【仮題】ドリジャ男性観破壊RTA   作:花火師

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今回は短めなのです


第4話

「お疲れ様、ジャーニー。ホットミルク飲む?」

「……はい、ありがとうございます」

 

 模擬レースですらない、子供の児戯のような一戦。それでも勝利したはずの彼女は、どこか不満げだった。

 

 とりあえずで彼女にも差し出したホットミルク、もしかして嫌いだったかな。

 

「……私とコ――彼女達の勝負を、見届けてくださらなかったのですか?」

「いや、見たよ? 見終わった後に、ホットミルク飲みたくなったから戻ってきただけだよ」

「…………担当トレーナーであれば、終わった後に一言くらいあってもいいんじゃないですか?」

 

 露骨に呆れた顔をされた。

 さては本当に見ていたか疑ってるな、これ。

 

 じゃあまあ、ちゃんと見ていた証明も兼ねて。

 

「得意の脚質に合わせた位置取り、序盤からペースを崩さない走り。どれを取っても満点を渡せる内容だったよ」

「……そうですか」

「それに、あの相手の心を折りに行く走り。心底、君を担当にしてよかったと思ったね」

 

 2人同時にマグカップを机の上に置く。思えば初めてかもしれない、この目をしている彼女と目が合うのは。

 

 

 


 

 

 

「――それに、あの相手の心を折りに行く走り。心底、君を担当にしてよかったと思ったね」

 

 奇しくも同時にマグカップを机に置く。視線が交差する。あのレースで、アネゴへ向けられていた目。心の底から“楽しい”を映した、あの目。

 

 ――ああ。ようやく、私にも向けてくれましたね。トレーナーさん。

 

「……ジャーニー。僕達、昔どこかで会っているよね?」

「なんだ、思い出していただけたのですね」

 

 ふふふ……色々と手を回していた甲斐があったというものだ。

 

 おっと、いけない。顔に出すな。

 

「いや? 鎌をかけただけだよ。悪いけど、僕は物覚えが悪くてね」

 

 ――本当に、この人は。

 

「つまり私は、まんまと騙されたというわけですか……」

「そうなるね」

 

 してやったり、とでも言いたげな顔……こんなにも分かりやすいヒトに、してやられたのか。

 

「……どうして、私と貴方が過去に会ったと、そう思ったのですか?」

「まず一つ。君が俺をトレーナーに選んだこと――それも、随分と手を回してまで」

「そちらも、気付いていたのですか」

「いや、これも鎌かけ。……動揺したね、ペテン師さん?」

 

 ……なるほど。

 

 こちらが試しているつもりで、同じだけ試されている。

 

「……ええ、そうですね。少しばかり、動揺してしまったのかもしれません」

 

 ならば、こちらも一手。

 

「では仕返しを一つ。レース前、貴方は“半分納得した”と仰いましたね。では残りの半分――何故私が貴方を選んだのか、聞きたくはありませんか?」

「あちゃあ、やっぱりそこは来るか。うん、聡いね君は」

 

 本当に楽しそうに笑う。

 

「私、記憶力は良い方でして。入学してすぐ、サブトレーナーとして働いている貴方を見て――“あの時の人だ”と気付きました」

 

 一つ一つ、なぞるように。

 

「見ず知らずのウマ娘に席を譲る優しさ。身の上を隠さない素直さ――そして、ウマ娘を嫌っていることを隠そうともしない、その目」

 

 わずかに口元を緩める。香りについては、口に出すのはやめておこう。少し品が無いと思わるかもしれないから。

 

「ほら、実に印象的でしょう?」

「はは、そりゃあね」

 

「貴方は、これ以上なく望ましい方なんですよ。私のトレーナーに――旅の導き手に」

 

 これは本心だ。一切の偽りも隠し事もない。

 

「それってさ。僕が“使いやすそう”だからじゃないの?」

 

 意地の悪い笑み。

 

「……まったく。意地悪な人だ。そんなわけがないでしょう?」

 

 即座に否定する。

 

「貴方は、素晴らしいトレーナーです」

「そう言ってもらえると嬉しいね。ついこの間まで担当が付かなくて、心が折れそうだったんだ」

「その件に関しては……申し訳ありませんでした」

「ああ、いいよ別に。もう“フられた”って事実しか覚えてないし」

 

 軽く笑う。

 

「何も覚えられない馬鹿でよかったよ、ってね」

 

 あの出会いを忘れられたこちらとしては、全く、笑えない。結局、私はまた彼との初対面を重ねてしまった。

 

「――それにさ」

 

 ふと、声色が変わる。

 

「”俺”は、お前みたいなウマ娘が大好きだよ」

 

 真正面から、射抜くように。

 

「心底気に入った。……君の旅の終着点を、何に代えても見てみたいと思うくらいには」

 

 その笑みは、あまりにも真っ直ぐで。

 

「……ええ。貴方なら、そう言ってくれると信じていましたよ」

 

 だから、私も笑う。

 

 ――これでいい。

 

 互いに隠し事はない。その上での契約継続。

 

 即ちこれは、決して破棄されない、“鉄の契約”。

 

「それじゃあ改めて。これからもよろしく頼むよ、ドリームジャーニー?」

「こちらこそ、よろしくお願いしますね」

 

 一拍。

 

「――じゃあ再出発だ。まずはお互いの“好き”を確かめよう」

 

 少しだけ、楽しげに。

 

「君は――黄金の旅路に、何を見た?」




切りが良いのでここまで

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