必死に考える。

どうすればいい……どうすればリョーコさんを……どうすればッ!!?

 

「ヒナミ……」

 

リョーコさんはこちらに気づき、少しだけ目を丸くしたが…………優しく微笑む。

 

「い……『おおっと』

 

リョーコさんが何かを言おうとした瞬間。

白髪の男が右手に持っていた武器でリョーコさんの首めがけて振るう。

 

ダメだッ……ヒナミちゃんには見せられないッ!!

これから起こることが想像できた僕は、咄嗟にヒナミちゃんの目を塞ぐ。

 

ガギギギィン!!

 

『なッ!?』

 

あと少しでリョーコさんに武器が届くというところで、白いコートを着た何者かがリョーコさんと白髪の男の間に割って入った。

武器を弾かれた白髪の男は数歩下がり、仲間の捜査官達が駆け寄る。

その様子を黙って見ていた白いコートの人は深々とお辞儀をして言った。

 

「こんばんは皆さん、そしてサヨウナラ」

 

 

 

 

 

 






投稿期間が空いてしまい本当に申し訳ありませんッ!!
仕事の方が忙しくて中々書く事ができず、書いてもおかしいと思い書き直す日々が続いていました。
正直、前半の真戸さん部分が何だかしっくりきてないのでもしかしたら修正するかもしれません。

それにしても、真戸さんって良い人ですよね(唐突)

さて、原作ではリョーコさんは最後の場面で真戸さんによって殺される運命でしたが何者かが変えてしまいましたねーー……まぁ、雪ちゃんなんですけどね。

☆ ☆ ☆

「どうして貴方は……」
「人と喰種は、わかりあえないッ!!」

「くふ……アハハ、あはアハハハハハハハハ!! 本気でコロシテアゲル」

次回、東京喰種【赤鬼】……誰かが死ぬ。



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