「……はっ!?」
と、ソリティア教の教祖代理の女――――――「
「チッ、目ェ覚ましやがったか。そのまま寝てる方がマシだったのによ」
「あ、あなた……ぐえっ!?」
そう、三人は今、物凄い勢いで下山していた。岩を跳び、木々に着地し、道なき道を突き進んでいる。時々木の枝がゾリテールの服を掠め、破り、色々な物が見えてしまうが、泰斗も大地も遠慮をする様子は無い。とにかく麓を目指して一直線だ。何をそんなに急いでいるのだろう。
「ちょ、ちょっと、これはどういう事なんですの!? 何で私、担ぎ上げられているのですか!? 他の信者たちは!? 誰か何とか言いなさいよ!」
「皆死んだよ、お前以外はな。これで良いか?」
「は?」
ポカポカと泰斗の背中を叩いていたゾリテールが絶句する。
「
「………………!」
さらに、泰斗が失った右腕の側を見せた事で、いよいよ以て二の句が付けなくなった。詳細は不明だが、彼がゾリテールを庇った結果、右腕が吹き飛ばされてしまったらしい。
「ど、どうして私を……?」
「近くに居たからだよ。証人の一人くらい残しておかないとな」
「そ、そんな嘘を! それに、剣士のあなたが腕を失うのは……」
「うるせぇなぁ。だから寝てろってんだよ。お前も
「「………………」」
その言葉に、ゾリテールだけでなく大地も唇を噛み締める。泰斗は言っているのだ、迷惑な女たちだと。実際、彼は二人のせいで右腕を失っている。
「――――――まぁ、刀は問題無く振るえるよ。元から俺は片手剣だし、そもそも左利きだしな」
それでも流石に言い過ぎたと思ったのか、泰斗が注釈を入れる。そう言えば、彼は常に左手だけで刀を振っていた。
「えっと、右手の方は?」
「
泰斗がゾリテールを見据える。ようするに、彼は「
「……あのサムライは?」
「
「「………………」」
泰斗の指摘に、ゾリテールと大地は答えず、沈黙で応えた。これ以上何かを言っても恥を晒すだけである。
「……それでも、
「………………」
今度は泰斗が黙る番だった。それからは三人共一言も喋る事無く山を降り、麓を越え、人目に付かぬよう林の中を駆け抜け、「
そう、
泰斗たちは、あまりにも無力であった。
『あらあら、あの子たち、よく逃げ切れたわね』
『鬼殺隊ってのは化け物しか居ないのかしら?』
そんな逃亡者たちを、地表より遥か高空……成層圏から、ソリテールとアウラが見下ろしていた。突っ込みたくてウズウズしていたユンを嗾けた後、文字通り高みの見物をしていたのである。二人は臆病者だからね、しょうがないね。
『……化け物同士で、お似合いなんじゃない?』
『だけど、何時までこうしているつもりなの?』
『
『それまでは、存分にお友達と遊びなさいな、ユンちゃん♪』
ソリテールは嗤う。これから訪れるであろう、甘く激しい夜を夢見て。
◆飛行魔法
魔族であれば誰でも使える基本魔法。人間で言えば歩く事と同じであり、それ故に人類は常に制空権を握られた状態で戦いを強いられて来たが、長い時間を掛けて人類側も遂に飛行魔法をある程度解析し、魔法使い限定ではあるが、同じ土俵に立つ事が出来るようになった。
今作では魔族であるソリテール及び真祖吸血鬼のアウラ、その血を継いだユンが使用可能。鬼や鬼殺隊は基本的には使えない。