『この野郎ッ!』
『フン……ッ!』
即ち、弾き飛ばされたアウラと黒死牟がやって来たのだ。どちらも手数と面攻撃を得意としている為、純粋な威力に反して、周囲に与える被害が甚大ではない。人体を容易に血煙に変えてしまう弾丸や三日月が乱射されるのだから、堪った物ではなかろう。真夜中と言う時間も相俟って、既に数百人の犠牲が出ている。
むろん、
『くたばりゃあああっ!』
と、アウラの魔血散弾による波状攻撃が黒死牟を襲う。
『【月の呼吸・拾肆ノ型
だが、黒死牟の放つ三日月の奔流が真っ向から迎え撃ち、お互いに相殺した隙を潜り抜けてアウラに迫る。アウラはあくまで魔法使いの部類なので、接近を許したら勝ち目は無い。
『フフフッ……!』
しかし、黒死牟の進撃を前に、何故かアウラはニヤリと嗤った。
『………………!』
それに嫌な予感を覚えたか、それとも素直に「透き通る世界」で見たか。黒死牟は大きく横に飛び、銃口の射線上から退避する。
――――――ドギュラララララララッ!
そう、アウラの黄金銃は魔法銃。弾丸の形状や性質を変化させる事など、造作も無い。
『【月の呼吸・捌ノ型
対する黒死牟は退避に合わせて捌ノ型を放ち、三日月の鉄砲水を巻き起こす。
『【
だが、アウラは「
『舐めるな! 【月の呼吸・拾弐ノ型
しかし、黒死牟は終わらない。鳴女と違ってバッチリ透き通せる彼女に、後れを取る訳が無かった。眼光が糸を引く程の速さで距離を詰め、一気に決めに掛る。
『舐めてんのはそっちよ!』
だがしかし、アウラの実力も日進月歩である。黄金銃の
『――――――【
さらに、黄金銃を天高く掲げたかと思うと、青い稲妻を一極集中、振り下ろすと同時に発射。ユンの【
『はぁあああああああっ!』
『ばくぅっ!?』
だが、黒死牟はそれすら回避。反撃としてアウラを微塵切りにしてやった。
『――――――相変わらずふざけてるわ、あんた!』
『ふざけているのはお前の生命力の方だ、便所虫!』
『誰が便女だぁ!』
しかし、アウラの生命力は無惨を鼻で嗤うレベル。切られた状態のままテトリスみたいに移動し、黒死牟の背後で再構築するという意味不明な奇襲を仕掛ける。
『やはり塵に還さねばならんか……』
『そうはいかないわよ!』
そして、防がれたと見るや否や、昆虫の翅と竜の羽を組み合わせたかのような翼を虹色に煌めかせつつ、急上昇して体勢を立て直した。ユンが生やせるのに、真祖吸血鬼のアウラが生やせぬ道理は無い。
……それにしても、何と言うか、その、
『ちょっと!? あんた今“何故また羽虫に逆戻りした?”って思ったでしょ!?』
『何だ貴様、心が読めるのか!?』
『顔に出過ぎなのよ!』
目は口程に物を言うという諺があるが、それが六つもある黒死牟は考えている事が筒抜けなのだろう。いや、そういう問題なのか?
だが、黒死牟は気にしない。鬱陶しい蠅の言葉など聞くに堪えないからだ。
『黙って掛かって来るが良い。羽虫らしく叩いて潰してやろう』
『そんな事ばっかり言ってるから、弟と仲良く出来ないのよ!』
『この屁糞虫がぁっ!』
『私はフローラルよ!』
二人の戦いは続く。夜はまだ長い。
◆【
本来なら「首切り役人」の一人、リーニエの行使する魔法。魔力の流れを視覚化出来る彼女の特殊な目により、他者の動きを模倣、魔法で作り出した武器で、それを再現するという代物。その為、リーニエは魔法使いでありながら戦士に近いスタイルで戦う。
ただし、コピーするのは動きだけなので、それに伴う攻撃の重さまでは適用されず、その弱点を突かれてシュタルクに一刀両断にされてしまった。
……いや、腹筋で刃を受け止めるって何?