鬼殺のソリティア   作:ディヴァ子

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たぶん史実より酷い事になってる。


四国平定

『こぉンの化け物っ!』

 

 一方その頃、アウラは血の散弾を撃ちまくっていた。

 

『ヴォアアアッ!』

『クソッ、牽制にもならない!』

 

 だが、鳴女は足を止める処か回避すらせず、全速前進してくる。蜂の巣にした程度では勝負にならないようだ。

 

『ギャヴォオオオオオッ!』

『近付くんじゃないわよ!』

 

 ならば、貫通弾で少しでもダメージを入れようとするものの、こちらも足止めするには至らない。まるでラーテルが如く、危機管理よりも己の攻撃性を優先している。こういう輩を「凶暴」と言うのであろう。再生能力にかまけた暴力性、とも取れる。

 

『ヴァゥッ! グヴァォッ! ブルヴォァアアアッ!』

『どむっ!? ごっぐ!? らごぅっ!? ……このぉっ!』

『ガヴヴヴッ……!?』

 

 しかし、再生力が強いのはこちらも同じ。鳴女の雷神拳二連打と風の傷で粉微塵にされても、それら全てが魚群のように移動し、彼女の背後を取って反撃のドラゴンブレス弾をお見舞いする。これは散弾に使われている血の成分を変えて発火性を高め、引火させた状態で銃口という狭い出口を通す事により、あたかもドラゴンがブレスを吐いたかのような火炎放射を行うのである。現実のドラゴンブレス弾はマグネシウムペレットを使っているが、こちらは魔法効果の付与された血を利用している為、本当にドラゴンの爆炎ブレスとでも言うべき威力を持っている。

 

『――――――バオォォォォォヴヴヴヴッ!』

『ささびっ!?』

 

 だが、鳴女は一瞬だけ怯んだ物の、直ぐ様吠えてきた。負け犬のそれと違って、物理的な破壊力を有する爆音だが。

 

『ゴヴァアアアッ!』

『キィイイイイッ!』

『グヴォァアアッ!?』

 

 しかし、鳴女がアウラに更なる追撃を仕掛けようとした瞬間、戦弩(バリスタ)が如く突っ込んで来たユンに轢かれる形で妨害される。

 

『シャアアアァッ!』

『……ヴルァアア!』

『ぎゃっ!?』

 

 そして、ユンは勢いのまま翼角パンチを繰り出すものの、鳴女はこれを拳で打ち払い、翼槍の一撃を力尽くで押さえ付け、地面に叩き伏せると、乱暴に右翼をもぎ取って、これまた乱暴にぶん投げたユンに投擲、ドテッ腹を串刺しにしてしまう。

 

『ガグヴァアッ!』

『【六部殺し(ゼクスカリバー)】!』

 

 だが、更なる追い打ちの行く手を、アウラの【六部殺し】が阻止する。

 

 

 ――――――ズドギャアアアッ!

 

 

 さらに、化け鯨の砲弾と、不知火のミサイルを二回りくらい大きくした代物――――――後の世に言う「潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)」が直撃。戦いの舞台諸共吹き飛ばされた。

 

 

 ――――――ゥヴァヴォオオオオオオオンッ!

 

 

 だが、鳴女は斃れない。既に崩壊寸前の四国の生態系から更なる命の搾取を行い、回復兼パワーアップを図る。

 

『させないわよ! 【六部殺し】!』

『【人を殺す魔法(ゾルトラーク)】!』

『ガヴヴヴッ……!』

 

 むろん、それを許してしまうとアウラとユンに勝ち目は無い為、全力で妨害した。吸引力の要である頭部を破壊すれば、一先ずは中断出来るようだ。

 

 

 ――――――ダダダダダッ!

 

 

 と、そこへ空気を読まず一機の不知火が乱入、機銃掃射を行う。それから再び上昇・旋回して、またしても機銃を撃とうとする。本当に邪魔な奴である。

 

『【攻撃を旋風に変える魔法(メドルジュバルト)】』

『【霧を操る魔法(ネベラドーラ)】』

『コワァアアアッ!?』

 

 すると、何処からともなく妖精さんたちが合体した人造魔族の男女が飛来。魔力の霧で目隠ししつつ、旋風斬撃で不知火を邀撃する。不知火側もこのお邪魔虫を撃ち落とそうと応戦するが、人造魔族たちの機動力はかなり高く、必然的にドックファイトへと発展した。機銃掃射を捻り込みで躱し、後ろを取って羽を斬り落とし、別方向から来るミサイルは霧をデコイにして無力化、逆に蜂の巣にする。最高速度は不知火の方が上のようだが、小回りは人造魔族の方が利くらしい。避け切れない物は、一度合体を解いて再合体する事で躱せるのも大きいだろう。

 

『ギャラァアヴォッ!』

『ぬぅぅぁあああっ!』

『プゥルァアアアア!?』

 

 しかも、海岸線付近に、青と赤の水龍――――――ギャラドスの通常個体と色違いっぽい“作品群”と、それからナーガ型の人造魔族が展開、目に付く化け鯨に襲い掛かり、砲撃を妨害する。機動力など欠片も無い化け鯨は初めこそ一方的に蹂躙されるが、何と宙に浮く事で空中要塞となって反撃。とは言え水龍は「みず/ひこうタイプ」なので飛べるし、人造魔族にとって飛行魔法は歩くのと同義。砲弾と光線と剣戟が入り乱れる大混戦となった。

 一体どういう話の流れでこうなったのかは不明であるが、妖精さんたちと玉壺が一時的に共闘しているのは確かなようだ。これを見逃す手はない。

 

《ソリテール様!》

《早く来なさい!》

《今向かうわよ!》

 

 早速、ユンはソリテールに念話で入電。ソリテールも合流を最優先に動き出す。こういう時に無線連絡を取れるのが、ソリテール一派の強みである。

 

『ガヴォオオオオオオオオオッ!』

『このっ!』『キ○ガイですね!』

 

 しかし、こんな状況に置かれても、鳴女は止められない止まらない。本来なら妨害と敵の押し付けを優先させるべき局面でさえ、彼女の殺意は際限知らずに高まって、溢れ出るのだ。

 

「ぐあぁっ!」

『グワォッ!?』

 

 と、そこへ縁壱が剛速球のように現れ、鳴女にヒット。ホームランとは行かなかったものの、お互いにゴロとなって止まり、

 

『――――――これで終わりよっ!』

 

 急いで駆け付けたソリテールが、今度こそ鳴女を拳でカチ上げる。そこへ多量の流れ弾が集中、鳴女に大ダメージを与えた。

 

『今よ! 【人を殺す魔法】!』

『『はぁああああああああ!』』

 

 そして、ソリテール、アウラ、ユンの三大【人を殺す魔法】が直撃。軸線上の不知火数機を巻き込み、夜空を切り裂き、月の一部を抉り取って大爆発を起こす。

 

『……グアクァアヴォォオオオオオッ!』

 

 だが、頭一つになっても、鳴女は撃った直後のソリテールに襲い掛かった。命を失う最期の瞬間まで殺そうとする、殺人鬼の鑑である。とは言え、この場で襲い掛かるのは悪手でしかない。

 

『良いわ、今度こそ――――――』

『【月夜見の呼吸(・・・・・・)】!』

『ぐっ!?』

 

 ソリテールとしても仕留め切れる良いチャンスだと思い、最大級の拳を繰り出そうとするも、そこに黒死牟が乱入。彼女の腕と腹を切り裂き、頭だけの鳴女を抱えて駆け抜ける。

 

『……やるじゃない、巌勝くん……!』

『私は巌勝ではない……今の俺は、黒死牟だっ!』

 

 それは巌勝が正しく黒死牟となった瞬間でもあった。縁壱にとっては、永遠の決別の言葉とも言える。

 

『撤退撤退ィーッ!』

 

 さらに、そこへ玉壺まで現れて、黒死牟諸共鳴女を回収。おそらくは何処か別の設置点に転移したのだろう。これで鬼側の戦線離脱を許してしまった訳だ。

 ならば、ソリテールたちも、この場に留まっている理由は無い。幸い、逃げ道は既に撃ち拡げている。

 

『まったく、面倒臭いわね!』

『どうもね、アウラちゃん♪』

 

 先ずは【陽の呼吸】が息切れして完全に動けなくなったソリテールを、アウラが魔力の糸で縛り上げて回収。

 

『たいへんです~!』『ですです~!』『でする~らです~!』

 

 次いで分離した妖精さんたちが集合する。

 

『皆さん、くっ付いて! 行きますよ!』

 

 そして、文字通り流星となったユンと共に、ソリテール一派は四国包囲網を突破した。

 

 

 

『……まさか、逃げ果せるとは』

『如何します? 今なら追撃も可能かと』

『まぁ良い。どちらにせよ四国は平定だ』

『畏まりました。このまま制圧致します』

 

 

 

 ――――――西暦1585年(天正十三年)、「四国平定」。




◆四国平定

 豊臣 秀吉と長曾我部 元親の対立によって巻き起こった「四国征夷」の結末。豊臣軍・小早川軍・宇喜多軍の三勢力に三方向から袋叩きにされた長曾我部 元親は、殆ど成す術なく敗北し、多くの領地だけでなく寵愛していた長男の信親まで失ってしまい、意気消沈。秀吉が天下統一した後、失意のまま病死する事となる。
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