鬼殺のソリティア   作:ディヴァ子

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勝手な推奨BGM:「炎国の王妃」


天照日の呼吸

『ひゃほ~い♪』

 

 

 ――――――ドギュルァアアアアアッ!

 

 

 先ずは戦いのGONGとばかりに、ユンが【人を殺す魔法】を発射。幾つもの村を消し去り、瀬戸内海の底を一時的に露出させる。何と聖書的な場面だろう。モーゼもブチ切れるに違いない。

 

『【月の呼吸・壱ノ型 闇月(やみづき)(よい)(みや)】』

「【日の呼吸・弐ノ型 碧羅(へきら)(てん))】」

 

 それに対して、黒死牟は壱ノ型による見切り一閃、縁壱は不死鳥の斬撃をビームにわざと当てる事でによる反動距離を取って躱す。流石は化け物兄弟、最初から意味不明な対処方法だ。

 

『あははははははっ!』

 

 と、ユンがビームを叩き付けた後、横への薙ぎ払いも敢行した。森が消え、山々が水平線となる。むろん、縁壱と黒死牟は回避したものの、避けずに喰らってくれというのが、被害者たちの本音であろう。心根がどうかではなく、被害が甚大過ぎて、一般人からすればどちらも化け物である。

 

『見るが良い、縁壱! これが私が新たに手に入れた力、昇華した技だ! 【月の呼吸・捌ノ型 月龍輪尾(げつりゅうりんび)】!』

 

 すると、黒死牟が刀を珊瑚の如く枝分れた形に変え、壱ノ型と同じ横一文字の攻撃を放った。

 しかし、威力が今までの物と段違いになっている。振るうと同時に開いていた刃が閉じて一本刀へ一時的に戻り、たった一撃に十三連撃分の威力を込めているのだ。しかも、当たるとその全てが三日月状に炸裂するオマケ付き。

 

『おお~?』

 

 その一閃は殴り付けようとしていたユンの翼角を砕き、黄金の骨格を露出させた。

 

『……凄いですね!』

 

 だが、それだけである。黄金の骨格に傷を付ける事は出来ず、外身は直ぐに修復されてしまう。

 ユンの肉身に相当する部分は、【万物を黄金に変える魔法(ディーアゴルゼ)】で生み出された黄金の粒子と有機物を融合させた、所謂“生きた金属”とでも言うべき存在であり、日本が誇る超古代金属(オーパーツ)日緋色金(ヒヒイロノカネ)」に近い性質を持つ。所詮は混ぜ物なので、黄金の骨格よりも強度は低いが、その代わりに魔法で変形させ易い為、肉体として扱うのに丁度良いのだ。あと、黄金の骨格に比べると、というだけであって、普通は傷一つ付けられない。

 ちなみに、表皮や体毛などの本来ならケラチン質となる部分は、「魔法の銀(ミスリル)」という物質で構成されている。こちらは日緋色金と黄金の骨格の合いの子のような代物であり、特に翼部分に集中している。

 ようするに、ユンの翼は魔法の銀と日緋色金と黄金の骨格を同時に破壊しないと欠損出来ない、クソみたいな肉質をしているという事である。部位破壊を狙うなら、やはり比較的柔らかい胴体部分か、関節の繋ぎ目が良いだろう。傷付けられれば、の話だが。

 

「……ありがとうございます、兄上。おかげで(・・・・)犀月樹も血を(・・・・・・)流す事が分かり(・・・・・・・)ましたから(・・・・・)

 

 しかし、縁壱にとっては、そうではないらしい。黒死牟が傷付けた翼角の断面図と、空気中で霧散した赫々しい血液を見て、何かを確信したようだ。

 

『そうだ、それで良い。そして、見せてやれ。甘さを捨てた(・・・・・・)お前の姿を(・・・・・)。……【月の呼吸・玖ノ型 (くだ)(づき)連面(れんめん)】!』

 

 そんな弟の姿を見て満足したのか、黒死牟は次なる技を繰り出す。背中から前方へ向けて刀を大きく振り、無数かつ巨大な三日月の斬撃波を放った。

 

『凄い凄い凄い、僕に防御させるなんて、巌勝も強いんですね!』

『今の私は黒死牟だ、産屋敷 犀月樹』

『だったら、僕の事もユンと呼んで下さいよ!』

『良いだろう、戒名として聞いてやる。【月の呼吸・拾ノ型 穿面斬(せんめんざん)蘿月(らげつ)】!』

 

 さらに、会話の応酬をしつつ、回転鋸を思わせる斬撃を二つ飛ばす。見た目通り高速で回転しながら追撃で切断する技であり、敵の防御力を殆ど無視して斬り飛ばす事が可能である。

 

『無駄ですよ! 【魔力の盾】!』

 

 だが、それは言うなれば魔法攻撃に近い為、【魔力の盾】を併用すれば相殺出来るし、側面から殴り付ければ叩き割る事も可能。ユンへの有効打とはなり得ないであろう。

 しかし(・・・)そんな事は(・・・・・)黒死牟が一番(・・・・・・)分かっている(・・・・・・)何処まで行っても(・・・・・・・・)自分は手数や(・・・・・・)重ね掛けに(・・・・・)特化しているのだと(・・・・・・・・・)

 だからこそ(・・・・・)餅は餅屋に(・・・・)持って行く(・・・・・)べきなのだ(・・・・・)何せ月は(・・・・)独りでは輝け(・・・・・・)ないのだから(・・・・・・)

 

『さぁさぁ、折角脇役が晴れ舞台に立ったんですから、もっと凄い物を見せ――――――』

『【天照日(あまてらすひ)呼吸(こきゅう)】』

 

 と、その時。

 

 

 ――――――ザクン。

 

 

『えっ?』

 

 何かが宙を舞い、大地に突き刺さった。

 

『え、えっ?』

 

 それは黒死牟を煽るように差し出していた、ユンの前腕だった物(・・・・・・・・・)。魔法の銀や日緋色金はおろか、関節部分からではあるが、黄金の骨格ごと斬り落とされている。相当な熱量を持っているのか、断面が太陽のように輝き、沸騰していた。

 

『そうだ、それでこそ……黄金の真祖を打倒した英雄だ』

 

 黒死牟が三日月のように嗤う。六つに増えた彼の眼には、山吹色の闘気を纏った天照日の英雄(おとうと)の姿が煌々と映し出されていた。

 そう、これぞ継国(つぎくに) 縁壱(よりいち)が死力を尽くした姿。一般の鬼殺隊士にとっての痣と同じく、寿命を削って発動する、文字通り命懸けの形態なのだ。

 

『………………?』

 

 だが、ユンにとっては、それ処では無かった。誰一人傷付けられない筈の自分の前腕が、斬り落とされた。他ならぬ縁壱の一太刀によって。それも命を前借するような技で。

 未だに彼を心友だと思い込んでいるユンが、生まれてこの方肉体的には守られ続けて来たユンが、初めて味わう生きている証(いたみ)を前にした時、

 

 

 

『――――――ぅぅあああああああああっ! 痛い! 痛いよぅ、縁壱ぃっ! 何で、どうして、こんな事するんですかぁ! 僕たちは友達なんじゃないんですかぁ! 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いぃぃぃぃっ! 誰か助けてぇ! ソリテール様ぁ、アウラ様ぁ! 縁壱ぃいいぁあああああああああああああああっ!』

 

 

 

 幼い子供のように泣きじゃくるしかないのであった。

 

「犀月樹……」

『(何で私だけ名前を呼ばれない……)』

 

 しかし、哀れには思っても、手助けする者など、この場には誰一人として居ない。これまでの所業を考えれば、当然と言えば当然の結果であろう。

 

 

 ――――――ベンッ!

 

 

 そして、その報いは災厄(最悪)の形で現れる。

 

『ぶはははははっ! 餓鬼が怪我して泣いてるんですケド~♪ ……つまんねぇなぁ、お前?』




◆天照日の呼吸

 「日の呼吸」の強化バージョンにして、命を削る諸刃の剣。縁壱にとって一般の鬼殺隊士たちに発現する痣のような物であり、身体に相当な負担が掛かる上に寿命が年単位で減ってしまうが、デメリットに相応しい力を発揮出来る。物理法則で勝ち目の無い万物を黄金に変える真祖との戦いで初めて使用し、見事に討ち果たして英雄となった。
 ちなみに、縁壱が鬼になるとこれを常に使う事が可能になる(寿命の問題が解決してしまう)ので、彼を絶対に鬼にしてはいけない。
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