北と東の間
かつて大崎氏が統治していた地域であり、五つの群と大小様々な集落を含む広大な領地だったが、戦国時代初期から衰退の一途を辿り、度々家臣団の反乱が起きる程で、その鎮圧に伊達氏の援助に頼り切りだった結果、戦国末期には力関係が逆転して、実質的に伊達氏の従属地と成り果てている。何れは完全に乗っ取られ、大崎氏は滅び去るだろう。
まぁ、大崎でも超ド田舎である「
あと、何故か河童が有名な土地でもある。その昔、便所で用を足していた侍の尻を撫でるという変態チックな悪戯をして、あっさりと手を斬られてしまい、返して貰う見返りとして“何でも治るし何でもくっ付く万能薬”のサンプルと作成方法を伝授したのだとか。所謂「河童の妙薬」である。
そんな河童とえごまと田んぼ以外、見る所がまるで無い色麻群に、私――――――ソリテールはお邪魔させて貰ってるわ。もちろん、アウラとユン、妖精さんたちも一緒よ。物流や人の往来が盛んな都市部の方が情報は入って来るけど、その分見付かるリスクも高いし、隠れるなら東北の奥地でひっそりと過ごそうかと思って、ここに引っ越して来たの。
という訳で、私たちは取り分け力を持っていそうな農家の人たちと「お話」の末、快く家を譲って貰い、自分好みの改造を施して暮らしているのだけれど、
『なーなー、君らって何の妖怪なん?』
実は一人、というか一匹居候が増えたの。
黄緑色のお河童頭に瑪瑙のような皿があり、背中には濃緑色をした亀を思わせる甲羅を背負う、桃色肌の少女。御覧の通り、河童の女の子だ。それも色麻出身では無く、大阪からの流れ者らしい。昔は大分やんちゃであり、大阪で大暴れした末に駆逐され、一時身を潜めていた
そんな彼女の名は「
では、そのやくざ者みたいな女河童が、何故私たちと同居しているのかと言うと、彼女が元々ここの家に住み着いていたからである。むろん、勝手に住んでいただけなので、今も昔も居候よ。
『私は妖怪じゃないわ。魔族よ』
『魔族って何~? 鬼と何か違うん?』
『似て非なる者、と言った所ね。そもそも、鬼も色んな種類が居るみたいだし、気にしても仕方ないんじゃない?』
無惨を始祖とする「吸血鬼擬き」の他に、不幸や疫病を齎す「
だからなのか、禰々子は魔族の事を鬼の一種だと思っている節があるわ。異世界から流れ着いた何て言っても信じて貰えないでしょうし、その認識でも良いのかもしれないけど。
『私は高貴なる「
『へぇ~、お貴族様なんか~。じゃあ何でこんな場所で燻っとるん?』
『お黙り。大人の都合よ』
『むしろ、僕の方が元公家ですよ! 今は「
『皆お偉いさんなんやな~。何やらかしたん?』
『『ちょっと四国を滅ぼしちゃった♪』』
『それ、朗らかに言う事なん? ウチも人の事言えんけど……』
楽しそうで何より。アウラやユンとも仲良しさんね。
『おふろのじかんです!』『いのちのおせんたくです!』『みもこころもきよめるです!』
『君らはえらい可愛いなぁ~♪』
妖精さんたちの評価も上々。可愛いもんね、この子たち。
『……お風呂の前に、少し“お手伝い”して貰いたいわ』
『ええよ~』
もちろん、単なる成り行きだけで禰々子の滞在を許している訳では無い。きちんとビジネスの関係である。先にも言及していた、「河童の妙薬」が目的だ。見た目はぽやぽやしているが、その正体は関東一円を支配していた事もある大物。持っている物は持っているし、やる時はやるのである。
ようするに、彼女の妙薬と私たちの魔薬を併せた、共同研究をしようって話だ。ユン以外の戦力がそろそろ欲しいからね。
さ~て、どんな子を創ろうかしら?
◆河童
全国的に有名な妖怪。地域によって姿形に差異はあるが、「頭の皿」「背中の甲羅」「水陸両用の身体」「キュウリと相撲が好き」という特徴は一致している。大抵は緑色だが、偶に赤い奴や黄色い奴も居る。水辺を棲み処をしており、出遭った人間や動物に様々な悪戯をするのだが、相撲を取ったり魚を獲ったりする可愛い物から、水中に引きずり込んで尻子玉を引っこ抜いて溺死させたり八つ裂きにして食い殺したりなど、全然洒落にならない事もやらかす。しかし割と抜けているので、反撃されて懲らしめられる事もしばしば。頭の皿が弱点で、渇いてしまうと力が抜け、最悪死んでしまう。
その正体は、水死体に寄生する藻類(というか地衣類)。取り憑いた遺骸を改造し、水陸両用の物に変えて、光合成だけでは足りない栄養を自前で取りに行けるようにしている。元が人間の死体なので、一応人と子を成す事は可能。