鬼殺のソリティア   作:ディヴァ子

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こういう子、結構好き。


始まりの大地編
ソリテール、大地に立つ


 私の名は「ソリテール」。「無名の大魔族」よ。何で無名なのかは、説明するまでもないわね?

 そんな事より、今は命乞いの最中なの。

 

「命乞いするんじゃなかったの?」

『……して欲しいの?』

 

 してあげないけどね。

 こうして、私は稀代の大魔法使い「フリーレン」に葬送されちゃったわ。嗚呼、もっとお話ししたかったけど、最期まで沢山お喋り出来て愉しかった♪

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

 それからどれ程の時が経ったのかしら。意識は文字通り闇の中だったから分からないけれど。何年、何十年、何百年経ったのかもしれないし、ほんの刹那の時しか過ぎていないのかもしれない。

 

『あら?』

 

 ともかく、私は(感覚的には)久方振りに目を覚ましたわ。何処とも知れない、暗い夜の森の中で、

 

『……失敗だな。呪いが掛けられていない』

『そうなんですか?』

 

 得体の知れない男女に見下ろされながらね。一人は黒い髪に赤い瞳を持つ病的な伊達男、もう一人は黒髪単眼という異形の麗人。どちらも犬歯が鋭く、凄まじい死臭を身に纏っている。黒髪なんて珍しいけど、魔族(どうぞく)かしらね?

 いえ、魔族かどうかなんて些細な事だわ。女の方は分からないけど、男の方は明確に私を殺そうとしているわね。殺意が駄々洩れだし。何がそんなに気に食わないのかは知らないけれど、殺気も隠せないなんて素人ね。

 

『じゃあ、どうするんです、産屋敷(うぶやしき)様?』

『お前、ふざけんなよ?』

『いや、だって呪いで名前が呼べないじゃないすか』

『だからって、よりにもよって何でその名前で呼んだ!? ……まぁ良い。名前の呪いは外してやるから、普通に呼べ』

『無惨様、私の事好き過ぎ~』

『一々突っ込んでたら切りがないからだよ! いいから、さっさと始末しろ、鳴女(なきめ)!』

『へいへい』

 

 

 ――――――ドギュンッ!

 

 

『……っと、危ないわね』

 

 「ムザン」という男の命令で、「ナキメ」という女が睨みを利かせた瞬間、彼女の眼から【人を殺す魔法(ゾルトラーク)】みたいな光線が飛んで来たので、私は慌てて避けた。一瞬だけど溜め動作があって助かったわ。喰らっていたら、確実に上半身が吹き飛んでいたと思うの。だって、着弾点にクレーターが出来てるし。

 だけど、魔法が発動した様子はない。反射的に張った防御魔法をいとも簡単に破壊した事を鑑みるに、おそらくは物理的な攻撃なんでしょうけど、一体何を飛ばしているのかしら?

 

『おい、避けられたぞ』

『おお、私の【空裂眼刺驚】を至近距離で躱すとは、中々やるじゃない。これでも失敗作なんですか、無惨様?』

『支配が全く為されていない「鬼」など、邪魔者以外の何物でもない。禍根を残すくらいなら、この場で摘み取ってしまうまでだ』

『なら、ちょっとは手伝って下さいよ~』

『黙れ、貧血だ』

『嘘吐くなや』

 

 夫婦漫才をしている二人は放っておくとして、何となく状況は掴めたわ。

 先ず、あの【人を殺す魔法】擬きの正体は、高温高圧の体液ね。その証拠に、ナキメの眼球が再生を行っているし。大方、眼圧を高めに高めて中身を発射したんでしょ。そのプロセスからして、連射は無理みたいね。

 そして、彼らが「オニ」という種族であり、ムザンの言いなりであるという事。それも人間や魔族の主従関係とは違う、どちらかというと魔法による精神支配に近い物。何処の国の言葉かは分からなくても、会話の長さと身振り手振りで何となくだけど、内容は分かるからね。大体は合っている筈。

 しかも、私には呪い(それ)が通じないみたい。これはチャンスね。下手な事をされる前にさっさと逃げましょう。という事でダッシュ!

 

 

 ――――――ベンッ!

 

 

『おいおい、誰が逃げて良いって言った?』

『………………!?』

 

 ナキメが手に持つ弦楽器らしき物を掻き鳴らした瞬間、私の足元に突如として横開きの扉のような物体が口を開けた。ビックリしたけれど、流石に大魔族を舐め過ぎね。この程度の罠、飛んで逃げれば済む話よ。

 

『あいつ、飛びましたよ無惨様』

『チッ……逃がさん!』

 

 すると、今度はムザンの方が身体中から野太い血管を生やし、鞭のように振るって来たわ。スピードも然る事ながら、威力が尋常じゃない。一撃で大木を綺麗に切断するのはおかしいと思うのよ。その上、血液に毒があるらしく、切られた傍から木々が枯れている。掠るだけでも危険ね。もっと距離を取りましょう。

 

 

 ――――――ベンッ!

 

 

『………………』

『がっ!?』

 

 そう思った矢先、再び弦が鳴り、真上からナキメが隕石落蹴(メテオ・シュート)して来たわ。たぶん、上空に自身を転移して奇襲して来たのね。かなり応用の利く能力だわ。

 

『この……っ!』

『………………』

『ぐふぁあっ!?』

 

 さらに、追撃してきたナキメに拳を振るったら、綺麗に受け流された上で鳩尾に滅茶苦茶重いパンチを喰らっちゃった。魔族は見た目に反した膂力を持っている物だけど、オニとやらも相当な物ね。肋骨が全部折れちゃったわ。回復魔法でどうとでもなるけど。それよりも、

 

 

 ――――――ベンッ!

 

 

『フッ!』

『おっと、放り込めたと思ったんだがな』

 

 殴り飛ばされた先に扉が待ち構えていたので、私は剣を二本生み出して両側に引っ掛けて、どうにか耐えた。だけど、こうもやられっ放しだと面白くないわね。という事で、もっといっぱい剣を召喚して発射。

 

『………………』

『えぇ……』

 

 全部殴り砕かれちゃった。私と同じで、遠距離魔法使いと見せ掛けて、暴力もしっかりイケるみたい。しかも、私と違って戦いの最中は黙っちゃうタイプ。色々な意味でつまらないわ~。

 

『前から思ってたけど、お前ちょっと暴力的過ぎない?』

『それを私に言っちゃうんですか、無惨様。他ならぬあなたが』

『そうだよなぁ! 出遭い頭に人の頭をカチ割る人間、初めて見たぞ』

『いやぁ、今まで割った中で一番爽快な一発でした』

『西瓜みたいに言うな』

 

 あと、どうしてこの人たちは直ぐに漫才を始めてしまうのだろう。見せ付けてくれるじゃないのよ。

 

 

 ――――――ベンッ!

 

 

『まぁ良いや。さぁ、もう逃げられないわよ~?』

 

 と、会話を切り上げたナキメが、私を異次元への扉で包囲した。これは流石にどうにもならないわね。

 

『よし、今度こそ止めを――――――むっ!?』

『おっと、夜明けですね。時間切れです』

 

 しかし、止めを刺される前に、何故かムザンとナキメは自らを扉の向こう側に閉まって撤退した。一体、何が彼らを逃がしたのかしら?

 

『……なるほど、陽の光ね』

 

 ほんの少し遅れて、私の顔を朝日が照らす。理由は不明だけど、彼らは日光が苦手みたい。それも血相を変えて逃げ帰るくらいにはね。ともかく、助かったわ。

 

「何者だ、お前は。何故陽光の下を、鬼が歩いている」

 

 助かって無かったわ。




◆ソリテール

 ご存じ「無名の大魔族」。人間と人の使う魔法の研究が趣味の変わり種で、人間との「お話」が大好き。その実態は「蟻を潰す一人遊び」と大差無いのだが。
 黄金郷にて討ち死にした後、流出した彼女の因子は時を越え次元を渡り、鬼滅の刃の世界にインストールされた。食人鬼が落ちるのは、結局は別の地獄でしかなかった。
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