星殺しの英雄   作:Castella

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十五話目です。
投稿めっちゃミスりました。


謝罪と新たなアルトラ級/動き出す影

 

そこは、星空を象るまるでプラネタリウムのような空間。

およそ現実的にはまったくもってあり得ないようなその場所は、見るものが見れば凄まじい術式によって構成された場所であると感じるだろう。

まさに別次元の空間であり、()()()()()()では認識すらすることができないだろう。

 

そこに、()()()()が座り何かをしていた。

こんな場所に老人などがいること自体が非現実的な光景だが、それは今さらだろうか。

 

「────ふむ……何かが干渉したか?」

 

そんな言葉を呟く老人は、何か見えないものを認識したように得心がいったという表情をした。

すると唐突に本が現れ、ひとりでにページをパラパラと捲っていく。まさに物語の魔法使いのようだ。

 

開かれたページを見て、老人はまた言葉を発した。

 

「なるほどの……()()()()()()()()()()()()()()()

 

そう言って、興味をなくしたように彼は本を閉じさせ────

 

「そのとおりだよ、キシュアの御老体」

 

その声が空間に響く。

声だけを聞けば、優しげな青年のように感じるような安心させる魅惑とも言える声だろう。

だが、その人物の容姿はとても人の括りで成せるものではなかった。

 

「なんの用だ、ブリテンの魔術師よ」

「そんなに邪険にしないでくれ……これでも傷つくからね」

「ならば、言動を改めることだ」

 

「これは手厳しい」と、おちゃらけたように言ってのける彼──ブリテンの大魔術師は、さっさと本題に入るように急かした。

 

「彼のいる世界が特定できたのだろう?」

「……ああ、そうだな」

「なぜ回収しない?御老体」

 

それを言われた彼は、少し押し黙る。

また、それを見て畳み掛けるようにブリテンの大魔術師は言った。

 

「彼はまだ私達に必要だ……彼がいなければ幸福な結末はあり得ない」

「それは貴様の私情だろう」

「貴方にとってもそうだと思うけれどね」

「………」

 

また押し黙る、しかしそれは図星だからと言うだけではない。

老人とて、回収して問題ないならば既にしている。それをしていないということは────

 

「なにか事情でもあるので?」

「………」

 

すこしの間が空いたあと、観念したように溜息をつき、老人は言い放った。それはまさに驚異の事実でありながら、あり得ないことでもあった。

或いは、それは老人が想定していたものであったのか。

 

「……()()()()

「!!」

「人類の母とも言える、その神が再誕する危険がある」

 

それは人間にとっては絶望に等しい宣言であり、そしてまた抑えきれない罪の象徴だった。

神が原初の大地を作りし時生まれた憎悪の権化であり、人と神が生み出してしまったその大罪。

 

本来ならばそれは、冠位の英霊が対処すべき問題だが。

その世界は残念ながらここに連なる場所ではない。

だからこそ冠位は召喚できない、抑止が手を出すことも難しい。

 

「………どうりであの子(イレギュラー)を別世界に置いておくわけだね」

「やつでなければ対処はできん」

「不本意だけれど、納得はしたよ……」

 

しかしそれはそれ、魔術師の顔には苦い表情が広がっている。

理屈ではわかることだが、それでも──彼女のことを思えば、その世界を見捨ててもつれて帰るべきだ。

 

だが、この()()使()()がそれを許すわけがない。

この翁がこう言うのだから、放置すればこちらの世界もただではすまないということ。

 

「…………貴様も、随分と焼かれたようだな」

「………貴方に言われたくはないね」

 

そんな会話と共に、この空間から音は消えた。

風と花が舞ったと思えば、かの魔術師は姿を消していた。

まるで嵐のようだと、老人は────第二の魔法使いは思う。

 

「……儂も、随分と毒されたものよ………やつ一人にこんなことを委ねるとはな」

 

内心で、かの少年と言っていい若造へと謝罪と信頼を込めながら。

 

 

◆◆────────────────────◆◆

 

 

「すみませんでした……」

「……こ、こっちもごめんなさい」

「いやいやこちらこそ……」

 

そんなことを、病室で言い合っていた。

先ほどなぜか知るはずもない情報を言って倒れた彼女に、聞き出すよりも先に謝罪だろうと思った。

恐らくは彼女のレアスキルと、俺の特異性が引き起こってしまったのだろうと思うから。

 

「……もう、大丈夫です……」

「いやでも────」

「大丈夫です……!」

「アッハイ」

 

謝り続けてたらすこし怒られてしまった。

ウザかっただろうか、それなら申し訳ないが。

 

「なんでそんなに、謝ってばかりなんですか」

「いやその……俺が悪いと思って……」

「……違いますよね?」

 

江川さんが言った言葉に、俺は硬直した。

 

「あなたはきっと、私を傷つけないように気遣って言ってるんだと思います……記録で見た貴方は、いつもそうだった」

「………」

「あなたにとって、私達は守るべきものなのかもしれません……でも────」

 

そう言って江川さんは、俺の手を握ってくる。

えっなんか距離近くないか?なんで急にこんなことを。

そう困惑しているが、江川さんは待ってくれない。

言葉を続ける。

 

「私だって、リリィですから」

「!」

「守られるだけじゃ、ないんです。天葉姉様にも、あなたにも」

 

その声を聞いて、少しハッとした。

そうか、自分はまたどこかで侮っていたのかもしれない。

守るべき民衆の一人だと、そう思ってしまっていた。

 

違う、そうではない。

彼女達は戦士だ。戦い、守り抜く勇士である。

それを正しく認識できていなかった。

 

「すみません……」

「…わかってくれたならいいです」

 

そう言って彼女は、先程から反応が考えられないほど綺麗な笑顔で笑った。江川さんにどんな心境の変化があったのかはわからないが、それでも少しは認めてくれたと考えていいのだろうか。

なんか少し距離近くて戸惑ったけど。

 

「………へー……随分と仲良くなったんだね?」

「「!?」」

 

不意に、カーテンの後から声がした。

姿を現したのは、綺麗な金髪の整った容姿の少女。

天野さんだっだ。少し不機嫌そうだった。

俺たちは、慌てて弁明を開始する。

 

「そ、天葉姉様!?こ、これはちがくて!!」

「そ、そうだぞ天野さん!!これは仲直りというかなんというか!!その、とにかく違うんだ!!!」

 

必死に、本当に必死に弁明した。

途中で怪訝そうな顔をされても、諦めずに説得し続けた。

多分これまでで一番江川さんと協力したきがする。

そんなかいがあってか、なんとか誤解を解くことに成功した。

 

まあそんな余談は置いておいて。

先ほどの現象の話に戻ることになった。

憶測にはなるが、先ほどの事象について説明を開始していく。

異世界人なこと、恐らくレアスキルとの感応現象のこと。

それから、江川さんから見たことをすこし聞き出してみたのだが。

 

「────円卓の番外席?」

「……隠しててすんません」

「いやそれはいいんだけど……ほんとに?」

「………まあ……そっすね」

 

必然的に、俺がどこにいたのかもバレた。

 

この際だから語ってしまうが、俺は円卓の騎士だ。

伝説のアーサー王に仕え、共に時代を歩いた末席とはいえ英雄の一人だと自負している。

いや何度か死にかけたけど。

一応最古参ではあるが、騎士としての精神性は遠く及ばないだろう。

それだけ彼等が最高峰の騎士であるということだ。

 

「ホントにすごい人なんだね……」

「いや俺より同僚のほうがすごいけどな」

「そこは自信もって言うんだ」

「大事なことだから」

 

そんなことは置いておき、江川さんが語った内容は、なんと俺の視点からではなかったらしい。

恐らくは仲間の誰かの記録だろうか、それとも誰の記録でもないのだろうか。

あの蜘蛛のことも知ってるみたいだし。

謎は深まるばかりだが、気になったこともある。

 

「俺のことを記憶で見たんだよな?」

「はい……そうですけど……」

「聞きづらかったら悪いんだけど……その────」

 

俺は意を決して、それを言った。

 

「俺がこの世界に来たあとはわかる?」

「………ごめんなさい、わからなかったです」

「………そっか」

 

まあ、分かってはいた事だ。

いくらこの世界で有数のレアスキル────ファンタズムとはいえ、別世界のことは見通せないだろう。

あれは俺の縁を辿ってみた、記録か幻のようなものだろう。

再現性のないただの夢だ。

 

「そっかー……元気なの確認できたらよかったんだけど」

「………大切な人達なんですね」

「そりゃもうね」

 

今でも鮮明に思いだす。

彼ら彼女らとの思い出も、苦難も、旅路も。

全てとても大切な宝物だ。

なんか江川さんと天野さんが微笑ましそうにしているのが気になったが。

同時に、あの大蜘蛛は確実に屠れたことも知れた。

それだけでも儲けものだろう。

 

そんなふうに思い出に浸っていたら、ドタドタと駆け寄ってくる音が聞こえた。

その音は段々と大きくなり、この部屋のあたりまで来ると、思い切りドアを開け放った。

 

「天葉!!」

「夕七?どうしたの?」

「緊急事態よ!アルトラ級ヒュージが────!」

 

すこし自分でも信じられない様子で、彼女は言った。

 

「新たなアルトラ級とアンノウンが、出現したわ!」

「「「!!」」」

 

その報告は、恐らくリリィたちにとっては絶望的なもので。

死神の宣告と同義だった。

そして俺は、同時になにか嫌な予感を感じ取っていた。

 

 

◆◆───────────────────◆◆

 

 

同時刻、新たなアルトラ級の出現を確認したLGロネスネスとLGドゥーヴァは新たな脅威と対面していた。

 

近づいてくるヒュージを切り裂き両断しながら、楪は思う。

 

「強すぎでしょ!こいつら!!」

「ゆず!」

「こっちはいい!そっちを優先して!」

 

それはヒュージのこと────ではない。

彼女たちが今片手間に処理したヒュージは、彼女にとっては脅威ですらない。

なら、彼女が強すぎると言ったのはなんなのか。

それは────

 

「この獅子みたいなやつ!どう考えてもヒュージじゃないッ!!」

 

それは、獅子のような獣であった。

ただし流れ出る血は紫であり、ヒュージと同じように通常の生物ではない。

しかし今まで彼女たちが戦ってきて、見たこともない怪物でもある。

 

獅子が飛びかかるのを、ギリギリで躱してすれ違いざまに斬撃を浴びせる。

ミドルやスモール級ならば確実に殺せている斬撃。

しかしそれは、決定打にならない。

 

「■■■■■───────ッッッ!!!」

「くっ!?」

 

浅い傷を腹に作りながら、獅子は構わず向ってくる。

それをCHARMを前方に構えて防ぎながら、爪による自在な攻撃を防ぎ、躱す。

さすがの手腕だが、それでも決定がないのでは厳しい。

 

こんな防戦一方は、いつか限界がくる。

しかしそれでも、なにか打開策がないことには。

 

(やっぱり狙うなら急所!脳天か目だろうね!)

 

そう考えて、彼女は隙を狙う。

わざと体勢を崩し、誘い込む。

その思惑通りに、その獅子は乗ってきた。

思考もない単純な本能によって戦っている弊害だろう。

故に強かったのかもしれないが。

 

誘いに乗ったことによって、飛び掛りに隙が生まれる。

その合間を縫って楪は─────

 

「はっ!!」

 

獅子の脳天をぶち抜いた。

 

その一撃よって、ようやく獅子は絶命し倒れ込む。

 

「……はあー……まじで硬すぎだよこいつ」

「お疲れ様、ゆず」

「ほんとに疲れた……」

 

そんな会話をしながらも、座り込んだ楪を立たせる月岡椛。

しかしその脳内は、そんな気楽な会話とは裏腹にある思考に覆われていた。

 

(この獅子は一体?まず間違いなくヒュージではない……けれどもこんな種は見たこともない聞いたこともない、一体これは───)

 

この獅子についての思考が回り続ける。

だが、その思考はある咆哮によって中断される。

悍ましいその声は、この世界に生きるのならば誰もがしっている声だ。

 

『■■■■■─────────────ッッッ!!!』

 

竜を模したようなその体躯に、巨大化した器官を備える腕。

まさに英雄譚に出てくる怪物のようで、一般人が見れば怖じ気が止まらなくなるだろう。

まさにそれは人外の災厄そのもの。意志をもった災害だ。

 

名を─────

 

「ファーヴニル……」

 

憎むべき、人類の宿敵の名前だった。

 




因みにティ────女神様の分霊は、虚数空間にいる本体がある少女によって分霊を引き込まれたものです。
虚数空間が故に、出現するのを抑止は阻止できなかったのですよね。

あとくすみんが柔らかくなったのは、あの記録で信用と信頼はできると思ったからです。流石に人類救った大英雄の功績見て信用できないは無さそうですし。
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