鬼殺のソリティア   作:ディヴァ子

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四国全土を封鎖せよ!


敵の敵は普通に敵

《な、何よ、あれ……?》

《軍船というより、生き物じゃないですか?》

『そうね……』

 

 瀬戸内海から太平洋まで、四国全土をグルリと囲む、異様にして異形な影。一見すると、原子力潜水艦のセイル部分が戦艦「大和」の砲塔に置き換わったような姿をしているが、本体部が丸ごと骨らしき物で覆われており、要塞を背負った白鯨にも見える。そんな化け物たちが、隊列を組んで円を狭めながら迫って来るのだ。怖くない筈が無い。

 

「あれは……竜? いや、虫か」

 

 さらに、竜と羽虫を組み合わせた“ドラゴンフライ”とでも言うべき不気味な飛翔体が、全身を怪し気に点滅させながら、四国を目指して雲の下を突き進んでいた。何か普段は腐海とかに居そう。

 

『こ奴ら、何故四国に……?』

 

 それはそれとして、急に現れたこいつらは一体何者で、何故全員が一心不乱に四国(ここ)を目指しているのか。完全な同種族ならまだしも、多種族が本能に従うのみで同じ目的を持って行動するなど、絶対にあり得ない。まるで誰かに(・・・・・・)命令されて(・・・・・)いるようだ(・・・・・)

 

『――――――「()(くじら)」と「不知火(しらぬい)」かしらね』

 

 すると、色んな研究家のソリテールから解説が。

 

《「化け鯨」?》《「不知火」?》

『どっちも海辺で見られる物の怪よ』

 

 「化け鯨」は隠岐国(いきのくに)出雲国(いずものくに)に伝わる、文字通り鯨の化け物である。かつて日本海で多量に狩られた鯨の怨念集合体と言われており、全身が骨と皮だけで構成され、不気味な魚や怪鳥を従えて、夜な夜な呪いを振り撒きに現れるという。

 一方の「不知火」は、八代海(やつしろかい)有明海(ありあけかい)……つまりは天草・島原周辺の内海に出没する怪火で、海難事故を引き起こすと言われている。その正体は蜃気楼の一種と言われているが、真実は定かではない。何でもかんでも解き明かせば良いという訳でも無かろう。

 

『たぶん、どっちも甲殻類ね。化け鯨は「グソクムシ」でしょうけど、不知火の方は見た事のない種類ね。絶滅種かしら?』

《《えぇ……》》

 

 否定したくなるが、どちらも全身が蟹や海老のような甲殻で覆われていて、鰓らしき物も見える為、違うとも言い切れない。

 

 

◆『分類及び種族名称:要塞大海獣=化け鯨』

◆『弱点:腹部』

 

◆『分類及び種族名称:輝海蛾(きかいが)超獣=不知火』

◆『弱点:頭部』

 

 

『……よく見ると、人が乗ってるわね』

 

 しかも、よく観察してみれば、不知火の背中には繰り手と思しき人間が跨っており、化け鯨はその指揮下にあるように見える。鑑みるに、人間を観測手(スポッター)指揮官(コマンダー)とした“海軍”と見做すべきだろう。

 

《それは厄介ね……》

 

 妖怪は人智を超えた化け物ではあるが、あくまで本能に付き従う生物だ。それらが寄り集まった所で、実態は恐慌集団(スタンピード)と大差無い。目的も何もない暴徒など逃げる隙間だらけである。

 しかし、それらが統率されているとなると、話が変わってくる。明確な目標を定め、的確な指示の下、確実に仕留めに来るとなれば、突破は難しい。こちらから(・・・・・)隙を作らねば(・・・・・・)

 

 

 ――――――ドンッ! ドンッ! ドォンッ!

 

 

「撃って来たか!」

 

 と、化け鯨の方が先手を“撃って”来た。後の時代に「一式徹甲弾」と呼ばれる物に酷似した砲弾が、雨あられのように降り注ぐ。四国に痛手を与える目的もあるのか、周辺への被害も甚大であるが、観測手が居る事も相俟って、その殆どがソリテール一派や鬼たち、縁壱を付け狙っている。一発で家一つが根こそぎ吹き飛ぶ威力を持っているので、当たって脚を止めてしまえば、瞬く間に肉片と化すだろう。

 

 

 ――――――ドシュゥアッ! ドシュアァッ!

 

 

『上からも来ますよ!』

 

 その上、不知火も攻撃に参加し始め、自ら目標に向かう飛び道具……後の世で言う「空対地ミサイル」のような物体が次々と発射され、地表を抉り出した。軍事施設ならまだしも、個人へ向けて撃って良い代物ではない。

 

『こうなったら仕方ないわね……』

 

 空路と海路を断たれ、砲弾とミサイルの嵐が襲い来る、絶海の孤島と化してしまった四国。この地獄から抜け出す方法は、一つしか無かろう。

 

「『『『『『合流を阻止して、あいつらを囮にして逃げよう』』』』』」

 

 鬼側は鳴女の「無限城」で纏めて転移可能であり、ソリテール側はユンのジェット推進と火力で一点突破出来る。ようするに、合流さえしてしまえば、無理矢理逃げる事は可能なのだ。

 だが、それはきちんと合流して、しっかりと逃げる態勢を整えられたら、の話である。敵の飽和攻撃に晒されている中で、その隙を作るのは難しい。そもそも互いが互いを仕留める為に集まったのだから、出来ればこの場に墓標を立てたいと思うのは人情だろう。ならば、やる事は一つ。

 

 敵に敵を(・・・・)押し付けて(・・・・・)自分たち(・・・・)だけ脱出する(・・・・・・)

 

 さぁ、踊ろう、地獄の最中で死の足踏み(タップダンス)を!




◆不知火

 有明海や八代海に出現する怪火の一種。蒸し暑い夜に漁をしていると不意に現れ、「親火」と呼ばれる母体を中心に分裂し、最終的に光の奔流とでも言うべき無数の篝火となるという。近付くと消えてしまう不可思議も相俟って、「龍灯」や「千灯篭」の別名でも呼ばれていたが、後の研究で蜃気楼の一種である事が証明されてしまった。
 正体は「ラディオドンタ類(恐蟹類(きょうかいるい))」の一種、「モスラ・フェントニ」の仲間。原種が「海の蛾(シー・モス)」と呼ばれるように、不知火も蛾と飛竜を組み合わせたような見た目をしているが、しっかり海棲生物であり、普段は海底に潜んでいるが、短時間であれば飛行する事が可能。後の時代に環境汚染が原因で再絶滅した。
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