鬼殺のソリティア   作:ディヴァ子

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「陽の呼吸」の推奨BGM:「剛き紺藍」
「電の呼吸」の推奨BGM:「電の反逆者」


その時歴史も動いた

 四国地方伊予国、龍王山だった場所。

 

『マズい、マズいですぞ……!』

 

 そこから大分離れた所で、玉壺が息を切らせながら壺から出て来た。この壺は彼が緊急の避難先として用意していた作品であり、黄金の和金が飛び跳ねる姿が美しい金細工が施されている。売れば確実に三十両は下らない、この作品のおかげで玉壺は命拾いをした訳だが、それでも助かったとは言い難い。

 

『このままではマジで死んでしまう……! どうにかならない物か……!』

 

 何せ龍王山跡地で史上最大の決戦の火蓋が、切って落とされてしまったのだから。あそこに留まるのは自殺行為だし、例え離れたとしても目と鼻の先で原子炉が臨界点を突破しようとしているぐらいに危険だ。出来る事なら四国から逃げ出したい所だが、無惨が許さないだろう。万が一の際は鳴女と黒死牟を回収しなければならない。この時ばかりは、自分の便利な血鬼術を恨めしく思ってしまった。

 

『と、とにかく、設置点を増やして――――――』

『さかなクンです!』『さかなクンなのです!』『つぼつぼなのです!』

『な、何だぁ!?』

 

 だが、自分を出来る男だと信じて疑わない玉壺が、最悪の事態に備えて動こうとした時、彼を取り囲む小さき者たちが現れる。ソリテールが事前にばら撒いていた妖精さんたちが、漸く隠れ潜む玉壺を見付けたので、生け捕りにしようとしているのである。

 

『ええい、放せ! ……力強っ!? こんな小さいのに!?』

『だめです~!』『にがさないのです~!』『いけづくりです~!』

『何気に怖い事言ってる!? ……って、ふざけるんじゃあないぞ、ちみっこ共がぁ! 行けっ、我が下僕たち!』

『ウオチルッ!』『パッチラッ!』『ウオノラッ!』『パッドラ!』

 

 とは言え、玉壺も大人しくゲットされる筋合いは無い。壺の中から、魚類と恐竜、首長竜の上半身や下半身をあべこべにくっ付けた、とっても迂闊(ウカッツ)な怪物が無数に現れ、妖精さんたちと戦い始める。初めこそ怪物たちの方が一方的に攻めていたものの、

 

『【霧を操る魔法(ネベラドーラ)】』

『【攻撃を旋風に変える魔法(メドロジュバルト)】』

『『『『ニャァァアアアッ!?』』』』

 

 妖精さんたちが合体、人造魔族となった事で猛反撃を受ける破目になる。

 

『かくなる上は、私の真の姿を――――――』

『ぬぅうううんっ!』

『どちら様ですか!?』

 

 さらに、玉壺自身もナーガっぽい人造魔族の将軍と手合わせする運びとなった。四本の腕で神技の剣戟を繰り出して来る魔族を相手に、半魚人(マーマン)のような姿となった本気モードの玉壺も大苦戦する。こんな事をしている場合では無いのに。

 

『あ~ん、もう! たすてけ(ヘルプミー)!』

 

 むろん、玉壺の心からの叫びは、誰にも聞いて貰えないのであった……。

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

『フゥゥヴァアアアッ!』

『ぬんっ!』

 

 鳴女の雷神拳を、ソリテールが両腕で受け止める。衝撃波で背後の大地が抉れ飛んだものの、彼女自身は無事であった。これだけで、今のソリテールの耐久力がとんでもない事が分かる。

 

『あはははっ!』

 

 その上、鳴女が次の攻撃へ移る前に脇腹に蹴りを入れ、更には双刃魔法剣で膾切りにした。並大抵の者であれば触れるだけで破壊されてしまう鳴女に反撃し、切り刻むとは恐れ入る。

 

『ヴフハハハハハハッ!』

 

 しかし、鳴女の生命力も常軌を逸しており、切られた傍からくっ付いて、空中分解ならぬ空中合体して元通りになって、より凶悪な拳の連撃を叩き込んできた。

 

『せぇいっ!』

 

 対するソリテールは勘だけで連打を躱し、カウンターで鳴女の心臓部を貫手する。

 

『ギャヴォオオッ!』

『ぐっ……ぐぐっ!?』

 

 だが、鳴女は再生力を活かしてソリテールを拘束。頭突きを連続で浴びせ、最後にアッパーカットで舞い上げた。

 

『グヴォアアアッ!』

『【月の呼吸・拾陸ノ型 月虹(げっこう)片割(かたわ)(つき)】』

「【天照日の呼吸・陸ノ型 日暈(にちうん)(りゅう)盛炎(せいえん)()い】」

 

 もちろん、鳴女は容赦無く追撃しようとするも、継国兄弟の連携に阻まれる。別にソリテールの味方をした訳では無く、単純に鳴女が一番危険だと判断して横槍を入れたのだ。

 

『畳み掛けるぞ!』

「承知です、兄う――――――」

『無視してんじゃないわよ!』

 

 しかし、更なる追撃をする前に、三人目掛けてアウラの魔血散弾が襲い掛かる。一発一発が分厚い鉄板を容易に貫通する威力を持っており、それが無数に、五十メートル四方にばら撒かれる為、実質的に横倒しの針山が亜光速で迫っているに等しい。全力で防御するか回避するしかない、非常に面倒な攻撃である。

 

『この忌々しい亀虫がっ!』

『ソリテールと違って毎日湯浴みしてるわよ!』

 

 黒死牟のアウラを見る目よ。

 

『縁壱ぃっ!』

「犀月樹っ!」

 

 しかも、そこへユンがジェットの勢いで突っ込んで来た為、全員が散り散りに弾かれてしまう。ユンは縁壱と、アウラは黒死牟と、ソリテールは引き続き鳴女と、それぞれが因縁のある相手と対戦カードが、強制的に組まされる事となる。

 

 

 

『……この未来を受け入れる訳にはいかんな。至急、四国を平定せよ』

『了解。全軍を出兵させます』

 

 そして、歴史(みらい)も動き出す。




◆電の呼吸

 アウラがソリテールに触発されて開発した呼吸法。【破滅の雷を放つ魔法(ジュドラジルム)】に必要な魔力で自身や弾丸を強化しており、黄金銃に魔法の電気を流す事で火力もアップしている。過程は違えど、幼馴染の“彼”と同じ武器を持つ辺り、これもまた運命なのかもしれない。
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