『ギャヴォオオオッ!』
『きゃはははははっ!』
そんな唯でさえ真っ平な土地を、正真正銘の更地に変える勢いで、鳴女とソリテールは殴り合いを続けていた。どちらも一発一発が爆発を伴う必殺の一撃であり、掠っただけでもアウトの攻撃が遠慮容赦無く放たれている。
『グルヴァォアアッ!』
『くっ……!』
しかし、圧倒的に不利なのはソリテールの方だ。お互いパワーは拮抗しているが、再生力に差があり過ぎて、鳴女だけが一方的に攻撃しているに等しい。しかも、下手に攻撃を当てると、その再生能力によって捕らわれてしまう。
――――――ベンッ!
『なっ!?』
さらに、【無限城】の能力も健在なようで、鳴女の髪から琵琶の音が聞こえれば、ソリテールの踏み足を挟み込むように襖が現れた。普通にズルい。
『ヴォォオオオッ!』
『舐めないで頂戴!』
『ゴヴァオオオッ!?』
すると、ソリテールは殴り掛かって来る鳴女の拳を見切り、合気道の要領で地面に叩き付ける。ついでに足の拘束も力尽くで抜け出して、ムーンサルトキックを脳天に食らわせた。
『これはどうかしら!?』
その上、怯んだ鳴女の足を掴んでジャイアントスイングで投げ飛ばし、双刃魔法剣で追撃の連打を浴びせる。ユンに弾かれる前は切れ味を重視していたが、わざと切れ味を落とす代わりに爆発性を高めており、当たる度に魔力の爆発が起きる事で、鳴女に再生力を逆利用出来ないようにしているのである。
『グルヴォ――――――』
『無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァッ!』
『……ギャヴォオッ!?』
そして、ソリテールは魔法剣の刃を引っ込めると、反撃の暇を与えず、今まで以上に素早く強い拳に拳を重ね当て、鳴女の身体を粉々に破壊する。
――――――ベベンッ!
『グルヴァ!』
『あぐぅっ!?』
だが、鳴女は死ぬ事無く、一瞬の隙に襖を二つ召喚、一方で自身を取り込みつつ再生して、もう一方でソリテールの背後に転移して羽交い絞め、更には彼女の首筋に噛み付いた。口の開き方が甲殻類というか、プレデターのようだ。
――――――ゥゥヴォオオオオオオオッ!
さらに、そのまま傷口から血を吸い上げる要領で、ソリテールの魔力を吸収し始める。追加でエネルギーを吸い取れるのは卑怯にも程がある。真祖吸血鬼よりも吸血鬼みたいな奴である。
『だぁあっ!』
『グヴォッ!?』
と、ソリテールが鳴女の一つ目に手刀を叩き込み、脳味噌を鷲掴みにして放り投げた。もちろん、その傷も一瞬で塞がれてしまう。まるで意味が無い。
『(魔族に襲われる人間って、こんな気分なのかしらね?)』
【陽の呼吸】を用いても、それを上回る暴力と理不尽な再生力によって、こちらだけが一方的に嬲られる。この場において、被食者はソリテールの方だ。狩りに来たつもりが狩られる側になるとは。出遭った時から分かっていた事だが、本当に常識外れな奴である。
『(さて、どうしたものかしら……)』
しかし、大人しく食われてやるつもりはない。ソリテールはまだ諦めてはいなかった。
だが、対抗のしようが無いのも事実。慣れ切っていない全集中の呼吸を使っているせいで、そろそろ息が切れてしまいそうだ。そうなれば、あっと言う間に決着が付いてしまう。
何か良い案は――――――と思った、その時。
『………………!』
集中力が極限まで研ぎ澄まされていたからか、それとも運命の思し召しか。ソリテールの目が“それ”を捉える。
『はっ!』
すると、ソリテールは突然鳴女に背を向け、全力で逃げ出した。それはもう全力のダッシュで。
『ガヴォオオオオッ!』
当然、鳴女は獲物を逃がすまいと追い掛けるが、
『……だりゃああっ!』
『ゴワヴォッ!?』
『ぐへぁあっ!?』
実はそれは逃げた振りであり、見事に鳴女を巴投げ、再び戦闘空域を展開していたユンに激突、両者を墜落させる。
《ユン、アウラ、妖精さんたち! 今直ぐ撤退するわよ!》
『『ゑ?』』
そして、今度こそ撤退の姿勢を取って、アウラたちを呼び寄せる。
《ど、どうして今になって……》
《軍船よ! 何時の間にか、四国全体が包囲され掛けているわ! 空からも何か来ているし、このままだと逃げられなくなる!》
そう、何時の間にか、四国の空と海をグルリと取り囲むように、謎の第三勢力による包囲網が構築されようとしていたのである。
◆巴投げ
ご存じ柔道の投げ技。自ら仰向けに倒れ込むように相手を投げ飛ばす。
まぁ、別に珍しくも何ともない投げ技なのだが、「柔道讃歌」の主人公の名前のせいで、やたらと作者の記憶に残っている。「