鬼殺のソリティア   作:ディヴァ子

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嫉妬とは醜いなぁ?


月輪の心根を持つ剣士

 ――――――ホォォオオオオオッ!

 

 

「さぁ、有相は下した。……無相の貴様は、どうだ? ソリティア・イノセンスとやら。どうせ、それも偽名なのだろうが……」

『ウフフフフ♪』

 

 私――――――ソリテールを睨み付け、不思議な呼吸をし始める侍。

 凄く冷たい殺気。鋭い筈なのに、淡い美しさすら感じる。まるで月明りみたいな雰囲気(オーラ)ね。

 

『あなたはだぁれ? お姉さん、「お話」するのが大好きなの♪』

「ほう……人の皮を被った化け物が対話とは、笑わせてくれるな」

『嘘じゃないわよ?』

 

 だってこの世界に来て、真面に「お話」出来たの、アウラとさかなクンぐらいだもの。他の連中は全員、見敵必殺(サーチ・アンド・デストロイ)過ぎるのよ。

 そういう意味では、この人間は少しだけ見込みがありそうね。分かり易く油断と驕りが見えるもの♪

 

『少なくとも、名前くらい教えてくれないかな? それが武士(もののふ)の作法なんでしょ?』

「……なるほど、少しは勉強をしているようだ。良いだろう。こちらも応えねば無作法というもの。我が名は「継国(つぎくに) 巌勝(みちかつ)」。鬼狩りを生業とする剣士集団「鬼殺隊(きさつたい)」、その筆頭だ(・・・・・)

 

 なるほど、巌勝(みちかつ)くんか。思った以上にお喋り好きみたいね。おかげで「鬼」を殺す専門職がある事と、人外を狩る事に特化した剣技と武装がある事が分かった。あの偉丈夫――――――「縁壱(よりいち)(という名の化け物)」もそうだったけど、戦闘態勢に入ると同時に変わった呼吸法を始めてるから、そこに常識外れの身体能力を発揮する秘密でもあるのかしら?

 どれどれ――――――、

 

『ケホッ、ケホッ!』

「……貴様、見ただけで「全集中の呼吸」を!?」

 

 私が試しにやってみた呼吸法に、巌勝くんが驚愕する。本当によく喋るなぁ。そっか、これ「全集中の呼吸」って言うんだ。特殊な呼吸により莫大な酸素を取り込み、身体機能を爆発的に上げる戦闘技術。こんな対抗手段を考え付いて、その上で実行までするなんて、驚きだよ。人間はやっぱり凄いわ。

 ……それにしてもこれ、身体への負担が馬鹿にならないわね。出力はある程度変えられるようだけど、そもそも“風船(はい)に滅茶苦茶空気を叩き込む”という行為から始まっているから、一度でも使うと呼吸器系に甚大なダメージが入る。これを常に、戦闘時はもっと強く使うとなると、身体構造自体を呼吸に合わせて最適化する必要がある。

 呼吸と魔力という(・・・・・・・・)違いはあれど(・・・・・・)只管に鍛錬を(・・・・・・)積むしかない(・・・・・・)という点では(・・・・・・)同じなのかも(・・・・・・)

 面白い。もっと試してみたい。探求して、研究して、私だけの物にしたい!

 だから、残念だけれど、君との「お話」はもう終わり。私はこの熱い情熱(てつ)が冷めない内に、叩いて伸ばしたいのよ!

 

「なるほど、これ以上の問答は危険なようだ。継国 巌勝、押して参る。……【月の呼吸・壱ノ型 闇月(やみづき)(よい)(みや)】」

 

 それは巌勝くんも同じなのか、剣を鞘に閉まったかと思うと、目にも止まらぬ速さで抜刀しながら迫って来た。しかも、斬撃に物理的な威力を持つ無数の月輪が乗り合わせて、接触と同時に拡散される。おそらく、空気中の塵とかを物凄い力で押し付ける事で、飛び道具としているのね。

 縁壱は不死鳥みたいな飛ぶ斬撃を織り交ぜていたけど、威力重視のあちらに比べて、こっちは広大な範囲を攻撃する事に重きを置いている。こうなると、実質的に“面攻撃”と言っても差し支えないわ。当たると弾けるのは、わざと脆くする事により硝子細工みたいに砕かせているのね。本当に、一体どんな修行を積んだら、こんな神業を会得出来るのやら。

 

『アハッ♪』

 

 対する私は、魔法で宝剣を召喚して受け流し、月輪は魔力の盾を全身に張り巡らせる事で防ぐ。一発で宝剣が刃毀れして、魔力の盾も剥がされちゃった。さっき脆いと表現したけど、それは縁壱の攻撃と比べたらって話で、普通に威力がヤバいわ。これはもっと(・・・・・・)密度を上げないと(・・・・・・・・)

 

『えいっ!』

 

 という事で、込める魔力の密度を上げて、宝剣の強度その物を上げて切り掛った。

 

「……刃の強度が上がった。まるで魔法だな。……【月の呼吸・伍ノ型 月魄災渦(げっぱくさいか)】」

 

 “まるで”じゃなくて魔法だし、剣を振るってすらいないのに衝撃波を生み出すの止めてくれない?

 一瞬強く握った動作があったから、暴力的な握力で熱を生み出し、それを刃に伝導して放出する事で、攻撃に転用しているのかしら。どっちにしろ人間業じゃないわね~。

 むろん、私も更に硬い魔力の盾で防いだけど、それでも結構削られてしまった。物理法則とは?

 

「【月の呼吸・弐ノ型 珠華ノ弄月(しゅかのろうげつ)】」

『ウフフフ、本当に凄い技ね♪』

 

 さらに、巌勝くんが音速を遥かに超えた三連撃(早過ぎて唯切り上げただけに見える)を放って来た為、私は宝剣を二本に増やして対抗したわ。当たった瞬間、工芸品の飾り棚を叩き付けたかのような甲高い音が鳴って、月輪が津波みたいに押し寄せて来た時は死ぬかと思ったわね。

 

『……だけど、やっぱりあの侍の剣戟の方が、よっぽど脅威だわ♪』

 

 何て言うか、縁壱と比べると、命の危機感が違うのよ。巌勝くんは愉しむ余地があるけど、あの偉丈夫には戦う余地が全く無かったしね。

 

「弟の話を持ち込むなぁ!」

 

 そっか……あいつ、巌勝くんの実弟(おとうと)だったのか。聞く手間を省けて、とても助かったわ。もう一度対峙したら普通に殺されそうだし。

 自分よりも遥かに優秀で、決して手の届かない高みに居る弟。嫉妬と憧れ(カインコンプレックス)を抱くなという方が無理ある境遇ね~。

 

『お労しいわね、兄上?』

「貴様ぁあああああっ!」

 

 と、巌勝くんが激昂して切り掛って来たわ。

 さぁさぁ、もっと見せてちょうだい、その醜くも美しい心の闇を!




◆継国 巌勝

 ご存じお労しい兄上。無口で感情表現が下手な上に父親からも冷遇されていた弟・縁壱とは、最初こそ良好な関係を築いていたものの(父親の嫌がらせで消沈していた彼に手作りの木笛をプレゼントするくらいには、きちんとお兄ちゃんをしていた)、初めて縁壱が「兄上のようになりたい」と剣を握らせた事をきっかけに、心根と人生が狂い出す。縁壱が化け物染みて武勇に優れていた為、自分はどんなに頑張っても次点に過ぎず、それを周囲から常に指摘されるという地獄みたいな経験をした事により、彼の精神は完全に歪んでしまったのだ。それは「鬼殺隊」に入ってからも変わらず、とうとう自分の気持ちに折り合いが付けられなくなり、尊守すべき上司であるお館様の首を手土産に無惨の軍門に下るという、とんでもない裏切り行為をして、「黒死牟」という名の鬼と化した(その事が原因で縁壱は鬼殺隊を追放された)。
 今作では「七崩星」最強の真祖が侵攻して来たせいで未だ人間のままではあるものの、彼の見せ付けた強さと、久々に弟と共闘した事で、己が如何に単なる秀才なのかを思い知らされてしまい、最早暴走一歩手前になっている。
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