あれから、二年が経った。気づけば、もう小学四年生の年
所謂高学年と呼ばれる時期だ。今回の人生、そもそも小学校行ってないけど。
前の人生だと、二分の一成人式とかやらされたなぁ。
2年前の見学以降、授業よりも現場の見学がメインになった。
きっと、座学で学んだことを実際に見て、認識合わせする段階に入ったんだろう。
任務のやり方・呪霊の対処の仕方は人それぞれだった。
距離をとって慎重に進める人もいれば、
大胆に、一気に終わらせる人もいる。
悟さんとかめっちゃテンション高かった。
中には、やたらと報酬の話ばかりする人もいた。
烏を使役していて、呪霊を追わせ、突撃させて爆散。
終わったら、文字通り何も残さずに帰っていく。
多分あの人は、呪霊一体一体を現金換算してるんだろう
だって、呪霊を祓うとき、
とってもいい笑顔してたもん。
それと、見学に関してもう一つ。
見学の時の窓の人がいっつも同じ人――伊地知さんだった。
誰のどんな任務の見学の時も必ず伊地知さんだった。
多分、俺の監督役にでも任命されてるんだろうなぁ
それに気づいたときは、
(......この人、信用されてるんだろうなぁ)
なんて思った
そんな感じの日々を過ごしていた今日この頃。
いつも通り、訓練が終わったあとで体を伸ばしていると、
背後からやけに聞き慣れた、軽い声が降ってきた。
「うみ〜、ちょっといい?」
振り返ると、そこには悟さんがいた。
いつもと同じ顔、いつもと同じ調子。
「学長がお呼びでさ」
(また、パンダの時みたいになんかあったんかな?)
「ん、わかりました。着替えだけしちゃいます」
「りょーかい。急ぎでね」
着替えて廊下に出て、壁に背を預けている悟さんに声をかける
「お待たせしました」
「そんなに待ってないよ。じゃ、行こうか」
そう言って、悟さんはさっさと歩き出す。
置いていかれないように、その後を追った。
高専の廊下を並んで歩きながら、
悟さんは特に何かを説明するでもなく、
適当に世間話を振ってくる。
そうこうしているうちに、目的地に着いた。
見慣れた扉。
学長室。
悟さんがノックもそこそこに扉を開けると――
「おっ、来た来た」
――昨日よりもガタイのよくなったパンダだった
「これまた.....でっかくなったね」
「そうだろ?」
パンダは胸を張るようにして腕を組む
「それでさ」
パンダが身体をこちらに乗り出して、少し声を潜める。
「今日は“話がある”ってやつらしいぞ」
「……まぁ、でなきゃ呼ばれないだろうけどさ」
「うん。
まあ、悪い話じゃなさそうだけどな」
そう言って、にやりと笑った。
「パンダ、無駄話はそこまでだ」
低く、よく通る声。
途端に、室内の空気が変わった。
「おはようございます。正道さん」
「ああ、そこに座れ」
言われた通り、ソファに座って正道さんを見据える
「今日は何で呼ばれたんです?パンダに弟か妹でもできました?」
「いや、今日はお前についてのことだ」
「俺に....?問題を起こした覚えはないですけど」
学長は一度、こちらをじっと見てから、
ゆっくりと口を開いた。
「これまで、見学という形で現場を見せてきたな」
「はい」
「今日はその先の話のために呼んだ」
「先....ということはもしかして」
「あぁ、今度はお前主体で任務に出てもらう――初任務だ」
全身に緊張が走る
「初任務....」
「まぁ初任務と言っても監督者として術師を付けるつもりだ。
多少のやらかしくらいならフォローできる」
「ま、死なない程度にやらせるってやつだね」
悟さんが、軽く肩をすくめた。
「悟、余計なことを言うな」
正道さんは視線とともに悟さんを窘めると、、
はぁ、とため息をつきながらこちらに向き直り、
「それでは、任務の概要を説明する」
淡々と説明を始めた
***
「任務の概要については以上だ。」
(ふむ。要するに....
・ターゲットは三級呪霊
・監督者として一級術師がつく
・メインは俺でイレギュラー時は基本的に監督者が対応
・そして任務は3日後
.....こんなところか)
「俺から言えることは一つ、無理はするな。」
正道さんは一層真剣な様子でそういった
「監督者がついているからな。失敗しても、そいつが何とかする」
「あ、ちなみに――」
悟さんが、思い出したように付け足す
「そいつ、僕の後輩ね」
(悟さんの後輩....変わってそうだなぁ)
「以上だ。詳細は当日窓から伝える」
夜蛾学長はそう言って、話を切り上げた。
「何か質問はあるか」
「……いえ、大丈夫です」
「よし。じゃあ今日は解散だ」
その一言で、場の緊張がふっと緩んだ。
「ありがとうございました」
そう言って立ち上がり、学長室を出ようとした、そのとき。
「お、もう終わったか?」
パンダは、あくびをしながら言った
「パンダ...寝てたね?」
「仕方ないだろ。長いしまじめすぎるんだから」
いつも通りのパンダにあきれるしかない
「まったく。3日後に初任務だってさ」
「へー。まぁ死ななきゃなんでもいいぞ」
「それ、初任務の人にいうこと?」
「まぁ、頑張ってこいよ~」
「はぁ、まったくもう。適当だなぁ
じゃあ、俺もう行くね。3日で準備と調整終わらせなきゃいけないし」
「おー。じゃあ3日後な」
パンダの声を背に学長室を出ると、先に出ていた悟さんがいた。
「いや~、ついに初任務だね」
「そーですね。もうあれから、5年ですよ?」
自分で言ってから、
なんだか実感がなくて、少し笑ってしまった。
「早いよねぇ」
悟さんは、のんびりした声で言う。
それ以上、特に何かを話すでもなく、
俺はそのまま自分の部屋に戻った。
*** 三日後 ***
初任務当日。
いつもより少し早く目が覚めた。
といっても、緊張で眠れなかった、というほどでもない。
着替えを済ませて、
必要なものを一通り確認していると――
「うみ、準備できた?」
廊下から、聞き慣れた声がした。
「悟さん?」
扉を開けるとそこには悟さんが立っていた
「どうしたんですか?任務に何か変更でも?」
「いや、そういうんじゃないよ。
ただ、可愛い教え子の初任務だからね。送り出しがしたいんだよ」
悟さんは、にやっと笑う。
「そういうわけだから。準備できてるなら行くよ?」
そういう悟さんに並んで歩き出す
この後は監督者の術師と窓の人と合流予定となっている
「そういえば監督者の術師が後輩って言ってましたけど、
どんな人なんですか?」
そう聞くと、悟さんは少しだけ考えるそぶりを見せてから、
相変わらず軽い調子で答えた
「んー.....真面目なやつだよ」
「それ、悟さん基準で言われると
すごく信用できないですね!」
「ひどっ」
悟さんは笑いながら肩をすくめる。
「でもまあ、ほんとに真面目なやつだよ
去年に脱サラして戻ってきたやつだから」
「脱サラ....?一般人として働いてたってことですか?」
「そうそう。まぁ、詳しくは会えばわかるよ」
「そうですか」
そこまで話したところで集合場所が見えてきた
ここ2年で見慣れた黒いスーツと、初めて見る白いスーツが視界に入る
「おはようございます。伊地知さん」
ひとまず伊地知さんに挨拶をしてから、白いスーツの男性に向き直り、
「それと、監督者の方ですよね?
月影うみです。よろしくお願いします。」
自己紹介をして頭を下げる
「これはご丁寧にどうも。
私は七海健人です。その年でずいぶんと礼儀正しい子ですね。
とても五条さんが連れてきたとは思えないですね」
「ちょっと待って!」
健人さんの言葉に、悟さんが間髪入れずに声を上げた。
「酷くない!?
それ、僕がすごくダメな教師みたいじゃん!」
「事実を述べただけですが?」
「なお酷いよ!!」
悟さんが肩をつかんで抗議しているが、健人さんは全く動じていない
「さて、五条さんの戯言は置いておいて、移動を始めましょう。
時間は有限。定時までに終わらせますよ」
悟さんがさらなる抗議を上げるが、完全に無視し、伊地知さんの待つ車に向かっていく
「えっと、それじゃあ行ってきますね。悟さん」
健人さんにガン無視されてうなだれている悟さんに声をかけてから車へ向かう
――俺の、術師としての初めての任務が始まる
乗り込んだ車内はとても静かだった。
「そーいえば、健人さんって脱サラしたって聞いたんですけど
何で、一回サラリーマンを挟んだんですか?」
健人さんは腕時計から視線を上げてこちらを見る
「....私は、高専で学び気づいたことは――
"呪術師はクソ"ということです」
「……」
さすがに唖然とした。
(じゃあなんで戻ってきたんだ?)
「そして、一般企業に勤めて気づいたことは――」
「気づいたことは?」
「――"労働はクソ"ということです」
唖然としたパート2
「同じ"クソ"ならより適性のある方へ。
出戻った理由なんてそんなもんです」
(真面目な人ではあるんだろうけど、結構変わってるよね。この人も
でもまぁ、言わんとしてることはわかる。)
「合理的なんですね。健人さんって」
「そうでしょうか。
ただ、続けられる方を選んだだけです」
それ以降の会話はなく、
ただ静かな時間が過ぎていった。
---
「到着します」
伊地知さんの声で、窓の外を見る
普通の住宅街の一角。
静かで、特筆すべきものは何もない。
「それでは、本件について軽く確認と行きましょう」
健人さんが声を上げる
「まず、基本的に私は口を出しません。
本当に危ないと判断した場合のみ介入します。
それ以外は伊地知君の警護となりますのでメインは月影君です」
「はい、わかってます」
「よろしい。そして、イレギュラーが起きた場合。
この場合は、任務を中止し、現場の全権を私に移します。
必ず指示に従ってください」
「それと最後、ターゲットとイレギュラーがブッキングした場合、
ターゲットの方は月影君に任せますが、
手に負えないと判断したら呼んでください。両方とも私が引き受けます」
「それは.....俺が子供だからですか?」
「その通りです。私は大人で君は子供...
私には君を自分より優先する義務があります」
「.....わかりました」
「私からは以上で。ここからは君に任せます」
健人さんの言葉にうなずき、伊地知さんへ向き直る。
「まずは、今回のターゲットについての確認からで。
伊地知さん、お願いできますか?」
「はい」
伊地知さんは、手元の資料かを確認しながら話し始めた
「今回確認されている呪霊は一体。
残穢から見て、等級は三級相当です」
「特徴としては、
夜間に人通りの少ない路地や空き家周辺に出没し、
物音や人影に反応する傾向があります」
「現時点では、
直接的な被害報告はありません。
ただし、不審な物音による通報が複数件あり、
周辺住民の不安が大きくなってきています」
「ありがとうございます。
それでは、人通りの少ない場所を中心に哨戒に入ります。
できれば今日中に祓いたいですけど、
集中力の問題なんかを考えて、今から5時間。
それまでに見つからないようであれば、一度出直しましょう」
「問題ありません。その判断で進めましょう」
健人さんの言葉に首肯し、言葉をつづける
「まずは、伊地知さん。"帳"をお願いしてもいいですか?
そしたら、周辺に残穢が残っていないかの確認から入ります
俺は上から確認するので、二人は地上からお願いします」
それだけ言って反射線で跳び上がり、電柱の上に着地する
それと同時に、空を漆黒が覆っていく。
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帳。
結界術の一種であり、術師が任務を行う際に展開することが義務付けられているもの
主な効果は3つ。
1.一般人を呪術の現場から隔離すること
2.内部の様子を外部から認識できなくすること
3.結界内における構造物・無機物の破壊を抑制し、帳解除時に展開前の状態へ復元すること
また、状況に応じて人・呪霊・術師の出入りを制御することもできる
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あたりを見渡して目を凝らし、残穢を探す。
ふと視界の端に違和感を感じそちらを向き、
目隠しを押し上げ、片目を露出させて注視する。
――見つけた
残穢、それもかなり濃いものを発見する。
「見つけました。かなり濃い残穢です」
地上に降り、二人に報告をする
「わかりました。後をついていくので先行してください」
そのまま三人で移動を開始する。
しばらく移動すると、さっき見つけたものよりも濃い残穢が視界に入る
腕で後ろの二人を制止し、塀にのぼってあたりを見回すと――
少し先の開けたところに呪霊がいるのを確認した
「この先に呪霊を確認しました。
障害物がないので正面から行くしかないですね。
健人さんは伊地知さんのガードをお願いします」
「わかりました。『無理はしない』、これを徹底してください」
「りょーかいです」
方針を固めて再び進むと、先程確認した呪霊が見えた。
距離にして10m弱。
先程は遠目だったためわからなかったが、全身に目のようなものが点在している。
(気持ち悪いなぁ...
いや、そうじゃなくて。あれ全部目なのかな?
だとしたら死角はなし、まずはそこから確認しないと)
反射線を用いて屋根を伝い、おそらく背後であろう場所をとる
呪霊がこちらに気づいてないこと確認し、高専から借りてきていた呪具を握りしめ――
踏み込んだ。
呪力で肉体を強化した脚が、
距離を一気に削る。
あと少しで射程内、
というところで呪霊に点在する目のようなものが一斉にこちらを向いた
「うわっ!?」
あまりの気持ち悪さに、
思わず反射線を進行方向に展開。
ピンッっと、それにぶつかって体がはじかれる。
出力100%の反射線にはじかれた体は、勢いが衰えることなく、住宅の塀に衝突する
「いてて....」
奇襲は大失敗。ただわかったこともある
(あの目...全部つながってる
絶対こっち見えてないだろってやつもこっち向いた
なら――)
「全部の目に映ってやる勢いで動いたら...
どこにいるのかわからないんじゃない?」
再び突貫。今度はさっきよりも少しゆっくり。
しかし、確かに距離を詰めていく
呪霊との距離が5mほどになった地点で――
パッ、と
9枚の反射線が呪霊を取り囲む
呪霊を囲む反射線をよけて接近し、呪具の射程まであと一歩のところで、
10枚目を自分の足元に出現させて横に跳ぶ
跳んだ先には、先程展開した反射線があり...
一度踏んで反射線が消えたら新しいものを作り、
跳ねて作りを繰り返し、呪霊の周りを跳び続ける。
――乱反射(ピンボール)
漫画『ワールドトリガー』に登場するトリガーである「グラスホッパー」、
その運用方法の一つ
周囲にグラスホッパーを多数配置し、
三次元的な高速移動で相手を惑わす技――
(これは、俺が反射線をコピーしたとき、
絶対に再現すると決めていたもの。
これを再現するために、
死ぬ気で体捌きを磨き続けてきた)
しばらく跳び続けると、呪霊の目の動きが鈍ったので、
そこを逃さず、すれ違いざまに呪霊の腕を切り飛ばす
「▓▒░■■■……」
呪霊は声と言っていいかすらわからない叫びをあげる
「なんて言ってるかわかんないよ」
完全に隙だらけとなっている呪霊の脳天に呪具を突き立て、
踵落としを叩き込む
倒れこんだ呪霊は、少しの間もがき、停止した次の瞬間――
さらり、と。
呪霊の輪郭が崩れ、空気に溶けた
周囲を見回し、ほかに呪霊がいないかを確認する
「.....おしまい、かな?」
「月影君」
周囲の警戒をしていると、背後から落ち着いた声がした。
振り返ると、健人さんと伊地知さんがこちらへ歩いてきていた。
「周囲に他の反応はありません
本日の任務は無事、完了となります」
伊地知さんの報告に肩の力を抜く
「お疲れさまです、月影君。
初任務としては十分な働きでした」
「怪我はありませんか?」
伊地知さんが心配そうに覗き込む。
「はい、大丈夫です。
……ちょっと塀にぶつかりましたけど」
「それは見ていました……」
伊地知さんが苦笑する。
「あ、あとめーっちゃ疲れました。主に、精神的に!!」
思わず本音が漏れた。
健人さんが、ほんのわずかだけ眉を上げる。
「……まあ、初任務とはそういうものです。
緊張しない方が異常ですよ」
「むしろ、精神的に疲れたという自覚があるのは良いことです」
伊地知さんが優しく頷く。
「危険を“危険だ”と感じられるのは、術師として大切な資質ですから」
「そういうもんですか……?」
「そういうものです」
健人さんは淡々と断言した
「では、帰投しましょう。
それと、月影君には簡単な"所感"を高専へ提出してもらいます。
任務中に何を見て、どう判断したか――
その記録は、今後の育成に必要となるでしょうから」
「.....所感、ですか?」
「難しく考える必要はありません。
今日の任務について振り返って、気づいたことを書くだけです
今のうちに、こういう習慣をつけておくと後が楽ですよ」
「それでしたら、形式は私の方で用意しますよ
何もなしにいきなり書けと言われても難しいでしょうし」
「助かります……」
正直、戦うことよりも“文章を書く”方が苦手だ。
そう思っていたところだったので、素直に頭が下がる。
健人さんは軽く頷き、淡々と続けた。
「提出先は学長室です。
初任務の所感は、育成方針を決める上でも重要ですから」
「……そんな大事なんですか?」
「大事ですよ」
健人さんは即答した。
「術師は“結果”だけでなく、
どう考え、どう判断したかが評価されます。
それを言語化できるかどうかは、今後の成長に直結します」
「……なるほど」
「あまり、難しく考えなくて大丈夫ですよ。
要は、"初任務だからこそ、本人の視点を知りたい"ということですし」
伊地知さんが柔らかく笑いながら言う
「........分かりました。書いてみます」
健人さんは満足そうに頷き、
「では、帰投しましょう。
月影君は戻ったら休むこと。
所感は明日で構いません」
「りょーかいです」
三人で歩き出す。
帳が解除され、空が元の色に戻っていく。
そういえばと足を止め、自分が突っ込んだ塀の方へ目を向けると、
衝突によって崩れていた塀が元に戻っている。
(帳ってすごいなぁ)
そんな場違いなことを思いながら前を歩く二人を追った。
***
Side:七海
任務を終えて高専へ戻ると、
伊地知君は「報告書の準備がありますので」と軽く頭を下げ、
先に学長室へ向かった。
残ったのは、私と──
廊下の壁にもたれかかって待っていた五条さんだった。
「おつかれ~、七海。どうだった?うちの子は」
相変わらずの軽い調子。
だが、目隠し越しにきちんとこちらを見ていることが分かる
「……初任務としては、十分以上です」
私は淡々と答える。
「へぇ。どれくらい?」
五条が片眉を上げる。
「実力だけで言えば──準二級相当でしょう」
「おお、やるじゃん。
まだ小四だよ? 化け物じゃない?」
「あなたが言いますか」
思わずため息が漏れる。
「判断も悪くありませんでした。
精神的な負荷への耐性はまだ未熟ですが、
そこは経験を積めば十分に改善するでしょう」
「ふーん……」
五条さんは腕を組み、少しだけ真面目な顔になる。
「やっぱりね。
あの子、ちゃんと“考えて動ける”タイプだよ。
才能だけで突っ走るタイプじゃない」
「そこが一番の強みでしょう」
私は頷く。
「術式の扱いも呪力操作も、まだ粗い部分はありますが──
伸びしろは十分です。
このまま順調にいけば、来年には二級任務も視野に入るでしょう」
「おお、七海が褒めるなんて珍しい」
「事実を述べているだけです」
五条はくつくつと笑いながら、
廊下の窓の外を眺めた。
「……あの子、きっと強くなるよ」
「ええ。
ただし──」
そこで区切って五条さんの横顔を見る。
「あなたが余計なことをしなければ、ですが」
「ひどっ」
五条さんは肩をすくめたが、
その表情はどこか楽しげだった。
帳に関してはオリジナルの設定を生やしました
許してください。この方が都合がいいんです。