鬼殺のソリティア   作:ディヴァ子

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宗教って怖いじゃない


島原編
初めましてじゃない


 ドーモ、ニンゲン=サン。ソリテールです♪

 そして、ここは島原(しまばら)半島。日野江(ひのえ)藩主の有馬(ありま) 晴信(はるのぶ)が治める地域で、気候風土の関係か、まだまだ手付かずの自然も多い。その為、キリシタンとか言う異教徒(ひこくみん)が蔓延っているわ。

 だから、私みたいな余所者でも滑り込める隙は多いし、ちょっと気を付ければ、あら不思議、あっという間に帰化キリシタンの完成よ。お友達に無期限で借りた修道服も、すっかり板に着いちゃったわ。これなら角も見えないし、便利な物よ~?

 

「嗚呼、修道女(シスター)様、今日も我らに祝福を」

『ええ、神は何時もあなた方を見守っていらっしゃるわ♪』

 

 さぁ、今日も今日とて祝福をしましょう。この世で最も無意味な行為をね。神なんて何の役にも立たない輩に心酔するなんて、本当に人間は御目出度いわ。集団を纏める手段としては便利なんでしょうけど。

 

「修道女様、ありがとうございます」

『いいえ、これも私たちの役目ですもの』

「流石はソリティア様、素晴らしい心構えです」

 

 ちなみに、島原(ここ)での私は「ソリティア・イノセンス」で通してるわ。発音を大和寄りにしただけの偽名だけど、無いよりはマシよね。唯でさえ全国指名手配犯(「鬼」限定)なんだし。

 

「ああ、そう言えば――――――」

 

 と、信徒の一人が礼拝が終わるタイミングで、西洋式の手紙を渡して来たわ。こんなしがない修道女にわざわざ手紙を出すだなんて、一体何処の国の物好きなのかしら?

 

『これは』

 

 ……どういう因果の巡り合わせ、なのかしらねぇ?

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

 その夜、イノセンス教会。

 

「……我らの神に、償いの血を注ぎます」

 

 教会の入り口にて、黒い布地で身を包んだ怪しげな男が、手首を軽く切って血を垂らす。これは彼らの信奉する、密教の密儀。キリスト教を意図的に歪ませた、邪教の類だ。“罪深き血と肉を捧げる事で天国へと至る”なんて過激な思想、イエスが出る筈も無い。

 もちろん、捻じ曲げたのはソリテールであり、つまりは彼女にとって都合の良い宗教である。

 しかし、信奉者は意外と多い。この可愛らしくも悍ましい化け物に懸想するなんて、などと思うかもしれないが、老若男女問わずソリテールは人気がある。やっぱり顔なのか、それとも雰囲気か。どちらにせよ、最終的に食い殺されるのに、奇特な連中だ。

 

『こんばんは。「ソリティア・イノセンス」というシスターはここに居るかしら?』

 

 そんなヤバい宗教の門戸を、償いの血も無しに叩く者が一人。薄紫色の髪を三つ編みにした、顔だけは妙に幼気な美少女。その頭には、天を突くような一対の角が生えている。どう見なくても、人間では無かろう。

 

『あらあら、本当に来たのね。そして、久し振りね、「アウラ」』

 

 それに答えるのは、件の修道女であるソリティア・イノセンス、もといソリテール。この地を人間牧場に(・・・・・・・・・)変えようとして(・・・・・・・)いる愉快犯である(・・・・・・・・)

 対するアウラの返答は、

 

『――――――久し振りって、何の話? 私とあなたは初対面の筈じゃない?』

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

 さ~て、どうした物かしらね、これは。

 目の前に居る彼女は、容姿・魔力反応共に、間違いなく私の知っている「断頭台のアウラ」なのだけど、どうにも向こうは私の事を全く知ら無い様子。というか「アウラ・フォン・フォルシュトレッカー」って、そっちこそ誰よ?

 

『それもそうね。なら、あなたは誰なのかしら?』

『手紙にもある通り、私は「アウラ・フォン・フォルシュトレッカー」。由緒正しき吸血鬼(ヴァンパイア)よ』

『へぇ……』

 

 吸血鬼ね。話が本当なら、西洋における「鬼」に該当する存在だったかしら。伝承では血を吸うようだけど、同系統の怪物が、そんな非効率的な捕食方法をわざわざ取るとは思えないし、普通に骨肉まで食べてるでしょ。この世界には不思議な生き物で溢れているわねぇ。

 それにしても、真面目にこのアウラという存在を、どう定義付けるべきかしら?

 肉体的には殆ど以前の彼女と変わりないけれど、私と違って記憶を受け継いでいる感じはしない。他人の空似で片付けるにはあまりに同じ過ぎるし、言うなれば“同素体”かしらね。彼女の国の言葉を借りるなら、「影法師(ドッペルゲンガー)」って所かな。

 

『わざわざ独逸(ドイツ)くんだりから、ご苦労な事ね』

『あら、あなた分かる奴(・・・・)なの? だったら、来た理由も分かるでしょ?』

『眷属にでもするつもり? 血を吸うのかしら?』

『それは後でゆっくりと味わわせて貰うわ。でも、今じゃない。私はそんな野蛮でリスクの大きい事はしない主義なの。見なさい、“これ”を』

 

 さらに、何処からともなく、アウラが豪奢な天秤を差し出して来たわ。

 

『あなた、魔法を見た事はあるかしら? 天秤(これ)がそうよ。【服従させる魔法(アゼリューゼ)】――――――この天秤に乗せられた魂の測りは、保有する魔力量に応じて重くなり、完全に傾いた側に絶対服従の奴隷となる。それが私独自の魔法よ』

 

 むろん、効果はお察しの通り。自分の魔法に絶対の自信を持つ、かつての魔族(かのじょ)と同じ。

 ……笑えないわ。

 

『そう。なら、自分がどういう状況に置かれているかも、分かるわよね?』

『なっ!? な、何よ、その魔力!? 手頃な同族が(・・・・・・)居るって(・・・・)聞いてたのに(・・・・・・)、こんな筈は――――――』

『それは残念ね。……アウラ、「お話」しましょ?』

 

 そして、これは当然の結果。またお友達になりましょうね、アウラ?




◆鳴女

 ご存じ無惨の二代目側近。縁壱によって切り刻まれ、珠世にも逃れられ、色々と自棄になっている時期に出遭い、頭をカチ割られるという素敵な体験を無惨に齎した、やべー女。元はしがない琵琶師だったが、DV夫に商売道具を売り飛ばされるという暴挙に出られた結果、彼を殺害し、その震える手で奏でた音色に陶酔してしまい、人殺しと演奏をセットで運用するサイコパスになった。
 原作では特殊能力一辺倒だったが、今作では出遭い方の違いによる物か、無惨から多くの血を分け与えられており、この時点で既に使い魔まで召喚出来る。あと、暴力に更なる暴力で対抗したせいか、鬼化後はとんでもない肉体派になってしまった。
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