《な、何よ、あれ……?》
《軍船というより、生き物じゃないですか?》
『そうね……』
瀬戸内海から太平洋まで、四国全土をグルリと囲む、異様にして異形な影。一見すると、原子力潜水艦のセイル部分が戦艦「大和」の砲塔に置き換わったような姿をしているが、本体部が丸ごと骨らしき物で覆われており、要塞を背負った白鯨にも見える。そんな化け物たちが、隊列を組んで円を狭めながら迫って来るのだ。怖くない筈が無い。
「あれは……竜? いや、虫か」
さらに、竜と羽虫を組み合わせた“ドラゴンフライ”とでも言うべき不気味な飛翔体が、全身を怪し気に点滅させながら、四国を目指して雲の下を突き進んでいた。何か普段は腐海とかに居そう。
『こ奴ら、何故四国に……?』
それはそれとして、急に現れたこいつらは一体何者で、何故全員が一心不乱に
『――――――「
すると、色んな研究家のソリテールから解説が。
《「化け鯨」?》《「不知火」?》
『どっちも海辺で見られる物の怪よ』
「化け鯨」は
一方の「不知火」は、
『たぶん、どっちも甲殻類ね。化け鯨は「グソクムシ」でしょうけど、不知火の方は見た事のない種類ね。絶滅種かしら?』
《《えぇ……》》
否定したくなるが、どちらも全身が蟹や海老のような甲殻で覆われていて、鰓らしき物も見える為、違うとも言い切れない。
◆『分類及び種族名称:要塞大海獣=化け鯨』
◆『弱点:腹部』
◆『分類及び種族名称:
◆『弱点:頭部』
『……よく見ると、人が乗ってるわね』
しかも、よく観察してみれば、不知火の背中には繰り手と思しき人間が跨っており、化け鯨はその指揮下にあるように見える。鑑みるに、人間を
《それは厄介ね……》
妖怪は人智を超えた化け物ではあるが、あくまで本能に付き従う生物だ。それらが寄り集まった所で、実態は
しかし、それらが統率されているとなると、話が変わってくる。明確な目標を定め、的確な指示の下、確実に仕留めに来るとなれば、突破は難しい。
――――――ドンッ! ドンッ! ドォンッ!
「撃って来たか!」
と、化け鯨の方が先手を“撃って”来た。後の時代に「一式徹甲弾」と呼ばれる物に酷似した砲弾が、雨あられのように降り注ぐ。四国に痛手を与える目的もあるのか、周辺への被害も甚大であるが、観測手が居る事も相俟って、その殆どがソリテール一派や鬼たち、縁壱を付け狙っている。一発で家一つが根こそぎ吹き飛ぶ威力を持っているので、当たって脚を止めてしまえば、瞬く間に肉片と化すだろう。
――――――ドシュゥアッ! ドシュアァッ!
『上からも来ますよ!』
その上、不知火も攻撃に参加し始め、自ら目標に向かう飛び道具……後の世で言う「空対地ミサイル」のような物体が次々と発射され、地表を抉り出した。軍事施設ならまだしも、個人へ向けて撃って良い代物ではない。
『こうなったら仕方ないわね……』
空路と海路を断たれ、砲弾とミサイルの嵐が襲い来る、絶海の孤島と化してしまった四国。この地獄から抜け出す方法は、一つしか無かろう。
「『『『『『合流を阻止して、あいつらを囮にして逃げよう』』』』』」
鬼側は鳴女の「無限城」で纏めて転移可能であり、ソリテール側はユンのジェット推進と火力で一点突破出来る。ようするに、合流さえしてしまえば、無理矢理逃げる事は可能なのだ。
だが、それはきちんと合流して、しっかりと逃げる態勢を整えられたら、の話である。敵の飽和攻撃に晒されている中で、その隙を作るのは難しい。そもそも互いが互いを仕留める為に集まったのだから、出来ればこの場に墓標を立てたいと思うのは人情だろう。ならば、やる事は一つ。
さぁ、踊ろう、地獄の最中で
◆不知火
有明海や八代海に出現する怪火の一種。蒸し暑い夜に漁をしていると不意に現れ、「親火」と呼ばれる母体を中心に分裂し、最終的に光の奔流とでも言うべき無数の篝火となるという。近付くと消えてしまう不可思議も相俟って、「龍灯」や「千灯篭」の別名でも呼ばれていたが、後の研究で蜃気楼の一種である事が証明されてしまった。
正体は「ラディオドンタ類(