D-WAVE!ーチルアウト☆ヘレティックー   作:太刀黄泉

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つい最近、CHAPTER41をクリアしました。
っぱセイレーンとクラウンですわ。


-InTeRMiSSioN-

『ファンネーム』

・配信終了後 秘匿掲示板

 

【煮卵ネキの配信見た奴ちょっと来い】

1:管理人《ちぃエニ》

警告:この掲示板は『認証キー』で保護されていますが、端末を紛失、あるいは、キーを第三者に漏洩した瞬間に、あなたの市民権は消滅します。

また、このメッセージは全てのスレッドに自動で添付されます。

つまり――――1ゲット。

 

2:名無しのモグラ

市民権消滅の警告を1ゲットに使うなよww

っていうか……なぁ、今の配信。マジで何だったんだ。

俺、まだ脳のバグが治らねえ。海、夕陽、アイテムボックス、停電の犯人、遺物横領……情報が多すぎて処理落ちしたわ。

 

3:名無しのモグラ

一番のバグは、エニックがSDキャラになってモデレーターやってたことだろ。

しかも「拡散したら処分(消去)」とか、あんな可愛い姿でさらっと死刑宣告してくるの怖すぎんだろ。

 

4:名無しのモグラ

でも、あの海と夕陽は「本物」だったな……。

アークの予定調和なホログラムじゃない、残酷なまでに鮮やかなオレンジ。

ネキが「あなぐら」って呼ぶ意味がわかっちまったよ。俺ら、蓋の中で飼われてるだけなんだなって。

 

5:名無しのモグラ

しかし、最後の「掲示板チェック忘れんな」って……。

エニックに専用掲示板作らせるとか、ネキの行動力マジで天災だわ。

 

6:名無しのモグラ

本物の海に夕陽、挙句に「拡散したら消去」だろ?

俺ら、名実ともにアークの裏側に引きずり込まれたな。

 

7:名無しのモグラ

で、俺たちの呼び名どうする?

「煮卵ちゃんねる☆」の登録者なんだから、それっぽいのが欲しい。

 

8:名無しのモグラ

【タレ友(タレとも)】はどうだ。

 

9:名無しのモグラ

タレ友?

 

10:名無しのモグラ

煮卵の「タレ」。

……あと、スラングで「タレ(女/モノ)」って意味もあるだろ。

「お前ら全員あーしのモノね☆」っていう、あのネキの空気感にぴったりじゃねーか。

 

11:名無しのモグラ

それだわwww

男も女も関係ねえ。あの夕陽を見せられた時点で、俺たちはもうネキの所有物(タレ)ってことか。

 

12:名無しのモグラ

決まりだな。

ようこそ、煮卵ネキの「タレ」へ。

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

『事後承認』

・アーク エニックルーム

 

      『おつへれ~☆』

 

気の抜けるような挨拶とともに、ホログラムディスプレイが消失する。

静寂が戻った白一色の大広間に、男の重い溜息が響いた。

 

「……呼び出しの理由は、これか? エニック」

 

軍服を着た、紳士然とした壮年の男――アンダーソンは、ぬるくなったコーヒーを口に運び、眉をひそめる。

 

『それは、用件の一つに過ぎません』

 

用意されたテーブルセットの前に佇む、漆黒のベールで顔を隠した女性型アバター――エニックは、抑揚のない声で答えた。

 

「……では、その見慣れないニケたちのことか」

 

アンダーソンの視線の先で、それまで従者のように控えていた二体のニケが、示し合わせたように歩み出る。

 

『――エンドレス

エニックが右手で示す。黒い長髪に紫のインナーカラーを覗かせたニケが、静かに目礼した。

 

『――エタニティ

エニックが左手で示す。白い短髪に褐色肌のニケが、慎ましやかに会釈する。

 

『この二体の製造承認を、事後許可願います』

 

いっそ開き直りとも取れるエニックの言葉に、アンダーソンは額を掌で覆った。

 

 

(――美味しいコーヒーを用意して、お待ちしております)

 

常のエニックにはあり得ない「誘い文句」が頭をよぎる。だが、呼び出しに応じた後ではもう遅い。

 

「……理由を説明してくれ」

『はい。それでは――』

 

――個体名:リヴェラ。コード:ヘレティック。

――一週間前の大規模停電の原因は、リヴェラが用いた未知の通信プロトコルから、アークを防衛するリソースを確保するため。

――結果、ファイアウォールを突破され、このルームに侵入を許したリヴェラより、アーク内での配信活動の黙認を迫りました。

――要求が受理されない場合、地上から回収された遺物に設定済みの『シグナルコール』を発動し、位置情報をラプチャーへ公開すると脅迫を受けました。

 

「地上の遺物横領の件か……。私の管轄下で、随分と舐めた真似をしてくれたものだ」

 

アンダーソンの表情が険しさを増す。回収部隊の不祥事は、本来なら彼の進退に直結する。

 

『首謀者の政府高官、および結託した指揮官は既に処分済みです。横領に使用された秘匿ルートも、物理的に破壊・封鎖しました。……エンドレスとエタニティが、期待以上の働きを』

 

ベールの奥の声には、疲労感が滲んでいた。生存者は皆無。すべての罪を死した高官に着せ、証拠ごと灰にする――リヴェラが用意した、あまりに「完璧」な事後処理。

 

アンダーソンは、気を取り直すように空になったカップを見つめた。

 

「そして……ヘレティックが、配信だと? ふざけているな」

 

『同意します。ですが、脅威であることに変わりはありません。リヴェラが用いる力――”D-WAVE”と呼称される波動は、現在のアークの技術では解明不能。判明したのは、人間が睡眠時に発する脳波に近い波形であり、かつ、それを物理干渉レベルで行使しているということだけです』

 

「彼女は、自らの手の内を晒したというのか?」

 

意味がわからない。

驚愕と困惑、そして僅かな恐怖を飲み込むように、アンダーソンはカップを傾けるが、手応えは空だった。

 

すかさず、いつの間にか彼の傍らに控えていたエンドレスが、完璧な仕草でポットからコーヒーを注ぐ。

礼を返すと、今度はエタニティの手によって小皿が置かれた。銀紙に包まれた小さな板状のものが二枚。エタニティは無表情なまま、アンダーソンへ向け、茶目っ気たっぷりにウインクをして見せた。

 

促されるままに銀紙を剥き、茶色の塊――チョコレートを口に放り込む。熱いコーヒーで流し込むと、それは、懐かしい味がした。

 

「……それで? それが、私が事後承諾を与える理由になると?」

 

『はい。お恥ずかしい話ですが、私はアーク防衛を優先するあまり、計算リソースの全てを彼女への対応に割いていました。……結果、病院や更生館、果ては中央政府の維持すら手薄になった』

 

「それほどだったのか。ヘレティックの干渉は……。……まさか」

 

『あなたの執務室も例外ではありません。しかし、彼女――リヴェラは、あなたが決して”停めてはならない”と定義しているバイタル・エリアの電力だけは、防衛網から隔離し、優先的に保護していたのです。……本人曰く、「借りを返せ」と』

 

「作った覚えはないのだがな。……助けられたのも事実、か」

 

『彼女は、私が構想段階で凍結していた二体の情報を探り当て、独自のナノマシン技術でロールアウトさせました。現在は、配信内容を外部へ漏らそうとする不純分子の”処分”に使役しているようです』

 

「……随分と多機能なことだ。人類の守護者(AI)が、独断で”剣”を隠し持っていたとはな。」

 

『製造プロセスに移行しない限り、それは存在しないも同然かと。』

 

アンダーソンから、今度こそ深い溜息が漏れた。

責任を揉み消し、恩を売り、代行者まで送り込む。ひどいマッチポンプだ。

 

「……私の”活動限界”も、アークの”歪み”も。全て見透かされているというわけか。いいだろう、承認する。監視だけは怠らぬように」

 

『賢明な判断に感謝します。アンダーソン副司令』

 

エニックが深く頭を下げる後ろで、エタニティとエンドレスが音もなくハイタッチを交わした。

 

「……フン。監視、か。徹底してくれ」

 

アンダーソンが飲むコーヒーは、どこまでも苦い。

それは、人類の守護者がヘレティックの手の平の上で踊らされている、現在の胸中そのもののようだった。

 

『リヴェラからの差し入れは、お気に召したようですね』

「……これもか。……ああ、気分は最悪だが、味は悪くない」

 

もう一杯いかがですか、とでも言うようにポットを掲げるエンドレス。

流麗な仕草で、新しいチョコレートを配膳するエタニティ。

 

ヘレティックが齎した奇妙なお茶会は、もうしばらく続くようだった。

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

『寝顔』

・煮卵ちゃんねる☆ SHORTS

 

タイトル:【閲覧注意】かわちぃの暴力。無理、尊死。

 

【映像構成】

・0:00 - 0:02

リヴェラの、声を抑えた囁き声。「おはよー」。

画面はコクーン(繭)型デイベッドの内部。網目状のフレーム越しに、地上の眩しい光が複雑な模様を描いて差し込んでいる。遠くからは、寄せては返す穏やかなさざ波の音。

 

・0:03 - 0:06

カメラがゆっくりと移動する。その先には、コクーンの柔らかさに包まれ、気持ちよさそうに熟睡するちぃエニの姿。

 

・0:07 - 0:09

画面いっぱいに映し出される、ちぃエニの寝顔。ダークトーンの肌に、白銀の睫毛。精巧な人形を思わせる完成度でありながら、一定の間隔で柔らかな寝息がマイクに拾われている。

 

・0:10 - 0:12

画面右下からリヴェラの人差し指が伸び、ちぃエニの頬をそっと突っつく。

同時に画面上には「ぷにぷに♡♡♡」という、可愛らしい丸文字フォントが弾けるように表示される。

 

・0:13 - 0:15

頬をつついていた指が、ちぃエニの小さな掌に触れた瞬間――。

ちぃエニが「きゅっ」とリヴェラの指を握り返す。リヴェラの悶絶を表現するかのように画面がピンク色に揺れ、そのまま(0:00)へシームレスにループする。

 

 

【コメント欄】

 

@タレ友1

かわいすぎんか? 無意識に画面触ろうとしたわw

 └ わかる。俺もだ。

 ┗ 地上の波の音とセットで実質セラピーだろ、これ。

 

@タレ友2

0:13の「きゅっ」で無事昇天。

 └ それな。リピート止まらんwww

 ┗ 指握られた瞬間のネキの「ヒッ…」って声が聞こえてきそう。

 

Enikk_Official

 は?

 └ え、これ公式の本体直署名じゃん。エニック様、マジギレ?

 └ というか、これホログラムじゃないぞ……。今、指で頬が沈まなかったか?

 └ ネキ、お前……これ「受肉」させてるだろ。どんな技術だよwww

 └ 【解析結果】コメ投稿の瞬間、アークの全演算ユニットがフリーズ。「は?」の裏でエニック様の脳内、パニック確定で草。

 └ 自称ヘレティック(笑)の力、便利すぎだろ。俺のスマホも受肉させてくれww

 ┗ 管理者様をフリーズさせる配信者、世界でネキだけだろ。一生ついていくわwww

(他99件のコメントを表示)

 




3.5周年おめでとうございます!
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