鬼殺のソリティア   作:ディヴァ子

14 / 47
????:「この魔方陣を完成させれば、お友達を召喚出来るわ!」


本当の悪魔

 可愛らしくも中性的な童顔に、薄桃色のボブカット。陶磁色の肌は艶やかで張りがあり、この子が十代半ばにも満たない若い……というか、幼い子供である事を伺わせる。

 しかし、制作過程からも分かるように、実態は肉身を持つ機械人形で、混ぜた血の影響なのか、側頭部にはそこそこ立派な双角が生えていた。

 だが、一番驚くべきは、その性別。育ち掛けの双丘とピンク色の鮑だけでなく、有明海の怪魚(ワラスボ)と稲荷寿司が同居しているわ。これで背中に黒鉄の翼が生えていたら、間違いなく堕天使って呼ばれるわね。

 この(かれ)であり(かのじょ)でもある生物だけど、

 

ホムンクルス(あなた)、名前はあるかしら?』

『ありません! 生前の物は、怖気が走るので使いたくないですし!』

『なら、「ユン」とかどうかしらね?』

『良いですね! 可愛くて素敵です!』

 

 喜んでくれたようで何より。

 そう、この子何処かで見た事ある顔立ちしていると思っていたけれど、「神技(しんぎ)のレヴォルテ」の所に居た、ちっちゃくて可愛らしい魔族にそっくりだわ。偶然一方的に見掛けた事があるだけだけど、本当に可愛くて目に焼き付いちゃってたのよね~。

 

『それじゃあ、もっと可愛く「ユンユン」とかはどう?』

『それは何かぼっちになりそうな気がするので嫌です!』

 

 どうして?

 

『とりあえず、服を着なさいよ。何時までもその格好だと、そそられちゃう(・・・・・・・)じゃない(・・・・)♪』

『僕は何時でも構いませんよぉ~♪ 今の僕なら、男としても女としても満足させられますから!』

『フフフ、また今夜ね♪』

 

 と、アウラが予備の寝間着(パジャマ)を持って来て、ユンに着せたわ。ダボダボして可愛いわね。というか、両方イケる口なのね、アウラ。

 ……まぁ、それはそれとして。

 

『さて、ユンちゃん。少し私と「お話」しましょうか?』

『良いですよ~、何でも聞いて下さい! 僕はホムンクルス……材料となった物の記憶を全て持っている、叡知の肉塊ですからね~♪』

 

 なるほど、刻み込まれた記憶(・・・・・・・・)が素材となって(・・・・・・・)新たな人格を(・・・・・・)形成するのか(・・・・・・)。見た所、犀月樹(さつき)くんの記憶がベースみたいだけどね。……核となる魂が彼なんだから、当たり前か。

 

『じゃあ、早速だけど、魔族や鬼、吸血鬼が人間と共存出来ると思う?』

 

 これにはどう答えてくれるかしら。

 

『やり様によっては可能なんじゃないですか? 完全に人肉食の鬼はともかく、魔族は肉食の強い雑食ですし、吸血鬼に関しては人間側にもメリットはありますしね! 妥協と棲み分けをしっかりしていれば、共利共生なんて割と簡単ですよ! それを人間が納得するかは別問題ですけどね!』

『そうね。人間は不合理な合理性によって繁栄している生き物だもの』

 

 「言葉」というツールでコミニュケーション能力を上げ、「群れ」という単位で生活する為に互いへ「情け」を掛ける。魔族からしてみれば意味不明だけど、弱い生物が(・・・・・)最終的に自分が(・・・・・・・)得をする為に(・・・・・・)動いている(・・・・・)という意味では、合理的なのかもね。変に小賢しいせいで色々と不都合もあるみたいだけど。本当に、“言葉を話すだけの化け物”には理解出来ない概念だわ~。

 

『それじゃあ、聞き方を変えるわね。……あなた(・・・)人間は好き(・・・・・)?』

 

 最初から化け物である私やアウラと違い、ユンは身も心も魂も人間がベースとなっている。生まれ持った感性も別物だと思うんだけど、そこの所はどうなのかしらね?

 

『僕が人間を好きか、ですか~?』

 

 すると、ユンは頬を紅く染め、これまでで一番の満面の笑みを浮かべ、

 

大嫌いに決まってる(・・・・・・・・・)じゃないですか(・・・・・・・)! だからこそ(・・・・・)もっと沢山いっぱい(・・・・・・・・・)人間の事を(・・・・・)知りたいです(・・・・・・)!』

『その心は?』

どいつもこいつも(・・・・・・・・)自分が一番不幸って(・・・・・・・・・)面してるから(・・・・・・)本当の絶望の底(・・・・・・・)に叩き落して(・・・・・・)苦しませたいんですよ(・・・・・・・・・・)! そうすれば僕が愉しい(・・・・・・・・・・)! 理由はそれだけです(・・・・・・・・・)!』

『ウフフフ、まるで悪魔みたいな言い草ね♪』

『それが人間という物でしょう?』

 

 あっけからんと言い切るユン。とても元「鬼殺隊」の頭目とは思えない発言だわ。だけど、人間ってそういう物よね。

 

 “悪意”

 

 それは合理性に縛られた魔族が持ち得ない、摩訶不思議な感情。人間は相手に共感(なさけ)を持つが故に、それが害される事を嫌い、それを知った上で実行する。生産性がまるで無い、不条理の極みだわ。

 だからこそ、目の前に居るこの子は、とても面白いわ。

 人間は共感性の及ばない理解不能な未知に恐怖し、それ故に私の世界では魔族が恐れられていた。共存を謳いながら人類と戦争を引き起こした魔王様は、人間から見たらまさに「恐怖の大魔王」だった事でしょう。まるで意味が分からない暴力が、人の姿をして襲い掛かって来た訳だしね。言葉にすれば、魔族にも分かるわ。

 

 それじゃあ(・・・・・)人間の悪意を(・・・・・・)理解し持ち合わせた(・・・・・・・・・)上で害を為して来る(・・・・・・・・・)ユンは(・・・)、「邪悪な大魔王(・・・・・・)になるのかもね(・・・・・・・)

 

『あ~、でも縁壱とは、また友達になりたいです! 彼なら絶対に僕の味方をしてくれますよ! だって、唯一無二の心友なんですからね!』

『『………………』』

 

 縁壱なら自分を認め、これからも友達でいてくれる。そんな魔族の(・・・・・・)子供でも不可能(・・・・・・・)だと分かる(・・・・・)世迷言を本気で(・・・・・・・)言い切るユン(・・・・・・)に、私とアウラは何も言えなかったわ。

 

『あ~、楽しみだなぁ! 最近はずっと任務で「お話」出来なかったし、今度会ったら何から話そうかなぁ! 秘蔵のお茶を強奪(ようい)して、人間の子供(おやつ)なんて食べて! あははははは~♪』

 

 この世の全てが思い通りになると信じて疑わない、本当の悪魔(人間の子供)がそこに居た。




◆ユン

 声が白い明日を待っていそうな魔族の将軍「神技のレヴォルテ」の所に居た、魔族の部下の一人。人間の子供に化ける魔法を使い、村落への寄生と騙し討ちを繰り返して生きてきた、見た目に反して一番邪悪なタイプの魔族。
 今作では顔立ちと魂の色合いが似ていた産屋敷 犀月樹の心に、ソリテールやアウラの因子が加わり、黄金の骨格による最強の防御力を手に入れた事で、この世で一番邪悪な「本当の悪魔」として生まれ変わった。
 ちなみに、このユンは原作と違ってふたなりさんである。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。