鬼殺のソリティア   作:ディヴァ子

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頑張れ頑張れア・ウ・ラ!


月も満ち欠け死が踊る

 伊予国(いよのくに)神野郡(かみのぐん)西条(さいじょう)の一画。古くより「神の地」として緩やかに発展し続けたこの町に、天より災いが降り注ぐ。

 

『この野郎ッ!』

『フン……ッ!』

 

 即ち、弾き飛ばされたアウラと黒死牟がやって来たのだ。どちらも手数と面攻撃を得意としている為、純粋な威力に反して、周囲に与える被害が甚大ではない。人体を容易に血煙に変えてしまう弾丸や三日月が乱射されるのだから、堪った物ではなかろう。真夜中と言う時間も相俟って、既に数百人の犠牲が出ている。

 むろん、鬼と吸血鬼(ばけものども)が気にする筈も無い。遠慮容赦無く撃って切って殺しまくる。これで一番弱い組み合わせだと言うのだから、冗談では無かった。

 

『くたばりゃあああっ!』

 

 と、アウラの魔血散弾による波状攻撃が黒死牟を襲う。

 

『【月の呼吸・拾肆ノ型 兇変(きょうへん)天満繊月(てんまんせんげつ)】!』

 

 だが、黒死牟の放つ三日月の奔流が真っ向から迎え撃ち、お互いに相殺した隙を潜り抜けてアウラに迫る。アウラはあくまで魔法使いの部類なので、接近を許したら勝ち目は無い。

 

『フフフッ……!』

 

 しかし、黒死牟の進撃を前に、何故かアウラはニヤリと嗤った。

 

『………………!』

 

 それに嫌な予感を覚えたか、それとも素直に「透き通る世界」で見たか。黒死牟は大きく横に飛び、銃口の射線上から退避する。

 

 

 ――――――ドギュラララララララッ!

 

 

 その瞬間(・・・・)黄金銃から(・・・・・)魔血の貫通弾(・・・・・・)が連射された(・・・・・・)

 そう、アウラの黄金銃は魔法銃。弾丸の形状や性質を変化させる事など、造作も無い。

 

『【月の呼吸・捌ノ型 月龍輪尾(げつりゅうりんび)】!』

 

 対する黒死牟は退避に合わせて捌ノ型を放ち、三日月の鉄砲水を巻き起こす。

 

『【模倣する魔法(エアフアーゼン)】!』

 

 だが、アウラは「斜陽転身(しゃようてんしん)」を模倣した動きで躱しつつ、追加の貫通弾を撃つ。その上、合間に散弾も織り交ぜる事で、対処の幅をグッと狭めた。巻き込まれた家屋がおが屑と化し、巻き上げられた末に引火して、火災旋風を引き起こす。この町はもう駄目だろう。

 

『舐めるな! 【月の呼吸・拾弐ノ型 月刃(げつじん)白疾風(しろはやて)】!』

 

 しかし、黒死牟は終わらない。鳴女と違ってバッチリ透き通せる彼女に、後れを取る訳が無かった。眼光が糸を引く程の速さで距離を詰め、一気に決めに掛る。

 

『舐めてんのはそっちよ!』

 

 だがしかし、アウラの実力も日進月歩である。黄金銃の遊底覆(ボルトカバー)を変形して「銃剣」とする事で、黒死牟の攻撃を防ぎ、前回以上に見事な双剣捌きで対応した。しかも、【月の呼吸】を模倣している為、三日月の舞のオマケ付き。相変わらず便利で厄介な魔法である。

 

『――――――【六部殺し(ゼクスカリバー)】!』

 

 さらに、黄金銃を天高く掲げたかと思うと、青い稲妻を一極集中、振り下ろすと同時に発射。ユンの【人を殺す魔法(ゾルトラーク)】並みのビームを剣のように叩き付ける。その上、発射したまま横回り(ローリング)して、周囲一帯を軒並み焼き払った。残るは命無き焦土のみ。

 

『はぁあああああああっ!』

『ばくぅっ!?』

 

 だが、黒死牟はそれすら回避。反撃としてアウラを微塵切りにしてやった。

 

『――――――相変わらずふざけてるわ、あんた!』

『ふざけているのはお前の生命力の方だ、便所虫!』

『誰が便女だぁ!』

 

 しかし、アウラの生命力は無惨を鼻で嗤うレベル。切られた状態のままテトリスみたいに移動し、黒死牟の背後で再構築するという意味不明な奇襲を仕掛ける。

 

『やはり塵に還さねばならんか……』

『そうはいかないわよ!』

 

 そして、防がれたと見るや否や、昆虫の翅と竜の羽を組み合わせたかのような翼を虹色に煌めかせつつ、急上昇して体勢を立て直した。ユンが生やせるのに、真祖吸血鬼のアウラが生やせぬ道理は無い。

 ……それにしても、何と言うか、その、

 

『ちょっと!? あんた今“何故また羽虫に逆戻りした?”って思ったでしょ!?』

『何だ貴様、心が読めるのか!?』

『顔に出過ぎなのよ!』

 

 目は口程に物を言うという諺があるが、それが六つもある黒死牟は考えている事が筒抜けなのだろう。いや、そういう問題なのか?

 だが、黒死牟は気にしない。鬱陶しい蠅の言葉など聞くに堪えないからだ。

 

『黙って掛かって来るが良い。羽虫らしく叩いて潰してやろう』

『そんな事ばっかり言ってるから、弟と仲良く出来ないのよ!』

『この屁糞虫がぁっ!』

『私はフローラルよ!』

 

 二人の戦いは続く。夜はまだ長い。




◆【模倣する魔法(エアフアーゼン)

 本来なら「首切り役人」の一人、リーニエの行使する魔法。魔力の流れを視覚化出来る彼女の特殊な目により、他者の動きを模倣、魔法で作り出した武器で、それを再現するという代物。その為、リーニエは魔法使いでありながら戦士に近いスタイルで戦う。
 ただし、コピーするのは動きだけなので、それに伴う攻撃の重さまでは適用されず、その弱点を突かれてシュタルクに一刀両断にされてしまった。
 ……いや、腹筋で刃を受け止めるって何?
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