D-WAVE!ーチルアウト☆ヘレティックー   作:太刀黄泉

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新ドレイク実装おめ!

イベントホーム画面いいですね
特にジズ


♪ワンダリング・スノー♪‐SeCToR-A【巡礼者×異端者】

横からの構図で捉えられた待機画面では、浮遊感のあるレトロなシンセポップに合わせ、ゆっくりと廃墟の街並みが流れていた。

そこを歩くのはいつものギャル服に身を包んだリヴェラ。

電子ビートのテンポに合わせ、画面の右側から左へ向かうように進んでいる。

 

:わこつ。……って、あれ?

:シルエットがフルカラーになってる!

:さっそくマイナーチェンジか?

 

前回と違う待機画面の演出に戸惑うリスナーたち。

BGMはサビに入り、シンセポップはフューチャー・ベースへと姿を変える。

重低音を響かせながら広がるエモーショナルな電子音に合わせるかのように、画面のリヴェラも軽やかに駆けだす。

 

:すっげ♡

:ゆっさゆっさ♡

:今回の待機画面サービスいいじゃん

:後ろにいたちぃエニどうしたんだ?

 

靡く銀髪。揺れる健康的な褐色肌。

BGMが小さくなっていくのに合わせ、徐々に速度を落とし、ついに立ち止まる。

暗転し配信が始まるのかと思いきや、画面のリヴェラがこちらを向き――。

 

「よっす~☆ あなぐらのみんな~☆ リヴェラこと、煮卵ネキだよ~☆ 今日もゆる~く、地上から配信してくんでヨロシク!☆」

 

溌溂とした笑顔と横ピースと共に、配信開始を告げるのだった。

 

:ファッ!?

:始まって「た」だと!?

:騙されたわwww

:よっす~☆

 

「ちな、場所は昨日と同じ廃都市☆ 廃デパートから北へ15ブロック(1200m)くらいのトコに居るよ☆」

 

リヴェラの説明で水晶玉(カメラ)が旋回し、前回探索した廃デパートの方角を映す。

 

:だいぶ離れてるな

:前回のネキのドレス姿良かったな……

:ちぃエニのゴスロリ妖精さんを忘れてない?

:どっちもマジで良かった!

 

「てか、走って喉乾いたからドリンク調達しないとね☆ てことで、あそこのカフェに行ってみよー☆」

 

手でパタパタと扇ぎながら、リヴェラは廃屋へ歩いて行く。

水晶玉(カメラ)が追う先にあるのは、かつてテラス席だったらしい広場と、錆びついた真鍮の看板が傾く廃カフェテリア。

割れた大きなショーウィンドウからは縦横無尽に蔦が巻き付き、なんとも風通しと日当たりの良さそうな雰囲気を醸し出していた。

 

リヴェラが歪んだドアを押し開けると、中はすっかり緑に侵食された静かな空間。

 

天井の隙間からは木漏れ日が差し込み、足元には割れたグラスや破片が転がっているものの、カウンターやテーブルの骨組みは意外なほどしっかり残っている。

奥の壁には文字の掠れた木製メニューが掛かっており、ホコリを被ったエスプレッソマシンが「かつてカフェだった名残」を静かに主張していた。

 

:思ったより形残ってるな

:なんか秘密基地感してて良き

:それな

 

【いらっしゃいませ】

 

リスナーたちが店内の様子を見ていると、画面外から声が掛かる。

水晶玉(カメラ)が旋回し声の主を辿った先――カウンターの上にちょこんと立つ、全長20センチの人影を捉える。

 

そこには白と黒を基調にしたいつものミニドレス姿のちぃエニが、両手を前に添え店員の如く佇んでいた。

小さな看板娘の登場に、コメント欄がにわかに色めき立つ。

 

:!?

:ちぃエニいたあああああ!

:前回のゴスロリ可愛かったよ!

:アークの神様が店員やってて草

:店員ごっこ助かる

:20センチの看板娘可愛すぎるだろ

 

カウンターに近づいたリヴェラは、早速とばかりに「お店屋さんごっこ」に興じる。

 

「あ、店内で☆」

【かしこまりました。ご注文はお決まりでしょうか】

「えーっとぉ……☆」

 

リヴェラが注文を思案するように、視線を上へ向けて一瞬。

 

 

「ベンティサイズ・クラッシュアイスマシマシ・エスプレッソトリプルショット・ストロベリーフレーバー・ダブルポンプ・キャラメル&ヘーゼルナッツシロップ・サブ・ホールミルク・ノンドリップ・エキストラホイップ・チョコソースダズル・ココアパウダーマシマシ・ホールド・ザ・スチーマー・フラッペ、く~ださい☆」

 

【ベンティサイズ・クラッシュアイスマシマシ・エスプレッソトリプルショット・ストロベリーフレーバー・ダブルポンプ・キャラメル&ヘーゼルナッツシロップ・サブ・ホールミルク・ノンドリップ・エキストラホイップ・チョコソースダズル・ココアパウダーマシマシ・ホールド・ザ・スチーマー・フラッペ、ですね。少々お待ちください】

 

 

:????????

:え、ごめん。なんて?

:呪文詠唱して草

:エスプレッソのところで限界だった

:これマジで通るのかよwww

:現カフェ店員だけど、割と普通の注文だな

:ワイも。これくらいなら楽勝

:魔窟すぎんだろ……

 

二人の呪文の応酬に困惑するリスナーたちをよそに、ちぃエニは、ぴょんっ、とカウンターの奥に飛び降り姿を消す。

しかし、すぐに真新しいトレイを持って浮上するちぃエニ。

 

そこには巨大なベンティサイズのカップ(約590ml)に山盛りのホイップクリームがそびえ立ち、その上から黒いチョコソースが網目状にたっぷり掛けられ、さらに全体を覆うようにココアパウダーがドッサリ塗されたトッピング。

ベースは深いコーヒー色の中に、イチゴの甘酸っぱい香りと赤みがほのかに混ざり合ったクラッシュアイス状のドリンクが鎮座していた。

 

「ありがとー☆ ……かわちい店員さんも、あーしと一緒にお茶しない?☆」

 

【職務中なので、と言いたいところですが。ご相伴にあずかりましょう】

 

リヴェラが指を鳴らすと、ピンクルビーの光粒子が集まり、トレイの上にもう一つ、ちぃエニ用の可愛らしいミニサイズが現れる。

トレイを持ち、カウンター席に移動するリヴェラの後を、ちぃエニがふよふよ飛んでついていく。

 

カウンター席の汚れや破損箇所を、ピンクルビーの光を灯した指先一振りで直して、スツールに腰掛けたリヴェラ。早速とばかりに自分の顔ほどもあるカップを手に取る。

その隣で、ちぃエニも自分のサイズに合わせたミニカップの前へ、手際よくちょこんと降り立った。

 

「ん、うま☆ いちごの酸味とチョコが合わさって最高~☆」

 

リヴェラがストローで豪快に吸い上げると、ちぃエニもちょこんと挿さった小さなストローから、ちゅーっと真面目な顔で吸い付く。

 

【……ん。甘みと苦みの調和が見事です。チルい、とはこういうことですね】

 

コクコクと頷きながら、ちょっと背伸びした感想を述べる看板娘。

 

「お☆ ちぃエニもチルとか語るカンジ?☆ 今日は雑談枠にしちゃう?☆」

 

リヴェラのゆるい一言でまったりムードになり、コメント欄も流れ出す。

 

:そういや昨日言ってた物資の有効活用ってどうなったん?

:昨日の今日で気が早すぎだろwww

:でも正直気になる

 

「あー、あれ?☆ ハン……じゃなくって、マスタングおじさんが全部買い取ったみたい☆ あーし的にプレゼントのつもりだったんだけどなぁ~☆」

 

【……ハン?どんな噛み方ですか。……あれほど大量の遺物を考えなしに市場へ放出すれば、アークの経済崩壊は必至です】

 

ストローでカップの中身をシャクシャクつつきながら、のほほんと宣うリヴェラに、ちぃエニは金の双眸を細めてぴしゃりと言い放つ。

 

:全買い取りって、マスタング豪気やな

:経済崩壊マ?

:大量って、どんなもんよ

 

「どんくらいだっけ、ちぃエニ?☆」

 

【楽曲使用の謝礼で、テトラライン向けに服飾類が八万点。家具、コスメ、生活用品類などのその他が三十二万点。計四十万点の現物、及びデータをマスタングCEOが即決で買い取りました】

 

:は?

:四十万点!?

:お礼の分抜いて、……三十二万も流そうとしてたの!?

:そら崩壊するわwww

:漢気市場防衛おじさんたすかるゥ~!

:サンキューマスタング

 

「あ、データで思い出したけど☆ 復元モデルってカンジで、テトラから新作アパレルとコスメが出るんだって☆……あと、インナー系も☆」

 

【……リヴェラ、未公開情報の事前漏洩は明確な規約違反です。守秘義務という言葉を知っていますか?】

 

「聞いた事あるかもソレ~☆ ……みんな、さっきの秘密ね?☆」

 

浮かび上がったちぃエニが『リーク犯』の頬を、プニッ、と小さな手でつまむ。

当のリヴェラは微塵も悪いとは思っていない顔で、水晶玉(カメラ)に向かってウインクと「しーっ」のジェスチャー。

もちろん、そんな事で静かになるリスナーたちではない。

 

:もう遅いわwww

:配信で言うなしwww

:秘密になってなくて草

:復元モデルの新作とか熱すぎな件

:新作絶対買うわ

:デザイン楽しみ過ぎる!

:マスタング頭抱えるだろコレwww

:言っちゃって大丈夫なんですかね……

:……新作の情報提供感謝する、煮卵ネキ

:お。推定ミシリスの有識者じゃん

:ミシリス社員もよう見とる

 

こぼれた『未公開情報(ごちそう)』に盛り上がるコメント欄を睨み、鎮める方法を思案するちぃエニ。

考え無しにリヴェラが口を開こうとしたその時――。

 

 

「こんな所でおしゃべりか?地上は、呑気に過ごしていい場所ではない」

 

 

第三者の硬い声が、廃カフェテリア内に響き渡った。

声に反応した水晶玉(カメラ)が、闖入者の全貌をいち早く画面に収める。

 

 

目を惹くのは、純白の雪を思わせる白髪のセミロング。しかし、やや荒れた毛先が無造作な印象を与える。

 

その「雪原」に架かる、武骨な黒いアンテナ付きのバイザーギア。

身に纏う白い外套(マント)はボロボロだが、使い込まれた様子から、彼女が長い間過酷な環境に居たことが窺える。

 

外套から伸びる右腕を覆う黒いガントレットは銃のグリップを油断なく握り、肌色の左手は銃身に添えられている。――即座に対応できる構えでありながら、引き金からは正確に指を外していた。

 

 

全身から漂う、古強者然とした佇まい。

しかし、凛とした印象の琥珀色の双眸は、どこか呆れた雰囲気でこちらを見つめていた。

 

:うほっ♡イケメン♡

:誰よ!この女ァッ!?(ニケ)

:いや、マジで誰?

:見たところ一人っぽい……?

:……まさか

 

突然の乱入者にコメント欄が色めき立つ。

そんな中、ぽつりと――。

 

【……コードネーム・スノーホワイト……】

 

「……その名で呼ばれるのは久しぶりだな」

 

ちぃエニの呟きを拾った白いニケ――スノーホワイトが、視線を二人の脇で浮遊する水晶玉(カメラ)へと向ける。

何かの気配を察知したのか、琥珀色の瞳を細めた。

 

「……その浮かんでいる玉はなんだ? 偵察機ではないようだが……。まさか、アークへ向けて通信でもしているのか?」

 

【これは……】

 

「通信じゃなくて、配信中!☆ 今!☆ NOWで!☆」

 

指摘され言い淀むちぃエニを、陽気な声が遮った。

ピンクルビーの瞳を輝かせ、立ち上がったリヴェラが無遠慮にスノーホワイトに近寄っていく。

――動きに反応して向けられた、銃口に構うことなく。

 

「待て、そこで止まれ」

 

「や~、こんな所で会えると思ってなかったんだけど!☆ え、スノーホワイトマジか!☆ スノホワマ!?☆ ヒマなら一杯どう?もち、あーしのオゴリで!☆ てか、配信出て!!☆」

 

「……おい、こいつをなんとかしてくれ」

 

【……チャンネル主がすみません。リヴェラ、ステイですよ。ステイ】

 

:イケメン困惑してて草

:銃口向けられてるのに気にしないネキよ

:勢いと圧がすごかったからね、仕方ないね

:仕方ないで済ますなwww

 

ちぃエニがリヴェラの頭の上に乗り、小さな手でぺしぺしと止めに入る。

リヴェラの勢いが落ちたことで、小さく息を吐くスノーホワイト。

止められたことを気にもせず、リヴェラは自己紹介する。

 

「あっは☆ 驚かしてめんご☆ 改めて、あーしはリヴェラ☆ よろー☆ で、こっちのかわちいのが……」

 

【ちぃエニです】

 

「スノーホワイトだ。……で、さっきの配信というのはなんだ?」

 

「配信知らないマ!?☆ ……あー、色々(・・)あって知識消えてるカンジか☆」

 

【……簡単に申し上げますと、今この瞬間もアークの市民に映像が流れています】

 

「アングラサイトだけどね☆」

 

「……何?」

 

琥珀色の瞳がわずかに見開かれ、即座に水晶玉(カメラ)へと視線が戻る。

自分の姿や行動がアークの市民(一部だが)に筒抜けになっている状況を理解した瞬間、スノーホワイトの雰囲気が一変した。

まるでこれ以上の露出を避けるように、彼女は迷いなく踵を返した。

 

「無用な混乱を招く気はない、私は去る。それと、見たことも忘れ……」

 

「さっきも言ったけど、一杯おごるよー?☆ あと、オヤツも付けちゃう☆」

 

「……なに?」

 

瞬時に取り出した、紙ナプキンで包まれたドーナツを持つ右手を、リヴェラは嗅がせる様にゆらゆら振る。――スノーホワイトは半身で振り返っている!

 

「それとも、こっちがいい?☆ あーしの配信出てくれたら、おかわりもあるゾ~☆」

 

それぞれお皿に載ったホットドッグとハンバーガー。それらが載るトレイを、リヴェラは左手で突きつける。

細長のパンに挟まる脂の照りがおいしそうなソーセージと、肉厚パティが崩れないようピン留めされたハンバーガー。――スノーホワイトは全身で振り返った!

 

「……いいだろう。約束は守れよ」

 

【……撤回するのが速いです】

 

:釣れたwww

:飯堕ちって本当にあるんだ……

:そうはならんやろwww

:なっとるやろがい!

:このニケ、口の端光ってるけど、ヨダレか……?

:いや、草

 

 

快諾(?)したスノーホワイトを交え、ボックス席(リヴェラがサッ(・・)と清掃済)に場所を変えて配信が続く。

 

「てことで、今回のサプライズゲスト!☆ 『実は中央政府が指名手配中』、巡礼者(ピルグリム)でお馴染みのパイオニア部隊のスノーホワイトさんです!☆ イェーイ!☆」

 

【リヴェラ……】

 

:ファッ!?

:指名手配マジ!?

:ピルグリムぅ!?

:なんかネキがすごい事言い出したぞ

:今回も神配信の予感www

 

『未公開情報』(ごちそう)を上回る『指名手配中』、『ピルグリム』(さらなるごちそう)に騒然とするコメント欄。

無造作に爆弾を投下したリヴェラに呆れるちぃエニ。

その指名手配中のピルグリムはというと――。

 

「はぐはぐ……」

 

:ホットドッグとハンバーガーに夢中なんですが

:わんぱく食いで草

:こいつは聞いてねぇなwww

:聞けよ!話を!www

 

両手にそれぞれ持った食べ物に夢中で、それどころではないようだった。

琥珀色の瞳を明滅させ、頬を膨らませながらがっつく姿を水晶玉(カメラ)は淡々と映している。

 

喉を鳴らして食べ物を流し込んだスノーホワイトが、用意されていたストロー付きのカップを手に取り、一気に吸い上げる。

ほんの少し目を見開いたあと、カップを見つめて小さく呟いた。

 

「……冷たくて甘いな、悪くない。これは何という飲み物だ?」

 

その問いに、リヴェラとちぃエニが揃って口を開く。

 

「【ベンティサイズ・クラッシュアイスマシマシ・エスプレッソトリプルショット・ストロベリーフレーバー・ダブルポンプ・キャラメル&ヘーゼルナッツシロップ・サブ・ホールミルク・ノンドリップ・エキストラホイップ・チョコソースダズル・ココアパウダーマシマシ・ホールド・ザ・スチーマー・フラッペ☆(です)】」

 

「…………」

 

琥珀色の瞳を数回パチパチさせ、ぽかんと口を開けるスノーホワイト。

数秒の沈黙のあと、彼女の表情から一切の冗談が消え去り――真顔になった。

 

「ベン……? ……お前たち、『侵食』されていたのか」

 

:侵食扱いで草

:やっぱ何言ってるかわかんねぇよなwww

:待って、ゆっくり銃に手伸ばしてる!?

:ネキ!笑ってないで止めろォ!

 

「ただのカスタム注文だってwww☆ あーしらシラフ(・・・)だからwww☆ ほら、おかわりお食べー?☆」

 

「! ありがとう……はぐはぐ」

 

「どういたしまして☆ ちぃエニ、みんなに『ピルグリム』の解説お願いね☆」

 

【……わかりました】

 

ため息を付き、居住まいを直したちぃエニがリスナーたちに語り掛ける様に口を開く。

 

【ピルグリムとは、アーク中央政府の管理下に置かれず、地上領域にて独立して活動するニケの総称です。記録上、彼女たちはアーク成立以前から単独でラプチャーとの戦闘を継続しており、アークの標準的なニケとは一線を画す戦闘スペックを有しています】

 

「要するに、超絶強い野良ニケちゃんたちってワケ!☆」

 

:解説助かる

:……やはりピルグリムだった

:すげぇ。都市伝説じゃなかったんだ!

:裏のスレで見たことあったけど、マジだったのか……

:はぇー、知らんかった

:え、待って。地上で単独活動って、ネキもピルグリムじゃね?

:俺ら、最初から伝説見てたってコトぉ……!?

 

「たしかに!☆ 言われてみたらそうじゃん!☆ うぇ~い、あーしらピルグリムでーす☆」

 

【……配信という道楽で彷徨うのでは、意味が違うと思いますよ】

 

コメント欄の指摘ではしゃぐリヴェラに、釘をさすちぃエニ。

 

【……また、スノーホワイトが所属する『パイオニア部隊』は最初期個体群であり、アークの安全保障データベースにおいては、厳重な経過観察対象および指名手配扱いとなっています】

 

「ちな、指名手配は政府のワガママな!☆ つよつよスペックの仕組みが気になるから、捕まえてバラしたいっぽい☆」

 

【……事実陳列罪ですよ、リヴェラ】

 

:ぶっちゃけすぎぃ!!

:ネキ、アクセルベタ踏みで草

:あぁ、いつもの中央政府ね……

:制御下にないニケが気に入らんのやろなぁ

:てか、ちぃエニも認めてるやんwww

 

「……むぐ。別に、捕まえたければ好きにすればいい」

 

ドーナツの最後のひとくちを口に放り込み、口元を拭いながらスノーホワイトがポツリと呟く。

 

「捕まえられるのなら、だがな」

 

一瞬だけ琥珀色の瞳に宿った本物の戦士の鋭さに、画面越しのリスナーが一斉に息を飲む――。

 

:これは強者の風格

:食いしん坊が出していい覇気じゃないだろ

:……かっこよ

 

「そそ☆ ラプチャーボコるので忙しいんだから、中央政府は黙ってろってね☆ それに、人類の敵はラプチャーだけじゃないもんね?☆」

 

スノーホワイトに新しいドリンクカップを渡しながら、リヴェラが言う。

受け取ったスノーホワイトは、カップに視線を落としたまま口を開いた。

 

「……そうだ。『ヘレティック』が居る」

 

:えっ

:ネキがよく言ってるやつじゃん

:何でピルグリムの口からヘレティックが……?

:テトラの隠し玉じゃないの??

 

日頃リヴェラが口にしている単語が、先刻現れた伝説(ピルグリム)の口から出たことに困惑するリスナーたち。

スノーホワイトは淡々と続ける。

 

「人類の裏切り者、ラプチャーを選んだニケ。それが……『ヘレティック』だ」

 

【……補足すると、アークでは侵食が進行し完全にラプチャー側の戦力となった個体をそう呼称します。極めて高い戦闘力と知性を持ち――】

 

「ってことで、あーしのパイセン(・・・・)たち紹介してこーか☆ 映像流しまーす☆」

 

リヴェラの声とともに、水晶玉(カメラ)からホログラム映像が浮かび上がる。

 

瞬きを忘れたかのように見つめる、スノーホワイトとちぃエニ。

 

リスナーたちの端末(デバイス)にも、中央政府が把握しているもの以上の情報が、呆気なく流れていく。

 

 

銀髪のロングツインテールに赤い瞳のヘレティックが、盾のようなものからレーザーを放ち、都市を破壊している。

 

紫髪をツーサイドアップにした赤い瞳のヘレティックが、眠たげな様子で大津波を起こし、敵味方諸共全てを押し流している。

 

赤髪のロングヘアーに赤い瞳のヘレティックが、好戦的な笑顔を浮かべ、灼熱を放ち量産型ニケと指揮官を蹂躙している。

 

黒髪のセミロングで褐色肌に赤い瞳のヘレティックが、恍惚とした表情で先端が刃になった尻尾で量産型ニケたちを切り刻んでいる。

 

浮遊する巨大ロボの頭部がスライドし、中から銀髪のロングヘアーにバイザーで目元を隠しているヘレティックが映り、映像が終わる。

 

 

その瞬間、配信画面上のチャット欄は恐ろしいほどの速度で流れ、やがて阿鼻叫喚の嵐と化した。

 

:は????????????

:待って待って待って何今の!?!?

:街が丸ごと消えたんだが???

:レーザー?? 津波??? 火の海????

:量産型が虫ケラみたいに刻まれてんだけど……

:最後に出てきた巨大ロボなにあれ……アークの最新兵器???

:なぁこれAI生成映像だよな?? ネキの演出だよな???

:嘘だと言ってくれ頼む

 

「えっと、一人目から順にアナキオール、リバーレリオ、ニヒリスター、インディビリア、最後が後輩ちゃん(・・・・・)のモダニアね☆ 戦闘能力は言わずもがな、もれなくエッグいリジェネ持ち、ってのがヘレティックの特徴かな☆」

 

【……該当データ、照合不能。……本体(エニック)のデータベースにも存在しない個体群の戦闘記録、ならびに能力特性。一体どこでこれを入手したのですか、リヴェラ】

 

「素晴らしい」

 

無言で映像を見ていたスノーホワイトが賞賛を口にする。しかし、琥珀色の双眸は静止画で表示されたヘレティックたちに釘付けだった。

 

「そうだ。奴らの身体は削っても削っても再生する。全セルを一度に吹き飛ばすか、あるいはコアを直接破壊せぬ限り死なん。……『あと一歩』何度そう思ったことか」

 

スノーホワイトの声音には、過去に幾度もヘレティックと刃を交え、その理不尽な再生能力と対峙してきた者だけが持つ、重く冷たい凄みが宿っていた。

 

「……リヴェラ、だったか。情報提供感謝する。だが……お前、何者なんだ?」

 

「あれ?☆ 言ってなかったっけ☆ あーしもヘレティックなんよ☆」

 

スノーホワイトに問われたリヴェラは、ストローを咥えながら事も無げに言ってのける。

 

 

「……質の悪い冗談はやめろ。その間抜けな雰囲気の、どこがヘレティックなんだ」

 

【スノーホワイトに同意します】

 

「二人とも辛辣ぅ~www☆ ホントだってwww☆」

 

失笑したスノーホワイトはドリンクを口に運び、同意見だと頷くちぃエニ。

二人のリアクションに苦笑するリヴェラは、頬杖をつき目を伏せる。

 

「じゃあさ☆ これなら――どう?」

 

――ど ろ り

 

「……!」

【ヒッ……】

 

目を開けたリヴェラ。だが、いつものピンクルビーは無く。

 

あるのは『悪意』。

 

人類に対する憎悪や殺意、それらを煮詰めた地獄の窯の中を覗いたような。

光を宿さない赤黒い瞳が二人を、人間(リスナー)を見つめるのだった。

 

:ひっ

:画面越しでも怖気やば

:しんぞういたい

:あ

 

画面には、リヴェラの額に拳銃を突きつけるスノーホワイトの姿が映っていた。

瞬き一つでいつものピンクルビー色に瞳を戻し、リヴェラは飄々としている。

 

「……ちょいちょ~い☆ 冗談ですやんwww☆ でも、これでわかったっしょ?☆」

 

「……」

 

【リヴェラ……】

 

憮然とした表情で、拳銃を外套の下に戻すスノーホワイト。

気圧されて僅かに震えて座り込んだちぃエニの頬を、「ごめんね☆」と指先で優しく撫でているリヴェラ。

 

「いやー、スノーホワイトの抜き撃ちマジマッハで草☆ 秒で頭ぶち抜かれるかと思った☆ 『貫けぇっ!』って聞こえたもんね☆」

 

リヴェラはふぅと息を吐いて、スノーホワイトに笑ってみせる。

対面のスノーホワイトは、黙ってストローでドリンクを啜っている。

 

ズズッ……。

 

「言っていない。……次は無いと思え」

 

「りょ~☆ ……んで? コメント欄、みんな固まってどうしたの?☆」

 

:どうしたのじゃねえよwwwww

:冗談で出していい瞳じゃねえだろ今の!!!

:スノホワさんが銃抜かなかったらどうなってたんだよ……

:マジで心臓止まるかと思った

:ネキの目的マジで何なの……?

 

画面を埋め尽くすリスナーたちの困惑と恐怖のコメント。

それらを流し読みしながら、リヴェラはパチンと指を鳴らし、水晶玉(カメラ)に向かって満面の笑みを向けた。

 

「はいはい、みんな顔青すぎ~☆ 目的? ……チルに決まってんじゃんっ☆」

 

:ズコーーーーーーーーッ!!!!

:ここでチル!?!?!?

:緊張感を返せwwwwwwwww

:命のやり取りした直後にチルは狂気なんよwwwwww

 

【……チ……ル……?】

 

ちぃエニがショートしかけた頭で壊れたロボットのように呟き、スノーホワイトも呆れたように大きく息を吐き出すのだった。

 

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