「死ねぇえええっ!」
『キャハハハハッ♪』
最早、
「ぬぅんっ! はっ! でぁっ!」
『ぐぅっ……がぁっ!? げぼぉ!?』
しかも、剣技だけではない、喧嘩殺法とでも言うべき攻撃も織り交ぜてきた。頭突きに肘打ち、回し蹴りって。人体だったら、とっくに炸裂して砕け散ってるわよ。
ヤバいヤバいヤバい、今追撃を喰らったら、流石に防ぎ切れないわ!
「【月の呼吸・陸ノ型
『【
すると、技を繰り出そうとしていた巌勝くんの腕に魔力の糸が巻き付き、射線をずらしてれた。おかげで命拾いしたけれど、これは……、
「この羽虫が!」
『何でランクダウンしてるのよ!?』
予想通りアウラの放った魔法だったみたい。吸血鬼と言うより、必殺・仕事人って感じの魔法ね。晴らせぬ恨み、晴らします?
「小賢しいわっ!」
『それしか取り柄が無いのよ! 【
「ぬぅっ!?」
その上、魔力の双剣を生み出したかと思うと、「月の呼吸」のような攻撃まで繰り出したわ。むろん、威力は巌勝くんの足元にも及ばないけど、魔力の盾という不可視の壁を持たない巌勝くんは、受けずに避けるしか方法が無かった。厄介な自分の技が跳ね返って来た形ね。
「だが、猿真似では私には勝てん! 【月の呼吸・参ノ型
『ざくぅっ!? ……だったら、その猿真似で殺してやるわよ! 【
そして、反撃で飛散した血を魔法で操作し、血の道筋を造り出して高速移動、今度は戦槍を生み出して巌勝くんと切り結ぶ。間違いない。
『アウラちゃん、
『眷属が使える魔法ぐらい、私が使えて当然でしょ! ……あいつは浮気者の破廉恥な女って言ってたけどね!』
『素敵なお友達ね♪』
『はぁ……はぁ……唯の、腐れ縁よっ!』
必死に食らい付きながら、息も絶え絶えに答えるアウラ。
まぁ、巌勝くんの言う通り、所詮は猿真似に小細工でしかない。不意を突いたから何とかなっただけで、直ぐにでも逆転されるでしょう。再生能力が無ければ、既に二百七十二回は死んでいる。
『ハァッ!』
「……フゥゥゥンッ!」
『づだっ!?』
ほら、参ノ型で反撃しようとしたら、蝶のように舞い躍られ、蜂のように拳を刺されちゃったわ。可愛いお顔が爆散してるわね。
でも、良いわ。その虚しい健闘が、役に立ってくれたからね!
「再生出来ぬ程の細切れにしてくれる! 【月の呼吸・奥義・漆ノ型
『させないわよ!』
「ぬぅっ!?」
何か意味不明な威力の技を繰り出そうとしていた巌勝くんを、背後から奇襲してみる。普通に受け止められちゃったけど、問題無いわ。
『【
至近距離から、拡散式の【
「くぅっ!」
ギリギリのタイミングで伍ノ型を割り込ませて迎撃したのは流石だけど、捌き切れなかったようね。左腕と右脇腹の一部を抉れた。
『くたばれ、化け物!』
「がはっ!」
さらに、アウラがフランベルジュで追撃、切腹させたわ。やるじゃない♪
「……おのれがぁあああっ!」
『うぐっ!?』『ざくれろっ!?』
いけない、油断しちゃった。窮鼠も猫を噛むと言うのに、人間の底力を忘れていたわね。だからって、身体の震えだけで爆風を生むのは違うと思うのよ。
「殺す! そこの塵虫諸共! 【月の呼吸・奥義・漆ノ型
そして、巌勝くんは顔の横に剣を水平に構えたかと思うと、凄まじい圧力を伴って突きを繰り出した。
だけど、実際は牙突と見せ掛けて捻りを加えていたようで、月輪を煌かせた螺旋の衝撃波を飛ばして来たわ。その威力は奥義を名乗るだけあって、今までの硝子細工とは比べ物にならず、文字通り射線上の何もかもを塵芥に変えている。人間と言うか、生物が物理的に生み出して良い代物ではない。
アウラは粗挽き肉団子と化して離散、私も魔力の多重結界をドリドリされた末に腰から下が吹き飛んじゃった♪
「フーッ……フーッ……終いだ、耳障りな鬼よ! 【月の呼吸・肆ノ型
さらに、巌勝くんは容赦無く追撃の大切断を繰り出して来たわ。
『ハッ!』
「……白刃取り!?」
でも、まだ死んであげる気は無いの。だから、超高密度の魔力の盾を張った両手で白刃取りにしてあげた。
「この期に及んで! ……ならば、このまま押し切ってみせよう!」
『うぐぐぐ……っ!』
力強っ!
『あぅ……ぅぅ……なーんちゃって♪』
「何ィッ!?」
しかし、押し切られる前に、最後の切り札を使わせて貰うわよん♪
――――――カァアアアアンッ!
「ごはっ!?」
巌勝くんの心臓を、私の切り札が刀ごと射ち貫く。結晶化する程の超密度に圧縮された、
さぁ、私の腕の中で息絶えなさい!
「……ぐがぁあああああああああああああああっ!」
『ぐぼへぁっ!?』
お断りされたわ。何で致命傷を負ったのに、全力でスマッシュを決められるのよ。
……だけど、助かったわ。
『【絞殺する魔法】』
『ばいばいき~ん♪』
殴られた勢いで戦線離脱出来たからね。アウラも、ちゃんとくっ付いてきたし、このままさよならバイバイさせて貰うわよ。
◆◆◆◆◆◆
一方、独り取り残された巌勝はというと、
「うぐっ……くそっ!」
まだくたばっていなかった。完全に致命傷ではあるが、それでも未だに生きていた。こいつも充分に化け物である。
「こんな屈辱……!」
だが、負けた。縁壱以外の、よりにもよって鬼と吸血鬼如きに、してやられた。痣の呪いによって寿命が尽き掛けていた事に目を瞑っても、持ち得る全ての技を繰り出しても、仕留め切れなかった。
お前など、所詮はその程度だと言われたようだ。人生最期の決闘で、こんな屈辱を味わわされるなんて……!
『いやぁ、お見事お見事。私などでは決して至れぬ高み。まさに芸術と呼ぶに相応しいですね』
と、さっきまで影も形も失くしていた壺の鬼が、ニヤニヤと嗤いながら姿を現した。止めを刺すつもりだろうか。やはり鬼など、矜持の欠片も無い、卑怯千万な、人を喰らうだけの獣。
『ご安心を。別に取って食うつもりはありません。むしろ、福音を授けに参りました次第』
しかし、鬼は喰らう処か、訳の分からない言の葉を吐き始めた。
『心臓を撃ち抜かれる程度では死なず、寿命という柵にも囚われない、そんな方法がある事を、あなたは既に知っていらっしゃいますよね?』
「なるほど、そういう事か……」
下らぬ事……ほんの少し前までの自分であれば、拒絶していただろう。
だが、最早限界だった。もう耐えられない。
「所詮、人の命など儚い物……人間の能力には、限界がある……化け物に勝つには、人間を超えるものにならねばな」
『そうですね。相手が同じ土俵に立っていないのに、こちらが正々堂々と戦ってやる筋合いはありませんよ』
ならば、喜んで魔道に堕ちよう。時間は自分の味方なのだ。
「――――――俺は人間をやめるぞ、縁壱ィイイイイイイイッ!」
そして、
『……何か、吸血鬼みたいな雄叫びが聞こえたわ』
『あんな熱苦しい吸血鬼なんて居ないわよ』
◆黒死牟
巌勝がビフォーアフターした姿。目が六つ増えた以外は容姿に大差は無い物の、実力は雲泥の差がある。人間時代で既に人間を辞めていた彼であるが、鬼と化す事でそれに拍車が掛かり、型が倍以上に増えた他、自前の武器を生成する能力まで会得している。「血鬼術」と「月の呼吸」が合わさり、最強に見える。それでも継国 縁壱が倒せない。
今作ではソリテールに「お労しや兄上」を先行体験させられた上で、縁壱からお代わりを貰う事が確定している為、原作よりもお労しくなっている。